416 / 500
第八章 3年生後半
第416話 衝撃告白
しおりを挟む
私たちは王妃の部屋までやって来る。
今回王妃に呼び出されたのは私とサキ、それとミズーナ王女とエスカの四人だ。つまり、魔物の襲撃時に外壁の上で迎え撃った四人である。
しかし、だからといって私たち四人をセットで呼ぶ理由はいまいち分からなかった。まったくどんな話がされるのか気になりながらも、私たちは衛兵に呼び掛けて中へと案内してもらった。
中へと入ると、王妃が座って出迎えてくれた。
「あら、よく眠れましたかしら」
にこりと微笑みながら話し掛けてくる王妃。
「はい、もうすっかり大丈夫でございます。ご心配をお掛けしました」
どういうわけか私が代表して返答をしている。なんでなのよ。
よく見ると、他の三人が揃って笑いを堪えている。ここって笑うところだったかしら。
「ふふっ、相変わらず仲のよろしいことですのね」
王妃にまで笑われている。いや、本当にそこ笑うところ?!
文句はあるのだけれど、私はぐっと堪えておく。そして、空気を変えるために、王妃へと声を掛けることにした。
「失礼ですが、王妃殿下」
「なんでしょう」
「本日、私たちをお呼びした理由をお伺いしてよろしいでしょうか」
話をちゃっちゃと進めるために、私はあえて単刀直入に問い掛けた。
すると、王妃はなんとも意味ありげな笑顔を見せている。一国の王妃相手とはいえ、ちょっとイラッときてしまう。
(うう、我慢我慢……)
見えない位置で拳を握りしめて、必死に私は堪えていた。
「まぁそう怒るでないぞ、アンマリア。今日呼んだのは、婚約者についての話だ」
王妃はようやく正直に呼び出した理由を話し始めた。
もう学園の卒業の時期が迫っているというのに、いまだに決まらない互いの婚約者である。
フィレン王子とリブロ王子に、アンマリアとサキという二人の候補者を宛がいながらも、どちらがどちらと正式に婚約するのかというのが決まっていない。
さすがにこのまま決まらないのは、王家の沽券にかかわりかねないと、王妃は呼び出した理由について語ったのだ。
「正直に申すとな、最初は聖女の称号を得ておるサキを、フィレンの婚約者にするつもりだったのですよ。第一王子ゆえに、将来的な王妃という立場になりますね」
「ええ、その通りでございますね」
「それで、本当は陛下をはじめ、宰相や大臣たちを交えて決めるつもりだったのですが、知っての通りたくさんの問題が噴出してしまい、まったくもって話し合いができないでいたのです」
「ああ……」
事件のあれこれを思い出して、げんなり顔になる私たちだった。
呪いだの魔族だの、本当にいろいろあったわよね……。
「それで、今回もいよいよ決めようとしたところで、魔王が出てきて、とどめが昨夜の魔物の襲撃……。これではもう話し合いの場が持てぬというもの」
「……仰る通りでございます」
私のせいではないけれど、なんか謝らないと気が済まなかった。
あまりにもしゅんとする私の姿に、王妃もちょっと戸惑い気味のようだ。
「そう落ち込まないで下さい。とりあえず、陛下もお忙しいとあって、この件は私に一任するという運びになったのです」
なんともまぁ、国家の未来を左右する話を、王妃に一任とは……。ずいぶんと状況は悪いようね。
「フィレン、リブロ、入ってきなさい」
私たちから視線を外し、扉の外に呼び掛ける王妃。すると、扉が開いて二人の王子が揃って入ってきた。
さっき、私たちが来てからそんなに時間は経っていないというのに、一体どこにいたのだろうか。
「お呼びでございますでしょうか、母上」
兄弟の声がハモる。
それにしても、まさか王子を呼んでいるとは思わなかったわね。昨夜のことで私たちが揃っているから、最初からそういうつもりだったというところかしら。
「二人は、自分の伴侶の希望はあるのかしら?」
何ともストレートな質問をぶつける王妃である。
すると、これに先に答えたのはリブロ王子の方だった。
「本音を申しますと、アンマリアが好ましいです。魔力循環不全に陥った僕を助けてくれたのですから。ですが、彼女の能力を思えば、兄上にこそふさわしいと思います」
こう告げたリブロ王子は、サキへ体を向ける。
「このような選び方は非常に失礼なのは分かっております。サキ、僕は君を選びます」
「リブロ殿下……」
これには、私もサキもかける言葉を見出す事はできなかった。対象が同一の二択を与えられたのだものね。リブロ王子も相当に悩んだでしょうね。
場が静まり返る中、ようやくフィレン王子が口を開く。
「まいったな。リブロがその様に考えていたとはね」
まるで意外だったというような口ぶりである。
「リブロは自分で相手を選びました。フィレン、お前はどうなのですか?」
王妃がフィレン王子に問い掛けている。すると、フィレン王子は覚悟が決まっているような表情をして、母親である王妃に向き合う。
「もちろん、決まっておりますとも」
フィレン王子はそう告げると、私の前へと歩いてきた。そして、跪いて手を差し伸べてくる。
「アンマリア、君を私の伴侶として迎えたい」
フィレン王子からのプロポーズに、部屋の中の時間が止まったように感じられたのだった。
今回王妃に呼び出されたのは私とサキ、それとミズーナ王女とエスカの四人だ。つまり、魔物の襲撃時に外壁の上で迎え撃った四人である。
しかし、だからといって私たち四人をセットで呼ぶ理由はいまいち分からなかった。まったくどんな話がされるのか気になりながらも、私たちは衛兵に呼び掛けて中へと案内してもらった。
中へと入ると、王妃が座って出迎えてくれた。
「あら、よく眠れましたかしら」
にこりと微笑みながら話し掛けてくる王妃。
「はい、もうすっかり大丈夫でございます。ご心配をお掛けしました」
どういうわけか私が代表して返答をしている。なんでなのよ。
よく見ると、他の三人が揃って笑いを堪えている。ここって笑うところだったかしら。
「ふふっ、相変わらず仲のよろしいことですのね」
王妃にまで笑われている。いや、本当にそこ笑うところ?!
文句はあるのだけれど、私はぐっと堪えておく。そして、空気を変えるために、王妃へと声を掛けることにした。
「失礼ですが、王妃殿下」
「なんでしょう」
「本日、私たちをお呼びした理由をお伺いしてよろしいでしょうか」
話をちゃっちゃと進めるために、私はあえて単刀直入に問い掛けた。
すると、王妃はなんとも意味ありげな笑顔を見せている。一国の王妃相手とはいえ、ちょっとイラッときてしまう。
(うう、我慢我慢……)
見えない位置で拳を握りしめて、必死に私は堪えていた。
「まぁそう怒るでないぞ、アンマリア。今日呼んだのは、婚約者についての話だ」
王妃はようやく正直に呼び出した理由を話し始めた。
もう学園の卒業の時期が迫っているというのに、いまだに決まらない互いの婚約者である。
フィレン王子とリブロ王子に、アンマリアとサキという二人の候補者を宛がいながらも、どちらがどちらと正式に婚約するのかというのが決まっていない。
さすがにこのまま決まらないのは、王家の沽券にかかわりかねないと、王妃は呼び出した理由について語ったのだ。
「正直に申すとな、最初は聖女の称号を得ておるサキを、フィレンの婚約者にするつもりだったのですよ。第一王子ゆえに、将来的な王妃という立場になりますね」
「ええ、その通りでございますね」
「それで、本当は陛下をはじめ、宰相や大臣たちを交えて決めるつもりだったのですが、知っての通りたくさんの問題が噴出してしまい、まったくもって話し合いができないでいたのです」
「ああ……」
事件のあれこれを思い出して、げんなり顔になる私たちだった。
呪いだの魔族だの、本当にいろいろあったわよね……。
「それで、今回もいよいよ決めようとしたところで、魔王が出てきて、とどめが昨夜の魔物の襲撃……。これではもう話し合いの場が持てぬというもの」
「……仰る通りでございます」
私のせいではないけれど、なんか謝らないと気が済まなかった。
あまりにもしゅんとする私の姿に、王妃もちょっと戸惑い気味のようだ。
「そう落ち込まないで下さい。とりあえず、陛下もお忙しいとあって、この件は私に一任するという運びになったのです」
なんともまぁ、国家の未来を左右する話を、王妃に一任とは……。ずいぶんと状況は悪いようね。
「フィレン、リブロ、入ってきなさい」
私たちから視線を外し、扉の外に呼び掛ける王妃。すると、扉が開いて二人の王子が揃って入ってきた。
さっき、私たちが来てからそんなに時間は経っていないというのに、一体どこにいたのだろうか。
「お呼びでございますでしょうか、母上」
兄弟の声がハモる。
それにしても、まさか王子を呼んでいるとは思わなかったわね。昨夜のことで私たちが揃っているから、最初からそういうつもりだったというところかしら。
「二人は、自分の伴侶の希望はあるのかしら?」
何ともストレートな質問をぶつける王妃である。
すると、これに先に答えたのはリブロ王子の方だった。
「本音を申しますと、アンマリアが好ましいです。魔力循環不全に陥った僕を助けてくれたのですから。ですが、彼女の能力を思えば、兄上にこそふさわしいと思います」
こう告げたリブロ王子は、サキへ体を向ける。
「このような選び方は非常に失礼なのは分かっております。サキ、僕は君を選びます」
「リブロ殿下……」
これには、私もサキもかける言葉を見出す事はできなかった。対象が同一の二択を与えられたのだものね。リブロ王子も相当に悩んだでしょうね。
場が静まり返る中、ようやくフィレン王子が口を開く。
「まいったな。リブロがその様に考えていたとはね」
まるで意外だったというような口ぶりである。
「リブロは自分で相手を選びました。フィレン、お前はどうなのですか?」
王妃がフィレン王子に問い掛けている。すると、フィレン王子は覚悟が決まっているような表情をして、母親である王妃に向き合う。
「もちろん、決まっておりますとも」
フィレン王子はそう告げると、私の前へと歩いてきた。そして、跪いて手を差し伸べてくる。
「アンマリア、君を私の伴侶として迎えたい」
フィレン王子からのプロポーズに、部屋の中の時間が止まったように感じられたのだった。
28
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜
naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。
しかし、誰も予想していなかった事があった。
「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」
すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。
「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」
──と、思っていた時期がありましたわ。
orz
これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。
おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる