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師匠と死神と最強と
第12話 メル先生
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「じゃあ、また明日」
道場付近まで戻ってきて、メルはそう言った。メルによる稽古は明日からという約束なので、たぶん稽古の準備とかがあるのだろう。道場も燃えているし、けっこう大変な作業かもしれない。
「な、なにか手伝えることは……」
「……じゃあ、ルスルスに報告して。ライ……なんだっけ。組織はたぶん壊滅したって」
ライ……ライトトールだっけ? とにかくトラッシュの組織が壊滅したことを情報屋ルスルスに伝えればいいらしい。
「わかりました、メル先生」
エトワールは元気よく返事をして、ルスルスのいる喫茶店まで走り出す。後ろでメルが「先生……?」となぜか疑問形で言っていた。エトワールからすれば師匠であるメルを先生と呼ぶのは当たり前のことだった。さらに、あの実力を見せつけられて、少しテンションが上っているエトワールだった。
もしかしたら、自分はとんでもない師匠を見つけたのかもしれない。ディビジョンA上位クラスの師匠なんて、そう簡単には見つからないだろう。しかも現状は受講料がタダ。もはや詐欺レベルに魅力的だった。
そんなこんなで浮かれつつ、エトワールはルスルスの喫茶店までたどり着いた。
「いらっしゃい……って、エトワールちゃん。どないしたん?」喫茶店の店主モード……明るい営業スマイルのルスルスだった。「ライヒトゥームは片付いた?」
そういえばライヒトゥームというのだった。
「……はい、その……メル先生があっさりと……」
「あはは。強かったやろ、あの子。ディビジョンAくらいじゃ、相手にもならんやろ」
「……」やはりメルはディビジョンSクラスの実力者らしい。「あの……メル先生って、何者なんですか?」
「今は道場主……って、道場はなくなったけど」
「ああ、はい。その……メル先生は、昔は何をしていた人なんですか?」
あれ程の実力者ならば、戦争で名をあげているはずだ。たとえば勇者グランのように、英雄として語り継がれていてもおかしくない。
なのに、メルは無名だ。最近現れた、怪しい人物としてしか認知されていない。つまり戦争には参加していないはずなのだ。
しかしあの実力と負傷を考えると、戦争に参加していないと不自然である。メルほどの人が、その辺のチンピラに腕や足を取られるとも思えない。不慮の事故、の可能性もあるけれど……やはり戦争で奪われたと考えるほうが自然な気がする。
戦争に参加していたとしても、していなかったとしても、どうしても不可解な点が残る。
「あの子の過去ね……」ルスルスは言う。「私から伝えられることは何もない。どうしても気になるなら、本人か……グランちゃんに聞いたらええよ」
「……グラン……勇者グラン、ですか?」
「そうそう。10年前に魔王を倒して、世界に平和をもたらした英雄」
「……」なんでその名前が出てきたのか……「メル先生……グラン様と知り合いなんですか?」
「せやね」意外すぎる事実だった。「メルちゃんの過去を話していいのは、メルちゃん本人とグランちゃんだけ。まぁ本人に聞いてもグランちゃんに聞いても、そう簡単には話してくれへんやろけど」
……グランがメルの過去を知っているということは、やはりメルは戦争に参加していたのだろうか。そこでグランと知り合いになったのだろうか? もしもそうじゃないとしたら……他の可能性は思いつかない。
「まぁ頑張り。エトワールちゃんにやったら、教えてもらえるかもしれんし」
「? 僕になら、ですか?」
「そうそう。ま、あくまでも可能性が高いってだけ。聞き出すのが難しいのは確かやから、遠い話になるやろうけどね」
ああそうそう、忘れてた、とルスルスは続ける。
「エトワールちゃん、そろそろ着替えたら?」
「え? ああ……」そういえばチンピラに絡まれてボロボロになってから、そのままなのであった。「着替えたいんですけど……あんまりお金がなくて……」
「ふぅん……そやったら、私があげるわ」それからルスルスは店の奥に引っ込んで、服を持って出てきた。「これあげる。どうせ私は使わへんから」
「……ありがとうございます……」断りたいところだが、正直言ってありがたい申し出だった。「……なんで使わない服を持ってるんですか?」
「服がボロボロになった少年にあげるため」
恩を売るために常備しているらしい。情報屋というのはそれくらいの準備が必要なのかもしれない。
「それとねぇ……エトワールちゃん。雇ってあげてもええよ」
「え?」
「喫茶店としての従業員は求めてないけど、情報屋としての手足は求めとる。たまに私のお願いを聞いてくれるなら、給与を与えてあげてもええ」
「それはありがたいですけど……なぜ僕を?」
「なんでやろうね? とにかく、キミを雇うと私にとってメリットが大きいということ」
「?」
「わからんでもええよ。そのことに関しては伝える気がないから。とにかく、給料は弾むつもりやから、考えといて」
「はぁ……先生とも相談してみます」
「せやね。覚悟が決まったら伝えてな」
正直即決したいくらいエトワールは金欠なのだが、相手が相手なのですぐに決断はできない。最低限師匠の指示はもらったほうが良いだろうという判断だった。
