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第113話 近付く二人
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満と香織は揃って街を歩く。
ところがお互いに声をかけられないまま無言で歩いている。
満の方の服装は、長袖ハイネックの上からキャミソール、ひざ丈のスカートにタイツ、それとスニーカーだ。母親からも言われているせいもあるかもしれないが、満はすっかりスカートに抵抗はなくなってきている。
香織の方の服装は、オフショルダーのワンピースにカーディガンを羽織る感じだ。サイハイソックスにミュールという組み合わせで可愛らしさを演出している。ちなみに、そのワンピースは花柄である。
(肩出しって、ちょっと恥ずかしいかな)
きっちりとしたタイプの服装が多かった香織は、思い切って肩の大きく開いた服を着てみたのである。ただ、恥ずかしさと肌寒さから、カーディガンを羽織っている。
特に会話もしないまま、駅前の通りまでやって来た満と香織。
「ど、どこいこっか、花宮さん」
目的地に着いてしまった以上、話をしなければならない。満は頑張って声をかける。
学校で会う時なら気楽なはずなのだが、女の子同士という状況が慣れないらしく、とても緊張しているようだった。
「わ、私はどこでもいいよ。そ……ルナちゃんの行きたい場所を選んでもらって大丈夫だから」
こっちもこっちで恥ずかしがっている。
女友だちとの付き合いが多くなってしまったせいで、満とはかなり長く話ができていなかったのだが、それでも満に対してはずっと好意を持ち続けていた。
その相手が、少女の姿とはいえ、現在隣にいるのだ。意識しないわけがないというのである。
「あっ、ゲームセンター。そら……ルナちゃん、こっちに寄っていかない?」
満から答えが返ってこないので、香織は目に入ったゲームセンターへと満を誘う。
満も行き先が思いつかなかったので、香織の誘いに乗ってしまった。
ゲームセンターへと入ると、終業式の日ではあるものの店内の人はまばらだった。
「あっ、ルナちゃん。あれやろう?」
香織が真っ先に目をつけたのは、太鼓を叩くリズムゲームだった。
香織が演じるアバターである黄花マイカは、明るい春の妖精だ。そういうキャラ付けもあってか、香織は前々からちょっとやってみたいなと思っていたようだ。
普段の友だちと来た時はなかなか手が出せなかったものの、満と一緒に来た今なら手が出せると思ったらしい。どうしてそう思った。
コイン投入口にお金を入れ、香織はバチを構える。
「見ててね、ルナちゃん」
人気の曲に合わせて太鼓を叩くこのゲームは、意外と運動になる。
意気込んでゲームに臨んだ香織だったが、終わってみれば完全に息が上がっていた。
「はぁはぁ。うう、評価はまあまあだったよ……」
意気込んではみたものの、あまり評価が上がらなくて香織は落ち込んでいる。
それを見ていた満は、今度は自分が挑んでみることにした。
「ちょっと、そ……ルナちゃん?!」
「見てたら僕もしてみたくなっちゃった。見ててね、花宮さん」
舌をぺろりと出してじっと画面を睨む満。
配信でも『SILVER BULLET SOLDIER』をやったせいか、ゲームで負けたくない気持ちがうずいてしまったようだった。
無難に難しいの符面で挑む満だったが、終わってみればいい感じの評価を叩き出している。バチを右手に持ち直すと、香織の方を見て左手の親指を立てる満である。
「どう、花宮さん」
「か、かっこいい……」
あまりの素晴らしさに、香織は口に手を当てて感動している。
「ルナちゃん、そんなにゲームできたんだ」
「うん、最近はわけあっていろんなゲームに手を出してるんだ。それに、こっちの姿の方が僕本来より能力高いみたいだし。……なんだかずるしたみたいかな」
満は照れながら話をしている。
これで一気に緊張が解れたのか、二人は一緒にいろんなゲームをして楽しんだ。
「そうだ。ルナちゃん、ゲームセンターならやっぱりこれは外せないよ」
「これは……」
最後にしようと香織が連れてきたのは、フォトシールを作る機械のあるところだった。
思わず顔を上げてじっと見てしまう満である。
並んだフォトシールの機械のひとつへ、香織は満の手を引っ張って入っていく。
「いろいろフレームを加工できるんだけど、ルナちゃんはどういうのが好みなのかな」
すでにお金を投入して、香織はいろいろと操作を始めている。
きれいなフォトシールを作るために、様々な加工が施せるようで、その種類の多さに満は驚いていた。
「花宮さんに任せるよ。僕には、その、ちょっと分からないからさ」
「分かったわ。任せて」
満は詳しくないからと、すべてを香織に任せることにした。
任された香織は、真剣に画面とにらめっこをしている。あーでもないこーでもないと、かなり悩んでいるようだった。
ようやく設定を決めると、香織はポーズをどうしようかと持ちかける。記念写真ではないので、普通に写るのではつまらないというものだ。
話し合った結果、顔を近付けてピースサインを作るという無難なものに決まった。お互いちょっとまだ恥ずかしいらしい。
結局撮ったのはそのポーズ一種類だけだったものの、香織は満足したようだった。
「こういうの撮ってて楽しいかなって思ってたけど、なんだか気持ちが分かった気がするな」
「うん、結構ドキドキしちゃうよね」
香織はようやく出てきたフォトシールを手に取る。二枚出てきたので、その一枚を満へと差し出す。
「今日は声をかけてみてよかった。これからもよろしくね」
「う、うん。もちろんだよ、花宮さん」
満面の笑みで顔を向けてくる香織の姿に、満もこういうのも悪くないかなとつられるように笑ってしまう。
