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第三章 学園編
第99話 魔法の実技授業の始まり
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私の必死のフォローで、エスカの疑いはとりあえず晴れた。私はものすごく疲れたので、その日は簡単に湯浴みをしただけで、食事も取らずにそのままベッドに潜った。
(はあ、たくさんの異世界転生ものの小説や漫画やアニメを見てきたけれど、本当にやらかすおバカに会うなんて思ってなかったわよぉっ!!)
今回の事の感想は、もうこれに尽きた。
とはいえども、これは私たちにも原因があるとも言えなくはなかった。だって、10歳の時にミール王国に出向いた際に、出会っていなければこんな事は考えつかなかっただろう。なまじ、自分の知識の通用する世界だと知ったがための暴挙である。
(「あれ? 私なんかやらかしちゃいました?」じゃないわよぉっ!!)
本当に学園に入ってからというもの気の休まらない日が多すぎて、私は正直言って心労を溜め始めていた。このままじゃ気を病みそうである。
(とにかく、フィレン王子の誕生日パーティーまでは、何にも干渉しないようにしておこう……)
こう思いながら、私はその日は眠りに就いた。
翌朝、私はお腹を鳴らして目を覚ます。まだ夜が明けきっていない。
「はあ、そういえば昨夜は食事を抜いたんだったわ……」
私はお腹を押さえた。しかし、いかんせん時間が早すぎる。しかし、こんな時間でも屋敷の中からは話し声と作業をする音が聞こえてくる。未明の静かな時間だからこそ聞こえてくる音だった。
王都の中は治安はいいし、伯爵家には私が張った結界もある。まあ、賊なんてのは侵入できないから安心である。
そんなわけだし、時間としてはまだ早すぎる。あくびも出るから二度寝しましょう。というわけで、私は再び布団の中へと潜り込んだのだった。
「アンマリアお嬢様、朝でございますよ」
スーラの声がしたので、私は目を覚ます。うん、大体いつもの時間ね。本当にスーラの目覚ましは時間に正確で助かるものだわ。
私はもぞもぞとベッドから出る。そして、顔を洗って服を着替えて、髪を整えてもらう。それが終われば学園の授業の準備。いくら王子の誕生日の前だからといっても、授業自体は普通に行われるのである。
学園に入って4か月目に突入した事で、魔法の勉強もいよいよ退屈な座学ばかりから、少しずつ実技に入っていく。人によっては魔法を制御するために杖を持ち込んだりするそうで、そういえばモモも先日杖を購入していた。
そうはいっても、なにも杖だけが魔法の制御を行えるわけではない。人によっては指輪だったり本だったり、手袋だったりする。ちなみに私は何も要らない。そりゃもう、チート上等のヒロイン様よ?
そんなこんなで準備を終えた私は、食堂へと出向く。そこには両親とモモはすでに揃っていた。
「おはようございます。お父様、お母様、モモ」
私は食堂に入るなり、ちょこんとスカートの裾を掴んで軽く頭を下げる。
「うん、おはよう、マリー」
「おはよう、アンマリア」
「おはようございます、お姉様」
挨拶を終えると私も席に就き、朝食が始まる。
「そういえば、今日からは魔法の授業は実技が始まるんだったね」
父親からいきなりその話題である。
「モモには杖を用意してあげたけれど、本当にマリーは何も要らないのかい?」
「はい、私の魔法の制御は昔から見ての通りです。既に制御できていますので、お気持ちはありがたいですが何も要りません」
父親が尋ねてくるので、私は無表情のままにしれっと答えておく。私が必要なのは、万一の暴走を考えた時の対処くらいだもの。まあ、それだっていろいろ考えているし、魔法を使う時の制御はすでに問題ないのよね。
そんなわけだから、私は答えたらさっさと朝食を食べる。昨日の夕ご飯を食べてないから、食べたくて仕方ないのよ。太りやすい体質なのは理解しているけれど、一食抜いた反動って思ったより大きくて、結構食べられるのよ。
そういえば、体重は110kgまで減っていた。14ターン消化を目の前に、10kg減っている。1年間は48ターンなので、単純に計算すれば34kgは減りそうである。100kgを下回ればドーピングルートは正規イベントとしては消滅するので、実に順調といえるだろう。
とはいっても、油断できないのがアンマリアの体質である。とにかく太りやすいのだから、どうにかして減らす方法を考えなければいけないわ。
……それにしても、ダイエット貯金がまったく効果を発揮してないわね。これも強制力の一種なのかしら。
食事を終えると、私とモモは馬車に乗って学園へと出向く。
「モモ、それが話に出ていた杖なのね」
「はい、マホクジーっていう、魔力と親和性の高い木を使った杖なんです。学園に入学した時から、お父様が準備して下さってたようなんです」
モモの話を聞いて、私はピンときた。あれだけしつこく聞いていたって事は、私にも杖を用意してたって事よね。はあ、親バカはいいんだけど、そういう事はまず本人に確認してからにして欲しいわ。素材の無駄使いじゃないのよ。
「はあ、お父様ったら娘の私たちを気にするのはいいんだけど、必要かどうかくらい聞いてほしかったわね」
「あはは、そうですよね」
私たちは学園に着くまでの間、馬車の中でおしゃべりをして過ごしたのだった。
さあ、今日から魔法学の勉強は本番だわよ。
(はあ、たくさんの異世界転生ものの小説や漫画やアニメを見てきたけれど、本当にやらかすおバカに会うなんて思ってなかったわよぉっ!!)