そんなこんなで、エトワールのこの町での生活+メルの弟子としての生活がはじまったのだった。
道場付近まで戻ってきて、メルはそう言った。メルによる稽古は明日からという約束なので、たぶん稽古の準備とかがあるのだろう。道場も燃えているし、けっこう大変な作業かもしれない。
「な、なにか手伝えることは……」
「……じゃあ、ルスルスに報告して。ライ……なんだっけ。組織はたぶん壊滅したって」
ライ……ライトトールだっけ? とにかくトラッシュの組織が壊滅したことを情報屋ルスルスに伝えればいいらしい。
「わかりました、メル先生」
エトワールは元気よく返事をして、ルスルスのいる喫茶店まで走り出す。後ろでメルが「先生……?」となぜか疑問形で言っていた。エトワールからすれば師匠であるメルを先生と呼ぶのは当たり前のことだった。さらに、あの実力を見せつけられて、少しテンションが上っているエトワールだった。
もしかしたら、自分はとんでもない師匠を見つけたのかもしれない。ディビジョンA上位クラスの師匠なんて、そう簡単には見つからないだろう。しかも現状は受講料がタダ。もはや詐欺レベルに魅力的だった。
そんなこんなで浮かれつつ、エトワールはルスルスの喫茶店までたどり着いた。
「いらっしゃい……って、エトワールちゃん。どないしたん?」喫茶店の店主モード……明るい営業スマイルのルスルスだった。「ライヒトゥームは片付いた?」
そういえばライヒトゥームというのだった。
「……はい、その……メル先生があっさりと……」
「あはは。強かったやろ、あの子。ディビジョンAくらいじゃ、相手にもならんやろ」
「……」やはりメルはディビジョンSクラスの実力者らしい。「あの……メル先生って、何者なんですか?」
「今は道場主……って、道場はなくなったけど」
「ああ、はい。その……メル先生は、昔は何をしていた人なんですか?」
あれ程の実力者ならば、戦争で名をあげているはずだ。たとえば勇者グランのように、英雄として語り継がれていてもおかしくない。
なのに、メルは無名だ。最近現れた、怪しい人物としてしか認知されていない。つまり戦争には参加していないはずなのだ。
しかしあの実力と負傷を考えると、戦争に参加していないと不自然である。メルほどの人が、その辺のチンピラに腕や足を取られるとも思えない。不慮の事故、の可能性もあるけれど……やはり戦争で奪われたと考えるほうが自然な気がする。
戦争に参加していたとしても、していなかったとしても、どうしても不可解な点が残る。
「あの子の過去ね……」ルスルスは言う。「私から伝えられることは何もない。どうしても気になるなら、本人か……グランちゃんに聞いたらええよ」
「……グラン……勇者グラン、ですか?」
「そうそう。10年前に魔王を倒して、世界に平和をもたらした英雄」
「……」なんでその名前が出てきたのか……「メル先生……グラン様と知り合いなんですか?」
「せやね」意外すぎる事実だった。「メルちゃんの過去を話していいのは、メルちゃん本人とグランちゃんだけ。まぁ本人に聞いてもグランちゃんに聞いても、そう簡単には話してくれへんやろけど」
……グランがメルの過去を知っているということは、やはりメルは戦争に参加していたのだろうか。そこでグランと知り合いになったのだろうか? もしもそうじゃないとしたら……他の可能性は思いつかない。
「まぁ頑張り。エトワールちゃんにやったら、教えてもらえるかもしれんし」
「? 僕になら、ですか?」
「そうそう。ま、あくまでも可能性が高いってだけ。聞き出すのが難しいのは確かやから、遠い話になるやろうけどね」
ああそうそう、忘れてた、とルスルスは続ける。
「エトワールちゃん、そろそろ着替えたら?」
「え? ああ……」そういえばチンピラに絡まれてボロボロになってから、そのままなのであった。「着替えたいんですけど……あんまりお金がなくて……」
「ふぅん……そやったら、私があげるわ」それからルスルスは店の奥に引っ込んで、服を持って出てきた。「これあげる。どうせ私は使わへんから」
「……ありがとうございます……」断りたいところだが、正直言ってありがたい申し出だった。「……なんで使わない服を持ってるんですか?」
「服がボロボロになった少年にあげるため」
恩を売るために常備しているらしい。情報屋というのはそれくらいの準備が必要なのかもしれない。
「それとねぇ……エトワールちゃん。雇ってあげてもええよ」
「え?」
「喫茶店としての従業員は求めてないけど、情報屋としての手足は求めとる。たまに私のお願いを聞いてくれるなら、給与を与えてあげてもええ」
「それはありがたいですけど……なぜ僕を?」
「なんでやろうね? とにかく、キミを雇うと私にとってメリットが大きいということ」
「?」
「わからんでもええよ。そのことに関しては伝える気がないから。とにかく、給料は弾むつもりやから、考えといて」
「はぁ……先生とも相談してみます」
「せやね。覚悟が決まったら伝えてな」
正直即決したいくらいエトワールは金欠なのだが、相手が相手なのですぐに決断はできない。最低限師匠の指示はもらったほうが良いだろうという判断だった。
そんなこんなで、エトワールのこの町での生活+メルの弟子としての生活がはじまったのだった。
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