すっかり緊張がなくなった二人は、楽しそうに距離を縮めながら、ゲームセンターから出ていったのだった。
ところがお互いに声をかけられないまま無言で歩いている。
満の方の服装は、長袖ハイネックの上からキャミソール、ひざ丈のスカートにタイツ、それとスニーカーだ。母親からも言われているせいもあるかもしれないが、満はすっかりスカートに抵抗はなくなってきている。
香織の方の服装は、オフショルダーのワンピースにカーディガンを羽織る感じだ。サイハイソックスにミュールという組み合わせで可愛らしさを演出している。ちなみに、そのワンピースは花柄である。
(肩出しって、ちょっと恥ずかしいかな)
きっちりとしたタイプの服装が多かった香織は、思い切って肩の大きく開いた服を着てみたのである。ただ、恥ずかしさと肌寒さから、カーディガンを羽織っている。
特に会話もしないまま、駅前の通りまでやって来た満と香織。
「ど、どこいこっか、花宮さん」
目的地に着いてしまった以上、話をしなければならない。満は頑張って声をかける。
学校で会う時なら気楽なはずなのだが、女の子同士という状況が慣れないらしく、とても緊張しているようだった。
「わ、私はどこでもいいよ。そ……ルナちゃんの行きたい場所を選んでもらって大丈夫だから」
こっちもこっちで恥ずかしがっている。
女友だちとの付き合いが多くなってしまったせいで、満とはかなり長く話ができていなかったのだが、それでも満に対してはずっと好意を持ち続けていた。
その相手が、少女の姿とはいえ、現在隣にいるのだ。意識しないわけがないというのである。
「あっ、ゲームセンター。そら……ルナちゃん、こっちに寄っていかない?」
満から答えが返ってこないので、香織は目に入ったゲームセンターへと満を誘う。
満も行き先が思いつかなかったので、香織の誘いに乗ってしまった。
ゲームセンターへと入ると、終業式の日ではあるものの店内の人はまばらだった。
「あっ、ルナちゃん。あれやろう?」
香織が真っ先に目をつけたのは、太鼓を叩くリズムゲームだった。
香織が演じるアバターである黄花マイカは、明るい春の妖精だ。そういうキャラ付けもあってか、香織は前々からちょっとやってみたいなと思っていたようだ。
普段の友だちと来た時はなかなか手が出せなかったものの、満と一緒に来た今なら手が出せると思ったらしい。どうしてそう思った。
コイン投入口にお金を入れ、香織はバチを構える。
「見ててね、ルナちゃん」
人気の曲に合わせて太鼓を叩くこのゲームは、意外と運動になる。
意気込んでゲームに臨んだ香織だったが、終わってみれば完全に息が上がっていた。
「はぁはぁ。うう、評価はまあまあだったよ……」
意気込んではみたものの、あまり評価が上がらなくて香織は落ち込んでいる。
それを見ていた満は、今度は自分が挑んでみることにした。
「ちょっと、そ……ルナちゃん?!」
「見てたら僕もしてみたくなっちゃった。見ててね、花宮さん」
舌をぺろりと出してじっと画面を睨む満。
配信でも『SILVER BULLET SOLDIER』をやったせいか、ゲームで負けたくない気持ちがうずいてしまったようだった。
無難に難しいの符面で挑む満だったが、終わってみればいい感じの評価を叩き出している。バチを右手に持ち直すと、香織の方を見て左手の親指を立てる満である。
「どう、花宮さん」
「か、かっこいい……」
あまりの素晴らしさに、香織は口に手を当てて感動している。
「ルナちゃん、そんなにゲームできたんだ」
「うん、最近はわけあっていろんなゲームに手を出してるんだ。それに、こっちの姿の方が僕本来より能力高いみたいだし。……なんだかずるしたみたいかな」
満は照れながら話をしている。
これで一気に緊張が解れたのか、二人は一緒にいろんなゲームをして楽しんだ。
「そうだ。ルナちゃん、ゲームセンターならやっぱりこれは外せないよ」
「これは……」
最後にしようと香織が連れてきたのは、フォトシールを作る機械のあるところだった。
思わず顔を上げてじっと見てしまう満である。
並んだフォトシールの機械のひとつへ、香織は満の手を引っ張って入っていく。
「いろいろフレームを加工できるんだけど、ルナちゃんはどういうのが好みなのかな」
すでにお金を投入して、香織はいろいろと操作を始めている。
きれいなフォトシールを作るために、様々な加工が施せるようで、その種類の多さに満は驚いていた。
「花宮さんに任せるよ。僕には、その、ちょっと分からないからさ」
「分かったわ。任せて」
満は詳しくないからと、すべてを香織に任せることにした。
任された香織は、真剣に画面とにらめっこをしている。あーでもないこーでもないと、かなり悩んでいるようだった。
ようやく設定を決めると、香織はポーズをどうしようかと持ちかける。記念写真ではないので、普通に写るのではつまらないというものだ。
話し合った結果、顔を近付けてピースサインを作るという無難なものに決まった。お互いちょっとまだ恥ずかしいらしい。
結局撮ったのはそのポーズ一種類だけだったものの、香織は満足したようだった。
「こういうの撮ってて楽しいかなって思ってたけど、なんだか気持ちが分かった気がするな」
「うん、結構ドキドキしちゃうよね」
香織はようやく出てきたフォトシールを手に取る。二枚出てきたので、その一枚を満へと差し出す。
「今日は声をかけてみてよかった。これからもよろしくね」
「う、うん。もちろんだよ、花宮さん」
満面の笑みで顔を向けてくる香織の姿に、満もこういうのも悪くないかなとつられるように笑ってしまう。
すっかり緊張がなくなった二人は、楽しそうに距離を縮めながら、ゲームセンターから出ていったのだった。
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