伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第三章 学園編

第98話 打ち明けざるを得ませんでした

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 さて、放課後になった。
 予定通り、私はフィレン王子と一緒に城へと向かう。今回は自分で決めた事なので、私の覚悟はいつもより決まっていた。
 それというのも、エスカのやらかしをどうにかして帳消しにしないと正直、彼女の立ち位置はやばい状況に陥っているのだもの。
(招待状を受け取ってからスマホで連絡を入れればよかったものを……。何こんな致命的なアホをやらかしてくれてんのよ……)
 正直、馬車の中で私のため息は途切れる事がなかった。そのくらいには呆れ返っているのだ。
 そんなこんなで、国王の執務室に到着した私とフィレン王子。やっぱりこの部屋の前に来ると、ものすごく緊張してしまう。まあ、それが国王という存在だものね。
「失礼致します、父上」
 フィレン王子がノックをして扉を開ける。
「おお、フィレンか、どうした?」
「アンマリアがお話があるそうです」
「うん? アンマリアが?」
 フィレン王子が事情を説明するが、国王は首を傾げまくっている。
「話とは何だ。魔石剣の事ではあるまい?」
「はい、もっと荒唐無稽な事でございます」
 国王の質問に私がこう返すと、国王とフィレン王子が互いの顔を見合わせていた。うん、実に訳が分からないっていう感じね。まあ、仕方ないけど。
「これから私がお話しする事を、どうかお聞き願えると幸いだと思います」
 私は腹をくくって、国王とフィレン王子に自分には別の世界の別人の記憶がある事を話す。エスカの事は話さないけれど、二人の勘がいいならば、ここからきっと勘付いてくれるはずである。
 魔石ペンやコンロやストーブ、それに車椅子を思いついたのも、その別世界の記憶からだという事を話すと、国王もフィレン王子もものすごい顔をしていた。あれ、これって失敗しちゃったかしら?
 とりあえず、自分語りを終えた私は、静かに国王とフィレン王子の顔を見る。正直どんな反応をされるかドキドキである。最悪、悪魔憑きとして牢屋なんて事もあり得るから、そりゃもう緊張しまくりなのよ。
「ふむ、荒唐無稽で突拍子もない話というのは非常に納得ができるな」
 あ、なんか言葉を付け加えられてる。それでも私は、静かに構えている。
「だが、魔道具の事といい、リブロの状態を回復させた術といい、納得せざるを得ない事象はたくさんあるな。これだけ私どもに貢献してくれている娘を、どうしてそれだけで牢屋に放り込む事ができよう?」
 これを聞いた私は、実にあちゃーと思った。牢屋に放り込まれると警戒していた心をしっかりと読まれてしまっていた。
 私の話に納得してくれた事に安心した私だったけれど、この時、フィレン王子が何かに気が付いて口を開く。
「ちょっと待って下さい。という事は、このエスカ王女から贈られてきた魔道具というのも……」
「はい、お察しの通り、私の前世の世界にあったスマートフォン、通称スマホを元にしたものでございます」
「という事は、エスカ王女も、アンマリアと同じという事か!」
 はい、フィレン王子が真実にたどり着きました。これだけ聡い王子が居るのなら、サーロイン王国は安泰かしらね。
「その通りでございます、フィレン殿下。隣国ミール王国のエスカ王女。彼女もまた、私と同じ転生者なのです。そして、この世界とよく似たゲームを遊んだ事のある人物のようでして、だからこそ、フィレン殿下の誕生日をご存じだったというわけです」
 国王やフィレン王子からすれば、衝撃の事実だった。
「ですので、間者などは居ないのです。ただ、このエスカ王女のやらかしで、私がどれだけ焦ったかはご理解頂けると思います。同郷のよしみとしてとても悩みましたわよ」
 私は頬に手を当てて盛大にため息を吐いた。
「とはいえど、私もまだ腹の虫がおさまりませんので、ちょっと今から直接文句を言ってやりますわ」
 そう言って私は、スマホを取り出した。向こうが登録して連絡してきたおかげで、こちらからも連絡ができるようになっていたのだ。
「陛下や殿下も文句がございましたら、ついでにどうぞですわ」
 私はスマホに魔力を流してエスカと通話をできるようにする。しばらくすると、エスカが電話口に出た。
『アンマリア? どうしたの?』
 エスカののんきな声が聞こえてくる。そこで私は開口一番、
「お・ば・かぁっ!!」
 と叫んでおいた。
「まったく、招待状を受け取る前にフィレン殿下の誕生パーティーに参加するなんて手紙寄こすから、あらぬ疑いを掛けられてましてよ? こちらから招待状を送ってますので、それまで待ってからスマホで連絡入れればよろしかったですのに。なんで私がフォローしなければなりませんの?」
『えっ、えっ、えっ、アンマリア?!?!』
 私が一気にぶちまけると、エスカはものすごく混乱していたようだった。
 この後、国王やフィレン王子から代わる代わる諭されると、ようやくエスカは事の重大さを知ったのだった。
『も、申し訳ございませんでした。まさかそんな事情があるだなんて思ってもみませんでしたので』
 エスカはひたすら謝罪しっぱなしである。私のフォローもあってか、無事に国賓として招かれる状態に収まったのである。はあ、疲れたわ。
 やらかす転生者はもうこりごりよ……。
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