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第206話 お出かけの〆は配信で
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無事に家に戻れた満は、土曜日夜の配信を始める。
お風呂も食事も終えて、クーラーの利いた涼しい部屋の中での配信だ。
「おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます」
いつもの第一声が放たれる。
『おはよるなー』
『おはよるな~』
リスナーたちからの挨拶もいつも通りだ。
長音か波かという違いはあるものの、すっかりこの挨拶も定着したものである。
「はい、本日の配信でございますが、月初でございます」
『ざわ・・・ ざわ・・・』
『この流れ、来るか?』
満がこういえば、当然という感じだろう。分かっていても息を飲むような反応をするのが、リスナーたちの暗黙の了解のようになっていた。
「もちろん、月刊『アバター配信者』ですね。月の最初はやはりこれがないとやってられません」
『ですよねー』
『知 っ て た』
『っぱこれがないと、月が替わったって意識がないぜ』
リスナーたちの反応はいつも通りだった、もはや恒例行事となっている。
『え、なに・・・、しらん、そんなん・・・』
「おやおや、新規の方もいらっしゃるのですかね」
あまりにも目立つコメントだったので、満はつい拾ってしまう。
『そりゃそうやろうな』
『アバ信コンテストの後、チャンネル登録者数が数百人やけど増えとるからなぁ』
『土曜かつ夏休みの夜やから、そりゃ新規がいても不思議やないで』
「ふむふむ、そうなのですね。最近確認を怠っていましたからね。これは申し訳ございませんわ」
リスナーたちのコメントに、満はうっかりしていたことを告白してしまった。
実際、アバター配信者コンテストが終わった後は、どこか呆然としていた。配信しなければという意識こそあれ、細かいチェックにまでは気が回らなかったのである。
「ですが、新規の方がいらっしゃるということはとても嬉しく思いますわね」
満は本当に嬉しそうに笑っている。
「それでは、本日の配信内容を改めて説明を」
『wktk』
「月の最初の土曜日の配信は、知る人ぞ知る月刊誌『アバター配信者』というズバリな名前の本を用いて、内容を確認するというものですわ」
『ふむふむ』
『ワイもこの配信で本の存在を知った』
『月刊誌にこんなんあるとは思わなんだよなwww』
リスナーたちにも認知度の低い書籍のようである。
ちなみにだが、満が知ったのもたまたまである。
満が風斗と行くあの書店。なぜかあそこに一冊だけ昔から置かれていたのだ。
それを見つけたことが、満のアバター配信者のへのあこがれを抱く要因となった。満にしてみれば、原点となる本なのだ。
「今月号には、この間のアバター配信者コンテストについての記事も載っております。〆切までが短かったのか、情報は少ないですわね」
満が真っ先に紹介した情報は、アバター配信者コンテストのことだった。
なにせ行われたのは今週の日曜日。前日の金曜日に発売された雑誌なために、印刷や配送の時間を考えると記事の差し替えはほぼ無理だったのだろう。
それでも、約半ページ分のスペースを割いて書かれていたので、元から載せる気は満々だったようだ。
「半分くらいは副社長へのインタビューで埋まっていましたね。おそらくこれは事前に用意できたものだと思われますわ。ほぼ同じ内容を開会式で話していらっしゃいましたもの」
『さすが参加者やな』
『あの時の話の内容を覚えてるんか・・・』
話を進めていく満の語る内容に、リスナーたちは驚きを隠せなかったようだ。
「結果に関しては上位三名の名前と、狸小路稲荷様の今後の動向が気になるとだけ書かれて〆られていましたわね」
『ギリギリの差し替えやな』
『印刷所もよく待ってくれたな、これ・・・』
『原稿チェックを最小限にしたな、これ』
リスナーたちも反応は感心する内容が多かった。
「僕としましては売名というよりはモデラー様の『どこまで通用するか』ということのために参加したようなものです。二位という結果を残せましたことは、ひとえにリスナーたちの応援あってのことだと思いますわ」
