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第三章 学園編
第130話 たまには帰らなきゃダメですね
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私がこっそり見てきた領地の様子も含めて、伯父夫婦と話ができたのはよかった。私が抱いていた懸念は杞憂で済んだようで何より。父親の兄であるなら、もう少し信用してもよかったかしらね。
「ははは、どうやら私たちは姪にまったく信用されてなかったようだね」
デバラは私の疑念を聞いてそれを笑い飛ばしていた。
「でも、それも仕方ありませんわ。もう4年くらいお互いに会っていないんですもの。不安に思っても仕方ありませんわよ」
「確かにそうだな、わっはっはっはっ!」
思い切りすごく笑い飛ばされた。なんかちょっと恥ずかしいわね。
「弟に信用されてこの領地を任されているんだ。そんなやましい事をしたら、城に務める弟に迷惑だろう?」
にやりと笑いながら、デバラは私に言葉を向けてくる。いやはや、本当に疑って悪かったわ。
「申し訳ございませんでした。娘としてどうしてもその辺りをはっきりさせておきたかったのです」
「はっはっはっ、立派な娘を持って、ゼニークの奴も幸せだな。そりゃあ、王家も王子の嫁に欲しがるわけだ」
私が頭を下げて謝罪すると、デバラは相当ツボにはまったのか、笑いが止まらなくなっていた。そんなに笑わないでちょうだい、恥ずかしくなるだけじゃないのよ。私は無言でその仕打ちに耐えていた。
「いやはや、すまんな。姪っ子にそんな疑いを持たれるとは思わなかったからね。だがしかし、いくら城の仕事とかが忙しいからといって、領地に顔を出さないゼニークのせいでもあるな。自分の娘にそんな心配をさせてしまうようではな」
デバラはそんな事を言っているが、それはそれで正論である。信用できる兄に任せているからといって、本来の領主である父親がまったく顔を出さないのはそれはそれで問題があると思う。
しかし、そんな状況を生み出してしまったのは、実は私のせいでもあるのだ。ボンジール商会への仕事も、ほとんど両親に任せてしまっている状況。だから、なおさら父親は領地に顔を出せないでいるのである。こればかりは素直に私も反省するしかなかった。
そんなわけで、この日は一日中、伯父夫婦と私、それと義妹のモモ、いとこのタミール、親族全員が集まって延々と話をしたのだった。
「そうか……。では、ゼニークがこちらに来れない理由は、アンマリアも一枚どこじゃないくらい噛んでいたのか」
あ、ものすごく納得されてしまった。しかも、私のせいだと言わんばかりな言い分である。一枚どころじゃないって完全に私のせいにしてません? いや、間違ってはいないんですけど……。
本当に伯父の理解の早さには驚いた。父親の血筋って地頭がとてもいいようである。私も転生者という異質な点はあるけれど、確かにその血は引き継いでいると思えるわ。
「それは……、実に申し訳ございませんわ」
「いや、謝らなくていいよ。やりたい事を抑えられない気持ちは私にもよく分かるからね」
「ええ、そうですわね。この人ったら、領民の生活向上にできる事はないかと、毎日のように考えていますのよ」
「仕方ないだろう。私たちがこうやって過ごせるのは、領民あっての事だ。ないがしろにする事などできるものか」
ああ、本当に伯父は領地の経営を領民目線で行っているようである。こんな立派な領主代理をしている叔父を少しでも疑ってしまった事を、私は大いに反省せざるを得なかった。
「そういえば、アンマリア」
「何でしょうか、おじ様」
「お前の作った魔道具というものを見てみたい。ここで出してもらって構わないだろうか」
デバラは私の作った魔道具に興味を示していた。自分の弟を王都に縛り付けた私の発明品を見てみたいのだろう。私は後ろめたい気持ちがあるので、素直にデバラに魔道具を出して見せる事にした。
「なんと、収納魔法が使えるのか」
どこからとも出てくる魔道具の数々よりも、伯父はそこに驚いていた。
「そんな貴重な魔法の使い手は保護せねばならんな、なあミムク」
「ええ、そうですね」
伯父夫婦がうろたえている。ちなみにタミールはそんな私を興味ありげにじっと見ていた。あれ、私の魔法ってそんなに希少な魔法だったわけ?
