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第六章 2年目後半
第303話 応急処置的な結界を
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ベジタリウス王国から帰ろうとした矢先、とんでもない事件が起きてしまう。正直これにはどうしたらいいのか私は頭を抱えた。国王の命を狙うなど、誰が考えただろうか。本気で頭が痛い。
今回、国王に毒ナイフを投げた男は即刻地下牢に閉じ込められた。おそらくは拷問が続く事になるだろう。
しかし、私たちもこれ以上こちらに滞在するわけにもいかないので、どうしたものだろうか。
私は悩んだ結果、ベジタリウスの城を包み込んだ防護と浄化の魔法を展開させる事にした。そのために、サクラと一緒に国王と王妃の部屋へと向かう。どちらかに会えればいいという算段である。
しかし、その魔法はあくまでも応急処置だった。頑張っても数日間しかもたないし、それ以上となると魔力の消耗が激しくなってしまう。バランスが難しいのである。
「サクラ様、よさそうな魔石ってありますかね」
そこで私は、サクラに話を振ってみる。魔石を使えば私の魔力の消費を抑えながら良質の結界を張れる可能性があるからだ。
魔石となれば私もそれなりに持ってはいるものの、魔道具のための数確保のために質としてはどうしても劣ってしまうものばかりなのよ。だからこそ、バッサーシ辺境伯の力を借りようというわけである。
「アンマリア様、さすがに私も持ち合わせはありません。お力になれず申し訳ございません……」
おおう、サクラでもダメだったか。こうなると、仕方なしに数日分の悪意を遮断する結界と無毒化の結界を張るという方向にした。
そうやってダメ元で出向いた私たちは、どうにか王妃と会う事ができた。
「まあ、お二人ともどうなさったのですか?」
「こんな時間失礼致します、ベジタリウス王妃殿下」
私はそう言いながら頭を下げる。後ろではサクラも同じように頭を下げている。
「実はですね、食事の際にあんな事がありましたので、一時凌ぎではありますが、城に結界を張らせて頂こうと思いまして訪問致しました」
「まあ、そんな事ができますのね」
驚きの反応をしながら、王妃がきょろきょろと辺りを見回す。
「ささっ、さっさと中に入ってきて。夜とはいえども、誰が居るか分かりませんのでね」
そう言って、王妃は私たちを部屋の中に招き入れてくれた。
私たちが中に入ると、王妃は部屋の扉をしっかりと閉めていた。
「事情は分かりました。それほどの強力な結界を私たちに断りもなく張るわけには参りませんものね。そのお気遣い、誠にありがたく思います」
王妃は突然の訪問にもかかわらず、私たちに丁寧に対応してくれている。
「それで、結界というものはどういったものなのでしょうか」
確認するように尋ねてくる王妃である。こちらとしても事情はすべて話しておくつもりなので、快く質問に答えておいた。
「そんな強力な結界を張る事が可能なのですか?」
「はい、私単独でもかなり強力なものを発動できます。ただし、もって最長3日間といったところでしょうから、また掛け直しにやって来なければなりません」
「ちなみにそれ以上長めに張る事はできるのですか?」
「私の魔力量を考えると、倍ほどまででしょう。ですが、その場合は私の命にかかわりかねません。今の消費魔力量に加えて、良質な魔石でもあれば効果を引き延ばす事ができると思います」
王妃の質問に、できる限り答える私。だけども、はっきりとした事は言えないので正直困ったものだった。なにせ試した事のない話だからね。
「とりあえず、今すぐ結界を張ります。私が離れても大丈夫な事は、サーロイン王城で既に実証済みですからね」
私はすぐさま魔法を発動させる。八つの属性すべてを操れる私だからこそできると言ってもいい複雑な魔法よ。
集中して魔法を発動させる私。
私を中心として、白い光の魔法陣が現れる。そこから光が広がっていくと、あっという間にベジタリウス王城を包み込んでしまった。
夜の闇を照らす一瞬の光。おそらく、巡回の兵士たちも気が付かなかっただろう。だって、夜に眩しい光なんて浴びたくないでしょう?
