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第九章 拡張版ミズーナ編
第446話 事情を説明してもらおうか
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翌朝をクルスで迎えたミズーナ王女たち。メチルが防護壁を解いても特に気分の悪くなる事はなくなり、どうやら呪具が原因であることは間違いないようだった。
「ふぅ、すっきりしてよかったです」
メチルも胸を無事に撫で下ろせたようだった。
安心したメチルは回収した呪具を取り出して眺めている。
「それが原因となった呪具なの?」
「あっ、はい。今は私の力で浄化されてただのアクセサリーになってますけれど、これが原因で間違いないです」
ミズーナ王女に聞かれて、呪具だったものを差し出すメチル。
差し出された呪具だったものからは禍々しさはまったく感じられず、落ち着くような魔力しか感じられなくなっていた。
これを見ていると、呪具が何たるかというものがよく分かる。
「神器というものとは作り方が真逆といっていいと思います。聖なる魔力を当てたものが神器であり、邪悪な魔力を当てたものが呪具といった感じですね。私は性質上どっちも触れますけれど」
「へえ、そうなのね」
ミズーナ王女とメチルが話していると、部屋の扉が突然叩かれる。
「ミズーナ王女殿下、我が主であるミール国王陛下がお呼びでございます。至急おいで下さいませ。侍女のメチル殿もでございます」
兵士の声が聞こえてきた。どうやらミール国王からの呼び出しらしい。
おそらく用件は昨夜のことだろう。結局儀式の間ずっと姿を消していたので、それを問い詰められるといったところだと推測される。
「分かりました。すぐに参ります」
どういう反応をされるかは問題ではない。儀式の裏で起きていた大事件なので、ミズーナ王女としても説明しなければならないので、望むところのようだった。
宿の中の国王たちが泊まっている部屋までやって来たミズーナ王女とメチル。部屋の前で警備にあたる兵士に話し掛けて、部屋の中へと入っていく。
「ミズーナ・ベジタリウス、ただいま参りました」
「メチル・コールでございます」
きちっと淑女の挨拶を決めるミズーナ王女とメチルである。
ちらりと視線をやると、そこには気まずい感じで立っているエスカの姿があった。おそらくあれは既に説教を食らった後なのだろう。そう思うミズーナ王女だった。
「呼ばれた用件は、大体想像がついておろう。説明をしてもらえるか?」
でんと椅子に座って睨み付けてくるミール国王。さすがに先祖が海賊とあってか、その眼力は鋭く恐怖を感じるものだ。アーサリーもその辺りはちゃっかり受け継いでいる。
正直なところ、ミズーナ王女にとってこの程度の睨みは屁でもない。魔族たちと対峙したために慣れてしまっていた。むしろ、魔王を屈服させたエスカの今の姿の方が気になって仕方がない。何があってあんな顔をしているのか理解に苦しむのだ。
とりあえず、ミズーナ王女は昨夜の建国祭の儀式の裏で何があったのかをすべて説明する。
その生々しい報告に、エスカからある程度聞いていただろうミール国王の表情が面白いくらいに変化していく。どうやら、ミズーナ王女からの報告はエスカから聞いていた以上に酷いものだったようだ。
「……もうよい。そのくらいで十分だ」
「えっ、まだ半分くらいしか話していませんが?」
頭を抱えるミール国王に、しれっとした表情で語るミズーナ王女である。どうやら許容量を超えたらしい。
「とにかく、海にはまだ魔物たちの死骸が浮いているとみていいのかな」
「潮の流れがありますので、だいぶ流されてはいるとは思います。多少なりと回収できるとは思いますが、できる限り私たちで回収しておきました」
ミール国王の質問に、ミズーナ王女はその一部を収納魔法から取り出して見せつけていた。アンマリアが使えるなら、大体ミズーナ王女も使えるのである。ミズーナ王女が使えないのは瞬間移動魔法くらいだ。
「ずいぶんと多いな……」
「これでも1割もないのですが……」
「……」
ミズーナ王女の頃場に、完全に言葉を失うミール国王。
「建国祭の裏で、こんな攻防が繰り広げられていたなんて、信じられませんね」
代わりに反応するミール王妃である。ちなみにアーサリーはエスカと一緒に黙り込んだままである。
「あと、こちらはその魔物を呼び寄せる原因となっていた呪具でございます。メチルの力によって浄化されて無害となっておりますので、ご確認下さい」
ミズーナ王女が紹介すれば、護衛の兵士がメチルから呪具を預かって国王たちに手渡していた。
「あら、きれいなアクセサリーね。これがその魔物たちを呼び寄せていたのですね」
「はい。去年倒したテトロという魔族の忘れ形見でしょう。まさかミール王国にまで仕掛けているとは予想外でした」
話が終わると、王妃は呪具をメチルに返していた。やっぱりそもそもが呪具とあっては、きれいでも手元に置きたくないようである。
そんなわけで、とんでもない魔物の量だったという話のために、ミズーナ王女たちはお咎めなしで解放となった。この決定に、エスカは心底ほっとした表情を見せていた。
