Promise〜あなたへ

コウ

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第一章

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「あ…そういえば…」

私はふと思い付き、ページを捲った。


アルバムの最後の方には、フリースペースの場所があったはず。

字を書いても絵を描いても、写真を貼ってもいいように白紙のページ。

でも私のアルバムは、このアルバムをもらった日に白紙ではなくなった。

それは見る前に思い出した。

だんだんと当時の記憶が蘇ってくる。

そして、思った通りそこには文字が書いてあった。




『優香ちゃん

 今まで仲良くしてくれてありがとう!

 本当にうれしかったよ!

 中学校は違うけど、優香ちゃんは私の一番の親友だよ!

 また遊ぼうね!
 
       夏帆』





さっきの手紙と同じ字。


綺麗で丁寧だけど、どこか可愛らしさもある字。


夏帆の性格が反映された字。


ページの角に、夏帆が書いた絵があった。


女の子2人が手を繋いで並んでいる。

たぶん、夏帆と私の姿なのだろう。

夏帆は、絵も上手だったと思い出した。








確か夏帆のアルバムには、私がメッセージを書いたと思う。

内容は全く思い出せないけど、たぶん似たようなメッセージを書いたはず。

下手なりに、絵も描いたのかも知れない。

全然思い出せないが、書いたのは間違いないと思った。




その当時、夏帆とは仲良しの友達だった。

夏帆が書いてくれたように、間違いなく親友だった。

なのに夏帆が引っ越してから全く連絡していない。

今じゃ連絡先すら知らない。


無論、さっきの手紙の住所に今でも住んでいるとすれば、さっき知った事にはなるが…。


でも、手紙の状態からすると、その住所もかなり前の情報。

信憑性はあまりない気がする。



「千葉かぁ…」


私はスマホを取り出し、マップを起動させる。


千葉の某テーマパークを入力し、経路を調べてみる。


電車だと2時間。

車だと2時間半。


テーマパークから夏帆の家はそう遠くないみたいなので、多く見積もっても、ここから3時間。



大人になった今、その距離を遠いとは思わない。


でも大人になってしまった今、そこまでの道のりが凄く遠いようにも感じた。









私が小学校を卒業する頃は、スマホ以前に携帯電話自体が普及する前だ。

友達との連絡手段は、家の電話かポストに入れる手紙。

その頃から今のように連絡手段を常に持ち運べる便利な物があれば、少しは変わっていたかも知れない。


夏帆への道のりが、たとえ薄くなっていたとしても、繋がっていられたのかも知れない。


そう思うと現在何とも思わず使っていた携帯電話全般が、凄い物に思えた。


私はスマホの画面を撫でた。

今までにない位、優しい手付きだった。

尊敬の意も込めていた。


すると、それに答えたように画面が明るくなる。

普段より一層、聞こえてきた着信曲が軽快な気がした。

まるで、“ありがとう”とでも、スマホが言っているようだった。


そんな空想を現実に戻したのは、画面に表示されている“誠也”の名前。

私はアルバムを閉じてから、「はい」と電話に出た。


『あ、優香?もう寝てた?』


いつも通りの誠也の声が、どこか呑気に聞こえた。


「ううん」

『明日なんだけどさ、おふくろが昼飯食いにどっか店行こうって。昼前に迎え行って大丈夫?』

「うん」


『その時、オヤジに署名してもらおうと思って』

「うん」

『で、飯食った後、優香の家行ってお義父さんの署名もらおうと思って』

「うん」

淡々としていた会話が途切れ、『…聞いてないでしょ?返事が上の空』と誠也が呟く。


私は意識的に目を開き、「ごめん、聞いてるよ」と声も張る。


『疲れてる?』


「そんな事ないけど…」

私は膝の上に置いたままのアルバムに目を向け、「ちょっと過去に戻ってた」と告げた。


電話の向こうで『はぁ?』と笑い声が聞こえた。


『タイムマシーンでも、手に入れた?』


誠也の弾んだ声を、今は受け入れられる気がしなかった。


「…とにかく、昼前に迎え来てくれるんでしょ?」


私は話題を戻し、その上で「その時うちの親に書いてもらっちゃえばいいじゃん」と提案した。


『あ、そっか、そうする。そう言っといて』

「わかった」

『じゃまた明日迎え行くとき電話するよ』

「うん」


誠也との通話を終え、私は再びアルバムと手紙に意識を戻した。

2つを胸元に抱え込み、ベッドへと倒れこむ。

その反動で、両目が閉じた。





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