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第71話 弁えておるよ
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午前中に頑張りすぎてしまった吸血鬼ルナはお昼を食べると眠りにつく。さすがに本来眠っている時間だったので、無理はよくなかったようだ。
ルナが眠ったことで、すんなりと満と交代……とはいかなかった。
「おや、いんたぁねっととやらに戻ると思ったのに、変な空間に出てしまったわい。ここは来たことがある」
満が覚醒することで自分はインターネットの世界に戻ると思っていたのに、予想外だった。
辺りは白い空間。ここは以前に満と会話をしたことのある空間のようだった。つまり、満はまだ覚醒していないということだろうか。
訝しんで、ついつい考え込んでしまう吸血鬼ルナ。
「やれやれ、ならば満の意識がどこかにいるはず。目の前にはおらんようだし、探すとしようか」
不測の事態にも慌てない。それでこそ長い時を生きてきた吸血鬼というもの。
しばらく歩いていると、ようやく何かが見えてきた。
「満、ここにおったか」
「ああ、ルナさん。僕どうしちゃったんですかね」
吸血鬼ルナが声をかけると、満が不安そうに声をかけてきた。
「妾の方が知りたいわい。これ以上妾がこの体を支配するわけにはいかぬ。妾は妾として復活したいだけで、満の体を奪うつもりはない」
満を落ち着かせようとして、吸血鬼ルナは満の両肩をつかんで話を始める。
「満、とにかく気をしっかり持て。妾の力に負けてはならぬ。このままでは満が意識が逆にいんたぁねっとの世界に閉じ込められてしまうぞ」
「そんな……!」
吸血鬼ルナの言葉に、満は大慌てである。
「最近表に出れるようになって、妾がはしゃぎ過ぎた結果だ。反省はしておる。結果として、今日ここまで満の体を奪ってきておるからな」
「そうなんですね」
「というわけじゃ、吸血もして満足しているので体を返すぞ、満」
吸血鬼ルナは、満をしっかりと抱き締めていた。
「えっ、ルナさん?!」
あまりに突然のことで、満は混乱している。
「驚くな。しっかりと意識を持て。妾と呼吸を合わせるのだ、満よ」
「は、はいっ!」
ルナに叱られた満は、吸血鬼ルナの呼吸と自分の呼吸を合わせる。
「そうじゃ。妾は眠るとするから、満は現実世界を強く意識するのだ。会いたい人物を思い浮かべるのがいいだろう。両親か? 親友か? 誰でもよいぞ」
吸血鬼ルナのアドバイスで、満は現実の世界を強く意識していく。すると、夢の世界での満の意識が段々と希薄になっていく。
「なんだか、眠くなって……きちゃっ、た……」
段々と満のまぶたが重く、徐々に閉じていく。
「安心して目を閉じるがよいぞ。夢世界での眠りは、現実世界の起床だからな」
「う……ん……。ありが、とうござ……い、ま……す」
満はがくんと項垂れると同時に、さあっとその姿がかき消えていく。その様子を見ながら、吸血鬼ルナが安心をしていた。
「やれやれ、妾が原因とはいえ、無事にうまくいって安心したわい」
真っ白な世界の中で、吸血鬼ルナは安心したのか、大きく息を吐いていた。
「さて、妾はひと眠りするとするか。満を無事に送り出したとあって安心して眠くなってきたわい」
大きなあくびをして、吸血鬼ルナは指を鳴らす。
それと同時に、白い世界から吸血鬼ルナは姿を消したのだった。
―――
「ふわぁぁあ~……」
満は目を覚ます。
服は女性もののままだが、髪の毛は瞳は確かに満のものに戻っていた。
「ふぅ、よく寝たなぁ。サイトのチェックから始めるかな」
女性用の寝間着のまま、満はパソコンに向かう。
そして、その寝ぼけた頭が一発で目を覚ます事態を目にする。
「えっ!?」
なにかといったら、吸血鬼ルナが昨夜の配信に映り込んでいたという指摘だった。
内容は『ルナちに似た何かが映っていた』というものだが、満にはすぐ吸血鬼ルナだということが分かった。
だが、満はすぐに冷静になった。既に返信がしてあったからだ。どうやら吸血鬼ルナが対応してくれたようである。
(ルナさんも律儀だな。これじゃ、僕が僕でなくなっても……)
そう思い始めた満だったが、はっとして自分の頬を叩いていた。
「いけないいけない。さっきルナさんに注意されたばかりだった。こんな弱気になっちゃったら、僕が消えちゃう!」
つい弱気になってしまった満は、すぐさま強く反省していた。
続いてSNSもチェックした満だったが、こっちも全部ルナがすべて対処済み。思わず笑ってしまう。
おぼつかない様子で「いんたぁねっと」と発音していたのが、まるで嘘と思えるくらいに慣れていたのだ。
すべてを確認した満は大きく伸びをする。寝起きだったし、ずっと椅子に座って作業をしていたのでこうなってしまうものだ。
「それじゃ、着替えてお母さんの手伝いでもしようかな。冬休みに入ったんだし、普段はできない手伝いもしたいもん」
満はふんすと気合いを入れると、ずっと着たままになっていた女性用の寝間着から男性用の部屋着に着替える。
「お母さん、何か手伝えることあるかな?」
満は元気よく階段を降りていきながら母親に呼び掛けていた。
