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最終章
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『あの…優香ちゃん』
「あ、はい」
『今都内に住んでるんですよね?』
私が有無を言う前、『手紙の住所見て…』と夏帆が言う。
「はい、そうです」
『私もなんです』
夏帆の声が少しだけ弾んだように感じた。
『たぶんそんな遠くないと思うんで、良かったらうちにいらっしゃいませんか?』
夏帆から思わぬ提案をされ、私は驚いた。
『直接お話出来たらなぁ…って』
確かに“直接会う”話題は手紙でやりとりしていたが、まさか自宅に招いてくれるとは予想もしてない。
「いーんですか?」
『はい。私、引越ししてきたばかりで都内詳しくなくて…あんまり外出も出来ないんで、もし優香ちゃんが良かったらですけど』
夏帆の“外出出来ない”という単語に、一瞬疑問が沸いた。
けど、それより進める話がある。
「是非お会いしたいので、助かります」
『私、今仕事してないんで、日中ならいつでも大丈夫です。…優香ちゃんは?』
「私も仕事していないんで、いつでも平気です」
『え?あ…そーですか…』
夏帆の声が少し変わった。
『じゃあ、えーとー…』
そして、夏帆の移動した音も聞こえた。
きっとカレンダーでも確認してるのだろう。
私も部屋の壁にかけてあるカレンダーを眺め、待つことにした。
『来週の金曜日とかどうですか?平日ですけど』
「あ、はい。大丈夫です」
『場所わからないですよね?最寄駅まで行きますね。駅名はー』
私は咄嗟に夏帆からの手紙を手に取った。
「えっと…」
私が封筒の裏面に書いてある住所を読み上げると、『あ、そうです』と夏帆は言う。
『手紙に書いてますよね。すいません』
「いえ…マップで調べながら行きますから、大丈夫ですよ」
『わかりました。じゃあ、お昼ご飯でもご一緒に食べませんか?うちの近くに、ケータリング出来る美味しいお店があるんです。12時頃に届くように頼んでおくんで、それ位で大丈夫ですか?』
私は当初の目的を忘れそうになった。
普通に遊ぶ約束みたいだ。
何より、夏帆の方が積極的な事に驚いた。
大人の夏帆は、随分と大人になったようだ。
「はい。お願いします」
『じゃあ、お待ちしてますね。何かありましたら、連絡下さい』
「はい」
『では失礼します』
夏帆が通話を切ったのを確認した後、私はスマホを耳から離した。
「会う約束出来て良かったねー」
誠也はテレビを見たまま言った。
私の声しか聞こえていないだろうが、大体の内容は把握出来たようだ。
私は誠也の横に座り、「緊張したぁ…」と一息吐いた。
「敬語だったもんね」
「うん」
「近藤さん、元気そうだった?」
「うん。家に誘ってくれて、お昼ご飯一緒に食べようって」
「へー」
誠也はテレビのボリュームを上げる。
先ほど歌っていたアイドルが、まだ画面に映っていた。
夏帆との電話は、長かったように感じたがそうでもなかったみたいだ。
気持ちも落ち着いたところで、「やっぱりさ…」と私は口を開いた。
「時間って経ってんだね。声だけだけど、小学生の頃の面影って全然ない」
「そりゃーね」
「夏帆、何かしっかりしてた…もっと内気なイメージだったのに」
「大人になったんでしょ」
「…そうだよね」
テレビでは流れていた曲が終わり、会場から拍手が沸き起こる。
パッと見、20人くらいのミニスカートを履いた女の子達が、皆揃って両手を振って退場した。
「最近の子って、全員同じ顔に見えるんだよなぁ…」
誠也はポツリと呟いた。
私が実家暮らしの頃、歌番組を見ていた時に父が同じ事を言ってたのを思い出した。
その時、私は「全然顔違うじゃん」と父の発言を否定したが、今は誠也の感想に同意出来る。
こんな事でも、大人になったと自覚出来るんだと思った。
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