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第四章 学園編・1年後半
第193話 気になる情報
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さてさて、サキへの魔法指導は順調のようよ。
それはそれとして、来年に向けて動きがあるから、それに備えておかなきゃいけないのが大変ね。
一つはリブロ王子が学園に入学されるという事。フィレン王子の1つ下で、隠しの攻略対象となっていた人物だけど、さすがにリアルになると全然隠れてないのよね、これが。
次にミール王国のエスカ王女の留学。彼女も前世は「アンマリアの恋愛ダイエット大作戦」のプレイ経験者で、やたらとサーロイン王国に来たがっていた人物。もうトラブルの予感しかないわ。
さらには、追加コンテンツで登場したらしい、北西の隣国ベジタリウスの双子の王子と王女ね。王女の方は第二ヒロインらしく、私のように太ってらっしゃるとかどうとか。このゲームの製作者は、ヒロインを太らせるとかさ、女性に何か恨みでもあるのかしらね……。
それにしても、このベジタリウスの双子の事がよく分からない。彼らが国に来る前に情報を集められないかしらね。
そこで、私はサクラのところを訪れた。
「サクラ様、ちょっとよろしいでしょうか」
「なんでしょうか、アンマリア様」
私が呼び掛けると、サクラはくるっと振り返って微笑んでいた。いやはや、これが剣術大会で優勝した人物とは思えない、そのくらいのギャップが存在していた。サクラも普通にしていれば普通の令嬢なのである。普通にしていれば……。
「ええ、ベジタリウス王家について少しお話を伺いたく思いまして、それで声を掛けさせて頂きました」
「ベジタリウス王家ですか? ……ああ、確か来年からこちらの学園の王子と王女が揃って留学とかいう話がありましたね」
どうやらサクラも知っている話のようだった。という事は、エスカの言っていた通り、追加コンテンツも含めた世界という事になるわけだ。それはそれで、ますますやる事が分からなくなってくるというもの。なにせ私はその追加コンテンツの話なんて知らないんだものね。
そもそも、幼いうちに王子たちの婚約者にされてしまった時点で完全にストーリー本編を破壊してしまっているのである。そこへ拡張版の話が加わるとなれば、余計の事話がややこしくなるわけなのだ。これならば私のやる事は、当初の通りに痩せていく事だけだろう。目指すは55kg未満のフィレン王子ルートよ。
「ベジタリウス王家は、このサーロインの地を何度となく狙ってきた事のある王家ですからね。今回の留学も、はっきり言って油断はできません。私たちは先輩としてしっかりと後輩となる王子たちを見守ってあげなければならないと思います」
私が考え事をしている間も、サクラはベジタリウス王家について語っていたようである。いけないいけない、聞き逃すところだったわ。私はすぐさま、サクラの話へと意識を集中させる。
バッサーシ辺境伯の家は王国北西部の山岳地帯を守る一族である。それがゆえに、その方向にあるベジタリウス王国とは、過去何度か戦闘を交えた事があるのである。その事を知っていたからこそ、私はサクラに情報を求めたのだ。ミスミ教官でもいいだろうけれど、あちらだとなんだか家に帰れなくなりそうなのでやめておいたのだ。ああいう堅苦しそうな人物は、一度語り始めると止まらないだろうと、私の勘が告げていたのである。
「ふふっ、おば様に声をお掛けしなく正解だったと思いますよ。おば様は生粋の武人ですからね。ベジタリウス王国の事もかなり敵視していますから、それこそ恨みつらみを交えながら話が長々と続いたでしょうからね」
サクラが笑顔で怖い事を言い放っていた。うん、やっぱりあっちに行かなくて正解だった。
「ですので、おば様よりはお父様の方がいいかと思いますよ。お父様は領主として立派ですから、要点だけきっちり話して下さると思いますのでね」
サクラはそう言ってにこりと笑っていた。
そのサクラの提案に私はそれもいいかなと考えた。なにせ瞬間移動魔法があるのだから、行って帰ってくるのはすぐできるのだ。休みの日の朝に出ていけば、最悪でも夜には戻る事ができるはずである。
「ありがとうございます、サクラ様。次の休みにでも魔法で飛んでいきます」
私がそう言うと、どういうわけかサクラはにこにこと笑顔で私の事を見ていた。いや、なんなんだろう。ちょっと怖いかな?
