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第126話 ヴァーチャルお花見配信
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「おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます」
『おはよるな~』
『おはよるなー』
世貴から桜が届いた翌日、いつも通りに満は配信を始めていた。
いつもの配信日なのは当然だが、今日は世貴からの強いリクエストがある。何があっても配信せざるを得なかった。
「すっかり暖かくなってきましたわね。みなさまはいかがお過ごしでしょうか」
『寒暖差で風邪ひきそう』
『花粉症がやばたに園』
『おまいら、鼻水とくしゃみから離れろwwww』
春らしいコメントではあるものの、確かにツッコミを入れたリスナーの言うとおりだ。
そういう話題を話している時ではない。
「もう新学期を迎えますね。なんだか気持ちがわくわくしてきますわ」
『分からなくはない』
『学生時代はそうだったな』
リスナーたちの生活環境が透けて見えてくる。
コメントをじっと見ていた満は、さすがに自分の身バレの危険性を感じ取っていた。なにせ、同じ感想を抱くリスナーの年齢が分かれば、自分の年齢も類推されてしまうからだ。
これは話題を変えた方がよさそうだと感じてしまう。
「おほん、日本という国では、今は桜という花が楽しめると伺いました」
『お?』
『これはあの流れか?』
満が話し出した内容を聞いて、一部のリスナーが既に何かを察したようである。
「ふふっ、まだその答えは取っておきましょう。それでは、庭園へと移動しましょうか」
満は適当にごまかしておく。
全部ショートカットをすればいいものの、満はもったいぶって庭園へと続く扉の前の場面を出す。
『うおっ、屋敷の扉の前だ』
『じらすなぁ』
『この扉の先には何があるんだ(棒)』
リスナーたちは大体悟っている模様。だけども満はもう少しだけじらしておく。
「もう察しのいいリスナーの方々は分かっていらっしゃるみたいですね」
『そりゃまあ、ルナちは分かりやすいもん』
『いい意味でだけど素直なんよ』
「なるほど、僕に悪い子になれと?」
『じらしてる時点で悪い子やで(にんまり)』
リスナーとのやり取りを楽しむ満である。
しかし、そのやり取りもいい加減終わりにする。これから今日の配信のメインを見せなければならない。満はちょっとドキドキしている。
「それではお待たせ致しましたわ。本日の配信のメインをお見せ致します」
『wktk』
バーンと扉が開いて、庭園が映し出される。その映像が見えた瞬間、リスナーたちはおそらく言葉を失ったことだろう。
なぜなら、庭園にはこれでもかというくらいに桜の木が植わっていたのだから。
『うえっ、これ全部・・・サクラ?』
『画面が真っピンクやぞ』
『嘘だろ、普通の庭園だったよな、確か』
「うふふふ。僕のモデリングをして下さった方が作られたのですよ。できが素晴らしくて、思わずうっとりしてしまいますわ」
満は満足そうに笑っている。
『そうだろう、そうだろう』
『やっぱりいたか、ルナちのパパ』
『今回のこれ、どんだけかかったんだ』
『この桜は珍しく一日かかったぞ』
『いち・・・にち?』
『マジでバケモンや』
リスナーたちが世貴のコメントに驚愕している。
桜の木はたくさん植わっているし、なにより花びらのエフェクトがおかしい。ルナの体や髪に当たればきちんと止まり、地面にもどんどんと積もっていく。
試しにほうきを持ったルナが地面を掃けば、それに従って花びらが動いていく。もちろん、ほうきにも花びらは付着する。
『へ、へんたいだーっ!』
『おう、褒め言葉ありがとう』
『ルナちのパパ、マジパねえっす』
リスナーたちの反応を、世貴はいちいち楽しんでいるようだった。
「うふふ、いかがでしたでしょうか。花見をした気分になれましたかね」
『なれた、十分なれたよ』
『夜桜もええなあ』
『これで、ルナちのパパにいくらお金が入るのか気になる』
こういうすごいものを見ると、どうしてもそういうことに話は及ぶ。
だけど、そこに続けて世貴の爆弾発言が飛んでくる。
『いや、これは俺がルナちの魅力を引き立たせるために作ったやつだ。実質ただ働きだ』
『へんたいだーっ!(2回目)』
『それに作ったものを使ってくれって今回は頼んだからな。互いの報酬で相殺だよ』
『それでも無償はおかしいんよ』
「僕もお支払いしたいとは考えてはいるのですが、モデラー様ったらお断りしますのよ。こんなに素晴らしいものを、ただで使っていいのだろうかと、割と本気で悩みますのよ」
『おい、ルナちが困ってるぞ』
満が困ったような仕草をすれば、すぐさま世貴を責めるようなコメントが出てくる。
『しょうがないな。今回のもクロワやサンのように売り出してみるか』
『そうなるんかい!』
どうやらあくまでも満からお金を取る気をないようだ。これには満もくすくすと笑ってしまう。
「モデラー様のお話はそのくらいにしておいて、今日はせっかくの桜の咲く庭園なのです。お花見気分で過ごしましょう」
『賛成』
『ちょうど切らしてた、助かる』
世貴の話題を打ち切って、桜の鑑賞会に切り替える満。テーブルの上には、世貴が作ったお団子が並べられている。