「あら、満、起きたのね。だったら……」
ようやく姿を見せた本物の息子に、母親はにこやかに対応をしていた。
どうなることかと思われたが、無事に空月家の日常が戻ってきたのであった。
ルナが眠ったことで、すんなりと満と交代……とはいかなかった。
「おや、いんたぁねっととやらに戻ると思ったのに、変な空間に出てしまったわい。ここは来たことがある」
満が覚醒することで自分はインターネットの世界に戻ると思っていたのに、予想外だった。
辺りは白い空間。ここは以前に満と会話をしたことのある空間のようだった。つまり、満はまだ覚醒していないということだろうか。
訝しんで、ついつい考え込んでしまう吸血鬼ルナ。
「やれやれ、ならば満の意識がどこかにいるはず。目の前にはおらんようだし、探すとしようか」
不測の事態にも慌てない。それでこそ長い時を生きてきた吸血鬼というもの。
しばらく歩いていると、ようやく何かが見えてきた。
「満、ここにおったか」
「ああ、ルナさん。僕どうしちゃったんですかね」
吸血鬼ルナが声をかけると、満が不安そうに声をかけてきた。
「妾の方が知りたいわい。これ以上妾がこの体を支配するわけにはいかぬ。妾は妾として復活したいだけで、満の体を奪うつもりはない」
満を落ち着かせようとして、吸血鬼ルナは満の両肩をつかんで話を始める。
「満、とにかく気をしっかり持て。妾の力に負けてはならぬ。このままでは満が意識が逆にいんたぁねっとの世界に閉じ込められてしまうぞ」
「そんな……!」
吸血鬼ルナの言葉に、満は大慌てである。
「最近表に出れるようになって、妾がはしゃぎ過ぎた結果だ。反省はしておる。結果として、今日ここまで満の体を奪ってきておるからな」
「そうなんですね」
「というわけじゃ、吸血もして満足しているので体を返すぞ、満」
吸血鬼ルナは、満をしっかりと抱き締めていた。
「えっ、ルナさん?!」
あまりに突然のことで、満は混乱している。
「驚くな。しっかりと意識を持て。妾と呼吸を合わせるのだ、満よ」
「は、はいっ!」
ルナに叱られた満は、吸血鬼ルナの呼吸と自分の呼吸を合わせる。
「そうじゃ。妾は眠るとするから、満は現実世界を強く意識するのだ。会いたい人物を思い浮かべるのがいいだろう。両親か? 親友か? 誰でもよいぞ」
吸血鬼ルナのアドバイスで、満は現実の世界を強く意識していく。すると、夢の世界での満の意識が段々と希薄になっていく。
「なんだか、眠くなって……きちゃっ、た……」
段々と満のまぶたが重く、徐々に閉じていく。
「安心して目を閉じるがよいぞ。夢世界での眠りは、現実世界の起床だからな」
「う……ん……。ありが、とうござ……い、ま……す」
満はがくんと項垂れると同時に、さあっとその姿がかき消えていく。その様子を見ながら、吸血鬼ルナが安心をしていた。
「やれやれ、妾が原因とはいえ、無事にうまくいって安心したわい」
真っ白な世界の中で、吸血鬼ルナは安心したのか、大きく息を吐いていた。
「さて、妾はひと眠りするとするか。満を無事に送り出したとあって安心して眠くなってきたわい」
大きなあくびをして、吸血鬼ルナは指を鳴らす。
それと同時に、白い世界から吸血鬼ルナは姿を消したのだった。
―――
「ふわぁぁあ~……」
満は目を覚ます。
服は女性もののままだが、髪の毛は瞳は確かに満のものに戻っていた。
「ふぅ、よく寝たなぁ。サイトのチェックから始めるかな」
女性用の寝間着のまま、満はパソコンに向かう。
そして、その寝ぼけた頭が一発で目を覚ます事態を目にする。
「えっ!?」
なにかといったら、吸血鬼ルナが昨夜の配信に映り込んでいたという指摘だった。
内容は『ルナちに似た何かが映っていた』というものだが、満にはすぐ吸血鬼ルナだということが分かった。
だが、満はすぐに冷静になった。既に返信がしてあったからだ。どうやら吸血鬼ルナが対応してくれたようである。
(ルナさんも律儀だな。これじゃ、僕が僕でなくなっても……)
そう思い始めた満だったが、はっとして自分の頬を叩いていた。
「いけないいけない。さっきルナさんに注意されたばかりだった。こんな弱気になっちゃったら、僕が消えちゃう!」
つい弱気になってしまった満は、すぐさま強く反省していた。
続いてSNSもチェックした満だったが、こっちも全部ルナがすべて対処済み。思わず笑ってしまう。
おぼつかない様子で「いんたぁねっと」と発音していたのが、まるで嘘と思えるくらいに慣れていたのだ。
すべてを確認した満は大きく伸びをする。寝起きだったし、ずっと椅子に座って作業をしていたのでこうなってしまうものだ。
「それじゃ、着替えてお母さんの手伝いでもしようかな。冬休みに入ったんだし、普段はできない手伝いもしたいもん」
満はふんすと気合いを入れると、ずっと着たままになっていた女性用の寝間着から男性用の部屋着に着替える。
「お母さん、何か手伝えることあるかな?」
満は元気よく階段を降りていきながら母親に呼び掛けていた。
「あら、満、起きたのね。だったら……」
ようやく姿を見せた本物の息子に、母親はにこやかに対応をしていた。
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