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第二章 ゲーム開始前
第53話 王子たちが出向いた理由
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本当に王子たちの訪問には驚かされた。9歳の誕生日の時は来なかったくせに、なんで今年はやって来たのかが分からない。こんなぽっちゃりを超えたでぶっちょ令嬢なんて、婚約者とはいえどあまり見たくはないでしょうに。私は心の中で文句を言いながら王子たちを見ていた。
私がそんな事を思っているとは思わないだろう王子たちは、来場者たちに笑顔で手を振っている。10歳と9歳のこの兄弟、揃いも揃って美形である。まだあどけなさが残る状態でこのイケメン具合。学園に入る頃には一体どれほどのイケメン偏差値を叩き出すのだろうか……。そのせいで、すっかりパーティーの主役を奪われてしまっているわ。きー、悔しい。
「お姉様……」
横に立つモモが私を気遣ってくれている。その姿を見た私は、気持ちを取り直す事ができた。
「ありがとう、モモ。では、主催としてあいさつに伺ってきますわ」
私はモモの手を握ってそう言うと、二人の王子の元へと歩いていった。成人男性並みの体重となった私の足音はとにかく重い音を響かせる。その音に王子たちが気付いてこちらを見るし、他の参列者はその威圧感に一歩下がっていた。
「ようこそおいで下さいましたわ、フィレン殿下、リブロ殿下。私の誕生日を王家の方にも祝って頂けるなんて、光栄の極みですわ」
私は精一杯の笑顔でもって王子たちに挨拶をする。背の高さの無い私は本当にただの肥満体がゆえに、笑顔が怖くなっていないか戦々恐々である。だけど、王子たちの反応を見るにどうも大丈夫だったようである。
「アンマリア、堅苦しい挨拶はいいですよ。婚約者候補の誕生日を祝うなんて、当然の事ではないですか」
私の挨拶に返してきたのはフィレン王子だった。そして、私に近付いてくると、
「今年中に、君とサキの二人を、私たちの正式な婚約者とする発表を行う予定があるんです。それだから今年はこうやって出向いたというわけですよ」
フィレン王子は私にそう耳打ちをした。
「えっ?!」
私は不意打ちを食らった気分だった。
そういえば、婚約者に格上げするとは言っていたものの、その発表自体は長らく見送られてきたのだ。それをようやく行うめどがついたという事だろう。だから、私の誕生日パーティーにこうやって出向いてきたというわけである。驚いた一方で、私は不思議とすとんと納得できたのだ。
とはいえ、パーティーの主役の座を奪われた事には変わりはないので、ぎゃふんと言わせる方向性には変わりはなかった。
(お父様を通じてお城の食事事情は把握してますからね。そこで見た事のない料理が出てくれば、王家の鼻を明かせるはずよ!)
私は改めて気合いを入れている。知り合い少数のガーデンバースデーパーティーがいよいよ始まる。
それにしても、パーティーの主役である私よりも王子二人の方に視線が集まっているのは本当にいただけない。このパーティーの主役は一体誰なのか、再確認させる必要があるわね。
妹や友人一同を座らせたところで、私は庭に作った台の上に立つ。さすが私の魔法で固めた土。私の体重でも沈まないし壊れない。しっかりと足場を確認した上で、私はスピーチを始める。
「皆様、本日は私アンマリア・ファッティ伯爵令嬢の10歳の誕生日パーティーにお集まり頂き、誠にありがとうございます。年明けのお忙しい中ですので、本当は小規模にしたかったのですが、10歳の節目という事で少々規模が大きくなってしました」
私はそれっぽい理由を言っておくが、実際に規模が大きくなったのは王子たちのせいである。どこから聞きつけたのか、大幅に参列者が増えてしまったのだ。本当に、貴族の耳とは地獄耳である。
「ですので、今回は屋外での立食パーティーという体を取らせて頂きました。私の手入れしましたこの庭で、ファッティ家の料理を心ゆくまで味わって下さいませ」
私のスピーチが終わると、誰からともなく拍手が巻き起こった。挨拶としてはまあまあといったところかしらね。
台を降りた私には、誕生日を祝う声がたくさん聞こえてきた。形式ばったものではなく、しっかりと心がこもっているようだったので、私は前世の事を思い出してつい涙ぐんでしまった。大勢に誕生日を祝われたのなんて、幼稚園以来かしらね。
「お姉様、泣いてらっしゃいますか?」
席に戻った私に、モモが声を掛けてきた。
「ええ、ちょっと嬉しかったみたいで、つい……」
私は目じりに浮かんでいた涙を、すっと指で拭った。
だけど、私にはまだゆっくりしている時間はない。すぐさまフィレン、リブロの両王子の所へ出向き、二人の前に立つと私はカーテシーをする。
「殿下方にはご臨席頂き、誠に御礼申し上げます。殿下方には特別に別のお菓子をご用意させて頂きましたので、どうぞご賞味下さい」
「へえ、それは楽しみですね」
私の言葉にフィレンが反応している。とりあえずつかみはオッケーってところかしらね。
