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第六章 2年目後半
第325話 アロマキャンドル
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サーロイン王国の年末パーティーも、気が付けばもう目の前だった。
だというのに、エスカはアロマキャンドルに意識が完全に向いていて、朝から使用人にろうそくの事を尋ね回っていた。
「ろうそくでございますか? 多分しまってあるとは思います。最近は魔道具ばかりですから、使っていませんのでね」
「多分あるとしたら倉庫でございます。1階の使用人室の近くにございますので、見て参りましょうか?」
そんな中、どうにかろうそくの情報を得たエスカは、自分で確認するといって聞かなかった。仕方がないので、私が付き添う事にする。
こんな奔放とはいっても、エスカは一応王女様なので何かあっては困るものね。水と闇の魔法しか使えないんじゃ、いろいろと身を守るのも大変でしょうから。
使用人の案内で、私とエスカは1階の倉庫までやって来る。ここにはいろんな道具がしまってあるので、おそらくはろうそくも眠っているはずだ。魔法があるとはいっても、明かり取りはろうそくだったものね。
「うっ……」
扉を開けるとエスカが顔をしかめる。倉庫の中は埃っぽいから仕方がない。頻繁に出入りはあるものの、どうしても触られない区画というのは出てしまう。そのあたりが埃をかぶってしまってこうなるのだ。
「風よ」
冬なので寒いのだけれども、私は窓を開けて軽く風魔法で埃を払う。
「さて、ろうそくを探しましょうか」
「そうね」
私とエスカは倉庫の中を数名の使用人とともに調べ始めた。
30分くらい経った頃だろうか、使用人の一人が声を上げる。
「ありました! これでございますね!」
その声に反応する私とエスカ。駆けつけてみると、木箱の中に確かにろうそくのようなものが入っていた。
ひとまずは鑑定魔法に掛けてみる私。
「たしかに、これはろうそくですね」
間違いなくろうそくだった。私の鑑定結果を聞いて、エスカがものすごく……というか気持ち悪いくらいの笑顔を見せている。ここ薄暗いからやめてくれないかしらね。
「ありがとうございます。これで私の目的のものが作れそうですよ」
「お役に立ててよかったです」
エスカの喜びの声に、使用人たちもつられて笑顔になっていた。ただ、私だけが疲れた顔をしていた。
そんな私に対して、エスカはにこりと微笑む。今度は私の手を引っ張って走り出した。
「キャンドルが完成しましたら、プレゼントさせてもらいますね」
「ちょっと、エスカ?!」
満面の笑みのエスカに引きずられるような形で、私は倉庫から移動させられたのだった。
倉庫から移動したエスカが向かったのは、モモの部屋だった。
「さあ、モモ。アロマキャンドルを作りますよ」
「あろま……きゃんどる?」
エスカの言葉に、理解が追いつかないモモ。眉を歪めて首を傾げている。
そして、助けを求めるように私の方を見てくるけれど、諦めてと言わんばかりの表情で私は首を横に振った。その私を見たモモは、まるで絶望したかのような表情をしていたものの、相手はエスカなのでしょうがない話なのだった。
結局、モモはエスカの作業を手伝わされることになってしまった。
「湯煎でろうそくを融かすので、桶に入った水を温めてほしいの」
「わ、分かりました。やってみます!」
念のために窓を開けて換気をしながら作業を始めるエスカ。モモに魔法で出した水を温めるように指示をを出している。
モモは火の魔法が得意とはいえ、桶を燃やさないようにというのはなかなかに神経を使う。水だけ的確に温めなければならないので、表情は真剣そのものだった。
「ありがとう、いい感じで融けたわね」
どろどろになったろうそくを見ながら、エスカは紐を取り出していく。
「この紐は再利用するから、捨てないでね」
私たちにそう言うと、エスカはオランとレモネから搾った油を取り出す。
「アンマリア、小さな湯飲みみたいな容器を土魔法で作ってくれるかしら」
「いいわよ」
油を融けたろうそくの中に振り入れながら、私に指示を出すエスカ。私はキャンドルの器だとすぐ分かったので、少し多めに土魔法で器を作っていく。
私が作った小さな容器にさっき取り除いたろうそくの紐を垂らしながら、水魔法と闇魔法で器用に油を混ぜ込んだろうを移していく。その際にふわっとだけれども、柑橘系のいい香りが広がっていた。
「これで後は固めるだけです。そうすればアロマキャンドルの完成です」
飛び出た長い紐をはさみで適度な長さに切りながら、エスカはひと安心をしたような表情で話している。どうやらエスカ自身はちゃんとできるか心配だったようだ。
「知識はあっても作るのはものすごく久しぶりでしたからね、とても緊張したわよ」
さすがに転生者の事を知らないモモが居るので、適当にどうとでも捉えられる言葉で話すエスカ。その緩んだ顔に、モモもつられて嬉しそうに笑っていた。
「またファッティ領に行く事があったら、アンマリアのおば様に教えてあげませんとね」
そういえば、伯母とはやけに話が盛り上がっていたものね。伯母が乗り気である以上、私は口を挟むのはやめておいた。
「今夜にでも効果を試してみましょうか」
とりあえず、アロマキャンドルを完成させたエスカの勢いは止まりそうになかった。なので、テールとタミールも巻き込んで、私たち子どもたちでアロマキャンドルの効果を試してみる事になったのだった。
だというのに、エスカはアロマキャンドルに意識が完全に向いていて、朝から使用人にろうそくの事を尋ね回っていた。
「ろうそくでございますか? 多分しまってあるとは思います。最近は魔道具ばかりですから、使っていませんのでね」
「多分あるとしたら倉庫でございます。1階の使用人室の近くにございますので、見て参りましょうか?」
そんな中、どうにかろうそくの情報を得たエスカは、自分で確認するといって聞かなかった。仕方がないので、私が付き添う事にする。
こんな奔放とはいっても、エスカは一応王女様なので何かあっては困るものね。水と闇の魔法しか使えないんじゃ、いろいろと身を守るのも大変でしょうから。
使用人の案内で、私とエスカは1階の倉庫までやって来る。ここにはいろんな道具がしまってあるので、おそらくはろうそくも眠っているはずだ。魔法があるとはいっても、明かり取りはろうそくだったものね。
「うっ……」
扉を開けるとエスカが顔をしかめる。倉庫の中は埃っぽいから仕方がない。頻繁に出入りはあるものの、どうしても触られない区画というのは出てしまう。そのあたりが埃をかぶってしまってこうなるのだ。
「風よ」
冬なので寒いのだけれども、私は窓を開けて軽く風魔法で埃を払う。
「さて、ろうそくを探しましょうか」
「そうね」
私とエスカは倉庫の中を数名の使用人とともに調べ始めた。
30分くらい経った頃だろうか、使用人の一人が声を上げる。
「ありました! これでございますね!」
その声に反応する私とエスカ。駆けつけてみると、木箱の中に確かにろうそくのようなものが入っていた。
ひとまずは鑑定魔法に掛けてみる私。
「たしかに、これはろうそくですね」
間違いなくろうそくだった。私の鑑定結果を聞いて、エスカがものすごく……というか気持ち悪いくらいの笑顔を見せている。ここ薄暗いからやめてくれないかしらね。
「ありがとうございます。これで私の目的のものが作れそうですよ」
「お役に立ててよかったです」
エスカの喜びの声に、使用人たちもつられて笑顔になっていた。ただ、私だけが疲れた顔をしていた。
そんな私に対して、エスカはにこりと微笑む。今度は私の手を引っ張って走り出した。
「キャンドルが完成しましたら、プレゼントさせてもらいますね」
「ちょっと、エスカ?!」
満面の笑みのエスカに引きずられるような形で、私は倉庫から移動させられたのだった。
倉庫から移動したエスカが向かったのは、モモの部屋だった。
「さあ、モモ。アロマキャンドルを作りますよ」
「あろま……きゃんどる?」
エスカの言葉に、理解が追いつかないモモ。眉を歪めて首を傾げている。
そして、助けを求めるように私の方を見てくるけれど、諦めてと言わんばかりの表情で私は首を横に振った。その私を見たモモは、まるで絶望したかのような表情をしていたものの、相手はエスカなのでしょうがない話なのだった。
結局、モモはエスカの作業を手伝わされることになってしまった。
「湯煎でろうそくを融かすので、桶に入った水を温めてほしいの」
「わ、分かりました。やってみます!」
念のために窓を開けて換気をしながら作業を始めるエスカ。モモに魔法で出した水を温めるように指示をを出している。
モモは火の魔法が得意とはいえ、桶を燃やさないようにというのはなかなかに神経を使う。水だけ的確に温めなければならないので、表情は真剣そのものだった。
「ありがとう、いい感じで融けたわね」
どろどろになったろうそくを見ながら、エスカは紐を取り出していく。
「この紐は再利用するから、捨てないでね」
私たちにそう言うと、エスカはオランとレモネから搾った油を取り出す。
「アンマリア、小さな湯飲みみたいな容器を土魔法で作ってくれるかしら」
「いいわよ」
油を融けたろうそくの中に振り入れながら、私に指示を出すエスカ。私はキャンドルの器だとすぐ分かったので、少し多めに土魔法で器を作っていく。
私が作った小さな容器にさっき取り除いたろうそくの紐を垂らしながら、水魔法と闇魔法で器用に油を混ぜ込んだろうを移していく。その際にふわっとだけれども、柑橘系のいい香りが広がっていた。
「これで後は固めるだけです。そうすればアロマキャンドルの完成です」
飛び出た長い紐をはさみで適度な長さに切りながら、エスカはひと安心をしたような表情で話している。どうやらエスカ自身はちゃんとできるか心配だったようだ。
「知識はあっても作るのはものすごく久しぶりでしたからね、とても緊張したわよ」
さすがに転生者の事を知らないモモが居るので、適当にどうとでも捉えられる言葉で話すエスカ。その緩んだ顔に、モモもつられて嬉しそうに笑っていた。
「またファッティ領に行く事があったら、アンマリアのおば様に教えてあげませんとね」
そういえば、伯母とはやけに話が盛り上がっていたものね。伯母が乗り気である以上、私は口を挟むのはやめておいた。
「今夜にでも効果を試してみましょうか」
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