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第九章 拡張版ミズーナ編
第423話 転生者は王族と絡むべし
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オリジナルである乙女ゲーム『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の本編は、無事に終幕を迎えた。
ところが、転生者組の中で唯一まったく浮いた話のないミズーナ王女は、一人密かに焦っていた。
「はあ、攻略対象の内リブロ殿下だけが残りますけれど、既にサキという婚約者がいますのよね。自国に帰れば嫁ぎ先はいくらでもあるのでしょうが、どうしたものかしら」
パーティーが終わってサーロイン王城内の自室に戻ったミズーナ王女は、紅茶を飲みながら愚痴のような言葉をこぼしていた。
その様子を見ていたメチルは、おそるおそるミズーナ王女に話し掛けていた。
「あの、……なんで私はドレスを着せられてあの場所に?」
思わず聞いてしまう今日の目的である。本当ならば他の使用人たちと一緒に裏方をしているはずだったのだから。
パーティー会場に引っ張り出された挙句、アーサリーと一曲踊らされたのである。気になって仕方がないというものだろう。
「いやまあ、なんていうのでしょうかね。あまりにアーサリー殿下に女っ気がないので、よかったらメチルが嫁いでくれないかなといいますか、なんといいますか……」
目を逸らしながら答えるミズーナ王女である。
「それは……私にミール王国の王妃になれということなのでしょうか」
さすがにそこまで頭の悪くない転生者であるメチルである。ミズーナ王女の意図をさっくりと汲みきってしまった。
「まあそういうことですね。転生者のうち二人はそもそも王女という王族ですし、アンマリアもサーロインの王子と婚約しました。となれば、残るメチルも王族に嫁ぐというのは、自然な流れではありませんか?!」
「何なんですか、その理論は!」
間髪入れずにツッコミを入れるメチルである。
「これほどまでに早いツッコミとは……。メチルって関西の出身なのですかね」
「違います」
これまた即ツッコミを入れるメチルである。これは相当に鍛えられたツッコミ役に違いない。
「まったく、なんでここで前世の身の上話をしなければいけないんですか……」
頭を抱えるメチルである。
「ところで、なんで私をアーサリー殿下と引き合わせたのですかね」
「それは先程説明しましたよね。どうでしたか、アーサリー殿下は」
ミズーナ王女はメチルの質問に答えた後、逆に質問を返す。すると、メチルは唸りながら考え始めた。
「……そうですね。正直ゲームのイメージが先行していたので、俺様気質かと思って警戒していました」
「ふむふむ……」
メチルの話を淡々と頷きながら聞くミズーナ王女。
「でも、パーティーでお会いしたアーサリー殿下はなんだか印象が違いましたね。あんなにおとなしかったですかね」
首を傾げているメチルである。
「多分、学園祭でこてんぱんにされたからじゃないですかね。エスカにもこっぴどく怒られていたようですし」
ミズーナ王女は思い当たる点を挙げていく。
「ああ、あの学園祭ですか。そういえばフィレン殿下のお相手が……」
「そう、アーサリー殿下ですよ。結構一方的にボコられてましたけれどね」
「なるほど、あれは自信を無くしますね……」
納得のいってしまうメチルである。あの時、エスカもかなり怒っていたので、あの後きっとこってり絞られたのだろう。ミズーナ王女はそう推測したのである。
「というわけです。同じようにいろいろ打ちひしがれた経験のあるあなたなら、きっとアーサリー殿下を立ち直らせる事ができると思っています」
なんだかんだで話をまとめようとするミズーナ王女である。
すると、メチルは急にうーんと唸り始めていた。
そして、覚悟を決めたかのようにため息をつく。
「承知致しました。ミズーナ王女殿下のご命令とあらば、アーサリー殿下の婚約者の件、お受け致します」
メチルはミズーナ王女の前に跪いて宣言していた。これにはどういうわけかミズーナ王女が驚いている。
「い、いいのかしら。そんな即決みたいな判断で」
「いいんです。貴族社会ならそういう政略的な婚姻もよくありますから」
確認するミズーナ王女に、メチルは強い口調で答えている。そのメチルの表情を見て、自分で切り出したとはいえど、申し訳ない表情を浮かべている。
「……分かりました。アーサリー殿下が国に帰るまでまだ時間がありますので、明日にでもエスカも呼んで話し合いの場を持つこととしましょう」
「よろしくお願い致します」
はっきり言って思いつきといってもいい提案だったものの、メチルは覚悟を持って受け入れたようだった。自分で言い出した割に、なんとも申し訳ない気持ちになるミズーナ王女である。
「では、明日先触れを出してアンマリアの屋敷に向かいましょうか」
「はい、承知致しました、ミズーナ王女殿下」
話し合いも終わった事で、パーティーの疲れもあってもう眠ることにするミズーナ王女とメチル。
