142 / 500
第三章 学園編
第142話 急展開は割と起きるのね
しおりを挟む
魔力の渦を消し去った私は、サキたち攻略対象とライバル令嬢たちの戦いっぷりを観察していた。エスカという(年齢的な)イレギュラーこそ居るものの、一応ゲーム再現である。
武術型と魔法型とでうまく連携を取っていて、曲がりなりにも主要キャラクターたちなんだなという事を再認識させられる。
「あはははははっ! この剣すごいわ。斬れ味が全然違う!」
その中でも笑いながら魔物をばっさばっさと斬り倒しているサクラがもの凄く目立ってるんだけどね。これが脳筋ゆえの戦い方か……。思わず表情が歪んじゃうわね。よく見ると、使ってるのは私が誕生日にあげた魔石剣じゃないの。あれ持ってきてたんだ。
フィレン王子も剣と魔法をうまく使い分けながら魔物を倒しているし、残り令嬢たちはエスカを中心にして前衛を支援してるわね。
それにしても、前衛はフィレン王子とサクラ、それとタンの三人か。ちょっと心もとないかしらね。
「お前たち、殿下とお嬢様をお助けするのだ!」
「おおーっ!」
おっと、ここでバッサーシ辺境伯の私兵と国境警備隊が乱入か。これでだいぶ戦えるようになるかしらね。100体ほどの魔物が押し寄せてるけど、これなら対処できるかしら。
「ぎょぎょーっ!」
っと、のんびり見て場合じゃないか。私の方にも漏れた魔物がやって来たわね。
「まったく、この程度なんてぬるいわね」
私は座り込んだまま、襲ってきた魔物を風魔法で一刀両断にする。まったく、不意打ちにも強襲にもなりゃしないわ。こんな簡単に倒されているようではね。
それにしても、ゲームはよくもこんな場面をスチル1枚で済ませたわね。いくらヒロインが出てこないからといってもありえないわ。アンマリアが戦ってるシーンは、あれだけ鬼のような連戦をしてたのに。これがメインと脇役の扱いの差なのね。
ある程度魔物を倒したところで、一気に突然魔物が退いていく。その様子にフィレン王子たちは驚いて棒立ちなる。
「魔物が退いていくぞ」
「俺たちは勝ったんだ!」
モブである兵士たちが叫び始める。その声に安堵が広がっていくのだが、その様子に違和感を持つ者たちが居た。
(おかしいわね。魔物が全滅するまでの戦いになるはずなのに、なぜここで退いたの?)
まずは当然ながら私。このスタンピードの結末はどちらでも魔物は全滅したと書かれていたんだもの。取り逃がすなんて事はあり得ない。
私がこう違和感を持つのであるなら、当然ながら同じような転生者であるエスカも違和感を持っているはず。そこで私がその様子を見てみると、やっぱり表情は険しいままだ。
あとはフィレン王子とサクラの二人ね。フィレン王子は多分王子としての責任感からだろうけど、サクラが険しい表情のままなのは領地でそれなりにスタンピードを経験しているからだろう。
「まだです。魔物が残っている状態でスタンピードが終わる事は決してありません!」
サクラが叫ぶ。この声に楽観的な反応を示すのは、国境警備に派遣された兵士たちだ。よく見れば、バッサーシ辺境伯の私兵たちの表情もまだ鋭い眼光を湛えたままだった。
それにしても、魔物が一気に退いていった事は事実。一体この後に何が待っているというの?
その疑問はすぐに解消された。
退いたと思った魔物たちがひとところに集まって止まったのだ。
何をするのかと思えば、一斉に雄たけびを上げ始めた。すると、その場に黒い魔力の渦が発生して魔物を飲み込んでいっている。一体何が起きているというの?!
次の瞬間、魔物をすべて飲み込んだ魔力の渦は、急激に収縮していく。そして、縮み切ったかと思うと思い切り弾け飛んだのだ。
「な、なんだあれはっ!?」
兵士たちが声を上げる。驚くのも無理はないと思う。どす黒い魔力が足元から何かを形作っていっているのだもの。兵士たちが怯えながら見上げるそこには、今まで見た事のないくらい巨大な魔物が姿を現した。
「ギガンテス……」
冷や汗を流しながら、エスカが驚愕の表情を浮かべながら呟く。
「ギガンテスですって?!」
その名前に反応して叫んだのは意外にもサクラだった。だけども、それだけじゃない。バッサーシ辺境伯の私兵たちもその名前に驚いて動揺し始めていた。
(ギガンテス? 何かゲームに出てきたモンスターだった気がするけれど、この世界にも居たのね)
「一体そのギガンテスとは?」
「バッサーシ領に伝わる伝説の巨人です。一説にはこのクッケン湖ができた原因と言われています」
フィレン王子の質問に答えるサクラ。湖を作り上げた巨人って……。
それにしても、このギガンテスはかなり大きい。鼻で笑いかけた話だけど、よくよく見てみたら納得のできる大きさだった。
というか、この巨体、どう見てもゲームの序盤で出てくる様な敵じゃないでしょ?! こんなのってRPG系のゲームだったら、負け確定のイベント戦闘みたいなものじゃないの。でも、ここは現実なんだから、そういう事はないはずよね? これはかなり危険ではと私は感じていた。その場に居る全員の視線が、ギガンテスに釘付けである。
「グルアアアァァァァッ!!」
そんな時、突如としてギガンテスの咆哮がこだましたのだった。
