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第五章 2年目前半
第233話 ミール王国からの招待状
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訳も分からないうちに、私は王子王女たちと一緒に城へと連れて行かれてしまった。モモも連れて行こうとしたものの、今回ばかりは却下された。王子たちに連れて行かれる私に、モモは心配そうな目を向けていたのが印象的だった。実に心が痛い。
それにしても、さっきの話からすると、ミール国王が何かを企んだっぽいらしいわね。一体何を思いついたのかしらね。
あれよあれよという間に、私は国王と王妃、サーロインの二人の王子、ミール王国の王族兄妹、ベジタリウス王国の王族兄妹という、王族たちの並びの中に巻き込まれてしまった。ちょっと待って、私は伯爵令嬢よ。なんで王族たちの集まりの中に放り込まれなきゃいけないのよ!
私は心の中で必死に抗議をした。しかし、王族相手に面と向かって文句を言うだけの勇気は、今の私にはなかった。エスカだけだったら言えるのに……。
言いたい事も言えないままだったが、ようやくここで国王が口を開いた。
「よく集まってくれたな。アンマリアはその、なんだ。そこに居るエスカと親しいという事で呼んだのだ」
うん、やっぱりでした。エスカと仲がいい事は、エスカの普段を見ていれば誰にでも分かるだろうからね。この分だと城でもかなり大っぴらにしてたと思うわよ。
私はエスカを見ながらギリギリと歯ぎしりをしている。
私の鬼のような形相を見たエスカは、実に気まずそうな顔をしながらそのまま視線を私から外していった。
「それで、その理由なのだが、ミール王国の建国祭への招待状が届いたのだ。その中にアンマリアの名前もあったという事なのだよ」
気を取り直して国王から聞かされた話なのだが、どうやらミール王国の建国祭の話のようである。
ここでミール王国の建国祭の説明をすると、実にその通りのミール王国の建国を祝う大規模なお祭りらしい。通常は外国から客人を招くというような事のない、自国内だけで完結したお祭りなのだそうだ。
しかし、その長らく続いてきた慣習を破り、ミール国王は隣国であるこのサーロインから客人を招く事を決めたのだそうだ。
ちなみにこのお祭り、王都シャオンと港町クルスの二か所で行うものらしい。理由としてはシャオンは内陸すぎるからだそうな。ミール王国はそもそも陸に上がった海賊なので、建国祭ともなれば本来は海で行うべきなのだ。
ではなぜ、内陸地に王都を設けたのか。それは、サーロイン王国の土地を狙おうとした名残なのだという。前線基地として築いた場所が、そのまま王都となったのである。なんともなな理由だった。それに伴って、建国祭はシャオンとクルスの2か所で行うようになったのだそうだ。
「それではお聞き致しますが、どうして私たちを呼ぶ事になったのでしょうか」
ひとつ咳払いをした私は、改めて国王に確認する。
「アンマリアが招待された理由としては、今話した通り、王女であるエスカと親しいという事だな。あとこの話がこちらに来た理由として、兄であるアーサリーも預かっている点もあるだろう。ミール王国としては王族二人を預かってもらっているお礼というつもりなのだと思う。私としても隣国との摩擦が減るというのであれば、これには応じたいと思っている」
国王は長々と理由を語っていた。これには私も納得はいった。
次に問題になるのは、その開催時期だ。この点についても私は確認をする。
「我が息子フィレンの誕生日から10日後だな。なので、そのパーティーが終わってから出向いたとしても十分間に合う。こちらも王子たちを向かわせるつもりだし、その間の学園の事は心配しないでくれ」
ふむ、中途半端な時期ではあるけれど、国の事情だから仕方ないわね。
「承知致しました。アンマリア・ファッティ、ミール王国の建国祭に参加させて頂きます」
断る理由がまったくないので、私は招待を受ける事にした。それを聞いたエスカがものすごく顔を明るくして喜んでいる。なんでそんなに嬉しそうなんですかね、この人は。
私が承知した事で、どういうわけか国王がもの凄く安心していた。この反応は正直分からない。私はこの国の民である以上、国王の権限を利用して命令だってできたはず。それを行使しないでお願いという形にしたのは、未来の王妃になるかも知れない私への配慮だったのだろう。
だが、困った事にこの建国祭、17ターン目まるまると使うという事で、移動時間も含めて準備にひと月も掛けられない状態だった。しかも、フィレン王子の誕生日が間にあるだけに、本当に急ピッチで行う必要があるのである。建国祭にお祝いの品もないというのは、さすがに失礼が過ぎるのである。
そんなわけで、すぐさま大臣を務める私の父親も招集されて、わいわいと話し合いが持たれる事になったのだった。ちょっと待って、私まで巻き込むなーっ!
