Promise〜あなたへ

コウ

文字の大きさ
30 / 39
最終章

 1 (3)





『あの…優香ちゃん』

「あ、はい」

『今都内に住んでるんですよね?』

私が有無を言う前、『手紙の住所見て…』と夏帆が言う。


「はい、そうです」


『私もなんです』


夏帆の声が少しだけ弾んだように感じた。


『たぶんそんな遠くないと思うんで、良かったらうちにいらっしゃいませんか?』


夏帆から思わぬ提案をされ、私は驚いた。


『直接お話出来たらなぁ…って』



確かに“直接会う”話題は手紙でやりとりしていたが、まさか自宅に招いてくれるとは予想もしてない。


「いーんですか?」

『はい。私、引越ししてきたばかりで都内詳しくなくて…あんまり外出も出来ないんで、もし優香ちゃんが良かったらですけど』



夏帆の“外出出来ない”という単語に、一瞬疑問が沸いた。


けど、それより進める話がある。



「是非お会いしたいので、助かります」


『私、今仕事してないんで、日中ならいつでも大丈夫です。…優香ちゃんは?』


「私も仕事していないんで、いつでも平気です」


『え?あ…そーですか…』


夏帆の声が少し変わった。


『じゃあ、えーとー…』


そして、夏帆の移動した音も聞こえた。

きっとカレンダーでも確認してるのだろう。

私も部屋の壁にかけてあるカレンダーを眺め、待つことにした。







『来週の金曜日とかどうですか?平日ですけど』

「あ、はい。大丈夫です」

『場所わからないですよね?最寄駅まで行きますね。駅名はー』


私は咄嗟に夏帆からの手紙を手に取った。


「えっと…」


私が封筒の裏面に書いてある住所を読み上げると、『あ、そうです』と夏帆は言う。


『手紙に書いてますよね。すいません』

「いえ…マップで調べながら行きますから、大丈夫ですよ」

『わかりました。じゃあ、お昼ご飯でもご一緒に食べませんか?うちの近くに、ケータリング出来る美味しいお店があるんです。12時頃に届くように頼んでおくんで、それ位で大丈夫ですか?』



私は当初の目的を忘れそうになった。

普通に遊ぶ約束みたいだ。

何より、夏帆の方が積極的な事に驚いた。

大人の夏帆は、随分と大人になったようだ。



「はい。お願いします」

『じゃあ、お待ちしてますね。何かありましたら、連絡下さい』

「はい」

『では失礼します』


夏帆が通話を切ったのを確認した後、私はスマホを耳から離した。





「会う約束出来て良かったねー」

誠也はテレビを見たまま言った。

私の声しか聞こえていないだろうが、大体の内容は把握出来たようだ。

私は誠也の横に座り、「緊張したぁ…」と一息吐いた。



「敬語だったもんね」

「うん」

「近藤さん、元気そうだった?」

「うん。家に誘ってくれて、お昼ご飯一緒に食べようって」

「へー」


誠也はテレビのボリュームを上げる。

先ほど歌っていたアイドルが、まだ画面に映っていた。

夏帆との電話は、長かったように感じたがそうでもなかったみたいだ。




気持ちも落ち着いたところで、「やっぱりさ…」と私は口を開いた。

「時間って経ってんだね。声だけだけど、小学生の頃の面影って全然ない」

「そりゃーね」

「夏帆、何かしっかりしてた…もっと内気なイメージだったのに」

「大人になったんでしょ」

「…そうだよね」



テレビでは流れていた曲が終わり、会場から拍手が沸き起こる。

パッと見、20人くらいのミニスカートを履いた女の子達が、皆揃って両手を振って退場した。


「最近の子って、全員同じ顔に見えるんだよなぁ…」

誠也はポツリと呟いた。


私が実家暮らしの頃、歌番組を見ていた時に父が同じ事を言ってたのを思い出した。

その時、私は「全然顔違うじゃん」と父の発言を否定したが、今は誠也の感想に同意出来る。

こんな事でも、大人になったと自覚出来るんだと思った。





感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。