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第九章 拡張版ミズーナ編
第485話 絶望へのプレリュード
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その日の夜、エスカは抜け殻のようになっていた。
朝から夕方まで続いた座学試験で燃え尽きていたのだ。
「こんな調子で大丈夫なのかしらね」
真っ白で遠い目をしながら夕食を食べるエスカを見て、ミズーナ王女はついつい心配になってしまう。
「心配してもどうしようもありませんよ」
「そうですよ。もう終わった事ですし、結果を待つだけです」
同じように試験を受けたリブロ王子とレッタス王子は、落ち着いた様子で話をしている。
「まったく、エスカ王女殿下ってば、どうしてここまで勉強が苦手なのかしらね」
「そうですよね。学園祭では詳細を発揮されてたという風に聞いておりますし、得意と苦手がよく分かりませんよね」
アンマリアとサキの評価もこの有り様である。
「とりあえず、私たちが勉強見たんですから、赤点の回避ができていることを祈りましょう」
「そ、そうね……」
アンマリアに言われて、がっくりと肩を落とすエスカである。
「そういえば、アンマリア」
「なんでしょうか、フィレン殿下」
ちょうど話が落ち着いたところで、フィレン王子がアンマリアに話しかける。
「確認したところ、今回の魔法試験は君が用意したんだってね」
「ええ、依頼を受けてやらせて頂きました。明日も最終調整のために学園へ向かいますので、そのようにお願い致します」
「分かった。用事があれば、私かサキの方に回すようにしておくと」
「えっ、私にもですか?」
フィレン王子の反応に、サキが驚く。いきなり話に巻き込まれたらそれは驚くというものである。
「サキも王族の妻になるのだからね。そういうことには慣れておいた方がいいよ」
「そ、そうでございますね……」
不意打ちを食らったサキだが、正論に言い返すことはできなかったようだ。渋々フィレンの言葉に頷くしかなかった。
「とりあえず、どんな試験を用意したかは公平性から言って教えられないけれど、二人は無事に突破すると思っているわよ」
「プ、プレッシャーをかけないでよ……」
アンマリアがにこやかにミズーナ王女たちに言葉をかけると、その笑顔にエスカは本気で震えているようだった。
だが、泣いても笑っても、明日は学園生活最後の実技試験。無事に突破して卒業ができるのか、緊張の最終日が待ち構えているのである。
夜が明けて実技試験の当日。やはり気が重いエスカである。緊張のしすぎか、少し寝不足のようにも見える。
ちなみにだが、試験の公平性を確保するために、アンマリアは別行動で既に学園に向かっていた。ついでにいえばメチルも乗せることができずに、エスカはミズーナ王女と二人だけで学園へと向かっている。
「すー……はー……。すー……はー……」
緊張のあまり、何度も深呼吸をするエスカ。いつもと比べても、明らかな異常行動である。まったく、どのくらい緊張しているというのだろうか。
「緊張するのも分かるわね。去年の卒業まで、アンマリアはずっと魔法試験の課題を作り続けてきたんですもの。そのアンマリアが一年ぶりに作る課題よ、油断ならないわね」
「本当、そのせいで今日の私はずっと手汗が酷いんだから」
ミズーナ王女に話し掛けられて、困惑した表情を見せながらも自分の手を見せつけるエスカ。ミズーナ王女が覗き込めば、確かに緊張のせいで汗がすごいことになっていた。
「……さすがに緊張し過ぎじゃないのかしら」
あまりの汗の量に、思わず顔をしかめてしまうミズーナ王女である。
「学園に着くまでには落ち着いてよ、エスカ。魔法試験はエスカの得意なところなんだから、ここでこけたらそれこそ落第の危険性があるわよ」
「わ、分かってるわよ……」
ミズーナ王女にぴしゃりと言われて、エスカは肘をついて馬車の外へと視線を向けていた。その様子に思わずため息しか出ないミズーナ王女である。
その後はまったく会話することもなく、静かに学園へと向かったのだった。
学園に到着すると、武術型と魔法型に別れて実技試験が行われる。
武術型はサクラ・バッサーシが、魔法型はアンマリア・ファッティが試験官を務めるとあって、学生たち全員がとんでもない緊張に見舞われていた。
特に武術型の学生の緊張はすさまじい。三年間剣術大会で優勝したあの無敗王者という実力者相手に戦うことになるのだから。嬉しい反面、試験としては厳しすぎるのではないかという声が上がるくらいである。
リブロ王子もレッタス王子も、アンマリアのいとこであるタミールも緊張が隠しきれずにいた。
「手も足も出ないであっという間に負かされましたからね。再戦の機会がこのような形で回ってくるとは思ってもみませんでした」
そう話すのはリブロ王子である。
「泣いても笑って最初で最後の対戦か。胸を借りるつもりで戦わせてもらおう」
レッタス王子も気合い十分といった感じだ。