「お姉様、収納魔法なんていうのは普通使えませんよ。存在こそは確認されていますが、多分、今の時代なら一人も居ないんじゃないでしょうか」
モモの言葉に、私は思わずフリーズする。
「え……、そんなに珍しい魔法なの?」
「珍しいどころじゃありません。第一、市販の魔法鞄だって、魔法で付与しているのではなく、魔石に術式を刻み込んで作っているんです。それだって、昔収納魔法が使えた方が残してくれたからであって、今現在魔法として使えるのはお姉様だけですわよ」
モモの話を聞いて私は顔面蒼白になる。希少どころの話ではなかったのだ。
頭の痛い話だったけれど、私はなんとか魔道具に話題を切り替えて、その日の話を終えたのだった。
「困った事があったら、ゼニークだけではなく、私たちにも相談してほしい」
「ええ、そうですわ。大事な姪っ子なのですもの。それに年末からはタミールもお世話になりますしね」
眠そうにしているタミールの頭をミムクが撫でている。
「この魔石ペンとコンロとストーブは、我が領でも使わせてもらうよ。モモも、義理とはいえども養子になったのならば立派な姪だ。いつでも遊びにおいで」
「はい、ありがとうございます、おじ様」
いろいろ話をした私たちは、今までにあったもやもやがすべて吹き飛んだかのようにすっきりした。うん、直に会って話をする事は大事だなと感じた私なのだった。
「ははは、どうやら私たちは姪にまったく信用されてなかったようだね」
デバラは私の疑念を聞いてそれを笑い飛ばしていた。
「でも、それも仕方ありませんわ。もう4年くらいお互いに会っていないんですもの。不安に思っても仕方ありませんわよ」
「確かにそうだな、わっはっはっはっ!」
思い切りすごく笑い飛ばされた。なんかちょっと恥ずかしいわね。
「弟に信用されてこの領地を任されているんだ。そんなやましい事をしたら、城に務める弟に迷惑だろう?」
にやりと笑いながら、デバラは私に言葉を向けてくる。いやはや、本当に疑って悪かったわ。
「申し訳ございませんでした。娘としてどうしてもその辺りをはっきりさせておきたかったのです」
「はっはっはっ、立派な娘を持って、ゼニークの奴も幸せだな。そりゃあ、王家も王子の嫁に欲しがるわけだ」
私が頭を下げて謝罪すると、デバラは相当ツボにはまったのか、笑いが止まらなくなっていた。そんなに笑わないでちょうだい、恥ずかしくなるだけじゃないのよ。私は無言でその仕打ちに耐えていた。
「いやはや、すまんな。姪っ子にそんな疑いを持たれるとは思わなかったからね。だがしかし、いくら城の仕事とかが忙しいからといって、領地に顔を出さないゼニークのせいでもあるな。自分の娘にそんな心配をさせてしまうようではな」
デバラはそんな事を言っているが、それはそれで正論である。信用できる兄に任せているからといって、本来の領主である父親がまったく顔を出さないのはそれはそれで問題があると思う。
しかし、そんな状況を生み出してしまったのは、実は私のせいでもあるのだ。ボンジール商会への仕事も、ほとんど両親に任せてしまっている状況。だから、なおさら父親は領地に顔を出せないでいるのである。こればかりは素直に私も反省するしかなかった。
そんなわけで、この日は一日中、伯父夫婦と私、それと義妹のモモ、いとこのタミール、親族全員が集まって延々と話をしたのだった。
「そうか……。では、ゼニークがこちらに来れない理由は、アンマリアも一枚どこじゃないくらい噛んでいたのか」
あ、ものすごく納得されてしまった。しかも、私のせいだと言わんばかりな言い分である。一枚どころじゃないって完全に私のせいにしてません? いや、間違ってはいないんですけど……。
本当に伯父の理解の早さには驚いた。父親の血筋って地頭がとてもいいようである。私も転生者という異質な点はあるけれど、確かにその血は引き継いでいると思えるわ。
「それは……、実に申し訳ございませんわ」
「いや、謝らなくていいよ。やりたい事を抑えられない気持ちは私にもよく分かるからね」
「ええ、そうですわね。この人ったら、領民の生活向上にできる事はないかと、毎日のように考えていますのよ」
「仕方ないだろう。私たちがこうやって過ごせるのは、領民あっての事だ。ないがしろにする事などできるものか」
ああ、本当に伯父は領地の経営を領民目線で行っているようである。こんな立派な領主代理をしている叔父を少しでも疑ってしまった事を、私は大いに反省せざるを得なかった。
「そういえば、アンマリア」
「何でしょうか、おじ様」
「お前の作った魔道具というものを見てみたい。ここで出してもらって構わないだろうか」
デバラは私の作った魔道具に興味を示していた。自分の弟を王都に縛り付けた私の発明品を見てみたいのだろう。私は後ろめたい気持ちがあるので、素直にデバラに魔道具を出して見せる事にした。
「なんと、収納魔法が使えるのか」
どこからとも出てくる魔道具の数々よりも、伯父はそこに驚いていた。
「そんな貴重な魔法の使い手は保護せねばならんな、なあミムク」
「ええ、そうですね」
伯父夫婦がうろたえている。ちなみにタミールはそんな私を興味ありげにじっと見ていた。あれ、私の魔法ってそんなに希少な魔法だったわけ?
「お姉様、収納魔法なんていうのは普通使えませんよ。存在こそは確認されていますが、多分、今の時代なら一人も居ないんじゃないでしょうか」
モモの言葉に、私は思わずフリーズする。
「え……、そんなに珍しい魔法なの?」
「珍しいどころじゃありません。第一、市販の魔法鞄だって、魔法で付与しているのではなく、魔石に術式を刻み込んで作っているんです。それだって、昔収納魔法が使えた方が残してくれたからであって、今現在魔法として使えるのはお姉様だけですわよ」
モモの話を聞いて私は顔面蒼白になる。希少どころの話ではなかったのだ。
頭の痛い話だったけれど、私はなんとか魔道具に話題を切り替えて、その日の話を終えたのだった。
「困った事があったら、ゼニークだけではなく、私たちにも相談してほしい」
「ええ、そうですわ。大事な姪っ子なのですもの。それに年末からはタミールもお世話になりますしね」
眠そうにしているタミールの頭をミムクが撫でている。
「この魔石ペンとコンロとストーブは、我が領でも使わせてもらうよ。モモも、義理とはいえども養子になったのならば立派な姪だ。いつでも遊びにおいで」
「はい、ありがとうございます、おじ様」
いろいろ話をした私たちは、今までにあったもやもやがすべて吹き飛んだかのようにすっきりした。うん、直に会って話をする事は大事だなと感じた私なのだった。
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