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第四章 学園編・1年後半
第192話 回復魔法の実践を
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サキの面倒を見るようになってから最初の交流授業の日がやって来た。あれからというもの、週末の休みの日以外はかなり付きっきりで魔法の面倒を見ていたのだけど、やっぱり異世界人の私と現地人のサキとの間じゃ、イメージできるものに差があり過ぎてものすごく苦労したものだわ。私が簡単にイメージできるものでも、サキだと難しい事があるし、その逆もまた然りなわけで……。それでも根気強くサキと向き合った事で、この一週間弱でもだいぶ能力を伸ばせたと思う。
(今日はようやくその成果を見せられるはずだわ)
というわけで、私はサキを連れて訓練場へと赴いたのだった。
訓練場にはほとんど男子学生という光景が広がっていた。女性は私とサクラとミスミ教官の三人で、今回からはサキが加わって四人という実に極端な状況である。
それにしても、あれだけ厳しいミスミ教官の訓練で一人の脱落者も出ていないとは、正直驚かされるばかりである。みんな本気で騎士を目指しているのだろうか。正直心境を聞いてみたいところだわ。
こうして、サキが見守る中、今日の講義が始まる。とはいっても、今日もひたすら走り込み、筋トレ、模擬戦という流れである。ほぼ最初からこれに耐えているのは私とサクラとタンの三人だけである。最初の方こそ、私に対して疑いの目が向けられたものだけど、最近はそういうのも完全に無くなっていた。最初のうちは多分ずるをしていると思われてたんでしょうね、きっと。まあ、私の体格を見ればそう思われるのも仕方はないわね、うん。
講義を受ける私たちの姿をミスミ教官と一緒に見守るサキ。あまりの激しさに、ものすごく言葉を失っているようだった。貴族令嬢ならまず見る事ないでしょうからね。
困惑気味に見守るサキの目の前で私たちは訓練場の中を30周したり、筋トレを10分間ぶっ通しでしたり、最後は時間の限りの打ち合い稽古をしたりしていたのだ。私だって最初は驚いたけど、まさか初回からちゃんとこなし切っちゃうとは思ってもみなかった。だからこそ、変な目で見られたわけなんだけどね。でも、私は痩せるという大目標があるから、この程度で挫けたりしませんわよ。それに、私は文武両道のスーパーヒロインなのですからね。
さてさて、そうした中講義が終わると、やっぱり私とサクラとタンの三人を除けば、みんなばたんきゅーである。もうこの光景を見るのは何度目なのやら……。
この光景には、サキは完全に戸惑っていた。どうしたらいいのか分からないようである。それを見かねた私は、自分にとりあえず筋肉痛を軽減する魔法を掛けてサキのところまで歩いていく。
「ささっ、サキ様。手本を見せますので、頑張って施して参りましょう」
「は、はい……」
私がサキの手を取って、倒れている学生たちのところへと手を引いていく。怪我のひとつもなく、ただ疲れて倒れているだけなのだが、それでもこのサキのビビりようである。
そんなサキの様子に構う事なく、私はまず一番近くに居た学生に手をかざすと、疲労を取るための回復魔法をかける。私の両手がぱあっと光り、その光が学生へと吸い込まれていく。
「あ、あれ……?」
魔法を掛けられた学生がもの凄く混乱している。それもそうだろう、さっきまで息が上がっていたのが嘘のように楽になったのだから。
「サキ様、これが回復魔法でございます」
「す、すごい……」
あまりに早い症状の改善に、サキはものすごく感動しているようだった。だけど、それと同時に怖くもなった。そのサキの表情の変化を、私はすぐに読み取った。
「サキ様、その心配はすごくよく分かります。回復させられるという事は、相手に無理を強いる事になります。回復魔法は便利ではありますが、その感覚を持っていられるという事はとても重要なんですよ」
「うむ、確かにそうだな。特に前線であると、負傷兵をすぐにまた前線に送り出す事になりかねないからな」
私が説明していると、後ろからミスミ教官がやって来て説明を加えていた。バッサーシ辺境伯の血筋の方が言うだけに、ものすごく生々しい説得力のある話である。
「だから、理想の回復魔法としては、とにかく人を死なせない事だ。必ずしも完全回復させる必要はない。例えば死にかけた兵士がすぐさま戦場に戻れるかと言ったら、そんな事はないからな」
本当にミスミ教官の言葉は重かった。騎士団として働いているだけに、現場を嫌というくらい見てきたのだろう。
「だが、その細やかな見極めというのも、魔法を使いこなしてこそだ。ここに居る連中はみんな疲労と筋肉痛だ。気にする事なく、次の講義に向かえるように回復させてやってくれ」
「……はい!」
ミスミ教官の言葉で吹っ切れたのか、サキは一生懸命回復魔法を試みている。
「さて、アンマリア・ファッティよ」
「はい、なんでしょうか、ミスミ教官」
サキが魔法に取り掛かると、ミスミ教官が私に声を掛けてきた。