どうにか抑えた状態で結界を発動させた私。さすがに少しふらついてしまう。
「アンマリア様、大丈夫ですか?」
サクラが駆け寄って私を受け止める。
「ええ、さすがに余計な魔力を使ってしまったので……。この魔法、発動の際にかなり光るんですよ」
「ああなるほど、光を抑える事に集中したので、ふらついてしまったのですね」
「……そういう事でございます」
王妃も把握が早かった。おかげで余計な説明をしなくて済むわ。安心した私は、サクラに支えられた状態で近くの椅子へと移動していく。
「それにしても、我が国の諜報部のせいで他国にまでご迷惑を掛けているようで、本当に申し訳ございません」
「いえ、お気になさらないで下さい。こうなってしまった以上、協力して諜報部の陰謀を叩き潰すだけでございます」
私は起きてしまった事は気にせず、これからの対処を考えるべきだと提案する。これにはサクラも強く頷いている。
「そうですね。ですが、連絡手段はどうなさるのですか?」
王妃の問い掛けに、私はにこっと唇に人差し指を当てながら笑ったのだった。
今回、国王に毒ナイフを投げた男は即刻地下牢に閉じ込められた。おそらくは拷問が続く事になるだろう。
しかし、私たちもこれ以上こちらに滞在するわけにもいかないので、どうしたものだろうか。
私は悩んだ結果、ベジタリウスの城を包み込んだ防護と浄化の魔法を展開させる事にした。そのために、サクラと一緒に国王と王妃の部屋へと向かう。どちらかに会えればいいという算段である。
しかし、その魔法はあくまでも応急処置だった。頑張っても数日間しかもたないし、それ以上となると魔力の消耗が激しくなってしまう。バランスが難しいのである。
「サクラ様、よさそうな魔石ってありますかね」
そこで私は、サクラに話を振ってみる。魔石を使えば私の魔力の消費を抑えながら良質の結界を張れる可能性があるからだ。
魔石となれば私もそれなりに持ってはいるものの、魔道具のための数確保のために質としてはどうしても劣ってしまうものばかりなのよ。だからこそ、バッサーシ辺境伯の力を借りようというわけである。
「アンマリア様、さすがに私も持ち合わせはありません。お力になれず申し訳ございません……」
おおう、サクラでもダメだったか。こうなると、仕方なしに数日分の悪意を遮断する結界と無毒化の結界を張るという方向にした。
そうやってダメ元で出向いた私たちは、どうにか王妃と会う事ができた。
「まあ、お二人ともどうなさったのですか?」
「こんな時間失礼致します、ベジタリウス王妃殿下」
私はそう言いながら頭を下げる。後ろではサクラも同じように頭を下げている。
「実はですね、食事の際にあんな事がありましたので、一時凌ぎではありますが、城に結界を張らせて頂こうと思いまして訪問致しました」
「まあ、そんな事ができますのね」
驚きの反応をしながら、王妃がきょろきょろと辺りを見回す。
「ささっ、さっさと中に入ってきて。夜とはいえども、誰が居るか分かりませんのでね」
そう言って、王妃は私たちを部屋の中に招き入れてくれた。
私たちが中に入ると、王妃は部屋の扉をしっかりと閉めていた。
「事情は分かりました。それほどの強力な結界を私たちに断りもなく張るわけには参りませんものね。そのお気遣い、誠にありがたく思います」
王妃は突然の訪問にもかかわらず、私たちに丁寧に対応してくれている。
「それで、結界というものはどういったものなのでしょうか」
確認するように尋ねてくる王妃である。こちらとしても事情はすべて話しておくつもりなので、快く質問に答えておいた。
「そんな強力な結界を張る事が可能なのですか?」
「はい、私単独でもかなり強力なものを発動できます。ただし、もって最長3日間といったところでしょうから、また掛け直しにやって来なければなりません」
「ちなみにそれ以上長めに張る事はできるのですか?」
「私の魔力量を考えると、倍ほどまででしょう。ですが、その場合は私の命にかかわりかねません。今の消費魔力量に加えて、良質な魔石でもあれば効果を引き延ばす事ができると思います」
王妃の質問に、できる限り答える私。だけども、はっきりとした事は言えないので正直困ったものだった。なにせ試した事のない話だからね。
「とりあえず、今すぐ結界を張ります。私が離れても大丈夫な事は、サーロイン王城で既に実証済みですからね」
私はすぐさま魔法を発動させる。八つの属性すべてを操れる私だからこそできると言ってもいい複雑な魔法よ。
集中して魔法を発動させる私。
私を中心として、白い光の魔法陣が現れる。そこから光が広がっていくと、あっという間にベジタリウス王城を包み込んでしまった。
夜の闇を照らす一瞬の光。おそらく、巡回の兵士たちも気が付かなかっただろう。だって、夜に眩しい光なんて浴びたくないでしょう?
どうにか抑えた状態で結界を発動させた私。さすがに少しふらついてしまう。
「アンマリア様、大丈夫ですか?」
サクラが駆け寄って私を受け止める。
「ええ、さすがに余計な魔力を使ってしまったので……。この魔法、発動の際にかなり光るんですよ」
「ああなるほど、光を抑える事に集中したので、ふらついてしまったのですね」
「……そういう事でございます」
王妃も把握が早かった。おかげで余計な説明をしなくて済むわ。安心した私は、サクラに支えられた状態で近くの椅子へと移動していく。
「それにしても、我が国の諜報部のせいで他国にまでご迷惑を掛けているようで、本当に申し訳ございません」
「いえ、お気になさらないで下さい。こうなってしまった以上、協力して諜報部の陰謀を叩き潰すだけでございます」
私は起きてしまった事は気にせず、これからの対処を考えるべきだと提案する。これにはサクラも強く頷いている。
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王妃の問い掛けに、私はにこっと唇に人差し指を当てながら笑ったのだった。
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