22 / 387
第22話 謝罪配信
しおりを挟む
「こんばんれに~」
真家レニの配信が始まる。いつものように明るく元気な声が響き渡る。
『こんばんれに~』
『こんばんれに~』
『今日の配信wktk』
リスナーたちが挨拶をする。現状はマナーが保たれているようで、反応はいつも通りだ。
レニからは反応しないで欲しいと言われているので、満はいつでも配信できる状態にしながら、モニタの前で黙り込んでいる。
(ああ、挨拶もできないなんてもどかしいな……)
満はそんな事を思いながら配信を見守っている。
なぜなら、今発言してしまえばコメントに名前が出てしまうのだ。チャンネルにログインした状態で発言すると、ユーザネームがコメントの前に表示されてしまう。そのため、サプライズがサプライズにならないのだ。
そんなわけで、満はじっと画面の前で黙って構えている。
配信の冒頭は、いつものように他愛のない話で進んでいく。リスナーたちもお行儀よく聞いているのか、実に平和なコメントで流れていく。
それも、途中のレニの表情の変化によって空気が変わる。
「えとですね……。実はレニちゃん、みなさんに謝らなければならないことがあるんです」
『急にどうした』
『どしたん、話聞こか』
『ついにきてしまったか・・・』
真家レニの声の調子が低くなると、一斉にリスナーたちが構えたようなコメントを打ち込んでいく。
この反応を見て、満ですら察することができた。
「実は……。昨日のオフのなんですが、とある配信者さんのライブ配信にお邪魔して、つい大暴れしてしまったんです」
レニがおそるおそる口を開くと、ぴたりとコメントが止まった。リスナーたちは黙ってレニの謝罪を聞いているのだ。
「もちろん、謝罪はしました。ですが、正直許してもらえるか、怖かったです」
『ワイ、その配信見てたけど、レニちゃんはいつも通りだなと思った』
『よく今までやらかさなかったと思う』
『元気なこどもを見る親の気分』
『謝れてえらい』
リスナーからようやくコメントが打ち込まれるが、レニを責めるような言葉はなかった。
「それでなんですが、お詫びに宣伝をさせて頂いた上に、図々しくもコラボをする事にしました」
『マジか』
『たくましいな、レニちゃんwwwwww』
『どうしてそうなるwwww』
『腹いてえ』
さっきまでの沈黙が嘘のように、反応のコメントがすさまじい勢いで流れていく。
その画面を見ていた満は、ポンという音で通知が飛んできたことを確認する。
通知を確認すると、『そろそろ呼びます』とだけ書いてあった。
内容を確認した満は、ごくりと息を飲む。
このサイトには、共有配信という機能があって、チャンネルを二分割や四分割にして同時に配信できる仕組みがあるのだ。
朝にレニから教えたもらった方法で、満は画面に割り込む準備をする。
再びレニの配信に顔を向けると、画面が二分割されていた。レニの配信は左側に寄り、右側は真っ暗な状態になっている。
『おや、画面が分割されたぞ』
『おいおい、この流れってまさか・・・・・・』
『コラボクルー?』
リスナーたちが騒めき始める。
満はドキドキしながら時を待つ。『割込み配信』のボタンをクリックすれば、『レニちゃんねる』に割込み配信が行えるのだ。
「ふっふ~ん。いやぁ、先方が寛大なお方でレニちゃん命拾いです」
『それな!』
「では、お呼びしますよ。新人アバター配信者の光月ルナちです」
真家レニの声に合わせて、クリックして配信へと割り込む。もちろん、マイクオンも忘れずにだ。
「こんばんはですわ、みなさま。光月ルナ、華麗に見参でしてよ」
高貴な吸血鬼を必死に演じる満である。
『よくあんな無茶苦茶をされてコラボを受ける気になったな』
『めちゃくちゃにされたとはいえ、チャンネル登録者が500倍だからな。感謝しかあるまいて』
『500wwww』
『ええ・・・(困惑)』
「おほん。それはそれ、これはこれですわ。レニ様には、この僕の配信をめちゃくちゃにした責任はきっちり取って頂かないと困りますわよ。それが礼儀ではございません?」
(わぁ~……。僕は何を言ってるんだ!)
