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その依頼者、無謀にすぎる
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包みの影からぴょこんと人の姿が現れた。
フリルのたっぷりついたエプロンドレスをまとった、小柄な少女だ。
愛らしい眉をつり上げて、お怒りモードのようである。
「衝動買いとは失礼ね!
ちゃんとイチバン可愛いアイテムを選りすぐってるわよ!」
台詞と一緒に、大きな包みの山をシルヴァに投げて寄越す。
人間族の青年として特に貧相でもない中肉中背標準体型のシルヴァだが、あまりの物量によろりとのけぞった。
肩のいきものはずり落ちて、一房だけ伸ばしたシルヴァの淡い茶の髪に片手でぶら下がると、寝ぼけたまま「ぽえ?」と鳴いた。
「……選りすぐってこれですかアリエッタさん」
「お気に入りの店のは棚の端から端まで全部買いが基本なの!
ドレスとアクセとコスメとコロン、この春の新作アイテム揃えたらこのくらい当然!
……でもね、ちょっと遠慮はしたのよ?」
後半何故だかややくぐもった台詞と同時に、今度は少年に近寄る。
「はい、両手出して」
「え?」
つい反射で差し出してしまった両手に、残りの荷物が押しつけられた。
「……何故ぼくにまで……」
身軽になったアリエッタはご機嫌だ。踊るようなステップで広場を進んでいく。
前方の白い煉瓦の壁には、古ぼけた一つの小さな扉が取り付けられている。
アリエッタは小さな階段を鼻歌交じりの軽やかなステップで駆け上ると、あっという間に扉の向こうへ姿を消した。
少年としては大荷物をどうすること出来ず、あぜんと立ち尽くすしかない。
同じく大荷物を抱えたシルヴァはのんきなものだ。
「うへえ……あいつ前のツケもまだ払ってないって言ってなかったっけ?
それで棚全部買いとか。アリエッタ御用達の店ってば皆、寛容だよなあ~」
簡素な扉には、翼竜をかたどったノブがささやかに存在感を主張している。
シルヴァは空いた指一本で器用に扉を開け、部屋の中へと入った。
すぐに続いてこない少年を、不思議そうに見つめる。
「どうした? 入りな」
とりあえず荷物だけはなんとかしなければならない。少年は仕方なく扉をくぐった。
玄関の扉を入ったそこは、普通の町家の居室のような造りだ。
分厚い天板の長方形のテーブルに、これまた頑丈そうな椅子が八つ。
南向きの天窓から差し込んだ陽光が、室内を柔らかく照らしている。
「そのへんの床に置いてくれ、後でアリエッタが自分で片付けるだろ」
自らも山盛りの包みを下ろしたシルヴァは椅子を引くと、どっかりと腰掛けた。
部屋中央の床には厚い毛織りのラグが敷かれ、花柄のクッションがいくつも転がっている。
フリルのついたカーテンといい、花瓶に飾られた薔薇といい、幾分少女趣味なインテリアだ。
少年が視線を巡らせていると、奥から長身の男が現れた。
「お客ですかな?
ようこそ、救援隊『黄金の鈴』の本拠地へ。
わたしはギヨームと申します。どうぞお見知りおきを」
ギヨームは優雅な仕草で挨拶してみせた。
きちんと整えられた髭といい、質素ながら小綺麗な服装といい、宮廷の官吏か貴族の侍従のような雰囲気をまとった男だ。
フリルのたっぷりついたエプロンドレスをまとった、小柄な少女だ。
愛らしい眉をつり上げて、お怒りモードのようである。
「衝動買いとは失礼ね!
ちゃんとイチバン可愛いアイテムを選りすぐってるわよ!」
台詞と一緒に、大きな包みの山をシルヴァに投げて寄越す。
人間族の青年として特に貧相でもない中肉中背標準体型のシルヴァだが、あまりの物量によろりとのけぞった。
肩のいきものはずり落ちて、一房だけ伸ばしたシルヴァの淡い茶の髪に片手でぶら下がると、寝ぼけたまま「ぽえ?」と鳴いた。
「……選りすぐってこれですかアリエッタさん」
「お気に入りの店のは棚の端から端まで全部買いが基本なの!
ドレスとアクセとコスメとコロン、この春の新作アイテム揃えたらこのくらい当然!
……でもね、ちょっと遠慮はしたのよ?」
後半何故だかややくぐもった台詞と同時に、今度は少年に近寄る。
「はい、両手出して」
「え?」
つい反射で差し出してしまった両手に、残りの荷物が押しつけられた。
「……何故ぼくにまで……」
身軽になったアリエッタはご機嫌だ。踊るようなステップで広場を進んでいく。
前方の白い煉瓦の壁には、古ぼけた一つの小さな扉が取り付けられている。
アリエッタは小さな階段を鼻歌交じりの軽やかなステップで駆け上ると、あっという間に扉の向こうへ姿を消した。
少年としては大荷物をどうすること出来ず、あぜんと立ち尽くすしかない。
同じく大荷物を抱えたシルヴァはのんきなものだ。
「うへえ……あいつ前のツケもまだ払ってないって言ってなかったっけ?
それで棚全部買いとか。アリエッタ御用達の店ってば皆、寛容だよなあ~」
簡素な扉には、翼竜をかたどったノブがささやかに存在感を主張している。
シルヴァは空いた指一本で器用に扉を開け、部屋の中へと入った。
すぐに続いてこない少年を、不思議そうに見つめる。
「どうした? 入りな」
とりあえず荷物だけはなんとかしなければならない。少年は仕方なく扉をくぐった。
玄関の扉を入ったそこは、普通の町家の居室のような造りだ。
分厚い天板の長方形のテーブルに、これまた頑丈そうな椅子が八つ。
南向きの天窓から差し込んだ陽光が、室内を柔らかく照らしている。
「そのへんの床に置いてくれ、後でアリエッタが自分で片付けるだろ」
自らも山盛りの包みを下ろしたシルヴァは椅子を引くと、どっかりと腰掛けた。
部屋中央の床には厚い毛織りのラグが敷かれ、花柄のクッションがいくつも転がっている。
フリルのついたカーテンといい、花瓶に飾られた薔薇といい、幾分少女趣味なインテリアだ。
少年が視線を巡らせていると、奥から長身の男が現れた。
「お客ですかな?
ようこそ、救援隊『黄金の鈴』の本拠地へ。
わたしはギヨームと申します。どうぞお見知りおきを」
ギヨームは優雅な仕草で挨拶してみせた。
きちんと整えられた髭といい、質素ながら小綺麗な服装といい、宮廷の官吏か貴族の侍従のような雰囲気をまとった男だ。
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