伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
234 / 500
第五章 2年目前半

第234話 頭を悩ます国家行事

しおりを挟む
 翌日、学園に出向いた私は、自分の席でひたすら突っ伏していた。それというのも、急にミール王国の建国祭に出向く事になって、やる事がたんまりと増えたからだった。急に予定を組まなきゃいけなくなったし、建国祭に何を持っていくかを考えなきゃいけなくなったんだもの。聞けば、王族以外で行かなくちゃいけないのは私だけらしいので、余計に悩まされるというものだった。なんで私だけなのよ。
 とはいえ城で決まった事なので、私に拒否権はなかった。娘である私が国賓として参加となれば父親も鼻高々だろう。ものすごく乗り気でセッティングしようとしてるし、正直エスカとミズーナ王女という転生者二人が居なかったら四面楚歌だったでしょうね。はあ……。
「アンマリア・ファッティ、一体どうしたんだ。ぼーっとしていては危険だぞ」
「あっ、すみません」
 私はミスミ教官に叱られていた。どうやらやる事が多すぎて、講義に集中できていなかったようだ。うん、今ばかりは忘れよう。
「しかし、そうやって集中できなくなるのは理解できる。王族ばかりが参加する行事に、唯一一般貴族として参加するのだからな。同行人とは違って緊張するだろうな。分かるぞ、その気持ちは」
 ミスミ教官の耳にも、私がミール王国の建国祭に参加する事が届いているようだった。なんで知ってるのやら。そう疑問に思った私だけど、そういえばこの人国境警備とかに回るような王国騎士団の人間だったわ。そりゃ耳に入っててもおかしくないかしらね。
 それにしても、ミスミ教官に心配と共感されるというのはなかなかに新鮮だった。そのおかげか少し気が楽になったので、この日の講義はなんとか乗り越える事できた。ありがとう、ミスミ教官。
 しかし、家に帰れば再び頭を悩まされる事になる。
「アンマリア、一体何を用意するのかしらね」
 エスカが話してきた話題、そう贈り物というか貢物の問題よ。ミール王国は交流があるとはいえど、私にはそれほど国の知識はない。こればかりはエスカを頼らざるを得なかった。
「エスカ、ミール王国にはどういったものを贈った方がいいのかしら」
 私の質問にきょとんとするエスカ。なんでそんな顔をするのよ。
「あらら、私の国に合わせた贈り物をしようとしてるの? アンマリアって真面目ね。別にそんなにこだわらなくてもいいわよ。好きなものを贈ってあげたら喜ぶから」
 エスカは笑いながらそんな事を言っていた。ミール王国、ずいぶんと適当な国ね。
「はあ、だったら実用性のありそうなものを用意させてもらうわ。エスカも相談に乗ってよ」
「分かったわよ。私の国の事だもんね」
 とまあ、これは私たち二人で用意する事にしたので、これで解決しただろう。
 だがしかし、それ以外にも問題はある。
 実は予定ではフィレン王子の誕生日会の後、私は女性のみで同じ馬車に乗ってミール王国に向かう事になっている。その面子が王妃、私、エスカ、ミズーナ王女というとんでもない顔ぶれとなっている。それぞれの侍女も乗り込むので八人が乗れる馬車っていうのはすごいわね。しかも、私とミズーナ王女は太ってるんだけど? ほんとに大丈夫?
 この時点ですでにかなり心配になってきた。知っている限り、馬車の最大積載人数は御者台含めて八人なのだから。乗れないじゃん。
「まあそうよね。だから、私たち転生者三人で乗って、王妃様はやはり国王陛下とご一緒がいいと思うのよ。というか、二人のせいで私も乗れるかどうかは怪しいだけどね」
「……悪かったわね、太ってて」
 エスカに向けてジト目をするアンマリア。さすがに怖かったのか、エスカの表情が少し引きつっていた。
「正直、留学してそうそう学園を休んでまで国に戻る事になるとは思わなかったわね。とはいえ、建国祭である以上、王女である私が参加しないわけにはいかないけれど」
「そういえば、去年、アーサリーは戻らなかったわよ?」
「そういえばそうだったわね。でもいいのよ、あいつはああいう性格なんだから。正直このまま王位が継げるとは思わないわ」
「はっきり言うわね」
「言うわよ、妹なんだから」
 こう言い合った私たちは、しばらくして大笑いをしていた。
「お姉様、戻ってらしたんですね」
 そこへモモが現れる。
「いいですわね、ミール王国の建国祭。私も参加してみたかったですわ」
「あら、モモも知ってますのね」
「あっ、ごめんなさい。私が話をしたんですよ。そろそろ時期だなーって独り言を喋っていたのを聞かれたみたいで」
 私の疑問に、エスカがすんなりと答えを暴露してくれていた。エスカもかなりうっかりさんなのである。
「呆れたわね。去年はすっかり隠し通せていたのに、今年は何をしてるのかしら」
「あははははは」
 笑ってごまかすエスカである。そのエスカの態度に、ただただため息しか出ない私。
「モモ、今年は我慢して下さいね。お父様に掛け合って、もっと人を呼べるようにしていきますから」
「はい、楽しみにしております」
 適当な事を言って言いくるめようとするエスカだが、かえって自分のハードル上げてないかしらね。突っ込みたいところだけど、あえて私は黙っていた。
「とりあえずエスカ王女殿下、誕生日パーティーと建国祭に向けて贈り物の準備を致しませんとね」
「そうですわね。モモも手伝ってくれますか?」
「はい、もちろんでございます」
 こうして、私たちは三人で贈り物の準備をする事になったのだった。さて、何を贈りましょうかね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...