186 / 500
第四章 学園編・1年後半
第186話 熱戦を終えて
しおりを挟む
「ぐわっ!」
「きゃあっ!」
剣と剣、意地と意地がぶつかり合い、大きな衝撃波が生まれる。こうなると立っている方よりもしゃがんでいる方が有利で、立って剣を振り下ろしたタンの方が勢いよく吹き飛んでしまった。結果……、
「勝者、サクラ・バッサーシ!」
サクラの勝利となった。地面の抵抗があった分、サクラの方があまり吹き飛ばなかったのだ。うまく立ち回って結界の中央付近をキープし続けたサクラの作戦勝ちである。しかし、剣をぶつけ合っただけで10数メートルも吹き飛ぶとは、どれだけ強い衝撃波が生まれたのやら。結界の仕様上魔法が使えないのだから、恐るべし脳筋たちである。
「くっそ、負けたーっ!」
地団太を踏んで悔しがるタン。いくらバッサーシ辺境伯の血筋相手とはいえ、婚約者に負けたのは相当に悔しいのである。
「タン様、いい試合でした。もっと楽に勝てるかと思いましたけれど、ここまで苦戦させられたのはひとえにタン様の頑張りがあってこそです」
ものすごく真っすぐな瞳でタンを見つめるサクラ。その顔に思わずドキッとして赤面してしまうタンだった。
それにしても、この決勝戦の戦いは、今までのどの試合と見比べてもレベルが高いものだった。1年生とはいえども実力は確かにあるタンと互角レベルの打ち合いをして、体力で負けたとはいっても知恵で逆転してみせたサクラ。見ていた観客誰もが、その戦いを固唾を飲んで見守っていたのである。それは、勝者の名前を出しても静まり返っていた事からもよく分かる。会場が沸き上がったのはタンの悔しそうな叫び声が響いた後からだった。
「本当にすごい戦いでした。あれを私たちと同い年がしているのだと思うと信じられませんね」
「見てて心臓が止まる思いでしたよ。お姉様、本当に同級生なのですかね」
「モモ、間違いなく同級生よ」
サキもモモも心臓をバクバク言わせっぱなしである。そのくらいに緊張感のある戦いだったのだ。
「うーん、私はさすがにあそこまでは無理かしらね。あと4~50kgは痩せなきゃ」
「お姉様、さすがに危険ですからやめて下さい」
私が来年に向けていけて抱負めいた事を言うと、モモから全力で止められた。私だって参加してたんですけど?
まったく困った子だことね。将来的にはこのままなら王妃か公爵夫人なのだから、自分の身くらい自分で守れた方がいいに決まっている。ただ、体重が100kgに戻ってしまったので、かなり困っている。うどんがダメだったかしらね。さすがは水でも太ると(設定で)言われた私だわ。まあ痩せる努力しなきゃいけないわね。
とりあえず1年目の学園祭の剣術大会は、サクラ・バッサーシの優勝で幕を閉じた。会場からは惜しみない拍手がサクラへと送られている。
この剣術大会はもちろんゲームでも存在していたわ。リズムゲームみたいな感じだったっけかな。どちらが攻撃か防御かはランダムで割り当てられるものの、タイミングよくボタンを押すと攻撃と防御ができて、ジャストタイミングならクリティカルと完全ガードになるってやつだったはず。魔法が使えないイベントだからこんな仕様になったのかも知れない。それ以外の戦闘はちゃんとRPG風のコマンド選択式だったのにね。うん、謎。
試合を見終わった私たちは、控室に移動してサクラと落ち合う。
「サクラ様、優勝おめでとうございますわ」
「ありがとうございます、アンマリア様」
私たちが祝福すると、サクラは笑顔で言葉を返してくれた。
戦いになると脳筋的になるはずだけど、思ったよりもサクラは頭を使って動いていた。あれだけ攻められればずるずると後退しそうなものなのに、中央付近をずっとキープしていた事が証左のひとつだ。もしかしたら、攻められてしゃがみ込んだのも作戦だったのかも知れない。どういう事であれ、ゲームのサクラとはだいぶ印象が違うようだった。
「表彰式も終わりましたし、後は後夜祭を残すだけですね」
「そうですね。皆さんはどうされますか?」
私が言うと、サクラからどうするのか聞かれてしまう。
「やはり、ダンスの行われる講堂に向かおうと思いますわ。殿下もいらっしゃるでしょうし、お相手が居なくてはいけませんわ」
「それでしたら、私もですね」
「わ、私も行きます!」
サクラの質問にはそれぞれこのように答えた。それを聞いてサクラは笑っている。
「ふふふ、そうですね。私もそうしましょうか」
「おい、何の冗談だ。戦った後で踊るとか、本気なのか?」
サクラがそう言っていると、後ろから大きな声が響いてきた。タンの登場である。
「あら、タン様。私は本気ですよ。むしろ、婚約者なのですから、そうなるのではございませんか?」
「うっ、まあ、そうだな……」
サクラに真顔で返されると、タンはしどろもどろになっていた。これはあれだ、完全にほの字だわ。私は心の中でにんまりと笑っておく。
何はともあれ、この学園祭も残すは後夜祭のみである。とはいっても、ほぼダンスパーティーみたいなものなので、みんな講堂に集まる流れとなる。婚約者が居れば一緒に踊るし、居なければ探しにやって来るし、思いは人それぞれなのだ。
ドレスに着替えたサクラを交えて、私たちは揃って講堂へと移動する。
この学園祭2つ目のリズムゲーム。後夜祭ダンスパーティーの始まりですわよ!