思ってもいないことを口走る満は、心の中で大慌てである。
『おお、さすが真祖。迫力がちげえ』
『うーん、これは正論』
『この子、新人なんよね?中身詐称してね?』
『まさかの転生か?』
光月ルナの正体を巡って、リスナーたちの考察が始まっていた。
失敬な、これでも本当に初心者の現役中学生だと言いたいが言えない満。中身バレは御法度、それがアバター配信者なのである。
それから30分ほど、レニとルナの二人のトークが続いたのだった。
「あっ、もうこんな時間ですね。長時間になってしまうとちょっとうるさい人がいるのでこれで失礼しますね。ルナちも今日はありがとう、それとごめんね」
「いえいえ。あの程度でいちいち腹を立てていては身がもちませんわ。僕は真祖、細かいことは気に致しませんわ」
「ルナち優しい」
『てえてえ』
『ママぁ・・・』
「だ、誰がママですか。それでは、本日はお招きいただきありがとうございますわ。みなさま、ごきげんよう」
満は配信終了をぽちりとクリックして、先に配信を終了させる。
「それでは、今日はみなさん、急な配信にお付き合い頂きありがとうございました。ルナちのチャンネルも登録してあげてね、おつれに~」
こうして、無事に真家レニの謝罪配信は終わりを告げたのであった。
真家レニの配信が始まる。いつものように明るく元気な声が響き渡る。
『こんばんれに~』
『こんばんれに~』
『今日の配信wktk』
リスナーたちが挨拶をする。現状はマナーが保たれているようで、反応はいつも通りだ。
レニからは反応しないで欲しいと言われているので、満はいつでも配信できる状態にしながら、モニタの前で黙り込んでいる。
(ああ、挨拶もできないなんてもどかしいな……)
満はそんな事を思いながら配信を見守っている。
なぜなら、今発言してしまえばコメントに名前が出てしまうのだ。チャンネルにログインした状態で発言すると、ユーザネームがコメントの前に表示されてしまう。そのため、サプライズがサプライズにならないのだ。
そんなわけで、満はじっと画面の前で黙って構えている。
配信の冒頭は、いつものように他愛のない話で進んでいく。リスナーたちもお行儀よく聞いているのか、実に平和なコメントで流れていく。
それも、途中のレニの表情の変化によって空気が変わる。
「えとですね……。実はレニちゃん、みなさんに謝らなければならないことがあるんです」
『急にどうした』
『どしたん、話聞こか』
『ついにきてしまったか・・・』
真家レニの声の調子が低くなると、一斉にリスナーたちが構えたようなコメントを打ち込んでいく。
この反応を見て、満ですら察することができた。
「実は……。昨日のオフのなんですが、とある配信者さんのライブ配信にお邪魔して、つい大暴れしてしまったんです」
レニがおそるおそる口を開くと、ぴたりとコメントが止まった。リスナーたちは黙ってレニの謝罪を聞いているのだ。
「もちろん、謝罪はしました。ですが、正直許してもらえるか、怖かったです」
『ワイ、その配信見てたけど、レニちゃんはいつも通りだなと思った』
『よく今までやらかさなかったと思う』
『元気なこどもを見る親の気分』
『謝れてえらい』
リスナーからようやくコメントが打ち込まれるが、レニを責めるような言葉はなかった。
「それでなんですが、お詫びに宣伝をさせて頂いた上に、図々しくもコラボをする事にしました」
『マジか』
『たくましいな、レニちゃんwwwwww』
『どうしてそうなるwwww』
『腹いてえ』
さっきまでの沈黙が嘘のように、反応のコメントがすさまじい勢いで流れていく。
その画面を見ていた満は、ポンという音で通知が飛んできたことを確認する。
通知を確認すると、『そろそろ呼びます』とだけ書いてあった。
内容を確認した満は、ごくりと息を飲む。
このサイトには、共有配信という機能があって、チャンネルを二分割や四分割にして同時に配信できる仕組みがあるのだ。
朝にレニから教えたもらった方法で、満は画面に割り込む準備をする。
再びレニの配信に顔を向けると、画面が二分割されていた。レニの配信は左側に寄り、右側は真っ暗な状態になっている。
『おや、画面が分割されたぞ』
『おいおい、この流れってまさか・・・・・・』
『コラボクルー?』
リスナーたちが騒めき始める。
満はドキドキしながら時を待つ。『割込み配信』のボタンをクリックすれば、『レニちゃんねる』に割込み配信が行えるのだ。
「ふっふ~ん。いやぁ、先方が寛大なお方でレニちゃん命拾いです」
『それな!』
「では、お呼びしますよ。新人アバター配信者の光月ルナちです」
真家レニの声に合わせて、クリックして配信へと割り込む。もちろん、マイクオンも忘れずにだ。
「こんばんはですわ、みなさま。光月ルナ、華麗に見参でしてよ」
高貴な吸血鬼を必死に演じる満である。
『よくあんな無茶苦茶をされてコラボを受ける気になったな』
『めちゃくちゃにされたとはいえ、チャンネル登録者が500倍だからな。感謝しかあるまいて』
『500wwww』
『ええ・・・(困惑)』
「おほん。それはそれ、これはこれですわ。レニ様には、この僕の配信をめちゃくちゃにした責任はきっちり取って頂かないと困りますわよ。それが礼儀ではございません?」
(わぁ~……。僕は何を言ってるんだ!)
思ってもいないことを口走る満は、心の中で大慌てである。
『おお、さすが真祖。迫力がちげえ』
『うーん、これは正論』
『この子、新人なんよね?中身詐称してね?』
『まさかの転生か?』
光月ルナの正体を巡って、リスナーたちの考察が始まっていた。
失敬な、これでも本当に初心者の現役中学生だと言いたいが言えない満。中身バレは御法度、それがアバター配信者なのである。
それから30分ほど、レニとルナの二人のトークが続いたのだった。
「あっ、もうこんな時間ですね。長時間になってしまうとちょっとうるさい人がいるのでこれで失礼しますね。ルナちも今日はありがとう、それとごめんね」
「いえいえ。あの程度でいちいち腹を立てていては身がもちませんわ。僕は真祖、細かいことは気に致しませんわ」
「ルナち優しい」
『てえてえ』
『ママぁ・・・』
「だ、誰がママですか。それでは、本日はお招きいただきありがとうございますわ。みなさま、ごきげんよう」
満は配信終了をぽちりとクリックして、先に配信を終了させる。
「それでは、今日はみなさん、急な配信にお付き合い頂きありがとうございました。ルナちのチャンネルも登録してあげてね、おつれに~」
こうして、無事に真家レニの謝罪配信は終わりを告げたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる