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第六章 2年目後半
第302話 いよいよ帰れそうですね
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それからというもの、私たちは一週間ほどベジタリウス王城に泊まり込み、書庫の本を読み漁った。
ベジタリウス王国の食事は思ったよりおいしかったし、城の人たちも優しくしてくれたので、実に私たちの読書ははかどった。知らなかった事がたくさん分かって、実に有意義だったと思う。
「読む限り、魔王という存在はベジタリウス王国の国土内に封印されているみたいな事が書かれていますね」
「えっ、そうなのですか?!」
私が読んだ範囲で分かった事を口にすると、サクラがもの凄く驚いていた。あなたも本を読んでいたでしょうが……。これだから脳筋の一族は困ったものだわね。
「ええ、ベジタリウス王国の北部の山岳地帯。そこに魔王が封印されているというような事が書かれていましたよ。……まったく、どこのRPGだっていうのよ」
「あ、あーるぴー……? 何ですかそれって……」
思わず口に出してしまった事に、サクラが反応してしまう。とりあえず私は適当にごまかしておく。
「サクラ様の方は何か分かりましたか?」
私の方ばかり気にしてくるものだから、私はサクラに対して話を振る。
「えっと……」
話を振られて慌てるサクラ。だから、あなたも本読んでたでしょうが!!
サクラの態度を見て頭が痛くなる私だった。
「とりあえずメモは取ってますよね? 今夜にでもチェックさせてもらいますからね!」
「はっ、はい」
私の勢いに押されるサクラである。普段は引っ張りまわす方のサクラだけど、さすが頭脳的な事となるとダメダメなようだった。
「めぼしい情報は手に入れられましたから、明日くらいにはサーロイン王国に戻りましょうか。ご実家には一応寄っていかれますか?」
私はサクラに確認を取る。
「いえ、王都に戻りましょう。お父様にはおば様を通じて連絡を入れようかと思います」
「分かりました。その方向で行きましょう」
そんなわけで、私たちは翌日にサーロイン王国の王城まで瞬間移動魔法で跳んで帰る事になったのだった。
夜、ベジタリウス国王夫妻との晩餐会に望む私たち。
この顔合わせも一週間続けばもう見慣れたものだった。最初はさすがに他国の王族であるがために緊張したわね。慣れって怖い。
「さて、一週間経ったわけだが、書庫の本はどのくらい読んだのかな?」
パセラ国王が私たちに問い掛けてくる。
「はい、魔王に関する部分を中心的に読ませて頂きました。かなり興味深かったので、思わずかなり読みふけってしまいました」
「そうかそうか。こちらの方の進展は……と言いたいところだが、あまり思わしくない。そちらに情報を渡そうとしても、厳しいかも知れんな」
「いえ、まだ本は読み切れていませんし、気が向いたらまた来させて頂きます。他国の人間に情報はそうほいほいと渡すべきではないですから、できればそちらで対処頂けると助かります」
諜報部の調査をしてもらえるだけでもありがたい。これで動きが鈍ってくれればいいのだけどね……。
正直言って不安しかない。なにせ呪具を使ってくるような連中だもの、きっとやばい連中に間違いないわね。本国が調査に本腰を入れたところで、動きを控えるとは考えにくかった。
「それにしても、その様子だともう帰るつもりみたいだな。帰るあてはあるのか?」
「ええ、私たちには魔法がございますので」
パセラ国王に尋ねられた私は、ドヤ顔で返しておく。
「そうか……。それと、息子と娘の近況を伝えてくれて、本当にありがとう。あの子たちを送り出すのは、本当は不安だったからな」
父親の顔を覗かせるパセラ国王である。隣では王妃も静かに頷いている。
「いえ、殿下たちをお預かりしているのですから、このくらいは当然でございます。私たちの方こそありがとうございました。急な訪問だったというのにこのように迎え入れて下さった事を感謝致します」
こういう時はサクラは緊張でドジを踏みやすいらしいので、結局のところ、私とパセラ国王の二人による会話で成り立っていた。とはいえ、さすがは王子の婚約者としての立場がある私である。きっちりと国王と言葉のキャッチボールができていた。
「しかし、まったく分からんな」
「国王陛下、一体どうされたのですか?」
「いや、うちの子どもたちも居るような現場で騒ぎを起こしている事だ。イスンセは我が国の諜報部の人間。まるで謀反を起こすかのような……」
その時だった。
「陛下、危ない!」
私は咄嗟に強力な防壁を張る。キンという音がして、何かが床に転がった。
「そこだっ!」
サクラがすぐに動いていた。
「ぐはっ!」
部屋のカーテンの裏から男が出てきたのである。
「そこに転がったナイフ、触ってはいけません。毒が塗ってあります」
「なんだと?!」
床のナイフを確認した私はすぐに鑑定魔法を掛けていた。それなりに強い毒が塗られていたのだ。
「どうやら、諜報部は本格的に王国に牙を剥こうってわけですね」
床に転がった男を力強く踏みつけるサクラ。あまりのダメージに男は床で苦しそうにうずくまっていた。
「くっ……疑いを向けられたのに気が付いたというわけか」
国王は驚愕の表情を浮かべている。
これでベジタリウス王国から帰れると思ったのだけど、思わぬ事態に巻き込まれてしまったようだった。あまりの急展開に、私は特大のため息を吐かざるを得なかった。
ベジタリウス王国の食事は思ったよりおいしかったし、城の人たちも優しくしてくれたので、実に私たちの読書ははかどった。知らなかった事がたくさん分かって、実に有意義だったと思う。
「読む限り、魔王という存在はベジタリウス王国の国土内に封印されているみたいな事が書かれていますね」
「えっ、そうなのですか?!」
私が読んだ範囲で分かった事を口にすると、サクラがもの凄く驚いていた。あなたも本を読んでいたでしょうが……。これだから脳筋の一族は困ったものだわね。
「ええ、ベジタリウス王国の北部の山岳地帯。そこに魔王が封印されているというような事が書かれていましたよ。……まったく、どこのRPGだっていうのよ」
「あ、あーるぴー……? 何ですかそれって……」
思わず口に出してしまった事に、サクラが反応してしまう。とりあえず私は適当にごまかしておく。
「サクラ様の方は何か分かりましたか?」
私の方ばかり気にしてくるものだから、私はサクラに対して話を振る。
「えっと……」
話を振られて慌てるサクラ。だから、あなたも本読んでたでしょうが!!
