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第三章 学園編
第73話 禁断の薬を回避せよ
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最初の一年間の目標は、とにかく100kgを下回る事。断罪へほぼ直行となるドーピングルートを回避する事だった。あのルートの面倒なところは、事あるごとにフィレン王子が出てきて、その度に三択が出現するところだった。しかも厄介な事に、ほとんどの組み合わせが好感度の「激減」「激減」「微減」という組み合わせだったのだ。嫌がらせすぎでしょうに!
まったく、こういう選択肢の嵐が2年間のうち、特に3年目は結構続くわけなんだから、好感度マイナスに振り切ってそりゃバッドエンド引くわなというものである。シャレにならない。
とはいえ、ここは現実。ゲームなら条件さえ引かなければ発生しないイベントも、現実であるならまかり間違って引き当てる可能性があるわけで……。
ちなみに、このイベントの発生場所は王都の平民街の一角だ。貴族である私ならそう出向く事のない場所である。しかし、私が平民街に出向く用事がないとは言えない。それがボンジール商会だ。テトリバー男爵家とともに、私のファッティ伯爵家ともつながりの大きなこの商会、呼ばれたら出向かないわけにもいかないのだ。
……あらやだ、これだけで余計なフラグが立っちゃってるじゃないの。怖いわー。
こうなったら意地でもフラグを回収せずへし折るために、複数人で出向くようにしなきゃダメね。平民街に私一人で出向く事は絶対やめておきましょう、うん。
翌日、学園から帰ると屋敷内の庭いじりをしてから走り込みを行った。走り込んだ後では庭いじりをする事は不可能になるので、こういう順番になるのは仕方のない事よ。
とにかく、ダイエットのドーピング薬を押し付けられない条件を早めに満たさなければ……。私はその一心で屋敷の中を走り回った。
「お姉様。毎日熱心に運動されてますわね」
「ええ。今のぐらいの太り具合では不健康ですから、せめて80kgあたりまでは落としたいのですよ。健康的な太っちょくらいを目指しますよ」
その日の夕食を取っていると、モモからそのような声を掛けられた。なので、それっぽい理由を話しておく。
「最終的にはモモくらいまでを目指しているわ。王妃になるにしても公爵夫人になるにしても、そのくらいの体型が理想でしょうからね」
私はそう付け加えて、モモを褒めておく。
ちなみに私の食事は米や小麦を減らして、その代わりに肉や魚、それと野菜を増やしたものに変更してある。なので、家族と一人だけ食事の内容が違っているのだ。その事について、両親とモモはちょっと申し訳なさそうにしているわけだけど、私がそういう食事にするようにアラブミたち料理人に頼んだのだから、そんな顔をしないでほしい。
とはいえ、こんな食事にしてあれだけ運動しても、私の体重は変化しない。既に2週間ばかり120kgを維持している。増えも減りもしないのだ。
(まさか、これまで太る体質だったから、体が恒常性の維持に入っちゃってる?)
恒常性の維持とは、ある一定の状態を保とうとする機能の事。体温が36~7度でほぼ保たれる事とか、そういった事である。
私の場合は、この体重と体型だ。ダイエット経験者ならあるだろうけれど、ある一定時期が経過すると、急に体重が変動しなくなる時があったはず。今の私はまさにその状態というわけなのよ。何をしても減らなくなるので、精神的につらくなる時期である。
私の場合は13歳の誕生日まで、常に太り続ける状態にあった。これは恩恵の副作用であり、ホントに腹立たしい事だった。
しかし、その誕生日までどうにか我慢してきたというのに、意地でも体重を維持しようという謎の力が働いているのである。まあ、ダイエットも一日にしてならずなので、しばらくは我慢できる。体が意地でも体重を減らそうとしないのなら、こちらだって負けてはいない。減り始めるように今の生活を続けてやるわよ。死にたくないもの、負けるもんですか。
「お父様もお母様も痩せてきてますし、モモは本当にきれいなまま。私だけ丸々と太っていては、いくら事情があるからとはいってもあまり他の貴族にいい顔はされません。ですから、私は痩せなければならないのです」
「マリー……」
「アンマリア……」
「お姉様……」
私の言葉に、両親とモモは言葉を詰まらせていた。
実際、国王サイドで握り潰しているとはいえ、私に関して悪い噂はわずかに聞かれる。だけども、私の父親が国の大臣をしているために、そこまで声を大にして言えないので、平民たちに噂を流しているらしい。だけれども、その平民たちは私が便利な魔道具を作った事を知っているので、あまりに気に留めていないらしい。ちなみにこれはボンジール商会からの情報ね。
まぁいろいろあってお取り潰しの危機から脱したボンジール商会は、そのきっかけとなった我が家に恩義を感じているものね。市井や他国の情報などを本当によく回してくれる。