いよいよその時が近付いてきた最後の実技試験。武術型も魔法型も高難易度の試験へと挑むことになる。
緊張に包まれた学生たちの前に、試験官を務めるサクラとアンマリアがその姿を見せたのだった。
朝から夕方まで続いた座学試験で燃え尽きていたのだ。
「こんな調子で大丈夫なのかしらね」
真っ白で遠い目をしながら夕食を食べるエスカを見て、ミズーナ王女はついつい心配になってしまう。
「心配してもどうしようもありませんよ」
「そうですよ。もう終わった事ですし、結果を待つだけです」
同じように試験を受けたリブロ王子とレッタス王子は、落ち着いた様子で話をしている。
「まったく、エスカ王女殿下ってば、どうしてここまで勉強が苦手なのかしらね」
「そうですよね。学園祭では詳細を発揮されてたという風に聞いておりますし、得意と苦手がよく分かりませんよね」
アンマリアとサキの評価もこの有り様である。
「とりあえず、私たちが勉強見たんですから、赤点の回避ができていることを祈りましょう」
「そ、そうね……」
アンマリアに言われて、がっくりと肩を落とすエスカである。
「そういえば、アンマリア」
「なんでしょうか、フィレン殿下」
ちょうど話が落ち着いたところで、フィレン王子がアンマリアに話しかける。
「確認したところ、今回の魔法試験は君が用意したんだってね」
「ええ、依頼を受けてやらせて頂きました。明日も最終調整のために学園へ向かいますので、そのようにお願い致します」
「分かった。用事があれば、私かサキの方に回すようにしておくと」
「えっ、私にもですか?」
フィレン王子の反応に、サキが驚く。いきなり話に巻き込まれたらそれは驚くというものである。
「サキも王族の妻になるのだからね。そういうことには慣れておいた方がいいよ」
「そ、そうでございますね……」
不意打ちを食らったサキだが、正論に言い返すことはできなかったようだ。渋々フィレンの言葉に頷くしかなかった。
「とりあえず、どんな試験を用意したかは公平性から言って教えられないけれど、二人は無事に突破すると思っているわよ」
「プ、プレッシャーをかけないでよ……」
アンマリアがにこやかにミズーナ王女たちに言葉をかけると、その笑顔にエスカは本気で震えているようだった。
だが、泣いても笑っても、明日は学園生活最後の実技試験。無事に突破して卒業ができるのか、緊張の最終日が待ち構えているのである。
夜が明けて実技試験の当日。やはり気が重いエスカである。緊張のしすぎか、少し寝不足のようにも見える。
ちなみにだが、試験の公平性を確保するために、アンマリアは別行動で既に学園に向かっていた。ついでにいえばメチルも乗せることができずに、エスカはミズーナ王女と二人だけで学園へと向かっている。
「すー……はー……。すー……はー……」
緊張のあまり、何度も深呼吸をするエスカ。いつもと比べても、明らかな異常行動である。まったく、どのくらい緊張しているというのだろうか。
「緊張するのも分かるわね。去年の卒業まで、アンマリアはずっと魔法試験の課題を作り続けてきたんですもの。そのアンマリアが一年ぶりに作る課題よ、油断ならないわね」
「本当、そのせいで今日の私はずっと手汗が酷いんだから」
ミズーナ王女に話し掛けられて、困惑した表情を見せながらも自分の手を見せつけるエスカ。ミズーナ王女が覗き込めば、確かに緊張のせいで汗がすごいことになっていた。
「……さすがに緊張し過ぎじゃないのかしら」
あまりの汗の量に、思わず顔をしかめてしまうミズーナ王女である。
「学園に着くまでには落ち着いてよ、エスカ。魔法試験はエスカの得意なところなんだから、ここでこけたらそれこそ落第の危険性があるわよ」
「わ、分かってるわよ……」
ミズーナ王女にぴしゃりと言われて、エスカは肘をついて馬車の外へと視線を向けていた。その様子に思わずため息しか出ないミズーナ王女である。
その後はまったく会話することもなく、静かに学園へと向かったのだった。
学園に到着すると、武術型と魔法型に別れて実技試験が行われる。
武術型はサクラ・バッサーシが、魔法型はアンマリア・ファッティが試験官を務めるとあって、学生たち全員がとんでもない緊張に見舞われていた。
特に武術型の学生の緊張はすさまじい。三年間剣術大会で優勝したあの無敗王者という実力者相手に戦うことになるのだから。嬉しい反面、試験としては厳しすぎるのではないかという声が上がるくらいである。
リブロ王子もレッタス王子も、アンマリアのいとこであるタミールも緊張が隠しきれずにいた。
「手も足も出ないであっという間に負かされましたからね。再戦の機会がこのような形で回ってくるとは思ってもみませんでした」
そう話すのはリブロ王子である。
「泣いても笑って最初で最後の対戦か。胸を借りるつもりで戦わせてもらおう」
レッタス王子も気合い十分といった感じだ。
いよいよその時が近付いてきた最後の実技試験。武術型も魔法型も高難易度の試験へと挑むことになる。
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