アンマリアのエンディングを見守ったミズーナ王女の、拡張版の最後の1年がこうやって幕を開けたのだった。
はてさて、ミズーナ王女編のエンディングは、どのような結末を迎えるのだろうか。
ところが、転生者組の中で唯一まったく浮いた話のないミズーナ王女は、一人密かに焦っていた。
「はあ、攻略対象の内リブロ殿下だけが残りますけれど、既にサキという婚約者がいますのよね。自国に帰れば嫁ぎ先はいくらでもあるのでしょうが、どうしたものかしら」
パーティーが終わってサーロイン王城内の自室に戻ったミズーナ王女は、紅茶を飲みながら愚痴のような言葉をこぼしていた。
その様子を見ていたメチルは、おそるおそるミズーナ王女に話し掛けていた。
「あの、……なんで私はドレスを着せられてあの場所に?」
思わず聞いてしまう今日の目的である。本当ならば他の使用人たちと一緒に裏方をしているはずだったのだから。
パーティー会場に引っ張り出された挙句、アーサリーと一曲踊らされたのである。気になって仕方がないというものだろう。
「いやまあ、なんていうのでしょうかね。あまりにアーサリー殿下に女っ気がないので、よかったらメチルが嫁いでくれないかなといいますか、なんといいますか……」
目を逸らしながら答えるミズーナ王女である。
「それは……私にミール王国の王妃になれということなのでしょうか」
さすがにそこまで頭の悪くない転生者であるメチルである。ミズーナ王女の意図をさっくりと汲みきってしまった。
「まあそういうことですね。転生者のうち二人はそもそも王女という王族ですし、アンマリアもサーロインの王子と婚約しました。となれば、残るメチルも王族に嫁ぐというのは、自然な流れではありませんか?!」
「何なんですか、その理論は!」
間髪入れずにツッコミを入れるメチルである。
「これほどまでに早いツッコミとは……。メチルって関西の出身なのですかね」
「違います」
これまた即ツッコミを入れるメチルである。これは相当に鍛えられたツッコミ役に違いない。
「まったく、なんでここで前世の身の上話をしなければいけないんですか……」
頭を抱えるメチルである。
「ところで、なんで私をアーサリー殿下と引き合わせたのですかね」
「それは先程説明しましたよね。どうでしたか、アーサリー殿下は」
ミズーナ王女はメチルの質問に答えた後、逆に質問を返す。すると、メチルは唸りながら考え始めた。
「……そうですね。正直ゲームのイメージが先行していたので、俺様気質かと思って警戒していました」
「ふむふむ……」
メチルの話を淡々と頷きながら聞くミズーナ王女。
「でも、パーティーでお会いしたアーサリー殿下はなんだか印象が違いましたね。あんなにおとなしかったですかね」
首を傾げているメチルである。
「多分、学園祭でこてんぱんにされたからじゃないですかね。エスカにもこっぴどく怒られていたようですし」
ミズーナ王女は思い当たる点を挙げていく。
「ああ、あの学園祭ですか。そういえばフィレン殿下のお相手が……」
「そう、アーサリー殿下ですよ。結構一方的にボコられてましたけれどね」
「なるほど、あれは自信を無くしますね……」
納得のいってしまうメチルである。あの時、エスカもかなり怒っていたので、あの後きっとこってり絞られたのだろう。ミズーナ王女はそう推測したのである。
「というわけです。同じようにいろいろ打ちひしがれた経験のあるあなたなら、きっとアーサリー殿下を立ち直らせる事ができると思っています」
なんだかんだで話をまとめようとするミズーナ王女である。
すると、メチルは急にうーんと唸り始めていた。
そして、覚悟を決めたかのようにため息をつく。
「承知致しました。ミズーナ王女殿下のご命令とあらば、アーサリー殿下の婚約者の件、お受け致します」
メチルはミズーナ王女の前に跪いて宣言していた。これにはどういうわけかミズーナ王女が驚いている。
「い、いいのかしら。そんな即決みたいな判断で」
「いいんです。貴族社会ならそういう政略的な婚姻もよくありますから」
確認するミズーナ王女に、メチルは強い口調で答えている。そのメチルの表情を見て、自分で切り出したとはいえど、申し訳ない表情を浮かべている。
「……分かりました。アーサリー殿下が国に帰るまでまだ時間がありますので、明日にでもエスカも呼んで話し合いの場を持つこととしましょう」
「よろしくお願い致します」
はっきり言って思いつきといってもいい提案だったものの、メチルは覚悟を持って受け入れたようだった。自分で言い出した割に、なんとも申し訳ない気持ちになるミズーナ王女である。
「では、明日先触れを出してアンマリアの屋敷に向かいましょうか」
「はい、承知致しました、ミズーナ王女殿下」
話し合いも終わった事で、パーティーの疲れもあってもう眠ることにするミズーナ王女とメチル。
アンマリアのエンディングを見守ったミズーナ王女の、拡張版の最後の1年がこうやって幕を開けたのだった。
はてさて、ミズーナ王女編のエンディングは、どのような結末を迎えるのだろうか。
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