ルナがそれを食べれば、きちんとお団子の数が減っていく。まったく、どこまでリアルにこだわってるんだか。
こんな感じで、光月ルナのお花見配信は大盛況に終わったのだった。
『おはよるな~』
『おはよるなー』
世貴から桜が届いた翌日、いつも通りに満は配信を始めていた。
いつもの配信日なのは当然だが、今日は世貴からの強いリクエストがある。何があっても配信せざるを得なかった。
「すっかり暖かくなってきましたわね。みなさまはいかがお過ごしでしょうか」
『寒暖差で風邪ひきそう』
『花粉症がやばたに園』
『おまいら、鼻水とくしゃみから離れろwwww』
春らしいコメントではあるものの、確かにツッコミを入れたリスナーの言うとおりだ。
そういう話題を話している時ではない。
「もう新学期を迎えますね。なんだか気持ちがわくわくしてきますわ」
『分からなくはない』
『学生時代はそうだったな』
リスナーたちの生活環境が透けて見えてくる。
コメントをじっと見ていた満は、さすがに自分の身バレの危険性を感じ取っていた。なにせ、同じ感想を抱くリスナーの年齢が分かれば、自分の年齢も類推されてしまうからだ。
これは話題を変えた方がよさそうだと感じてしまう。
「おほん、日本という国では、今は桜という花が楽しめると伺いました」
『お?』
『これはあの流れか?』
満が話し出した内容を聞いて、一部のリスナーが既に何かを察したようである。
「ふふっ、まだその答えは取っておきましょう。それでは、庭園へと移動しましょうか」
満は適当にごまかしておく。
全部ショートカットをすればいいものの、満はもったいぶって庭園へと続く扉の前の場面を出す。
『うおっ、屋敷の扉の前だ』
『じらすなぁ』
『この扉の先には何があるんだ(棒)』
リスナーたちは大体悟っている模様。だけども満はもう少しだけじらしておく。
「もう察しのいいリスナーの方々は分かっていらっしゃるみたいですね」
『そりゃまあ、ルナちは分かりやすいもん』
『いい意味でだけど素直なんよ』
「なるほど、僕に悪い子になれと?」
『じらしてる時点で悪い子やで(にんまり)』
リスナーとのやり取りを楽しむ満である。
しかし、そのやり取りもいい加減終わりにする。これから今日の配信のメインを見せなければならない。満はちょっとドキドキしている。
「それではお待たせ致しましたわ。本日の配信のメインをお見せ致します」
『wktk』
バーンと扉が開いて、庭園が映し出される。その映像が見えた瞬間、リスナーたちはおそらく言葉を失ったことだろう。
なぜなら、庭園にはこれでもかというくらいに桜の木が植わっていたのだから。
『うえっ、これ全部・・・サクラ?』
『画面が真っピンクやぞ』
『嘘だろ、普通の庭園だったよな、確か』
「うふふふ。僕のモデリングをして下さった方が作られたのですよ。できが素晴らしくて、思わずうっとりしてしまいますわ」
満は満足そうに笑っている。
『そうだろう、そうだろう』
『やっぱりいたか、ルナちのパパ』
『今回のこれ、どんだけかかったんだ』
『この桜は珍しく一日かかったぞ』
『いち・・・にち?』
『マジでバケモンや』
リスナーたちが世貴のコメントに驚愕している。
桜の木はたくさん植わっているし、なにより花びらのエフェクトがおかしい。ルナの体や髪に当たればきちんと止まり、地面にもどんどんと積もっていく。
試しにほうきを持ったルナが地面を掃けば、それに従って花びらが動いていく。もちろん、ほうきにも花びらは付着する。
『へ、へんたいだーっ!』
『おう、褒め言葉ありがとう』
『ルナちのパパ、マジパねえっす』
リスナーたちの反応を、世貴はいちいち楽しんでいるようだった。
「うふふ、いかがでしたでしょうか。花見をした気分になれましたかね」
『なれた、十分なれたよ』
『夜桜もええなあ』
『これで、ルナちのパパにいくらお金が入るのか気になる』
こういうすごいものを見ると、どうしてもそういうことに話は及ぶ。
だけど、そこに続けて世貴の爆弾発言が飛んでくる。
『いや、これは俺がルナちの魅力を引き立たせるために作ったやつだ。実質ただ働きだ』
『へんたいだーっ!(2回目)』
『それに作ったものを使ってくれって今回は頼んだからな。互いの報酬で相殺だよ』
『それでも無償はおかしいんよ』
「僕もお支払いしたいとは考えてはいるのですが、モデラー様ったらお断りしますのよ。こんなに素晴らしいものを、ただで使っていいのだろうかと、割と本気で悩みますのよ」
『おい、ルナちが困ってるぞ』
満が困ったような仕草をすれば、すぐさま世貴を責めるようなコメントが出てくる。
『しょうがないな。今回のもクロワやサンのように売り出してみるか』
『そうなるんかい!』
どうやらあくまでも満からお金を取る気をないようだ。これには満もくすくすと笑ってしまう。
「モデラー様のお話はそのくらいにしておいて、今日はせっかくの桜の咲く庭園なのです。お花見気分で過ごしましょう」
『賛成』
『ちょうど切らしてた、助かる』
世貴の話題を打ち切って、桜の鑑賞会に切り替える満。テーブルの上には、世貴が作ったお団子が並べられている。
ルナがそれを食べれば、きちんとお団子の数が減っていく。まったく、どこまでリアルにこだわってるんだか。
こんな感じで、光月ルナのお花見配信は大盛況に終わったのだった。
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