すぐさま私はスーラに合図を送り、王子たちのために用意したお菓子を持ってこさせる。もちろん、紅茶も忘れずに。さあ、どんな反応をするのか楽しみだわ。
しばらく待っていると、私たちの前に特別に作らせたお菓子が運ばれてきたのだった。
私がそんな事を思っているとは思わないだろう王子たちは、来場者たちに笑顔で手を振っている。10歳と9歳のこの兄弟、揃いも揃って美形である。まだあどけなさが残る状態でこのイケメン具合。学園に入る頃には一体どれほどのイケメン偏差値を叩き出すのだろうか……。そのせいで、すっかりパーティーの主役を奪われてしまっているわ。きー、悔しい。
「お姉様……」
横に立つモモが私を気遣ってくれている。その姿を見た私は、気持ちを取り直す事ができた。
「ありがとう、モモ。では、主催としてあいさつに伺ってきますわ」
私はモモの手を握ってそう言うと、二人の王子の元へと歩いていった。成人男性並みの体重となった私の足音はとにかく重い音を響かせる。その音に王子たちが気付いてこちらを見るし、他の参列者はその威圧感に一歩下がっていた。
「ようこそおいで下さいましたわ、フィレン殿下、リブロ殿下。私の誕生日を王家の方にも祝って頂けるなんて、光栄の極みですわ」
私は精一杯の笑顔でもって王子たちに挨拶をする。背の高さの無い私は本当にただの肥満体がゆえに、笑顔が怖くなっていないか戦々恐々である。だけど、王子たちの反応を見るにどうも大丈夫だったようである。
「アンマリア、堅苦しい挨拶はいいですよ。婚約者候補の誕生日を祝うなんて、当然の事ではないですか」
私の挨拶に返してきたのはフィレン王子だった。そして、私に近付いてくると、
「今年中に、君とサキの二人を、私たちの正式な婚約者とする発表を行う予定があるんです。それだから今年はこうやって出向いたというわけですよ」
フィレン王子は私にそう耳打ちをした。
「えっ?!」
私は不意打ちを食らった気分だった。
そういえば、婚約者に格上げするとは言っていたものの、その発表自体は長らく見送られてきたのだ。それをようやく行うめどがついたという事だろう。だから、私の誕生日パーティーにこうやって出向いてきたというわけである。驚いた一方で、私は不思議とすとんと納得できたのだ。
とはいえ、パーティーの主役の座を奪われた事には変わりはないので、ぎゃふんと言わせる方向性には変わりはなかった。
(お父様を通じてお城の食事事情は把握してますからね。そこで見た事のない料理が出てくれば、王家の鼻を明かせるはずよ!)
私は改めて気合いを入れている。知り合い少数のガーデンバースデーパーティーがいよいよ始まる。
それにしても、パーティーの主役である私よりも王子二人の方に視線が集まっているのは本当にいただけない。このパーティーの主役は一体誰なのか、再確認させる必要があるわね。
妹や友人一同を座らせたところで、私は庭に作った台の上に立つ。さすが私の魔法で固めた土。私の体重でも沈まないし壊れない。しっかりと足場を確認した上で、私はスピーチを始める。
「皆様、本日は私アンマリア・ファッティ伯爵令嬢の10歳の誕生日パーティーにお集まり頂き、誠にありがとうございます。年明けのお忙しい中ですので、本当は小規模にしたかったのですが、10歳の節目という事で少々規模が大きくなってしました」
私はそれっぽい理由を言っておくが、実際に規模が大きくなったのは王子たちのせいである。どこから聞きつけたのか、大幅に参列者が増えてしまったのだ。本当に、貴族の耳とは地獄耳である。
「ですので、今回は屋外での立食パーティーという体を取らせて頂きました。私の手入れしましたこの庭で、ファッティ家の料理を心ゆくまで味わって下さいませ」
私のスピーチが終わると、誰からともなく拍手が巻き起こった。挨拶としてはまあまあといったところかしらね。
台を降りた私には、誕生日を祝う声がたくさん聞こえてきた。形式ばったものではなく、しっかりと心がこもっているようだったので、私は前世の事を思い出してつい涙ぐんでしまった。大勢に誕生日を祝われたのなんて、幼稚園以来かしらね。
「お姉様、泣いてらっしゃいますか?」
席に戻った私に、モモが声を掛けてきた。
「ええ、ちょっと嬉しかったみたいで、つい……」
私は目じりに浮かんでいた涙を、すっと指で拭った。
だけど、私にはまだゆっくりしている時間はない。すぐさまフィレン、リブロの両王子の所へ出向き、二人の前に立つと私はカーテシーをする。
「殿下方にはご臨席頂き、誠に御礼申し上げます。殿下方には特別に別のお菓子をご用意させて頂きましたので、どうぞご賞味下さい」
「へえ、それは楽しみですね」
私の言葉にフィレンが反応している。とりあえずつかみはオッケーってところかしらね。
すぐさま私はスーラに合図を送り、王子たちのために用意したお菓子を持ってこさせる。もちろん、紅茶も忘れずに。さあ、どんな反応をするのか楽しみだわ。
しばらく待っていると、私たちの前に特別に作らせたお菓子が運ばれてきたのだった。
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