「悪いが私はこの後城に行かねばならん。なので、この場の事は任せたぞ。次の講義の事なら心配するな、私が話をつけておく」
「承知致しましたわ」
私が返事をすると、ミスミ教官は手を振りながら訓練場を去っていったのだった。
残された私とサキは、倒れて動けない学生たち一人一人に回復魔法を掛けて回った。それが終わる頃には、もう次の講義が終わろうとしている時間だった。初めてなのでやっぱり時間が掛かってしまったのである。まあ、仕方ないかな。
(今日はようやくその成果を見せられるはずだわ)
というわけで、私はサキを連れて訓練場へと赴いたのだった。
訓練場にはほとんど男子学生という光景が広がっていた。女性は私とサクラとミスミ教官の三人で、今回からはサキが加わって四人という実に極端な状況である。
それにしても、あれだけ厳しいミスミ教官の訓練で一人の脱落者も出ていないとは、正直驚かされるばかりである。みんな本気で騎士を目指しているのだろうか。正直心境を聞いてみたいところだわ。
こうして、サキが見守る中、今日の講義が始まる。とはいっても、今日もひたすら走り込み、筋トレ、模擬戦という流れである。ほぼ最初からこれに耐えているのは私とサクラとタンの三人だけである。最初の方こそ、私に対して疑いの目が向けられたものだけど、最近はそういうのも完全に無くなっていた。最初のうちは多分ずるをしていると思われてたんでしょうね、きっと。まあ、私の体格を見ればそう思われるのも仕方はないわね、うん。
講義を受ける私たちの姿をミスミ教官と一緒に見守るサキ。あまりの激しさに、ものすごく言葉を失っているようだった。貴族令嬢ならまず見る事ないでしょうからね。
困惑気味に見守るサキの目の前で私たちは訓練場の中を30周したり、筋トレを10分間ぶっ通しでしたり、最後は時間の限りの打ち合い稽古をしたりしていたのだ。私だって最初は驚いたけど、まさか初回からちゃんとこなし切っちゃうとは思ってもみなかった。だからこそ、変な目で見られたわけなんだけどね。でも、私は痩せるという大目標があるから、この程度で挫けたりしませんわよ。それに、私は文武両道のスーパーヒロインなのですからね。
さてさて、そうした中講義が終わると、やっぱり私とサクラとタンの三人を除けば、みんなばたんきゅーである。もうこの光景を見るのは何度目なのやら……。
この光景には、サキは完全に戸惑っていた。どうしたらいいのか分からないようである。それを見かねた私は、自分にとりあえず筋肉痛を軽減する魔法を掛けてサキのところまで歩いていく。
「ささっ、サキ様。手本を見せますので、頑張って施して参りましょう」
「は、はい……」
私がサキの手を取って、倒れている学生たちのところへと手を引いていく。怪我のひとつもなく、ただ疲れて倒れているだけなのだが、それでもこのサキのビビりようである。
そんなサキの様子に構う事なく、私はまず一番近くに居た学生に手をかざすと、疲労を取るための回復魔法をかける。私の両手がぱあっと光り、その光が学生へと吸い込まれていく。
「あ、あれ……?」
魔法を掛けられた学生がもの凄く混乱している。それもそうだろう、さっきまで息が上がっていたのが嘘のように楽になったのだから。
「サキ様、これが回復魔法でございます」
「す、すごい……」
あまりに早い症状の改善に、サキはものすごく感動しているようだった。だけど、それと同時に怖くもなった。そのサキの表情の変化を、私はすぐに読み取った。
「サキ様、その心配はすごくよく分かります。回復させられるという事は、相手に無理を強いる事になります。回復魔法は便利ではありますが、その感覚を持っていられるという事はとても重要なんですよ」
「うむ、確かにそうだな。特に前線であると、負傷兵をすぐにまた前線に送り出す事になりかねないからな」
私が説明していると、後ろからミスミ教官がやって来て説明を加えていた。バッサーシ辺境伯の血筋の方が言うだけに、ものすごく生々しい説得力のある話である。
「だから、理想の回復魔法としては、とにかく人を死なせない事だ。必ずしも完全回復させる必要はない。例えば死にかけた兵士がすぐさま戦場に戻れるかと言ったら、そんな事はないからな」
本当にミスミ教官の言葉は重かった。騎士団として働いているだけに、現場を嫌というくらい見てきたのだろう。
「だが、その細やかな見極めというのも、魔法を使いこなしてこそだ。ここに居る連中はみんな疲労と筋肉痛だ。気にする事なく、次の講義に向かえるように回復させてやってくれ」
「……はい!」
ミスミ教官の言葉で吹っ切れたのか、サキは一生懸命回復魔法を試みている。
「さて、アンマリア・ファッティよ」
「はい、なんでしょうか、ミスミ教官」
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「承知致しましたわ」
私が返事をすると、ミスミ教官は手を振りながら訓練場を去っていったのだった。
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