伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊

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第八章 3年生後半

第416話 衝撃告白

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 私たちは王妃の部屋までやって来る。
 今回王妃に呼び出されたのは私とサキ、それとミズーナ王女とエスカの四人だ。つまり、魔物の襲撃時に外壁の上で迎え撃った四人である。
 しかし、だからといって私たち四人をセットで呼ぶ理由はいまいち分からなかった。まったくどんな話がされるのか気になりながらも、私たちは衛兵に呼び掛けて中へと案内してもらった。
 中へと入ると、王妃が座って出迎えてくれた。
「あら、よく眠れましたかしら」
 にこりと微笑みながら話し掛けてくる王妃。
「はい、もうすっかり大丈夫でございます。ご心配をお掛けしました」
 どういうわけか私が代表して返答をしている。なんでなのよ。
 よく見ると、他の三人が揃って笑いを堪えている。ここって笑うところだったかしら。
「ふふっ、相変わらず仲のよろしいことですのね」
 王妃にまで笑われている。いや、本当にそこ笑うところ?!
 文句はあるのだけれど、私はぐっと堪えておく。そして、空気を変えるために、王妃へと声を掛けることにした。
「失礼ですが、王妃殿下」
「なんでしょう」
「本日、私たちをお呼びした理由をお伺いしてよろしいでしょうか」
 話をちゃっちゃと進めるために、私はあえて単刀直入に問い掛けた。
 すると、王妃はなんとも意味ありげな笑顔を見せている。一国の王妃相手とはいえ、ちょっとイラッときてしまう。
(うう、我慢我慢……)
 見えない位置で拳を握りしめて、必死に私は堪えていた。
「まぁそう怒るでないぞ、アンマリア。今日呼んだのは、婚約者についての話だ」
 王妃はようやく正直に呼び出した理由を話し始めた。
 もう学園の卒業の時期が迫っているというのに、いまだに決まらない互いの婚約者である。
 フィレン王子とリブロ王子に、アンマリアとサキという二人の候補者を宛がいながらも、どちらがどちらと正式に婚約するのかというのが決まっていない。
 さすがにこのまま決まらないのは、王家の沽券にかかわりかねないと、王妃は呼び出した理由について語ったのだ。
「正直に申すとな、最初は聖女の称号を得ておるサキを、フィレンの婚約者にするつもりだったのですよ。第一王子ゆえに、将来的な王妃という立場になりますね」
「ええ、その通りでございますね」
「それで、本当は陛下をはじめ、宰相や大臣たちを交えて決めるつもりだったのですが、知っての通りたくさんの問題が噴出してしまい、まったくもって話し合いができないでいたのです」
「ああ……」
 事件のあれこれを思い出して、げんなり顔になる私たちだった。
 呪いだの魔族だの、本当にいろいろあったわよね……。
「それで、今回もいよいよ決めようとしたところで、魔王が出てきて、とどめが昨夜の魔物の襲撃……。これではもう話し合いの場が持てぬというもの」
「……仰る通りでございます」
 私のせいではないけれど、なんか謝らないと気が済まなかった。
 あまりにもしゅんとする私の姿に、王妃もちょっと戸惑い気味のようだ。
「そう落ち込まないで下さい。とりあえず、陛下もお忙しいとあって、この件は私に一任するという運びになったのです」
 なんともまぁ、国家の未来を左右する話を、王妃に一任とは……。ずいぶんと状況は悪いようね。
「フィレン、リブロ、入ってきなさい」
 私たちから視線を外し、扉の外に呼び掛ける王妃。すると、扉が開いて二人の王子が揃って入ってきた。
 さっき、私たちが来てからそんなに時間は経っていないというのに、一体どこにいたのだろうか。
「お呼びでございますでしょうか、母上」
 兄弟の声がハモる。
 それにしても、まさか王子を呼んでいるとは思わなかったわね。昨夜のことで私たちが揃っているから、最初からそういうつもりだったというところかしら。
「二人は、自分の伴侶の希望はあるのかしら?」
 何ともストレートな質問をぶつける王妃である。
 すると、これに先に答えたのはリブロ王子の方だった。
「本音を申しますと、アンマリアが好ましいです。魔力循環不全に陥った僕を助けてくれたのですから。ですが、彼女の能力を思えば、兄上にこそふさわしいと思います」
 こう告げたリブロ王子は、サキへ体を向ける。
「このような選び方は非常に失礼なのは分かっております。サキ、僕は君を選びます」
「リブロ殿下……」
 これには、私もサキもかける言葉を見出す事はできなかった。対象が同一の二択を与えられたのだものね。リブロ王子も相当に悩んだでしょうね。
 場が静まり返る中、ようやくフィレン王子が口を開く。
「まいったな。リブロがその様に考えていたとはね」
 まるで意外だったというような口ぶりである。
「リブロは自分で相手を選びました。フィレン、お前はどうなのですか?」
 王妃がフィレン王子に問い掛けている。すると、フィレン王子は覚悟が決まっているような表情をして、母親である王妃に向き合う。
「もちろん、決まっておりますとも」
 フィレン王子はそう告げると、私の前へと歩いてきた。そして、跪いて手を差し伸べてくる。
「アンマリア、君を私の伴侶として迎えたい」
 フィレン王子からのプロポーズに、部屋の中の時間が止まったように感じられたのだった。
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