というわけで、サクラと話をして、次の休みにバッサーシ辺境伯邸を訪れる事に決めた私。その私の様子に、サクラはとても満足した様子だった。
そして、迎えた次の休みの日。朝から私はスーラと一緒に出掛ける準備をしていた。
「あら、お姉様、どこか行かれるのですか?」
モモに見つかって問い掛けられる私。
「ええ、バッサーシ辺境伯のところへ行ってこようと思いますのよ。ちなみにお父様とお母様には許可を頂いてます」
「なんだって、そんな所へ行かれるのですか?」
私が答えると、モモは当然のように聞き返してくる。そりゃ、訳が分からないわよね。
「ちょっと聞きたい事がありましてね。それで直にお話を伺ってくるというわけですわ」
私は用件をぼかしてモモに答える。さすがにモモにこれを伝えるわけにはいかないもの。
「私は、連れて行ってもらえないのですか?」
「それはしてあげたいけれど、今回連れて行くのはスーラだけになりますわ。私の魔法じゃ同時に運べるのは私以外に一人だけなんですから」
私にやんわり断られると、モモはちょっと拗ねていた。本当に可愛いわね、この妹。
「ふふっ、これから寒くなりますから、モモにしかできない事もあるでしょう? それを頑張ってちょうだい、ね?」
「はい、分かりました、お姉様」
というわけで、駄々を捏ねそうなモモを説得した私は、スーラを連れて人気のない場所へと移動する。
「さあ、飛びますよ。準備はいいかしら?」
「はい、お嬢様」
次の瞬間、私たちの姿は伯爵邸からあっという間に掻き消えたのだった。
それはそれとして、来年に向けて動きがあるから、それに備えておかなきゃいけないのが大変ね。
一つはリブロ王子が学園に入学されるという事。フィレン王子の1つ下で、隠しの攻略対象となっていた人物だけど、さすがにリアルになると全然隠れてないのよね、これが。
次にミール王国のエスカ王女の留学。彼女も前世は「アンマリアの恋愛ダイエット大作戦」のプレイ経験者で、やたらとサーロイン王国に来たがっていた人物。もうトラブルの予感しかないわ。
さらには、追加コンテンツで登場したらしい、北西の隣国ベジタリウスの双子の王子と王女ね。王女の方は第二ヒロインらしく、私のように太ってらっしゃるとかどうとか。このゲームの製作者は、ヒロインを太らせるとかさ、女性に何か恨みでもあるのかしらね……。
それにしても、このベジタリウスの双子の事がよく分からない。彼らが国に来る前に情報を集められないかしらね。
そこで、私はサクラのところを訪れた。
「サクラ様、ちょっとよろしいでしょうか」
「なんでしょうか、アンマリア様」
私が呼び掛けると、サクラはくるっと振り返って微笑んでいた。いやはや、これが剣術大会で優勝した人物とは思えない、そのくらいのギャップが存在していた。サクラも普通にしていれば普通の令嬢なのである。普通にしていれば……。
「ええ、ベジタリウス王家について少しお話を伺いたく思いまして、それで声を掛けさせて頂きました」
「ベジタリウス王家ですか? ……ああ、確か来年からこちらの学園の王子と王女が揃って留学とかいう話がありましたね」
どうやらサクラも知っている話のようだった。という事は、エスカの言っていた通り、追加コンテンツも含めた世界という事になるわけだ。それはそれで、ますますやる事が分からなくなってくるというもの。なにせ私はその追加コンテンツの話なんて知らないんだものね。
そもそも、幼いうちに王子たちの婚約者にされてしまった時点で完全にストーリー本編を破壊してしまっているのである。そこへ拡張版の話が加わるとなれば、余計の事話がややこしくなるわけなのだ。これならば私のやる事は、当初の通りに痩せていく事だけだろう。目指すは55kg未満のフィレン王子ルートよ。
「ベジタリウス王家は、このサーロインの地を何度となく狙ってきた事のある王家ですからね。今回の留学も、はっきり言って油断はできません。私たちは先輩としてしっかりと後輩となる王子たちを見守ってあげなければならないと思います」
私が考え事をしている間も、サクラはベジタリウス王家について語っていたようである。いけないいけない、聞き逃すところだったわ。私はすぐさま、サクラの話へと意識を集中させる。
バッサーシ辺境伯の家は王国北西部の山岳地帯を守る一族である。それがゆえに、その方向にあるベジタリウス王国とは、過去何度か戦闘を交えた事があるのである。その事を知っていたからこそ、私はサクラに情報を求めたのだ。ミスミ教官でもいいだろうけれど、あちらだとなんだか家に帰れなくなりそうなのでやめておいたのだ。ああいう堅苦しそうな人物は、一度語り始めると止まらないだろうと、私の勘が告げていたのである。
「ふふっ、おば様に声をお掛けしなく正解だったと思いますよ。おば様は生粋の武人ですからね。ベジタリウス王国の事もかなり敵視していますから、それこそ恨みつらみを交えながら話が長々と続いたでしょうからね」
サクラが笑顔で怖い事を言い放っていた。うん、やっぱりあっちに行かなくて正解だった。
「ですので、おば様よりはお父様の方がいいかと思いますよ。お父様は領主として立派ですから、要点だけきっちり話して下さると思いますのでね」
サクラはそう言ってにこりと笑っていた。
そのサクラの提案に私はそれもいいかなと考えた。なにせ瞬間移動魔法があるのだから、行って帰ってくるのはすぐできるのだ。休みの日の朝に出ていけば、最悪でも夜には戻る事ができるはずである。
「ありがとうございます、サクラ様。次の休みにでも魔法で飛んでいきます」
私がそう言うと、どういうわけかサクラはにこにこと笑顔で私の事を見ていた。いや、なんなんだろう。ちょっと怖いかな?
というわけで、サクラと話をして、次の休みにバッサーシ辺境伯邸を訪れる事に決めた私。その私の様子に、サクラはとても満足した様子だった。
そして、迎えた次の休みの日。朝から私はスーラと一緒に出掛ける準備をしていた。
「あら、お姉様、どこか行かれるのですか?」
モモに見つかって問い掛けられる私。
「ええ、バッサーシ辺境伯のところへ行ってこようと思いますのよ。ちなみにお父様とお母様には許可を頂いてます」
「なんだって、そんな所へ行かれるのですか?」
私が答えると、モモは当然のように聞き返してくる。そりゃ、訳が分からないわよね。
「ちょっと聞きたい事がありましてね。それで直にお話を伺ってくるというわけですわ」
私は用件をぼかしてモモに答える。さすがにモモにこれを伝えるわけにはいかないもの。
「私は、連れて行ってもらえないのですか?」
「それはしてあげたいけれど、今回連れて行くのはスーラだけになりますわ。私の魔法じゃ同時に運べるのは私以外に一人だけなんですから」
私にやんわり断られると、モモはちょっと拗ねていた。本当に可愛いわね、この妹。
「ふふっ、これから寒くなりますから、モモにしかできない事もあるでしょう? それを頑張ってちょうだい、ね?」
「はい、分かりました、お姉様」
というわけで、駄々を捏ねそうなモモを説得した私は、スーラを連れて人気のない場所へと移動する。
「さあ、飛びますよ。準備はいいかしら?」
「はい、お嬢様」
次の瞬間、私たちの姿は伯爵邸からあっという間に掻き消えたのだった。
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