とにかく、私の事を信じてくれているみんなのためにも、私はみんなの役に立ちつつ、素敵なレディになってみせるわ。
食事を終えて自室に戻った私は、部屋の中でファイティングポーズを取ったのだった。
まったく、こういう選択肢の嵐が2年間のうち、特に3年目は結構続くわけなんだから、好感度マイナスに振り切ってそりゃバッドエンド引くわなというものである。シャレにならない。
とはいえ、ここは現実。ゲームなら条件さえ引かなければ発生しないイベントも、現実であるならまかり間違って引き当てる可能性があるわけで……。
ちなみに、このイベントの発生場所は王都の平民街の一角だ。貴族である私ならそう出向く事のない場所である。しかし、私が平民街に出向く用事がないとは言えない。それがボンジール商会だ。テトリバー男爵家とともに、私のファッティ伯爵家ともつながりの大きなこの商会、呼ばれたら出向かないわけにもいかないのだ。
……あらやだ、これだけで余計なフラグが立っちゃってるじゃないの。怖いわー。
こうなったら意地でもフラグを回収せずへし折るために、複数人で出向くようにしなきゃダメね。平民街に私一人で出向く事は絶対やめておきましょう、うん。
翌日、学園から帰ると屋敷内の庭いじりをしてから走り込みを行った。走り込んだ後では庭いじりをする事は不可能になるので、こういう順番になるのは仕方のない事よ。
とにかく、ダイエットのドーピング薬を押し付けられない条件を早めに満たさなければ……。私はその一心で屋敷の中を走り回った。
「お姉様。毎日熱心に運動されてますわね」
「ええ。今のぐらいの太り具合では不健康ですから、せめて80kgあたりまでは落としたいのですよ。健康的な太っちょくらいを目指しますよ」
その日の夕食を取っていると、モモからそのような声を掛けられた。なので、それっぽい理由を話しておく。
「最終的にはモモくらいまでを目指しているわ。王妃になるにしても公爵夫人になるにしても、そのくらいの体型が理想でしょうからね」
私はそう付け加えて、モモを褒めておく。
ちなみに私の食事は米や小麦を減らして、その代わりに肉や魚、それと野菜を増やしたものに変更してある。なので、家族と一人だけ食事の内容が違っているのだ。その事について、両親とモモはちょっと申し訳なさそうにしているわけだけど、私がそういう食事にするようにアラブミたち料理人に頼んだのだから、そんな顔をしないでほしい。
とはいえ、こんな食事にしてあれだけ運動しても、私の体重は変化しない。既に2週間ばかり120kgを維持している。増えも減りもしないのだ。
(まさか、これまで太る体質だったから、体が恒常性の維持に入っちゃってる?)
恒常性の維持とは、ある一定の状態を保とうとする機能の事。体温が36~7度でほぼ保たれる事とか、そういった事である。
私の場合は、この体重と体型だ。ダイエット経験者ならあるだろうけれど、ある一定時期が経過すると、急に体重が変動しなくなる時があったはず。今の私はまさにその状態というわけなのよ。何をしても減らなくなるので、精神的につらくなる時期である。
私の場合は13歳の誕生日まで、常に太り続ける状態にあった。これは恩恵の副作用であり、ホントに腹立たしい事だった。
しかし、その誕生日までどうにか我慢してきたというのに、意地でも体重を維持しようという謎の力が働いているのである。まあ、ダイエットも一日にしてならずなので、しばらくは我慢できる。体が意地でも体重を減らそうとしないのなら、こちらだって負けてはいない。減り始めるように今の生活を続けてやるわよ。死にたくないもの、負けるもんですか。
「お父様もお母様も痩せてきてますし、モモは本当にきれいなまま。私だけ丸々と太っていては、いくら事情があるからとはいってもあまり他の貴族にいい顔はされません。ですから、私は痩せなければならないのです」
「マリー……」
「アンマリア……」
「お姉様……」
私の言葉に、両親とモモは言葉を詰まらせていた。
実際、国王サイドで握り潰しているとはいえ、私に関して悪い噂はわずかに聞かれる。だけども、私の父親が国の大臣をしているために、そこまで声を大にして言えないので、平民たちに噂を流しているらしい。だけれども、その平民たちは私が便利な魔道具を作った事を知っているので、あまりに気に留めていないらしい。ちなみにこれはボンジール商会からの情報ね。
まぁいろいろあってお取り潰しの危機から脱したボンジール商会は、そのきっかけとなった我が家に恩義を感じているものね。市井や他国の情報などを本当によく回してくれる。
とにかく、私の事を信じてくれているみんなのためにも、私はみんなの役に立ちつつ、素敵なレディになってみせるわ。
食事を終えて自室に戻った私は、部屋の中でファイティングポーズを取ったのだった。
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