「きゃあっ!」
剣と剣、意地と意地がぶつかり合い、大きな衝撃波が生まれる。こうなると立っている方よりもしゃがんでいる方が有利で、立って剣を振り下ろしたタンの方が勢いよく吹き飛んでしまった。結果……、
「勝者、サクラ・バッサーシ!」
サクラの勝利となった。地面の抵抗があった分、サクラの方があまり吹き飛ばなかったのだ。うまく立ち回って結界の中央付近をキープし続けたサクラの作戦勝ちである。しかし、剣をぶつけ合っただけで10数メートルも吹き飛ぶとは、どれだけ強い衝撃波が生まれたのやら。結界の仕様上魔法が使えないのだから、恐るべし脳筋たちである。
「くっそ、負けたーっ!」
地団太を踏んで悔しがるタン。いくらバッサーシ辺境伯の血筋相手とはいえ、婚約者に負けたのは相当に悔しいのである。
「タン様、いい試合でした。もっと楽に勝てるかと思いましたけれど、ここまで苦戦させられたのはひとえにタン様の頑張りがあってこそです」
ものすごく真っすぐな瞳でタンを見つめるサクラ。その顔に思わずドキッとして赤面してしまうタンだった。
それにしても、この決勝戦の戦いは、今までのどの試合と見比べてもレベルが高いものだった。1年生とはいえども実力は確かにあるタンと互角レベルの打ち合いをして、体力で負けたとはいっても知恵で逆転してみせたサクラ。見ていた観客誰もが、その戦いを固唾を飲んで見守っていたのである。それは、勝者の名前を出しても静まり返っていた事からもよく分かる。会場が沸き上がったのはタンの悔しそうな叫び声が響いた後からだった。
「本当にすごい戦いでした。あれを私たちと同い年がしているのだと思うと信じられませんね」
「見てて心臓が止まる思いでしたよ。お姉様、本当に同級生なのですかね」
「モモ、間違いなく同級生よ」
サキもモモも心臓をバクバク言わせっぱなしである。そのくらいに緊張感のある戦いだったのだ。
「うーん、私はさすがにあそこまでは無理かしらね。あと4~50kgは痩せなきゃ」
「お姉様、さすがに危険ですからやめて下さい」
私が来年に向けていけて抱負めいた事を言うと、モモから全力で止められた。私だって参加してたんですけど?
まったく困った子だことね。将来的にはこのままなら王妃か公爵夫人なのだから、自分の身くらい自分で守れた方がいいに決まっている。ただ、体重が100kgに戻ってしまったので、かなり困っている。うどんがダメだったかしらね。さすがは水でも太ると(設定で)言われた私だわ。まあ痩せる努力しなきゃいけないわね。
とりあえず1年目の学園祭の剣術大会は、サクラ・バッサーシの優勝で幕を閉じた。会場からは惜しみない拍手がサクラへと送られている。
この剣術大会はもちろんゲームでも存在していたわ。リズムゲームみたいな感じだったっけかな。どちらが攻撃か防御かはランダムで割り当てられるものの、タイミングよくボタンを押すと攻撃と防御ができて、ジャストタイミングならクリティカルと完全ガードになるってやつだったはず。魔法が使えないイベントだからこんな仕様になったのかも知れない。それ以外の戦闘はちゃんとRPG風のコマンド選択式だったのにね。うん、謎。
試合を見終わった私たちは、控室に移動してサクラと落ち合う。
「サクラ様、優勝おめでとうございますわ」
「ありがとうございます、アンマリア様」
私たちが祝福すると、サクラは笑顔で言葉を返してくれた。
戦いになると脳筋的になるはずだけど、思ったよりもサクラは頭を使って動いていた。あれだけ攻められればずるずると後退しそうなものなのに、中央付近をずっとキープしていた事が証左のひとつだ。もしかしたら、攻められてしゃがみ込んだのも作戦だったのかも知れない。どういう事であれ、ゲームのサクラとはだいぶ印象が違うようだった。
「表彰式も終わりましたし、後は後夜祭を残すだけですね」
「そうですね。皆さんはどうされますか?」
私が言うと、サクラからどうするのか聞かれてしまう。
「やはり、ダンスの行われる講堂に向かおうと思いますわ。殿下もいらっしゃるでしょうし、お相手が居なくてはいけませんわ」
「それでしたら、私もですね」
「わ、私も行きます!」
サクラの質問にはそれぞれこのように答えた。それを聞いてサクラは笑っている。
「ふふふ、そうですね。私もそうしましょうか」
「おい、何の冗談だ。戦った後で踊るとか、本気なのか?」
サクラがそう言っていると、後ろから大きな声が響いてきた。タンの登場である。
「あら、タン様。私は本気ですよ。むしろ、婚約者なのですから、そうなるのではございませんか?」
「うっ、まあ、そうだな……」
サクラに真顔で返されると、タンはしどろもどろになっていた。これはあれだ、完全にほの字だわ。私は心の中でにんまりと笑っておく。
何はともあれ、この学園祭も残すは後夜祭のみである。とはいっても、ほぼダンスパーティーみたいなものなので、みんな講堂に集まる流れとなる。婚約者が居れば一緒に踊るし、居なければ探しにやって来るし、思いは人それぞれなのだ。
ドレスに着替えたサクラを交えて、私たちは揃って講堂へと移動する。
この学園祭2つ目のリズムゲーム。後夜祭ダンスパーティーの始まりですわよ!
7
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる