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第九章 拡張版ミズーナ編
第426話 年が明ける
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アンマリアたちが卒業した年の最後の一か月間。アーサリーはミール王国に戻り、アンマリアとサキは城に住んで王妃教育を本格化させる事になった。
これで、来年一年間に学園に通う面々は、エスカ、ミズーナ王女、リブロ王子、レッタス王子、それとアンマリアのいとこのタミールだけとなった。
この中で現状相手がいないのは、レッタス王子とミズーナ王女のベジタリウス王国の二人とタミールだけである。
アーサリーにあんなことを言っておきながら、当のミズーナ王女たちには相手がいないという、おまいう案件となっていた。まったく、この二人は大丈夫なのだろうか。
とはいえ、年末はそんな事も気にならないくらい、忙しく過ぎていったのだった。
そして、拡張版のシナリオであるミズーナ王女編も、いよいよ3年目を迎える。
本来ならこの3年目で迎えるイベントがそれなりに存在しているのだが、そのほぼすべてが去年のうちにフラグがへし折られていた。
特にジャンル替えでその存在が明らかとなった魔族たちが絡むイベントは全滅である。
「はあ、そんな楽しそうなイベントがあったんですか。残念ですね……」
「あの、魔族を相手にそんな軽い感想を仰らないで下さいよ……」
部屋でのんびりと過ごすミズーナ王女の呟きに、メチルは困惑した様子でツッコミを入れている。
「魔族が絡むイベントはことごとく後味の悪い案件です。そんな軽々な扱いをしないで下さいよ。ゲーム上では私は退場済みですけど」
嘆くように話すメチルである。
ちなみに退場済みといっているのは本当の事で、メチルの事件はアンマリアの3年生、つまりはミズーナ王女の2年生の時に起きるのである。
そして、今はその年の年末であり、とっくに事件の時期は過ぎてしまっていたのだ。
ちなみにメチルは、回復魔法を使って人々を助けていただけであり、魔族というだけで討伐される捨て石という出オチ要員である。ゲーム通り進んでいたのなら、本当に後味が悪かっただろう。
急に前世の記憶が生えて魔族側から寝返ったのは、実にぎりぎりの判断だったというわけだ。少しでも遅れていれば、ゲーム通りに命を落としていた可能性があったのだ。
「まったく、自分以外の転生者と出くわすなんて思ってもみませんでしたし、それどころか他国の王子の婚約者にあてがわれるなんて思ってもみませんでした。世の中何があるか分かりませんね」
「それもそうね。2年目が終わったこの段階で、こんなほっそりしている状態になっているなんて想像できなかったもの」
不満げに話すメチルに対して、ミズーナ王女は苦笑いをしながら話している。
「とりあえず、最後の1年間はシナリオに囚われずに自由に楽しませてもらいましょうかね」
「ええ、そうですね」
ミズーナ王女とメチルは、3年目の心構えを確認するのだった。
そして、年越しを目の前にした日のこと。王都では年末の慰労パーティーが開かれる。
国中から貴族が集まって行うそのパーティーは、サーロイン王国の定番行事である。
ミール王国へと帰ってしまったアーサリーを除くゲームの登場人物が一堂に会する数少ない場面である。おそらくはエンディングまでの間にこのような場があるとすれば、フィレン王子とリブロ王子の誕生日パーティーくらいだろう。そのくらいに希少な場なのである。
この日ばかりはメチルは侍女ではなく、ベジタリウス王国からの使者のコール子爵令嬢として参加する。そのために、メチルもメイド服ではなくちゃんとしたドレスに着飾っていた。
「なんとも不思議な気持ちですね。こんなドレスを着る機会があるだなんて」
メチルは嬉しそうだった。
「本当によく似合っているわよ、メチル」
「ありがとうございます、ミズーナ王女殿下。ですが、さすがに王女殿下には敵いませんね」
穏やかな笑顔で褒めてくるミズーナ王女に対して、おかしそうに笑いながら言葉を返すメチルである。すっかり仲良くなっている二人なのである。
とにもかくにも、この年末パーティーが終われば、拡張版もいよいよ最後の一年に突入する。
ゲームにおけるハッピーエンドは婚約者を見つけて迎えることになるのだが、ゲームにおけるすべての攻略対象には婚約者がいる状態だ。
ミズーナ王女は無事に婚約者を見つけて、ハッピーエンドを迎える事ができるのだろうか。実に気がかりな点である。
ところが、今のところまったく気にしないミズーナ王女である。
(まだ1年ありますからね。問題が特にないとなれば、それだけ余裕をもって最終年に臨めます。必ずや婚約者を見つけてみせますよ)
パーティー会場に向かいながら、実に余裕で構えるミズーナ王女である。
だが、この時のミズーナ王女は、気楽に考え過ぎて気付いていなかった。特大のフラグを自分で立ててしまっていたことに。
様々な思いが交錯する年末の慰労パーティー会場。
ミズーナ王女とメチルは、一歩二歩引いた位置からパーティーを楽しんでいた。
こうして、オリジナルのゲームの時間軸は静かに終わりを告げたのであった。
これで、来年一年間に学園に通う面々は、エスカ、ミズーナ王女、リブロ王子、レッタス王子、それとアンマリアのいとこのタミールだけとなった。
この中で現状相手がいないのは、レッタス王子とミズーナ王女のベジタリウス王国の二人とタミールだけである。
アーサリーにあんなことを言っておきながら、当のミズーナ王女たちには相手がいないという、おまいう案件となっていた。まったく、この二人は大丈夫なのだろうか。
とはいえ、年末はそんな事も気にならないくらい、忙しく過ぎていったのだった。
そして、拡張版のシナリオであるミズーナ王女編も、いよいよ3年目を迎える。
本来ならこの3年目で迎えるイベントがそれなりに存在しているのだが、そのほぼすべてが去年のうちにフラグがへし折られていた。
特にジャンル替えでその存在が明らかとなった魔族たちが絡むイベントは全滅である。
「はあ、そんな楽しそうなイベントがあったんですか。残念ですね……」
「あの、魔族を相手にそんな軽い感想を仰らないで下さいよ……」
部屋でのんびりと過ごすミズーナ王女の呟きに、メチルは困惑した様子でツッコミを入れている。
「魔族が絡むイベントはことごとく後味の悪い案件です。そんな軽々な扱いをしないで下さいよ。ゲーム上では私は退場済みですけど」
嘆くように話すメチルである。
ちなみに退場済みといっているのは本当の事で、メチルの事件はアンマリアの3年生、つまりはミズーナ王女の2年生の時に起きるのである。
そして、今はその年の年末であり、とっくに事件の時期は過ぎてしまっていたのだ。
ちなみにメチルは、回復魔法を使って人々を助けていただけであり、魔族というだけで討伐される捨て石という出オチ要員である。ゲーム通り進んでいたのなら、本当に後味が悪かっただろう。
急に前世の記憶が生えて魔族側から寝返ったのは、実にぎりぎりの判断だったというわけだ。少しでも遅れていれば、ゲーム通りに命を落としていた可能性があったのだ。
「まったく、自分以外の転生者と出くわすなんて思ってもみませんでしたし、それどころか他国の王子の婚約者にあてがわれるなんて思ってもみませんでした。世の中何があるか分かりませんね」
「それもそうね。2年目が終わったこの段階で、こんなほっそりしている状態になっているなんて想像できなかったもの」
不満げに話すメチルに対して、ミズーナ王女は苦笑いをしながら話している。
「とりあえず、最後の1年間はシナリオに囚われずに自由に楽しませてもらいましょうかね」
「ええ、そうですね」
ミズーナ王女とメチルは、3年目の心構えを確認するのだった。
そして、年越しを目の前にした日のこと。王都では年末の慰労パーティーが開かれる。
国中から貴族が集まって行うそのパーティーは、サーロイン王国の定番行事である。
ミール王国へと帰ってしまったアーサリーを除くゲームの登場人物が一堂に会する数少ない場面である。おそらくはエンディングまでの間にこのような場があるとすれば、フィレン王子とリブロ王子の誕生日パーティーくらいだろう。そのくらいに希少な場なのである。
この日ばかりはメチルは侍女ではなく、ベジタリウス王国からの使者のコール子爵令嬢として参加する。そのために、メチルもメイド服ではなくちゃんとしたドレスに着飾っていた。
「なんとも不思議な気持ちですね。こんなドレスを着る機会があるだなんて」
メチルは嬉しそうだった。
「本当によく似合っているわよ、メチル」
「ありがとうございます、ミズーナ王女殿下。ですが、さすがに王女殿下には敵いませんね」
穏やかな笑顔で褒めてくるミズーナ王女に対して、おかしそうに笑いながら言葉を返すメチルである。すっかり仲良くなっている二人なのである。
とにもかくにも、この年末パーティーが終われば、拡張版もいよいよ最後の一年に突入する。
ゲームにおけるハッピーエンドは婚約者を見つけて迎えることになるのだが、ゲームにおけるすべての攻略対象には婚約者がいる状態だ。
ミズーナ王女は無事に婚約者を見つけて、ハッピーエンドを迎える事ができるのだろうか。実に気がかりな点である。
ところが、今のところまったく気にしないミズーナ王女である。
(まだ1年ありますからね。問題が特にないとなれば、それだけ余裕をもって最終年に臨めます。必ずや婚約者を見つけてみせますよ)
パーティー会場に向かいながら、実に余裕で構えるミズーナ王女である。
だが、この時のミズーナ王女は、気楽に考え過ぎて気付いていなかった。特大のフラグを自分で立ててしまっていたことに。
様々な思いが交錯する年末の慰労パーティー会場。
ミズーナ王女とメチルは、一歩二歩引いた位置からパーティーを楽しんでいた。
こうして、オリジナルのゲームの時間軸は静かに終わりを告げたのであった。
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