サクラの態度を見て頭が痛くなる私だった。
「とりあえずメモは取ってますよね? 今夜にでもチェックさせてもらいますからね!」
「はっ、はい」
私の勢いに押されるサクラである。普段は引っ張りまわす方のサクラだけど、さすが頭脳的な事となるとダメダメなようだった。
「めぼしい情報は手に入れられましたから、明日くらいにはサーロイン王国に戻りましょうか。ご実家には一応寄っていかれますか?」
私はサクラに確認を取る。
「いえ、王都に戻りましょう。お父様にはおば様を通じて連絡を入れようかと思います」
「分かりました。その方向で行きましょう」
そんなわけで、私たちは翌日にサーロイン王国の王城まで瞬間移動魔法で跳んで帰る事になったのだった。
夜、ベジタリウス国王夫妻との晩餐会に望む私たち。
この顔合わせも一週間続けばもう見慣れたものだった。最初はさすがに他国の王族であるがために緊張したわね。慣れって怖い。
「さて、一週間経ったわけだが、書庫の本はどのくらい読んだのかな?」
パセラ国王が私たちに問い掛けてくる。
「はい、魔王に関する部分を中心的に読ませて頂きました。かなり興味深かったので、思わずかなり読みふけってしまいました」
「そうかそうか。こちらの方の進展は……と言いたいところだが、あまり思わしくない。そちらに情報を渡そうとしても、厳しいかも知れんな」
「いえ、まだ本は読み切れていませんし、気が向いたらまた来させて頂きます。他国の人間に情報はそうほいほいと渡すべきではないですから、できればそちらで対処頂けると助かります」
諜報部の調査をしてもらえるだけでもありがたい。これで動きが鈍ってくれればいいのだけどね……。
正直言って不安しかない。なにせ呪具を使ってくるような連中だもの、きっとやばい連中に間違いないわね。本国が調査に本腰を入れたところで、動きを控えるとは考えにくかった。
「それにしても、その様子だともう帰るつもりみたいだな。帰るあてはあるのか?」
「ええ、私たちには魔法がございますので」
パセラ国王に尋ねられた私は、ドヤ顔で返しておく。
「そうか……。それと、息子と娘の近況を伝えてくれて、本当にありがとう。あの子たちを送り出すのは、本当は不安だったからな」
父親の顔を覗かせるパセラ国王である。隣では王妃も静かに頷いている。
「いえ、殿下たちをお預かりしているのですから、このくらいは当然でございます。私たちの方こそありがとうございました。急な訪問だったというのにこのように迎え入れて下さった事を感謝致します」
こういう時はサクラは緊張でドジを踏みやすいらしいので、結局のところ、私とパセラ国王の二人による会話で成り立っていた。とはいえ、さすがは王子の婚約者としての立場がある私である。きっちりと国王と言葉のキャッチボールができていた。
「しかし、まったく分からんな」
「国王陛下、一体どうされたのですか?」
「いや、うちの子どもたちも居るような現場で騒ぎを起こしている事だ。イスンセは我が国の諜報部の人間。まるで謀反を起こすかのような……」
その時だった。
「陛下、危ない!」
私は咄嗟に強力な防壁を張る。キンという音がして、何かが床に転がった。
「そこだっ!」
サクラがすぐに動いていた。
「ぐはっ!」
部屋のカーテンの裏から男が出てきたのである。
「そこに転がったナイフ、触ってはいけません。毒が塗ってあります」
「なんだと?!」
床のナイフを確認した私はすぐに鑑定魔法を掛けていた。それなりに強い毒が塗られていたのだ。
「どうやら、諜報部は本格的に王国に牙を剥こうってわけですね」
床に転がった男を力強く踏みつけるサクラ。あまりのダメージに男は床で苦しそうにうずくまっていた。
「くっ……疑いを向けられたのに気が付いたというわけか」
国王は驚愕の表情を浮かべている。
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