今回の事の感想は、もうこれに尽きた。
とはいえども、これは私たちにも原因があるとも言えなくはなかった。だって、10歳の時にミール王国に出向いた際に、出会っていなければこんな事は考えつかなかっただろう。なまじ、自分の知識の通用する世界だと知ったがための暴挙である。
(「あれ? 私なんかやらかしちゃいました?」じゃないわよぉっ!!)
本当に学園に入ってからというもの気の休まらない日が多すぎて、私は正直言って心労を溜め始めていた。このままじゃ気を病みそうである。
(とにかく、フィレン王子の誕生日パーティーまでは、何にも干渉しないようにしておこう……)
こう思いながら、私はその日は眠りに就いた。
翌朝、私はお腹を鳴らして目を覚ます。まだ夜が明けきっていない。
「はあ、そういえば昨夜は食事を抜いたんだったわ……」
私はお腹を押さえた。しかし、いかんせん時間が早すぎる。しかし、こんな時間でも屋敷の中からは話し声と作業をする音が聞こえてくる。未明の静かな時間だからこそ聞こえてくる音だった。
王都の中は治安はいいし、伯爵家には私が張った結界もある。まあ、賊なんてのは侵入できないから安心である。
そんなわけだし、時間としてはまだ早すぎる。あくびも出るから二度寝しましょう。というわけで、私は再び布団の中へと潜り込んだのだった。
「アンマリアお嬢様、朝でございますよ」
スーラの声がしたので、私は目を覚ます。うん、大体いつもの時間ね。本当にスーラの目覚ましは時間に正確で助かるものだわ。
私はもぞもぞとベッドから出る。そして、顔を洗って服を着替えて、髪を整えてもらう。それが終われば学園の授業の準備。いくら王子の誕生日の前だからといっても、授業自体は普通に行われるのである。
学園に入って4か月目に突入した事で、魔法の勉強もいよいよ退屈な座学ばかりから、少しずつ実技に入っていく。人によっては魔法を制御するために杖を持ち込んだりするそうで、そういえばモモも先日杖を購入していた。
そうはいっても、なにも杖だけが魔法の制御を行えるわけではない。人によっては指輪だったり本だったり、手袋だったりする。ちなみに私は何も要らない。そりゃもう、チート上等のヒロイン様よ?
そんなこんなで準備を終えた私は、食堂へと出向く。そこには両親とモモはすでに揃っていた。
「おはようございます。お父様、お母様、モモ」
私は食堂に入るなり、ちょこんとスカートの裾を掴んで軽く頭を下げる。
「うん、おはよう、マリー」
「おはよう、アンマリア」
「おはようございます、お姉様」
挨拶を終えると私も席に就き、朝食が始まる。
「そういえば、今日からは魔法の授業は実技が始まるんだったね」
父親からいきなりその話題である。
「モモには杖を用意してあげたけれど、本当にマリーは何も要らないのかい?」
「はい、私の魔法の制御は昔から見ての通りです。既に制御できていますので、お気持ちはありがたいですが何も要りません」
父親が尋ねてくるので、私は無表情のままにしれっと答えておく。私が必要なのは、万一の暴走を考えた時の対処くらいだもの。まあ、それだっていろいろ考えているし、魔法を使う時の制御はすでに問題ないのよね。
そんなわけだから、私は答えたらさっさと朝食を食べる。昨日の夕ご飯を食べてないから、食べたくて仕方ないのよ。太りやすい体質なのは理解しているけれど、一食抜いた反動って思ったより大きくて、結構食べられるのよ。
そういえば、体重は110kgまで減っていた。14ターン消化を目の前に、10kg減っている。1年間は48ターンなので、単純に計算すれば34kgは減りそうである。100kgを下回ればドーピングルートは正規イベントとしては消滅するので、実に順調といえるだろう。
とはいっても、油断できないのがアンマリアの体質である。とにかく太りやすいのだから、どうにかして減らす方法を考えなければいけないわ。
……それにしても、ダイエット貯金がまったく効果を発揮してないわね。これも強制力の一種なのかしら。
食事を終えると、私とモモは馬車に乗って学園へと出向く。
「モモ、それが話に出ていた杖なのね」
「はい、マホクジーっていう、魔力と親和性の高い木を使った杖なんです。学園に入学した時から、お父様が準備して下さってたようなんです」
モモの話を聞いて、私はピンときた。あれだけしつこく聞いていたって事は、私にも杖を用意してたって事よね。はあ、親バカはいいんだけど、そういう事はまず本人に確認してからにして欲しいわ。素材の無駄使いじゃないのよ。
「はあ、お父様ったら娘の私たちを気にするのはいいんだけど、必要かどうかくらい聞いてほしかったわね」
「あはは、そうですよね」
私たちは学園に着くまでの間、馬車の中でおしゃべりをして過ごしたのだった。
さあ、今日から魔法学の勉強は本番だわよ。
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