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第三章 学園編

第150話 騒ぎの前の静けさ

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 夏の合宿から戻ってきてから、あっという間に時間が過ぎていった。相変わらずフィレン王子の時と同じように、リブロ王子の誕生日パーティーの日までエスカは我がファッティ伯爵邸にお邪魔してくれていた。隣国ミール王国の王女がゆえに無下にできないので、父親も胃の辺りを擦りながら受け入れていた。ごめんなさいね、お父様。もちろんだけれども、モモも相変わらず王族相手となるとガチガチに緊張していた。王子二人の婚約者である私が居るというのに、どうにも慣れないようだった。
 でも、その一方で転生者であるエスカとは、気兼ねなく前世の話ができるので、これはこれで有意義なものだった。前回よりも滞在日数が増えたので、結構踏み込んで話ができたもの。どうやら前世で生きていた時期は近かったようで、それなりに話が合うようでよかったわ。ニンニクマシマシとかあなたもそうだったのね。
 そうそう、スタンピードで私たちが倒したギガンテスの魔石は王家に献上される事になったらしく、つい先日王都に到着したらしいわ。多分、リブロ王子の誕生日パーティーで披露されるだろうから、主役食われまくって可哀想になってくるわね。何というかこう、手心というものがないのかしら。
 とまぁ、そんな事をしているうちに、あっという間にリブロ王子の誕生日パーティーの日がやって来た。フィレン王子たちが合宿から戻ってきてから9日後の事である。
「はあ、スタンピードの事を話すとなると、リブロ王子がかすんじゃうからどうしましょうかね」
 スタンピードの後からさらに4kgほど痩せた私は、憂鬱そうな顔をしてお城に向かう馬車に乗り込んでいた。
「主役を食ってしまうのは仕方ないかと思いますわよ。スタンピードっていうのはそのくらい危険なものですし」
 対面に座るエスカは、私の独り言に説教くさく話をしてくる。その隣ではモモが少し縮こまっていた。ちなみに、私の乗る馬車には私とモモとエスカの他には、私とモモの従者であるスーラとネスの二人が乗り込んでいる。エスカの従者は私の両親と同じ馬車に乗り込んでいる。今回は置いてこれなかったようだった。
「それよりもアンマリア」
「何でしょうか、エスカ王女殿下」
「そろそろ100kgを切るみたいね。だいぶペースが速くないかしら?」
 エスカが急に話し掛けてくるから何かと思ったけど、体重の話か。そういえばエスカも『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』をプレイ済だったわね。となればあの体重の落としづらさを知ってるのは当然ってわけか。それにしても、そう言ってくるあたり、エスカも鑑定持ちか。まったく、プライバシーの侵害よ。
 エスカはあんな事を言ってくれてるけれど、私が何もしていないわけがないって話よ。モモは知っているけれど、庭の手入れ以外にも筋トレだって毎日欠かしていない。走り込みやスクワットだってしている。エスカの居る間は自重していたけどね。まあだからこそ、エスカはこうやって疑問に思ってくれるわけよ。
 実はこれだけではなかった。国王たちへの報告で瞬間移動魔法の魔力消費に触れたけど、この短期間で3回も使えばそりゃ蓄積された恩恵も消費されるわけで、脂肪化していた魔力が元に戻っただけなのよね。だから痩せていっているというわけなのよ。驚いた?
 いろいろな事を話していると、あっという間に城に着いてしまう。城の入口でエスカは私たちと別れ、従者と一緒に城の中の王族の控室の方へと歩いて行った。気兼ねなく話すから忘れちゃいそうになるけど、あれでいてミール王国のお姫様だものね。ちょっと信じられないわよね。
「さっ、モモ。私たちはお父様たちと一緒にパーティー会場に向かいましょうか」
「はい、お姉様」
 私たちは両親や従者たちと一緒に、リブロ王子の誕生日パーティーが行われるホールへと向かったのだった。

 会場はいつものダンスホールである。私たちが到着したのはまだ早い方だったので、会場の人の姿はまだまばらだった。早く来たのはエスカが居たからである。王族は準備に時間が掛かるから仕方のない話よ。
「アンマリア様、お久しぶりでございます」
 会場に着いたばかりの私に声を掛けてくる人物が居た。なんとサキだった。テトリバー男爵家ももう会場入りしていたらしい。
「ファッティ伯爵様、ファッティ伯爵夫人、モモ様、お久しぶりでございます」
 サキはハッとして、私の両親とモモにも挨拶をする。私しか目に入らなかったらしい。まあ、まだ目立つくらいには太ってますものね!
「サキ嬢、スタンピードでの活躍、娘から聞き及んでいますよ。魔物を凍らせて動けなくしたとかで」
「あの、それはエスカ王女殿下が手伝って下さったからです。私ではまだまだ未熟で、一人では無理だったと思います」
 父親がサキの事を褒めているのだが、サキは緊張からかしどろもどろに縮こまりながら反応をしていた。もう少し堂々としていいのよ、サキ。あなたは私と同じ、殿下の婚約者なんですから。私はそう思うのだけれども、サキの性格じゃ難しいかしらね。
 さてさて、私たちが談笑をしている間に、どんどんと会場には人が集まってきていた。
 気が付けば、私たちのところにはラムとサクラまでやって来て、ヒロインとライバル令嬢たちが勢ぞろいしてしまっていた。まあ、ゲームと違って私たちは仲がいいものね。当然といえば当然よ。
 そうこうしていると、先程までの和やかな音楽が止み、宰相が姿を現した。
 さあ、いよいよリブロ王子の誕生日パーティーの始まりのようね。
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