理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

burazu

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異世界で仲間が増えました

誇りを捨ててでも

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 俺とギベルト、それぞれの言い分を聞いたアレフさんはリハビリ器具使用による診療報酬の上乗せは認められたものの、それをギベルトには1パーセントも支払わない俺に言い放ち、その一方でギベルトにはリハビリ器具の請負も適正価格で請け負うように要請する。

 その結果契約書は作り直しとなり改めて指印を押して、今度こそ契約内容はまとまった。

「では、これからも事業に精を出すがよい」
『はい』
「もうさがっていいぞ」
『はい』

 アレフさんに促されて、俺達は詰所を出ていき、詰所を出て少し歩くと、まずギベルトから声を発する。

「まったく、まさかお前があんな事を考えていたとはな、お人好し過ぎてちょっとびっくりしたぜ」
「それはギベルトもだ、格安がいくらなんでも安すぎるんじゃないかと思ったぞ」
「それは……おっと、もう決められた事にグチグチ言うのはやめだ、言いつけを守らずに廃業されるのはごめんだからな」
「そうだな、これからは俺も適正価格でと言いたいところだが、あの手の器具の相場ってどうなんだ?」

 俺がリハビリ器具の相場について改めてギベルトに尋ねるとギベルト自身の見解が返ってきた。

「まあ材料の価格や手間賃などを考慮して改めて価格は割り出しておくからよ」
「そうか、じゃあそろそろ診療所に戻らないとな、午後からの診療があるし」
「それなら俺も工房に戻るか、仕事を進めないとならねえし」

 そう言って俺達はそれぞれの仕事場に戻っていった。

 診療所に到着し中に入って、とりあえずミミとミーザには契約内容が多少変更しながらもまとまった内容を話した。

「そうなんですね、アレフ様がそのようにおっしゃったんですね」
「まあな、少し俺ももしかしたらギベルトの厚意に甘えていたかもしれないと思ったからせめてとは思ったがこれがギベルトと俺達の為かもな」
「でもさ、きっとギベルトもアレフさんの言う事は本当は分かっていたんじゃないかな?」
「ミーザ……」

 ミーザはギベルトが自分の腕を安売りしている自覚があった事は本当は分かっていたんじゃないかと主張し、更に詳しい話をする。

「あんなすごい親父さんの元でずっと鍛冶修行をしていたんだよ、鍛冶師の誇りを安売りしない事は身に染みていたと思うよ」
「それなら何故、格安請負なんて……」
「単なる恩に報いたいんじゃなくて、あんたが自暴自棄になったギベルトにも向かい合い続けたことが自分の誇りを捨ててでもあんたに報いたいって思ったんじゃないかな」

 鍛冶を続ける事がまたできる、その喜びを知ったからか、でも本当にあいつを職人として認めるならやっぱり適正価格でやってもらうのがあいつの為なんだな。
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