なんにしても、フィレン王子の誕生日パーティーとミール王国の建国祭という大きな行事が立て続けに行われる事になる。実にてんやわんやの大忙しな1か月が始まったのであった。
それにしても、さっきの話からすると、ミール国王が何かを企んだっぽいらしいわね。一体何を思いついたのかしらね。
あれよあれよという間に、私は国王と王妃、サーロインの二人の王子、ミール王国の王族兄妹、ベジタリウス王国の王族兄妹という、王族たちの並びの中に巻き込まれてしまった。ちょっと待って、私は伯爵令嬢よ。なんで王族たちの集まりの中に放り込まれなきゃいけないのよ!
私は心の中で必死に抗議をした。しかし、王族相手に面と向かって文句を言うだけの勇気は、今の私にはなかった。エスカだけだったら言えるのに……。
言いたい事も言えないままだったが、ようやくここで国王が口を開いた。
「よく集まってくれたな。アンマリアはその、なんだ。そこに居るエスカと親しいという事で呼んだのだ」
うん、やっぱりでした。エスカと仲がいい事は、エスカの普段を見ていれば誰にでも分かるだろうからね。この分だと城でもかなり大っぴらにしてたと思うわよ。
私はエスカを見ながらギリギリと歯ぎしりをしている。
私の鬼のような形相を見たエスカは、実に気まずそうな顔をしながらそのまま視線を私から外していった。
「それで、その理由なのだが、ミール王国の建国祭への招待状が届いたのだ。その中にアンマリアの名前もあったという事なのだよ」
気を取り直して国王から聞かされた話なのだが、どうやらミール王国の建国祭の話のようである。
ここでミール王国の建国祭の説明をすると、実にその通りのミール王国の建国を祝う大規模なお祭りらしい。通常は外国から客人を招くというような事のない、自国内だけで完結したお祭りなのだそうだ。
しかし、その長らく続いてきた慣習を破り、ミール国王は隣国であるこのサーロインから客人を招く事を決めたのだそうだ。
ちなみにこのお祭り、王都シャオンと港町クルスの二か所で行うものらしい。理由としてはシャオンは内陸すぎるからだそうな。ミール王国はそもそも陸に上がった海賊なので、建国祭ともなれば本来は海で行うべきなのだ。
ではなぜ、内陸地に王都を設けたのか。それは、サーロイン王国の土地を狙おうとした名残なのだという。前線基地として築いた場所が、そのまま王都となったのである。なんともなな理由だった。それに伴って、建国祭はシャオンとクルスの2か所で行うようになったのだそうだ。
「それではお聞き致しますが、どうして私たちを呼ぶ事になったのでしょうか」
ひとつ咳払いをした私は、改めて国王に確認する。
「アンマリアが招待された理由としては、今話した通り、王女であるエスカと親しいという事だな。あとこの話がこちらに来た理由として、兄であるアーサリーも預かっている点もあるだろう。ミール王国としては王族二人を預かってもらっているお礼というつもりなのだと思う。私としても隣国との摩擦が減るというのであれば、これには応じたいと思っている」
国王は長々と理由を語っていた。これには私も納得はいった。
次に問題になるのは、その開催時期だ。この点についても私は確認をする。
「我が息子フィレンの誕生日から10日後だな。なので、そのパーティーが終わってから出向いたとしても十分間に合う。こちらも王子たちを向かわせるつもりだし、その間の学園の事は心配しないでくれ」
ふむ、中途半端な時期ではあるけれど、国の事情だから仕方ないわね。
「承知致しました。アンマリア・ファッティ、ミール王国の建国祭に参加させて頂きます」
断る理由がまったくないので、私は招待を受ける事にした。それを聞いたエスカがものすごく顔を明るくして喜んでいる。なんでそんなに嬉しそうなんですかね、この人は。
私が承知した事で、どういうわけか国王がもの凄く安心していた。この反応は正直分からない。私はこの国の民である以上、国王の権限を利用して命令だってできたはず。それを行使しないでお願いという形にしたのは、未来の王妃になるかも知れない私への配慮だったのだろう。
だが、困った事にこの建国祭、17ターン目まるまると使うという事で、移動時間も含めて準備にひと月も掛けられない状態だった。しかも、フィレン王子の誕生日が間にあるだけに、本当に急ピッチで行う必要があるのである。建国祭にお祝いの品もないというのは、さすがに失礼が過ぎるのである。
そんなわけで、すぐさま大臣を務める私の父親も招集されて、わいわいと話し合いが持たれる事になったのだった。ちょっと待って、私まで巻き込むなーっ!
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