武術型と魔法型とでうまく連携を取っていて、曲がりなりにも主要キャラクターたちなんだなという事を再認識させられる。
「あはははははっ! この剣すごいわ。斬れ味が全然違う!」
その中でも笑いながら魔物をばっさばっさと斬り倒しているサクラがもの凄く目立ってるんだけどね。これが脳筋ゆえの戦い方か……。思わず表情が歪んじゃうわね。よく見ると、使ってるのは私が誕生日にあげた魔石剣じゃないの。あれ持ってきてたんだ。
フィレン王子も剣と魔法をうまく使い分けながら魔物を倒しているし、残り令嬢たちはエスカを中心にして前衛を支援してるわね。
それにしても、前衛はフィレン王子とサクラ、それとタンの三人か。ちょっと心もとないかしらね。
「お前たち、殿下とお嬢様をお助けするのだ!」
「おおーっ!」
おっと、ここでバッサーシ辺境伯の私兵と国境警備隊が乱入か。これでだいぶ戦えるようになるかしらね。100体ほどの魔物が押し寄せてるけど、これなら対処できるかしら。
「ぎょぎょーっ!」
っと、のんびり見て場合じゃないか。私の方にも漏れた魔物がやって来たわね。
「まったく、この程度なんてぬるいわね」
私は座り込んだまま、襲ってきた魔物を風魔法で一刀両断にする。まったく、不意打ちにも強襲にもなりゃしないわ。こんな簡単に倒されているようではね。
それにしても、ゲームはよくもこんな場面をスチル1枚で済ませたわね。いくらヒロインが出てこないからといってもありえないわ。アンマリアが戦ってるシーンは、あれだけ鬼のような連戦をしてたのに。これがメインと脇役の扱いの差なのね。
ある程度魔物を倒したところで、一気に突然魔物が退いていく。その様子にフィレン王子たちは驚いて棒立ちなる。
「魔物が退いていくぞ」
「俺たちは勝ったんだ!」
モブである兵士たちが叫び始める。その声に安堵が広がっていくのだが、その様子に違和感を持つ者たちが居た。
(おかしいわね。魔物が全滅するまでの戦いになるはずなのに、なぜここで退いたの?)
まずは当然ながら私。このスタンピードの結末はどちらでも魔物は全滅したと書かれていたんだもの。取り逃がすなんて事はあり得ない。
私がこう違和感を持つのであるなら、当然ながら同じような転生者であるエスカも違和感を持っているはず。そこで私がその様子を見てみると、やっぱり表情は険しいままだ。
あとはフィレン王子とサクラの二人ね。フィレン王子は多分王子としての責任感からだろうけど、サクラが険しい表情のままなのは領地でそれなりにスタンピードを経験しているからだろう。
「まだです。魔物が残っている状態でスタンピードが終わる事は決してありません!」
サクラが叫ぶ。この声に楽観的な反応を示すのは、国境警備に派遣された兵士たちだ。よく見れば、バッサーシ辺境伯の私兵たちの表情もまだ鋭い眼光を湛えたままだった。
それにしても、魔物が一気に退いていった事は事実。一体この後に何が待っているというの?
その疑問はすぐに解消された。
退いたと思った魔物たちがひとところに集まって止まったのだ。
何をするのかと思えば、一斉に雄たけびを上げ始めた。すると、その場に黒い魔力の渦が発生して魔物を飲み込んでいっている。一体何が起きているというの?!
次の瞬間、魔物をすべて飲み込んだ魔力の渦は、急激に収縮していく。そして、縮み切ったかと思うと思い切り弾け飛んだのだ。
「な、なんだあれはっ!?」
兵士たちが声を上げる。驚くのも無理はないと思う。どす黒い魔力が足元から何かを形作っていっているのだもの。兵士たちが怯えながら見上げるそこには、今まで見た事のないくらい巨大な魔物が姿を現した。
「ギガンテス……」
冷や汗を流しながら、エスカが驚愕の表情を浮かべながら呟く。
「ギガンテスですって?!」
その名前に反応して叫んだのは意外にもサクラだった。だけども、それだけじゃない。バッサーシ辺境伯の私兵たちもその名前に驚いて動揺し始めていた。
(ギガンテス? 何かゲームに出てきたモンスターだった気がするけれど、この世界にも居たのね)
「一体そのギガンテスとは?」
「バッサーシ領に伝わる伝説の巨人です。一説にはこのクッケン湖ができた原因と言われています」
フィレン王子の質問に答えるサクラ。湖を作り上げた巨人って……。
それにしても、このギガンテスはかなり大きい。鼻で笑いかけた話だけど、よくよく見てみたら納得のできる大きさだった。
というか、この巨体、どう見てもゲームの序盤で出てくる様な敵じゃないでしょ?! こんなのってRPG系のゲームだったら、負け確定のイベント戦闘みたいなものじゃないの。でも、ここは現実なんだから、そういう事はないはずよね? これはかなり危険ではと私は感じていた。その場に居る全員の視線が、ギガンテスに釘付けである。
「グルアアアァァァァッ!!」
そんな時、突如としてギガンテスの咆哮がこだましたのだった。
7
あなたにおすすめの小説
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
転生調理令嬢は諦めることを知らない!
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる