Promise〜あなたへ

コウ

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第一章

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「…ん?まてよ…」

しかし、誠也はすぐにポツリと呟きながら手を止めて、「つー事はさ」と続けた。


「優香はその差出人の子と、その後連絡してないって事だな?」


私はギクリとした。

全身の血の気が引いたのがわかった。

それなのに、鼓動は早くなる。


「小学校卒業の時って言っても、俺らの学校は皆同じ中学に進学じゃん?手紙渡したかどうかなんてすぐ確認出来んのに…その話題も出ないままって事は…」

誠也は口元を緩め、「差出人は…近藤さん?」とゆっくり言った。


私は金縛りになったように体が動かなかった。

言葉も出ない。


「確か中学入る前に引越したよな」

「別に…」

無理やり口元の筋肉を動かし、「引越ししたからって、夏帆って決め付けないでよ」と私は反論した。





「あ、近藤さんって夏帆って名前だっけ?」

誠也は天井を仰ぎ、「名前までは憶えてね」と続けた。


「いや、だから夏帆とは言ってないって」

「優しくて可愛い子だったよね。そーいや優香、仲良かったし」


誠也は絶対の自信があるように、「はい、差出人は近藤さん」と私の話を流した。


時々、誠也は刑事に向いているんじゃないかと思う時がある。

そして、それ以前に自分の口下手さに呆れる。

もっと包んで話せば良かった。

でもそうしても、誠也にはバレそうな気もした。



こうなったら夏帆だと認めて、ある程度までは話してしまおうか…。

少しだけそう思った矢先、「あれ…待てよ」と誠也は頭を掻いた。


「そーいや、もう一人違う中学校行った奴いたよな」

誠也は首を傾げる。

自分の顎に左手を添え、小さな声で何度か唸った。






「…あ、孝平だ!孝平!すげー頭が良かった、孝平!」


不意に出てきた名前に、私の心臓はドキッと波打った。


「あいつ、私立の中学校行ったんだよな」


有無を言う前、「懐かしいなー、あいつ今何やってんだろ?」と誠也は何処か嬉しそうに言う。



誠也は缶ビールを一口飲んだ。

私の方は、未だに蓋が開いてない。


「もう10年以上会ってねーから、今会ってもお互いわかんないかもなぁ」


思い出に浸り始めている誠也は、なんだかとても楽しそう。

きっと過去に忘れ物がないのだろう。

単に忘れている事も忘れてしまってるかもしれないが、今はそれすら羨ましく思う。


「つー事は、差出人は近藤さんか孝平だな」

誠也は自分自身の推理に頷きをし、「んー…」とさらに答えを絞ろうとしていた。



「ま、でもその可愛らしい封筒じゃ、孝平な気が全くしない」

「だからー」

私は少し声を張って、「夏帆とは言ってないって」と制した。


「勝手に話進めないでよ」

「だって優香が言わないから、勝手に考えなきゃ話が進まねーんだもん」



誠也の言う事もわかるが、こっちだって言えないものは言えない。

本当なら全部話してしまえば解決までいく話かも知れないが、どうもそんな気になれない。


黙ったままでいた私に、誠也は大袈裟に溜め息を吐いた。


「ま、仮に…か・り・に!ね。近藤さんなら、連絡取ってみればいーんじゃないの?」

余りにも滑らかな口調。

私は半ば呆れ気味にそれを受けた。


「…どうやってよ」

「卒業アルバムに、住所とか電話番号とか載ってなかったっけ?見てみる?」

案を出したすぐ後、「あ、俺アルバム実家だ」と誠也は付け加える。






私も持ってきていないので、この場での確認は出来ない。

でも…「この前実家帰った時見たけど、住所も電話も載ってなかったよ。犯罪とかに使われるの防止だと思うけど」という本当の情報はある。


「そっか…」

誠也の瞳は、ずっとテーブル上の手紙を捉えたまま微塵も動かなかった。

ただ無心で眺めているのか、考えているのかはわからない。

けど、しばらくして「ねぇ…」と低めの声が聞こえた。


「そのラブレターを優香に託したって事はさ、告白した相手から返事をもらう場合の連絡先が、手紙の中に書かれてなかった?」


私は手紙に目を向ける。

この前、誠也は自分で“勉強は嫌い”だと発言していたが、頭はきれるようだ。


「自分の連絡先書いてなきゃ、連絡の取りようがねーと思うんだけど」


まさしく誠也の言う通り。




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