66 / 500
第二章 ゲーム開始前
第66話 未知なるルートへ
しおりを挟む
国王へのお披露目が流れてしまった魔道具は次の通り。
・円盤型魔石の発熱魔道具、いわゆるストーブのようなもの
・その発熱魔道具からの応用で、光を放つ球形魔石を使った照明器具
この二つを提出予定でしたのに、国王が慌てて出ていったので渡せなかった。仕方ないので、帰りの馬車に乗せられた時に、説明書を添付して父親に託しておいたわ。
それにしても、あの国王の慌てようを見る限り、本当にサーロイン王国とミール王国は仲はさほど良くないと見た方がよさそうである。厄介者がやって来るから対策を立てるって感じかしらね。
まあ、実際のところ、アーサリー王子は厄介者と見てもいいでしょうね。ものすごく偉そうでしたし、転生もので見る俺様系の愚かな王子そのものって感じでしたもの。
その一方で、エスカ王女はさすが転生者という事もあって、かなりできた方でしたわね。兄に対してもしっかり注意できてましたし、私たちへの対応もしっかりできていたもの。ああ、学園で一緒になる日が楽しみだわ。とはいえ、私は10歳、エスカは9歳なので、早くても3年後の話なのである。まだ先が長いというものである。その3年後の私は、一体どんな体形で彼女の前に立っていられるというのかしらね。そちらもまた楽しみなのである。
それからというもの、私はモモと一緒に淑女教育を頑張った。それと並行しながらいつもの通りに庭いじりをしたり、魔石を使った魔道具の製造に勤しんだり、他の令嬢たちとの交流も試みた。特にライバル令嬢たちとの交流は積極的に行った。
王子たちとの婚約が結ばれている現状では、フィレン王子ルートかリブロ王子ルートがほぼ確実視されいたわけだけど、隣国のミール王国からアーサリー王子やエスカ王女が学園に留学してくるとなると、ゲーム本編にはまったくなかった事なのでどうなるのかまったくもって想像がつかない。正直妙な不安が襲い掛かって来るまである。
エスカは転生者だからそこまで面倒起こさない程度に弁えてくれるだろうけれども、アーサリー王子についてははっきり言って不安しかない。なにせ典型的なわがまま王子なのだから、そりゃもう怖いとしか言いようがないのだ。
(はあ、ゲームからすればイレギュラーすぎるから、私の持つゲーム知識がまったく役に立ちそうにないわね。まったく困ったものだわ)
私は時折ため息を吐くようになっていた。自覚はなかったけれども、スーラやセンマイたちからの指摘で発覚した。そこまで酷かったかしらね。
そういった指摘があったせいか、私は早い段階で魔石の加工魔法を他人に教える事にした。ボンジール商会のお抱えの魔法使いでも居ればよかったのだけれども、残念ながらそういう人は居なかった。私ほどの魔法の技術を持ちえる人物など、そうそう存在していないのだった。思いの外時間が掛かってしまったので、結局これに関して諦めるしかなかった。
こうなってくると時間が足りなさすぎる。学園に入学以降の対策に時間が割けなくなってしまう。
「お姉様、大丈夫ですか?」
私があまりにも思いつめた表情をしていたようで、モモが心配になって声を掛けてくれる。
「大丈夫ですわよ。ちょっとやる事が多くて悩んでいるだけですから」
私はそれに心配要らないと答えたが、いかんせん答え方が悪かった。安心させるつもりが、かえってモモを心配させてしまっていた。悩みを抱えているなんて、どうしてそんな事を口走ってしまったのかしら。
「お姉様、私に手伝える事はございますか? そんなに悩みがあるのでしたら、少しでも軽くして差し上げたいのです」
モモが私に近付いて座り込んでしまった。そして、瞳をうるわせながら上目遣いで話し掛けてくる。うう、私ってこういうのに弱いのよね。
「それでしたら、モモ。魔道具作りの一部を手伝ってもらえるかしら。魔石に魔力を込めて変形させていく作業よ」
「分かりましたわ、お姉様。私、できるように頑張ります」
私が試しにと、モモの得意な火属性の魔法で作れる発熱魔道具の要である魔石作りをお願いした。それに対してモモは、拳を握って了承していた。その姿は頼もしい限りである。
モモにその魔石の製作を頼むと、努力のかいあってか、たったの一週間で魔石を円盤状に変形させて発熱魔法を仕込む事をマスターしてしまった。気合いってすごい。試しに魔力を流してみたら、ちゃんと発熱していた。まあ、少し前に発熱魔法自体はちゃんとできていたので、実質新規に覚えた事は魔石の加工だけだけど。
それにしても、変形といった魔石の加工は、魔力の属性に関係なく行えるという事が判明したのは大きかった。ただ、どの程度の魔力が必要なのかは要検証といった感じだった。とはいえ、モモの魔力はそう強くはないので、これは夢の広がる発見だった。
こうして私は、モモたち身内の協力を得ながら、静かにその時を待ち続けた。
そして、私たちはいよいよ学園に通う13歳を迎えたのである。
すでにゲームとの相違点がたくさん存在するものの、私たちの将来を決める3年間がいよいよ始まるのだった。