この話の後、国王は海の調査を兵士たちに命じ、自分たちは王都シャオンへと戻ることにしたのだった。
「ふぅ、すっきりしてよかったです」
メチルも胸を無事に撫で下ろせたようだった。
安心したメチルは回収した呪具を取り出して眺めている。
「それが原因となった呪具なの?」
「あっ、はい。今は私の力で浄化されてただのアクセサリーになってますけれど、これが原因で間違いないです」
ミズーナ王女に聞かれて、呪具だったものを差し出すメチル。
差し出された呪具だったものからは禍々しさはまったく感じられず、落ち着くような魔力しか感じられなくなっていた。
これを見ていると、呪具が何たるかというものがよく分かる。
「神器というものとは作り方が真逆といっていいと思います。聖なる魔力を当てたものが神器であり、邪悪な魔力を当てたものが呪具といった感じですね。私は性質上どっちも触れますけれど」
「へえ、そうなのね」
ミズーナ王女とメチルが話していると、部屋の扉が突然叩かれる。
「ミズーナ王女殿下、我が主であるミール国王陛下がお呼びでございます。至急おいで下さいませ。侍女のメチル殿もでございます」
兵士の声が聞こえてきた。どうやらミール国王からの呼び出しらしい。
おそらく用件は昨夜のことだろう。結局儀式の間ずっと姿を消していたので、それを問い詰められるといったところだと推測される。
「分かりました。すぐに参ります」
どういう反応をされるかは問題ではない。儀式の裏で起きていた大事件なので、ミズーナ王女としても説明しなければならないので、望むところのようだった。
宿の中の国王たちが泊まっている部屋までやって来たミズーナ王女とメチル。部屋の前で警備にあたる兵士に話し掛けて、部屋の中へと入っていく。
「ミズーナ・ベジタリウス、ただいま参りました」
「メチル・コールでございます」
きちっと淑女の挨拶を決めるミズーナ王女とメチルである。
ちらりと視線をやると、そこには気まずい感じで立っているエスカの姿があった。おそらくあれは既に説教を食らった後なのだろう。そう思うミズーナ王女だった。
「呼ばれた用件は、大体想像がついておろう。説明をしてもらえるか?」
でんと椅子に座って睨み付けてくるミール国王。さすがに先祖が海賊とあってか、その眼力は鋭く恐怖を感じるものだ。アーサリーもその辺りはちゃっかり受け継いでいる。
正直なところ、ミズーナ王女にとってこの程度の睨みは屁でもない。魔族たちと対峙したために慣れてしまっていた。むしろ、魔王を屈服させたエスカの今の姿の方が気になって仕方がない。何があってあんな顔をしているのか理解に苦しむのだ。
とりあえず、ミズーナ王女は昨夜の建国祭の儀式の裏で何があったのかをすべて説明する。
その生々しい報告に、エスカからある程度聞いていただろうミール国王の表情が面白いくらいに変化していく。どうやら、ミズーナ王女からの報告はエスカから聞いていた以上に酷いものだったようだ。
「……もうよい。そのくらいで十分だ」
「えっ、まだ半分くらいしか話していませんが?」
頭を抱えるミール国王に、しれっとした表情で語るミズーナ王女である。どうやら許容量を超えたらしい。
「とにかく、海にはまだ魔物たちの死骸が浮いているとみていいのかな」
「潮の流れがありますので、だいぶ流されてはいるとは思います。多少なりと回収できるとは思いますが、できる限り私たちで回収しておきました」
ミール国王の質問に、ミズーナ王女はその一部を収納魔法から取り出して見せつけていた。アンマリアが使えるなら、大体ミズーナ王女も使えるのである。ミズーナ王女が使えないのは瞬間移動魔法くらいだ。
「ずいぶんと多いな……」
「これでも1割もないのですが……」
「……」
ミズーナ王女の頃場に、完全に言葉を失うミール国王。
「建国祭の裏で、こんな攻防が繰り広げられていたなんて、信じられませんね」
代わりに反応するミール王妃である。ちなみにアーサリーはエスカと一緒に黙り込んだままである。
「あと、こちらはその魔物を呼び寄せる原因となっていた呪具でございます。メチルの力によって浄化されて無害となっておりますので、ご確認下さい」
ミズーナ王女が紹介すれば、護衛の兵士がメチルから呪具を預かって国王たちに手渡していた。
「あら、きれいなアクセサリーね。これがその魔物たちを呼び寄せていたのですね」
「はい。去年倒したテトロという魔族の忘れ形見でしょう。まさかミール王国にまで仕掛けているとは予想外でした」
話が終わると、王妃は呪具をメチルに返していた。やっぱりそもそもが呪具とあっては、きれいでも手元に置きたくないようである。
そんなわけで、とんでもない魔物の量だったという話のために、ミズーナ王女たちはお咎めなしで解放となった。この決定に、エスカは心底ほっとした表情を見せていた。
この話の後、国王は海の調査を兵士たちに命じ、自分たちは王都シャオンへと戻ることにしたのだった。
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