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第272話 思わぬクリスマスプレゼント?
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ようやく街に戻ってきた満だったが、どういうわけかそのまま送ってもらえなかった。
「すまないわね。まずはドーターに会っていってくれないかしら」
「小麦さんですよね。いいですよ」
満はグラッサの申し出を受け入れる。
そんなわけで、満は芝山家にやって来た。
出発がほぼ朝一だったこともあってか、夕方には到着したようだ。
「ここが小麦さんの家なんですか。家は普通ですね」
「それはそうよ。ダーリンが選んでくれた家なのよ、ここ」
「そうなんですね」
家を見上げながら、満に対してグラッサは説明している。
「お帰りなさい、ママ!」
玄関に近付こうとしたところで、家の中から小麦が飛び出してきた。
思わず目が合って動きを止めてしまう。
「あっと……。ルナさ……いや、満くんかな?」
「はい、満です」
小麦は名前を迷っていた。なにせ両方とも同じ姿なのだから。
だけど、そこは雰囲気でどうにか言い当てていた。
「よかったぁ……。名前間違えてたら失礼だもん」
ほっと胸を撫で下ろしている小麦である。
「まあ満くん、上がっていきなさい。ついでだから夕ご飯をご馳走してあげよう。家には連絡を入れておくといいわよ」
「はい、そうさせて頂きます」
グラッサの誘いに、満は素直に応じていた。
家に上がった満は、台所と思われる場所から料理をする音が聞こえてくることに気が付いた。
「あれ、誰が料理を作ってるんですかね」
「ああ、それならダーリンよ。私はしょっちゅう海外にいるから、こっちのことは全部ダーリンに任せているのよ。だから、料理もお手の物なのよ」
「うん。パパの作る料理はおいしいよ」
グラッサが満に説明していると、小麦も満面の笑みを浮かべている。
二人がここまで褒めている様子に、満はつい期待をしてしまう。
台所に姿を見せると、ダーリンと呼ばれる小麦の父親がくるりと振り返ってきた。
「グラッサ、お帰り。その子が小麦と話していた子か。初めまして、かな?」
「はい、初めましてです。すみません、迎えに来てもらった上に食事までごちそうになるなんて」
「いやいいよ。グラッサと小麦が言い出すと止められないからね。私は二人の言いなりになるしかないんだよ、はははは」
満が申し訳なさそうにしていると、小麦の父親は笑いながら話をしている。
「せっかくだし、クリスマス風に食事を作っておいたよ。小麦が君と一緒にパーティーをしたがっていたからね」
「ちょっとパパ、それを言わないでちょうだいよ!」
父親がばらしてしまえば、小麦が頬を膨らませながら抗議をしている。
「そういえば、みなさん、僕のことをよく知っているみたいですけれど、どこで知ったんですか?」
思わず質問してしまう満に、小麦がにっこりと微笑みを向けている。
「ルナさん本人からだよ。私たちには理解してもらおうと思ったらしくて、満くんの事情は全部話してくれたんだ」
「も、もう……ルナさんってば」
思わず恥ずかしそうにしてしまう満である。
「だからね、満くん……いや、ルナちには私のことも話しておこうと思うんだ」
「ルナちって……。僕のこと、そこまで知ってるんですか?!」
「にしししし、もちのろんだよ、ルナち」
小麦は意地悪そうに笑っている。
だが、その笑い声を聞いて、満は何かが引っかかったようである。思わず首を捻ってしまっていた。
「アバター配信者は中の人のことは教えないのだろ、ドーター」
「いいじゃん。ルナちなら教えてもいいかなって思うし、こっちだけ知ってるのはなんだか気が引けるんだよね、にしし」
話の内容がいまいちわからずに困っていたが、満は何かに気が付いたようである。
