39 / 39
最終章
2 (2)
「ねー…私もちゃんとプロポーズされたかったな」
「は?突然何?」
「高級ホテルの最上階とかでさ、シャンパン片手に婚約指輪」
「えー…ドラマじゃねーんだから」
「そうだけどー」
私は口を尖らせる。
「何で?近藤さんは孝平からそんな感じで言われたって?」
「いや、知らないけど…」
「んー…孝平はしてそうだな。やる事が全部、参考書みたいな奴だったし」
誠也は口元を吊り上げた。
私は自分の理想でもあったプロポーズのシーンを思い浮かべてみる。
「確かに…佐伯君はやりそうだけど…」
「けど?」
「記憶上の佐伯君だから、どーしても小学生なんだよね」
そう言うと誠也は声に出して笑った。
その後、口を開いた。
「大好きだった孝平が、結婚してて寂しい?」
「そーねー」
私は笑いながら、「好きだった親友が結婚して、幸せになってる事の方が嬉しい!って気持ちの方が大きいかな」と続けた。
「ふーん」
誠也は意地悪そうに笑った。
そして、「女の子の友情も悪くないね」と言った。
「うん。悪くないよ」
私が念を押すと、横で歩いていた誠也はピタリと足を止める。
私は2、3歩先に行った所で足を止めた。
「どうしたの?」
体を半回転させてみると、そこにいた誠也は目を閉じて立っている。
空気を思いっきり吸い込んだのか、肩が大きく何度か上がった。
そして、ゆくりと目を開けた後「雨、降る」と呟いた。
私は空を見上げた。
雨には想像つかない空をしている。
「早く帰らないと降ってくる」
「そう…」
私は相槌を打った後、「ねーねー、誠也」と投げかけた。
「何?」
「誠也は何で、雨が降るのがわかるの?」
私は首を傾げ、「それとも…誠也が雨を降らせてるの?」と尋ねた。
「…はぁ?どーやって?」
誠也からは腑抜けた声が飛んできた。
「匂いでわかんだよ。雨降る前の匂いってあんの」
「うっそー」
「本当。ガキの頃から、俺は予報外した事ないよ」
私は小声で「…へー」と呟く。
「信じてねーだろ」
婚姻届を両親に書いてもらいに行った時を思い出した。
確かにあの時、誠也の発言後に雨は降って来た。
「…っよし!走るぞ!マジで降ってくる!」
「あ、大丈夫。鞄に折り畳み傘入ってるから」
「え?うちに折り畳み傘なんてあったっけ?」
誠也からの疑問を受けつつ、私はもう一度空を仰いだ。
きっとこの空は、誠也の言うようになるのだろう。
魔法なんて信じないけど、そんな気がした。
「はい」
私は手にしている傘を、「過去からのお届け物ですよ」と差し出した。
「植野誠也君」
「…ん?」
誠也は首を傾げながら受け取った。
傘に書かれている名前は、少し色褪せている。
だけどそれを見た誠也の目は、パッと光った。
「あれ?これ、なくしたと思ってた」
そう懐かしむ声と共に。
【完】
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。