・円盤型魔石の発熱魔道具、いわゆるストーブのようなもの
・その発熱魔道具からの応用で、光を放つ球形魔石を使った照明器具
この二つを提出予定でしたのに、国王が慌てて出ていったので渡せなかった。仕方ないので、帰りの馬車に乗せられた時に、説明書を添付して父親に託しておいたわ。
それにしても、あの国王の慌てようを見る限り、本当にサーロイン王国とミール王国は仲はさほど良くないと見た方がよさそうである。厄介者がやって来るから対策を立てるって感じかしらね。
まあ、実際のところ、アーサリー王子は厄介者と見てもいいでしょうね。ものすごく偉そうでしたし、転生もので見る俺様系の愚かな王子そのものって感じでしたもの。
その一方で、エスカ王女はさすが転生者という事もあって、かなりできた方でしたわね。兄に対してもしっかり注意できてましたし、私たちへの対応もしっかりできていたもの。ああ、学園で一緒になる日が楽しみだわ。とはいえ、私は10歳、エスカは9歳なので、早くても3年後の話なのである。まだ先が長いというものである。その3年後の私は、一体どんな体形で彼女の前に立っていられるというのかしらね。そちらもまた楽しみなのである。
それからというもの、私はモモと一緒に淑女教育を頑張った。それと並行しながらいつもの通りに庭いじりをしたり、魔石を使った魔道具の製造に勤しんだり、他の令嬢たちとの交流も試みた。特にライバル令嬢たちとの交流は積極的に行った。
王子たちとの婚約が結ばれている現状では、フィレン王子ルートかリブロ王子ルートがほぼ確実視されいたわけだけど、隣国のミール王国からアーサリー王子やエスカ王女が学園に留学してくるとなると、ゲーム本編にはまったくなかった事なのでどうなるのかまったくもって想像がつかない。正直妙な不安が襲い掛かって来るまである。
エスカは転生者だからそこまで面倒起こさない程度に弁えてくれるだろうけれども、アーサリー王子についてははっきり言って不安しかない。なにせ典型的なわがまま王子なのだから、そりゃもう怖いとしか言いようがないのだ。
(はあ、ゲームからすればイレギュラーすぎるから、私の持つゲーム知識がまったく役に立ちそうにないわね。まったく困ったものだわ)
私は時折ため息を吐くようになっていた。自覚はなかったけれども、スーラやセンマイたちからの指摘で発覚した。そこまで酷かったかしらね。
そういった指摘があったせいか、私は早い段階で魔石の加工魔法を他人に教える事にした。ボンジール商会のお抱えの魔法使いでも居ればよかったのだけれども、残念ながらそういう人は居なかった。私ほどの魔法の技術を持ちえる人物など、そうそう存在していないのだった。思いの外時間が掛かってしまったので、結局これに関して諦めるしかなかった。
こうなってくると時間が足りなさすぎる。学園に入学以降の対策に時間が割けなくなってしまう。
「お姉様、大丈夫ですか?」
私があまりにも思いつめた表情をしていたようで、モモが心配になって声を掛けてくれる。
「大丈夫ですわよ。ちょっとやる事が多くて悩んでいるだけですから」
私はそれに心配要らないと答えたが、いかんせん答え方が悪かった。安心させるつもりが、かえってモモを心配させてしまっていた。悩みを抱えているなんて、どうしてそんな事を口走ってしまったのかしら。
「お姉様、私に手伝える事はございますか? そんなに悩みがあるのでしたら、少しでも軽くして差し上げたいのです」
モモが私に近付いて座り込んでしまった。そして、瞳をうるわせながら上目遣いで話し掛けてくる。うう、私ってこういうのに弱いのよね。
「それでしたら、モモ。魔道具作りの一部を手伝ってもらえるかしら。魔石に魔力を込めて変形させていく作業よ」
「分かりましたわ、お姉様。私、できるように頑張ります」
私が試しにと、モモの得意な火属性の魔法で作れる発熱魔道具の要である魔石作りをお願いした。それに対してモモは、拳を握って了承していた。その姿は頼もしい限りである。
モモにその魔石の製作を頼むと、努力のかいあってか、たったの一週間で魔石を円盤状に変形させて発熱魔法を仕込む事をマスターしてしまった。気合いってすごい。試しに魔力を流してみたら、ちゃんと発熱していた。まあ、少し前に発熱魔法自体はちゃんとできていたので、実質新規に覚えた事は魔石の加工だけだけど。
それにしても、変形といった魔石の加工は、魔力の属性に関係なく行えるという事が判明したのは大きかった。ただ、どの程度の魔力が必要なのかは要検証といった感じだった。とはいえ、モモの魔力はそう強くはないので、これは夢の広がる発見だった。
こうして私は、モモたち身内の協力を得ながら、静かにその時を待ち続けた。
そして、私たちはいよいよ学園に通う13歳を迎えたのである。
すでにゲームとの相違点がたくさん存在するものの、私たちの将来を決める3年間がいよいよ始まるのだった。
9
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる