伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

文字の大きさ
415 / 500
第八章 3年生後半

第415話 大事件の後の恒例行事

しおりを挟む
 翌朝、私たちは外壁の上で目を覚ます。どうやらあのまま眠ってしまったらしい。
 外壁の外を見下ろしてみると、そこではまだ兵士たちが魔物の解体で忙しそうに動いていた。
 見渡す限り、交戦している様子は見当たらない。無事に押し寄せてきた魔物たちはすべて討伐されたようだった。
 ひと通りの確認がし終わると、ちょうどサキたちも目を覚ました様子。寝起きで寝ぼけているようではあったものの、私たちは短距離転移を使って兵士たちと合流したのだった。

 魔物の解体をする兵士たちを横目に歩いていると、私たちは声を掛けられる。
「やあ、アンマリア、サキ。王女二人もおはよう」
 声の主はフィレン王子だった。
「大半の魔物を君たち四人で引きつけてくれたから、私たちは漏れた魔物だけを相手にするだけでとても楽だったよ。本当に感謝する」
 私たちに労いと感謝の言葉を掛けてくる。
「王国の民として当然の事をしたばかりです」
「そ、そうです」
 私が堂々と答えると、サキはかなり慌てながら私の言葉に賛同していた。
「私たちも、自分たちの身を守るのは当然ですし」
「うんうん、安眠妨害した連中に鉄槌を下したまでですよ」
 ミズーナ王女とエスカもこのように答えていた。それを聞いて、フィレン王子はついつい笑ってしまっていたようだ。
「兄上、こちらの解体はほぼ終わりました」
「おお、そうか。使えそうな素材はすぐに城へ、そうでないものは燃やして処分するように伝えてくれ」
「分かりました」
 状況を伝えに来たリブロ王子に指示を出すと、リブロ王子はすぐさま解体現場へと引き返していく。
 それにしても、二人の王子が自ら陣頭指揮を取っているとは、実に予想もしない状況だった。
 驚きはしたものの、状況を確認できた私たちはその場を去って帰ろうとする。
 だけど、その私の肩にポンと手が置かれる衝撃が走る。
「うふふ、帰しませんよ、アンマリア様」
「そうだな。君たちには昨夜使った魔法についていろいろと聞かねばならない。サクラ、こやつらを連れて城へと向かっておくれ。私はここを離れられないからな」
「畏まりました、おば様」
 サクラたちに捕まった私たちは、しばらくしてやってきた馬車に乗せられて城へと向かわなければならなくなってしまった。
 困惑する私たちではあったものの、ミスミ教官まで居るとなっては諦めるしかなかった。

 馬車でドナドナされた私たちは、気が付くと謁見の間に通されていた。
 謁見の間ということは、つまり国王たちに状況を説明しないといけないということだった。
 正直言って中途半端な睡眠のために眠くてたまらない。幸い国王はまだ姿を見せていないようなので、私は分からないように下を向きながらもあくびを連発しておいた。マジで眠いんだもん。
 横目で見ているミズーナ王女に無言で咎められながら待っていると、ようやく国王と王妃が謁見の間に姿を見せた。私たちは頭を下げたままじっと耐え続けている。
「よく来たな。面を上げるとよいぞ」
 国王がそう言うと、私たちはようやく頭を上げる。
 もう本当に何度目だろうか、国王との謁見は。こうなってくると慣れたものとなっているはずだけど、今回はちょっといつもと違って緊張していた。
 それというのも、今回は王都に襲撃を仕掛けてきた魔物をせん滅したからだった。となると、どういう状況だったかは逐一国王の耳に届いているはず。つまり、下手なごまかしは利かないということだった。
 おまけにいうと、私たちはエスカの重力攻撃を除けば目立つド派手な魔法を使っていた。そう、目立ちすぎたのだ。
 冷や汗を流しながら私は、サキ、ミズーナ王女、エスカの三人の顔を見る。
 サキは困惑した顔、エスカは涼しい顔、ミズーナ王女は諦めなさいという顔だった。うん、覚悟を決めるべきのようね。
 悟った私は、国王たちからの質問にひとつ残らず正直に答えていったのだった。
 その時の国王の反応は、実に頭が痛そうだった。
 光の壁やら炎の壁やら報告は受けていたらしいのだけど、改めて私たちからの報告を聞いて反応に困っているといった感じかしらね。
「分かっていたつもりだったが、とんでもないものだな君たちは……」
 表情からして困惑が伝わってくる。逆の立場だったら、私もそうなる自信がたっぷりあるわ。
「だが、魔物の大半をきれいな状態で討伐してくれたおかげで、なぜ王都に向けて突撃してきたのか解明できそうだ。そこは褒めてつかわすぞ」
 そういう国王ではあるものの、ならなんで眉間にしわを寄せているのでしょうかね。問い質したいけれど、ここはぐっと我慢だわ。原因が自分たちなんですもの。それではいくら何でも不敬ってものよね。
 ぐっと堪えた私たちと国王との話は、そのままお昼過ぎまで続けられたのだった。
 そして、国王の計らいで今日の講義は特別免除。私たちは王城内の客室でそのまま休むことになった。
 軽く昼寝をして目を覚ますと、私たちは今度は王妃個人から呼び出しを受けることになった。今度は一体どんな話になるというのかしら。
 いろいろと警戒しながら、服を着替えさせられた私たちは王妃の部屋へと向かったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...