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第九章 拡張版ミズーナ編
第424話 判断が早いよ
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学園の卒業式を迎えた翌日、朝食を済ませたミズーナ王女はアーサリーを誘ってファッティ伯爵家を訪れる。
ファッティ伯爵家は、今後城に住むことになるアンマリアの引っ越しの準備が始まっていた。
「ごめん下さいませ」
屋敷に到着するなり、ミズーナ王女はにこやかに挨拶をする。アーサリーは少し不機嫌気味に腕を組み、メチルは前で手を組んでおとなしく立っていた。
「急な話ですね、ミズーナ王女殿下」
周りにも人がいるので敬称で呼ぶアンマリアである。
「それで話って何なのですか、ミズーナ」
ひょろっと後ろから姿を見せるエスカ。普段からではあるものの、まったく王女然たる姿の見受けられない王女である。これでもミール王国の王女だというのに、どうしてこんなにおてんばなのだろうか。
「なんであなたが聞いてくるのですかね、エスカ」
怖い雰囲気を漂わせるミズーナ王女。
それもそうだ。卒業式の前から転生者の間でコツコツと話をしてきた事なのだから、エスカがとぼけてくれるのでちょっとカチンときたわけである。
「とりあえずこんな場所で立ち話もなんですから、私の……じゃなかったエスカの部屋へ移動しましょう」
「アンマリアの部屋じゃないの?」
「今の私の部屋は引っ越しの準備の真っ只中なのですよ。邪魔してはいけませんからね」
「それは仕方ないですね」
エスカの部屋へと誘導しようとしたアンマリアにエスカが文句を言う。
だが、確かに本格的な王妃教育を始めるにあたって城に住むわけなのだから、ある程度の私物の移動は必要。今はその選定作業中なのだから、邪魔するわけにはいかないのだ。仕方ないのである。
アンマリアの話を受けて、やむなくエスカは自分の部屋へと案内することを了承したのだった。
ミズーナ王女、アーサリー、メチルという三人の客人を連れて、エスカの部屋へとやって来た。
ファッティ邸の方はアンマリア、エスカ、モモ、タミールという四人が出迎える。両親は不参加である。というかミズーナ王女が断った。
それにしても、揃った面子のうち三人が王族とあって、タミールがガッチガチに緊張で固まっていた。なんで自分まで呼ばれたのか分からないといった表情をしている。
「アンマリアのいとこであるなら、十分関係者ですよ」
そうきっぱり言い切るミズーナ王女。弱気なタミールではとても逆らえなかった。
七人が席に着いたところで、いよいよ本題の開始である。
「というわけで、このメチルをアーサリーと結婚させようというわけなのです」
「いや、いきなり『というわけで』といわれても、納得できるわけないだろうが」
ミズーナ王女の言葉に冷静にツッコミを入れるアーサリーである。
「だけど、お兄様。お相手を見つける算段はございますかしら?」
「うっ……」
そこへ間髪入れずに飛んできたエスカの口撃に、アーサリーは思わずたじろいでしまう。
「お兄様って負けず嫌いのくせに、恋愛に関してはこれっぽっちも興味がないですからね。私ですら半ば強引だけど相手見つけたんですからね」
「って、お前の相手は魔王だろうが!!」
からかうような目で見てくるエスカに、アーサリーは割と本気で焦ったように突っ込む。
「ええ、そうですよ。魔王ですけれど、有望な方ですよ。それに……」
エスカはそう言いながらメチルへと視線を向ける。
「メチルは魔族化したとはいえ、ベジタリウス王国の元聖女。結婚相手にするにはなかなか有望株だと思うんだけどな。アルーはどう思うかしら」
エスカが話を振ると、メチルの頭の上にアルーが飛び出した。その姿に、初めて見ることになったモモとタミールがびっくりしていた。
その様子を見たアルーが、二人に挨拶をする。
「そちらの方々は初めましてですね。私はアルーと申します。メチルの契約精霊です」
頭に乗っかったままカーテシーをするアルーである。さすがは子爵令嬢だった精霊である。その所作というのは実にきれいなものだ。
ただ、メチルの頭の上で土足で立つというのはどうかと思われる。汚れはないけれど、気分的な問題だった。
「私としては大変喜ばしい話です。魔族となってしまったからには、もう二度と人間の世界には戻れないと思っていましたから。こうやって侍女を務められているだけでも嬉しいのですけれどもね」
まったく隠さないアルーである。精霊というのは基本的に嘘がつけない性質なので仕方がない。……嘘をつかないわけではないけれど。
その言葉を聞いたメチルが顔を赤くしている。着実に外堀が埋められてきているので、困っているのだ。
メチルの本来の体の持ち主であるアルーですらこの状態。このままではベジタリウス王国とミール王国双方の国王と王妃が首を縦に振れば正式に決定してしまう状況になっていた。
「アンマリア」
「なんでしょうかね、エスカ王女殿下」
「私たち二人で王家から許可をもらってきましょう」
「そうね。引っ越しが済むまで暇ですしね」
「おい、こら待……」
アーサリーが止めようとするも、アンマリアとエスカの二人は瞬間移動魔法で姿を消してしまったのだった。
二人が去ったその場には、ただただ沈黙が漂うのだった。
ファッティ伯爵家は、今後城に住むことになるアンマリアの引っ越しの準備が始まっていた。
「ごめん下さいませ」
屋敷に到着するなり、ミズーナ王女はにこやかに挨拶をする。アーサリーは少し不機嫌気味に腕を組み、メチルは前で手を組んでおとなしく立っていた。
「急な話ですね、ミズーナ王女殿下」
周りにも人がいるので敬称で呼ぶアンマリアである。
「それで話って何なのですか、ミズーナ」
ひょろっと後ろから姿を見せるエスカ。普段からではあるものの、まったく王女然たる姿の見受けられない王女である。これでもミール王国の王女だというのに、どうしてこんなにおてんばなのだろうか。
「なんであなたが聞いてくるのですかね、エスカ」
怖い雰囲気を漂わせるミズーナ王女。
それもそうだ。卒業式の前から転生者の間でコツコツと話をしてきた事なのだから、エスカがとぼけてくれるのでちょっとカチンときたわけである。
「とりあえずこんな場所で立ち話もなんですから、私の……じゃなかったエスカの部屋へ移動しましょう」
「アンマリアの部屋じゃないの?」
「今の私の部屋は引っ越しの準備の真っ只中なのですよ。邪魔してはいけませんからね」
「それは仕方ないですね」
エスカの部屋へと誘導しようとしたアンマリアにエスカが文句を言う。
だが、確かに本格的な王妃教育を始めるにあたって城に住むわけなのだから、ある程度の私物の移動は必要。今はその選定作業中なのだから、邪魔するわけにはいかないのだ。仕方ないのである。
アンマリアの話を受けて、やむなくエスカは自分の部屋へと案内することを了承したのだった。
ミズーナ王女、アーサリー、メチルという三人の客人を連れて、エスカの部屋へとやって来た。
ファッティ邸の方はアンマリア、エスカ、モモ、タミールという四人が出迎える。両親は不参加である。というかミズーナ王女が断った。
それにしても、揃った面子のうち三人が王族とあって、タミールがガッチガチに緊張で固まっていた。なんで自分まで呼ばれたのか分からないといった表情をしている。
「アンマリアのいとこであるなら、十分関係者ですよ」
そうきっぱり言い切るミズーナ王女。弱気なタミールではとても逆らえなかった。
七人が席に着いたところで、いよいよ本題の開始である。
「というわけで、このメチルをアーサリーと結婚させようというわけなのです」
「いや、いきなり『というわけで』といわれても、納得できるわけないだろうが」
ミズーナ王女の言葉に冷静にツッコミを入れるアーサリーである。
「だけど、お兄様。お相手を見つける算段はございますかしら?」
「うっ……」
そこへ間髪入れずに飛んできたエスカの口撃に、アーサリーは思わずたじろいでしまう。
「お兄様って負けず嫌いのくせに、恋愛に関してはこれっぽっちも興味がないですからね。私ですら半ば強引だけど相手見つけたんですからね」
「って、お前の相手は魔王だろうが!!」
からかうような目で見てくるエスカに、アーサリーは割と本気で焦ったように突っ込む。
「ええ、そうですよ。魔王ですけれど、有望な方ですよ。それに……」
エスカはそう言いながらメチルへと視線を向ける。
「メチルは魔族化したとはいえ、ベジタリウス王国の元聖女。結婚相手にするにはなかなか有望株だと思うんだけどな。アルーはどう思うかしら」
エスカが話を振ると、メチルの頭の上にアルーが飛び出した。その姿に、初めて見ることになったモモとタミールがびっくりしていた。
その様子を見たアルーが、二人に挨拶をする。
「そちらの方々は初めましてですね。私はアルーと申します。メチルの契約精霊です」
頭に乗っかったままカーテシーをするアルーである。さすがは子爵令嬢だった精霊である。その所作というのは実にきれいなものだ。
ただ、メチルの頭の上で土足で立つというのはどうかと思われる。汚れはないけれど、気分的な問題だった。
「私としては大変喜ばしい話です。魔族となってしまったからには、もう二度と人間の世界には戻れないと思っていましたから。こうやって侍女を務められているだけでも嬉しいのですけれどもね」
まったく隠さないアルーである。精霊というのは基本的に嘘がつけない性質なので仕方がない。……嘘をつかないわけではないけれど。
その言葉を聞いたメチルが顔を赤くしている。着実に外堀が埋められてきているので、困っているのだ。
メチルの本来の体の持ち主であるアルーですらこの状態。このままではベジタリウス王国とミール王国双方の国王と王妃が首を縦に振れば正式に決定してしまう状況になっていた。
「アンマリア」
「なんでしょうかね、エスカ王女殿下」
「私たち二人で王家から許可をもらってきましょう」
「そうね。引っ越しが済むまで暇ですしね」
「おい、こら待……」
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二人が去ったその場には、ただただ沈黙が漂うのだった。
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