追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ

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【番外編】追放されたS級清掃員、お花見の場所取りで伝説になる

第4話:根腐れ防止と、特等席のお花見

ソウジは黒く変色し、ひび割れた世界樹の根元をトングで小突いた。

「やっぱりな。カビのせいで土が完全に死んでる。いわゆる根腐れ一歩手前の状態だ」

「根腐れ……つまり、このままでは桜が枯れてしまうということですか、師匠!」

セシリアが不安げに顔を寄せる。

「ああ。だが、土壌改良の手順さえ間違えなきゃ、植物ってのは案外しぶといもんだ。まずは古い土とカビを水で一気に洗い流すぞ! セシリア、ホース全開だ!」

「承知いたしました、師匠! 主の恩寵たる清らかなる水よ、穢れし大地を洗い流したまえ!」

セシリアが祈りを捧げると、虚空から滝のような超高濃度の聖水が降り注いだ。
それは呪いによって黒く染まった土を強烈に浄化し、世界樹の根にこびりついたヘドロのような瘴気を、文字通り滝のように洗い流していく。

「よし、いい水圧だ! 次はミカエル! さっき俺が切り落とした枝の断面が剥き出しだ。あそこから雑菌が入らないように、癒合剤の代わりにテープで塞げ!」

「お任せください、ソウジ様! 神聖なる緑の封印、展開!」

ミカエルが翼を羽ばたかせ、空中で目にも止まらぬ速さで緑色の養生テープを貼り巡らせていく。
病巣を切り落とされた世界樹の傷口が、天使の完璧なテーピングによって優しく保護された。

「仕上げだ、コアちゃん! 水捌けを良くするために、カチカチになった土をふかふかに耕してくれ!」

「はい、マスター! 任せてください! 重力反転、ふかふかエスケープ!」

コアちゃんが両手を地面に向けると、強力な重力魔法が土壌に作用する。
ガチガチに固まっていた土が魔法の力でふんわりと持ち上がり、新鮮な空気が根の奥深くまで行き渡る。
あっという間に極上の腐葉土ベッドへと生まれ変わった。

完璧な剪定、高圧洗浄、傷口の保護、そして土壌改良。
クリーン・ファンタジー社による「物理的造園メンテ」が完了した瞬間だった。


ズズンッ……!

世界樹が、喜びに打ち震えるかのように大きく揺れた。
浄化された土から清らかな水分を吸い上げた巨木は、失われていた生命力を爆発的に取り戻す。

枝という枝にびっしりとついていた蕾が、春の暖かな日差しを浴びて、一斉に弾けた。

「おお……!」

「すごい!咲きましたよ、社長! 満開です!」

剣崎が歓声を上げる。
見渡す限りの視界が、淡いピンク色の桜花で埋め尽くされた。
呪いの瘴気は完全に消え去り、そこにはダンジョンが誕生した時のような、清浄で美しい桜吹雪が舞っている。

「……ふん。手入れさえすりゃ、立派に咲くじゃねぇか」

ソウジは満足げに頷くと、先ほど保護した光るサナギを両手でそっと持ち上げた。
そして、世界樹の太い幹の分かれ目、一番安全で暖かそうな隙間にサナギを丁寧に安置する。

「お前も、ここでゆっくり春を待ちな。……さてと!」

ソウジは振り返り、バンの荷台から降ろしておいた特大ブルーシートをバサァッ!と広げた。

「仕事は終わりだ! ここが世界で一番の特等席だぞ! 剣崎、クーラーボックスからビール出せ! セシリア、コアちゃん、弁当広げるぞ!」

「はいっ、社長!」

「師匠! 私がお酌いたしますわ!」

「わーい! マスター、唐揚げ食べましょう!」

美しく咲き誇る世界樹の真下、桜吹雪の舞う絶景の中で。
世界を救う清掃業者たちの、最高に賑やかで楽しいお花見の宴がスタートした。

(続く)
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