「あっ、もしかして真家レニ……、レニちゃんなの?!」
「正解だよ、ルナち。私、芝山小麦が、レニちゃんの中の人なのだ、にしししし」
思わぬカミングアウトに、満は口をパクパクとさせている。
「ほらほら、そろそろ料理ができるから、小麦はそのくらいにしておきなさい」
「はーい、パパ」
父親に叱られて、小麦はひとまずおとなしくいうことを聞いていた。
「満くんは手洗いとうがいをしてきてくれ。外から入ってきた時の基本だからね」
「あっ、ごめんなさい。すぐに行ってきます」
バタバタと満は洗面所へと向かっていった。入って来た時に場所は確認していたので、間違うことはなかったようだ。
「小麦さんがレニちゃんだったのかぁ……。まさかこんな近所に住んでいたなんて……。世の中って思ったよりも狭いなぁ」
満は手をふきながら、しみじみとしていた。
「ああ、それでレニちゃん、配信を減らしてたのか。小麦さん、受験生だって話してたから」
そして、一人で納得していた。
「そうだよ、満くん。年が明けたらいよいよ受験。しばらくコラボもできなくなっちゃうな」
「うわぁ、なんでいるんですか?!」
背後から声が聞こえてきて、満はびっくりしていた。なんと廊下に小麦が立っていたのだ。
「ごめんね、驚かせちゃって。それでね、ルナち、お願いがあるんだ」
もじもじとしている小麦の態度に、満は思わずどきりとしてしまう。
「な、なんでしょうか」
「うん、受験が終わって、大学に受かったらさ、一緒にシルバレの配信をしよう」
「はははっ、そのくらいなら構いませんよ。僕だって、レニちゃんとのコラボ配信は楽しみにしてますから」
「はは、よかった。ルナちは優しいなぁ」
嬉しそうに笑う小麦の姿に、ついほっこりとした気持ちになる満である。
「それじゃ、二日遅れのクリスマスだけど、一緒に食べよう」
「はい」
満は小麦に手を引かれながら、食堂へ向かったのだった。
食事を終えた後の満は、小麦たちに見送られながら、グラッサの運転する車で家まで送ってもらったのだった。
「すまないわね。まずはドーターに会っていってくれないかしら」
「小麦さんですよね。いいですよ」
満はグラッサの申し出を受け入れる。
そんなわけで、満は芝山家にやって来た。
出発がほぼ朝一だったこともあってか、夕方には到着したようだ。
「ここが小麦さんの家なんですか。家は普通ですね」
「それはそうよ。ダーリンが選んでくれた家なのよ、ここ」
「そうなんですね」
家を見上げながら、満に対してグラッサは説明している。
「お帰りなさい、ママ!」
玄関に近付こうとしたところで、家の中から小麦が飛び出してきた。
思わず目が合って動きを止めてしまう。
「あっと……。ルナさ……いや、満くんかな?」
「はい、満です」
小麦は名前を迷っていた。なにせ両方とも同じ姿なのだから。
だけど、そこは雰囲気でどうにか言い当てていた。
「よかったぁ……。名前間違えてたら失礼だもん」
ほっと胸を撫で下ろしている小麦である。
「まあ満くん、上がっていきなさい。ついでだから夕ご飯をご馳走してあげよう。家には連絡を入れておくといいわよ」
「はい、そうさせて頂きます」
グラッサの誘いに、満は素直に応じていた。
家に上がった満は、台所と思われる場所から料理をする音が聞こえてくることに気が付いた。
「あれ、誰が料理を作ってるんですかね」
「ああ、それならダーリンよ。私はしょっちゅう海外にいるから、こっちのことは全部ダーリンに任せているのよ。だから、料理もお手の物なのよ」
「うん。パパの作る料理はおいしいよ」
グラッサが満に説明していると、小麦も満面の笑みを浮かべている。
二人がここまで褒めている様子に、満はつい期待をしてしまう。
台所に姿を見せると、ダーリンと呼ばれる小麦の父親がくるりと振り返ってきた。
