伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
191 / 500
第四章 学園編・1年後半

第191話 覚醒の遅れを取り戻せ

しおりを挟む
 さてさて、さすがに一週間で1回しかない講義だけでは魔法の特訓として心許ない。なので、私はサキの魔法の特訓をつける事にした。今までもいろいろあり過ぎたせいで、一度やろうとしたのに途中で立ち消えちゃったものね。本当にダメダメだわ。
 さて、指導をするにあたって、私はサキの属性を再確認する。
(うーん、属性は光と氷か。そういえば、ギガンテスの時に凍らせてたわね)
 私は夏合宿の時に現れた巨人の魔物、ギガンテスの事を思い出していた。あの時は確か、エスカの起こした風に乗せて凍らせていた。クッケン湖の塩水を被っていたので、かなり強力だったと記憶しているわ。
 いろいろと考えた私だけど、光属性の得意な魔法をいろいろと考えてみた。何かとイメージのしづらい魔法が多いので、難しいだろうと思ったからだ。
「サキ様、光の魔法っていうと、どういうのを思い浮かべられますか?」
 というわけで、サキの考える光魔法をいうものを確認してみる事にした。魔法はイメージだから、意外とこれは重要な要素なのよ。以前は漠然と教えようとしちゃった気がするのよね。
「えっと、なんかこうキラキラしていて、ほわっとしている感じ……ですかね」
 うん、ものすごく抽象的だったわ。実際、光と闇なんていうのは昼と夜くらいのイメージしかできないものね。でも、私なんて全属性使えるから、実のところ、いろいろ試してみたのよね。そしたら思いの外いろんな事ができたので、その辺も含めてサキに教えていこうと思うのよ。
「まあ温かいっていう感じでしょうかね。あながち間違っていませんけれど、実は光魔法も闇魔法も、その気になれば同じような事ができるんですよ、属性の方向性が違うだけなんですよね」
「ええええっ!?」
 私が衝撃的な事を言ったものだから、サキはものすごく驚いていた。まあ仕方ないわね。
「回復魔法に関しても、怪我した動物で試してみた事があるんですけれど、光魔法はその部分が修復されていく感じで、闇魔法は生命力を高めて細胞を増やすような感じですね。その分、闇属性の回復魔法は見た目が鮮烈でしたわよ」
 それを聞いたサキは口を手で押さえていた。思い切り想像してしまったようである。あらやだ、ごめんなさい。
「回復魔法の場合は、とにかく、元々の状態を思い浮かべながら魔法を使うのですよ。例えば、肌を擦り剥いてしまった時とか、周りの無事な肌のようなきれいな状態を思い浮かべながら魔力を当てるのです」
「な、なるほど……」
 私の説明を聞きながら、サキは細かく首を縦に振っているようだった。よくは分からないけれど、とりあえず聞いてますよって感じね。
 とりあえず詳しく説明すると、怪我などがあった場合、光魔法はその部分を補うように魔力で構築させて結合させるといった感じで、闇魔法の場合は周りの細胞に働きかけて自己修復機能を高めて治すと説明するのがいいかしらね。
「あとは光魔法といえば、浄化ですね」
「浄化……ですか?」
「はい、浄化です」
 にっこりと微笑む私。このサキの反応は予想の範囲内である。
 実はこの浄化という魔法はかなり勘違いされている。生活魔法の洗浄の上位魔法としか思ってない人も居るくらいだ。
 だが、この浄化といっても実は結構幅がとてつもなく広い。解毒、解呪、精神異常の軽減、それと不死者などの送還などなど、実にその使い勝手は最高クラスの魔法なのである。ぶっちゃけて言えば、怪我が治せない事だけが弱点というくらいである。つまり、この浄化の魔法さえ極めてしまえば、聖女への道はあっという間に整ってしまうのだ。
 私は浄化魔法の使い道を長々とサキに説明していく。すると、最初は真剣に聞いていたのだが、途中からサキはまるで頭から煙を出しているかのように反応しなくなってきた。さすがに一気に話し過ぎたかしらね。
「実はこの浄化を使えば、リブロ殿下の身に起きた魔力循環不全もかなり楽に治せました」
 私がこの事実を突きつけると、さすがにサキのショックは大きかったようである。
 この魔力循環不全は何らかの原因で魔力循環が詰まってしまって起きる病気である。あの時の私は浄化の魔法は大した事がなかったので、自分の魔力を相手の魔力循環に潜ませる事で解決した。ところが、浄化魔法を使えばその魔力循環の異常もあっという間に改善できるようになってしまうのである。
 私からこの事を聞いたサキは、さっきまでとは顔つきが完全に変わったようである。
「アンマリア様、私に真剣に魔法を教えて下さい」
 サキは強い口調で私にこう言ってきたのである。
「ええ、最初からそのつもりよ。いろいろあってうやむやになっちゃってたけど、私はあなたには聖女として目覚めて欲しいからね」
 私はサキに一歩近づくと、その手をしっかりと握った。
 こうして、私とサキとの間で固い約束が結ばれたのである。お互いに王子の婚約者としてやる事は多いけれども、これに関してももうさぼってられないからね。
 とにかく、これにて私によるサキの聖女育成プロジェクト、本格再始動よ!

 ……今度は絶対忘れないからね。絶対だから!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...