Promise〜あなたへ

コウ

文字の大きさ
23 / 39
第二章

 2 【2】






『  近藤さん

手紙ありがとう。

僕は凄くなんてないです。


近藤さんは、特待生ってわかりますか?

僕の家、お父さんがいないので、入学金と授業料がかからない特待生って制度がある学校にしました。

そのために勉強してます。


近藤さんの将来の夢は何ですか?

僕は大きい会社で働いて、お母さんに楽をさせてあげる事です。

僕のお母さんは、僕の為に毎日一生懸命働いてくれてます。

夏休み中も家にほとんどいないけど、朝起きるとちゃんと朝ごはんと昼ごはんの準備をしてくれてます。

夜ごはんは僕が作ります。

小学校のキャンプで作ったカレーがほとんどだけど、お母さんは喜んで食べてくれてます。

僕の方はカレーが嫌いになりそうです。


夢の話を、森宮優香ちゃんとした事があります。

優香ちゃんと塾が一緒で、授業のあとによく話してました。

近藤さんは優香ちゃんと仲良かったよね。

連絡はとってますか?

お互い宿題頑張りましょう。』






佐伯君の家庭の事情を初めて知った。

思えば、佐伯君が最初の手紙で書いていたように、私は佐伯君の事を全く知らなかった。

私立の特待生だったなんて、よっぽど頭が良い事も知った。

優香ちゃんとそんな話をしていたのも知らない。


もしかしたら、優香ちゃんは佐伯君のこんな所が好きだったのかも…と思った。



私が佐伯君の気持ちを素直に受け入れられない理由の1つが、優香ちゃんの存在だった。

私はだいぶ前に、優香ちゃんの佐伯君に対する気持ちを聞いていたから。

裏切ってしまうのが怖かった。



さすがにそれを佐伯君には言えないので、私は宿題の事などあたりさわりのない話を書いて返事をした。
 





夏休みが終わった。

再び始まった学校生活。

家で怠けていた体を、元の生活に戻るのにも時間がかかった。


その間、佐伯君からの返事はなかった。

一週間後も、二週間後も返事が来なかった。

私が学校に行ってる間に届いてると思い、「私に手紙きてない?」と母親に尋ねる日が増えた。

しかし母親から返ってくるのは、「きてない」という言葉。

何かマズイことでも書いてしまったのかと不安になった。



「夏帆、誰からの手紙待ってるの?」

ある日、母親からそう問われた時に気が付いた。

私は佐伯君の手紙を待っている。


植野君からの手紙ではない。


今の私にとって、佐伯君から届く手紙が、元気になれる魔法だった。







「ねぇ、お母さん」

私はキッチンにいる母に向かい、「小学校の時の連絡網って捨てちゃった?」と聞いてみた。

連絡網とは、クラスメイトの家の固定電話の番号が載っている一覧表の事。

私が小学生の頃は、携帯電話なんてまだ普及する前。

連絡手段は家の固定電話だった。


「あぁ、確かそのままだったと思うけど」

母は固定電話が置いてある棚の引き出しを探り、「これ?」とファイルを出した。

丁寧に1年生から6年生まで一綴りになっている。


「ありがとう」

私は母親の手からファイルを受け取り、6年生の紙からお目当ての名前を探す。


普段の自分だったら考えられない程、行動的になれた。

母親が傍にいるのも気にならなかった。

早速、見つけた番号を固定電話に入力する。



感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。