「グラッサ、お帰り。その子が小麦と話していた子か。初めまして、かな?」
「はい、初めましてです。すみません、迎えに来てもらった上に食事までごちそうになるなんて」
「いやいいよ。グラッサと小麦が言い出すと止められないからね。私は二人の言いなりになるしかないんだよ、はははは」
満が申し訳なさそうにしていると、小麦の父親は笑いながら話をしている。
「せっかくだし、クリスマス風に食事を作っておいたよ。小麦が君と一緒にパーティーをしたがっていたからね」
「ちょっとパパ、それを言わないでちょうだいよ!」
父親がばらしてしまえば、小麦が頬を膨らませながら抗議をしている。
「そういえば、みなさん、僕のことをよく知っているみたいですけれど、どこで知ったんですか?」
思わず質問してしまう満に、小麦がにっこりと微笑みを向けている。
「ルナさん本人からだよ。私たちには理解してもらおうと思ったらしくて、満くんの事情は全部話してくれたんだ」
「も、もう……ルナさんってば」
思わず恥ずかしそうにしてしまう満である。
「だからね、満くん……いや、ルナちには私のことも話しておこうと思うんだ」
「ルナちって……。僕のこと、そこまで知ってるんですか?!」
「にしししし、もちのろんだよ、ルナち」
小麦は意地悪そうに笑っている。
だが、その笑い声を聞いて、満は何かが引っかかったようである。思わず首を捻ってしまっていた。
「アバター配信者は中の人のことは教えないのだろ、ドーター」
「いいじゃん。ルナちなら教えてもいいかなって思うし、こっちだけ知ってるのはなんだか気が引けるんだよね、にしし」
話の内容がいまいちわからずに困っていたが、満は何かに気が付いたようである。
「あっ、もしかして真家レニ……、レニちゃんなの?!」
「正解だよ、ルナち。私、芝山小麦が、レニちゃんの中の人なのだ、にしししし」
思わぬカミングアウトに、満は口をパクパクとさせている。
「ほらほら、そろそろ料理ができるから、小麦はそのくらいにしておきなさい」
「はーい、パパ」
父親に叱られて、小麦はひとまずおとなしくいうことを聞いていた。
「満くんは手洗いとうがいをしてきてくれ。外から入ってきた時の基本だからね」
「あっ、ごめんなさい。すぐに行ってきます」
バタバタと満は洗面所へと向かっていった。入って来た時に場所は確認していたので、間違うことはなかったようだ。
「小麦さんがレニちゃんだったのかぁ……。まさかこんな近所に住んでいたなんて……。世の中って思ったよりも狭いなぁ」
満は手をふきながら、しみじみとしていた。
「ああ、それでレニちゃん、配信を減らしてたのか。小麦さん、受験生だって話してたから」
そして、一人で納得していた。
「そうだよ、満くん。年が明けたらいよいよ受験。しばらくコラボもできなくなっちゃうな」
「うわぁ、なんでいるんですか?!」
背後から声が聞こえてきて、満はびっくりしていた。なんと廊下に小麦が立っていたのだ。
「ごめんね、驚かせちゃって。それでね、ルナち、お願いがあるんだ」
もじもじとしている小麦の態度に、満は思わずどきりとしてしまう。
「な、なんでしょうか」
「うん、受験が終わって、大学に受かったらさ、一緒にシルバレの配信をしよう」
「はははっ、そのくらいなら構いませんよ。僕だって、レニちゃんとのコラボ配信は楽しみにしてますから」
「はは、よかった。ルナちは優しいなぁ」
嬉しそうに笑う小麦の姿に、ついほっこりとした気持ちになる満である。
「それじゃ、二日遅れのクリスマスだけど、一緒に食べよう」
「はい」
満は小麦に手を引かれながら、食堂へ向かったのだった。
食事を終えた後の満は、小麦たちに見送られながら、グラッサの運転する車で家まで送ってもらったのだった。
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