『いやいや、ルナちの実力やて』
『ルナちの配信見てる連中は、意外とシビアな目で見とったからな』
『稲荷に入れたルナちのリスナーがおったのは知ってる』
『ギルティ』
実が頭を下げてお礼を言えば、リスナーたちからもいろいろと反応がある。
「コンテストは推しを決めるものではありませんわ。あくまでも実力の世界ですので、他の方へ投票されたリスナーを責めることはできませんわよ」
『ルナちのいう通りやね』
『うっ、おとなげなかった』
少し危うい雰囲気になっても、満が仲裁すれば一気に雰囲気は丸くなる。
これが光月ルナの配信なのである。
「さて、お時間もいいようですので、そろそろ終わりに致しましょうか」
『うおっ、30分経ってる?!』
『よくあの内容で30分持たせられるな』
『ルナちネ申』
リスナーたちは時計を見てみんな驚いているようだった。
月刊『アバター配信者』の内容だけで、本当に30分経ってしまっているのである。
「はい、神ではありません、吸血鬼ですわよ」
『www』
『wwwww』
「では、また次回の配信でお会い致しましょう。みなさま、ごきげんよう」
『おつるなー』
『おつるな~』
今日も無事に、光月ルナの配信は終わりを迎えたのだった。
お風呂も食事も終えて、クーラーの利いた涼しい部屋の中での配信だ。
「おはようですわ、みなさま。光月ルナでございます」
いつもの第一声が放たれる。
『おはよるなー』
『おはよるな~』
リスナーたちからの挨拶もいつも通りだ。
長音か波かという違いはあるものの、すっかりこの挨拶も定着したものである。
「はい、本日の配信でございますが、月初でございます」
『ざわ・・・ ざわ・・・』
『この流れ、来るか?』
満がこういえば、当然という感じだろう。分かっていても息を飲むような反応をするのが、リスナーたちの暗黙の了解のようになっていた。
「もちろん、月刊『アバター配信者』ですね。月の最初はやはりこれがないとやってられません」
『ですよねー』
『知 っ て た』
『っぱこれがないと、月が替わったって意識がないぜ』
リスナーたちの反応はいつも通りだった、もはや恒例行事となっている。
『え、なに・・・、しらん、そんなん・・・』
「おやおや、新規の方もいらっしゃるのですかね」
あまりにも目立つコメントだったので、満はつい拾ってしまう。
『そりゃそうやろうな』
『アバ信コンテストの後、チャンネル登録者数が数百人やけど増えとるからなぁ』
『土曜かつ夏休みの夜やから、そりゃ新規がいても不思議やないで』
「ふむふむ、そうなのですね。最近確認を怠っていましたからね。これは申し訳ございませんわ」
リスナーたちのコメントに、満はうっかりしていたことを告白してしまった。
実際、アバター配信者コンテストが終わった後は、どこか呆然としていた。配信しなければという意識こそあれ、細かいチェックにまでは気が回らなかったのである。
「ですが、新規の方がいらっしゃるということはとても嬉しく思いますわね」
満は本当に嬉しそうに笑っている。
「それでは、本日の配信内容を改めて説明を」
『wktk』
「月の最初の土曜日の配信は、知る人ぞ知る月刊誌『アバター配信者』というズバリな名前の本を用いて、内容を確認するというものですわ」
『ふむふむ』
『ワイもこの配信で本の存在を知った』
『月刊誌にこんなんあるとは思わなんだよなwww』
リスナーたちにも認知度の低い書籍のようである。
ちなみにだが、満が知ったのもたまたまである。
満が風斗と行くあの書店。なぜかあそこに一冊だけ昔から置かれていたのだ。
それを見つけたことが、満のアバター配信者のへのあこがれを抱く要因となった。満にしてみれば、原点となる本なのだ。
「今月号には、この間のアバター配信者コンテストについての記事も載っております。〆切までが短かったのか、情報は少ないですわね」
満が真っ先に紹介した情報は、アバター配信者コンテストのことだった。
なにせ行われたのは今週の日曜日。前日の金曜日に発売された雑誌なために、印刷や配送の時間を考えると記事の差し替えはほぼ無理だったのだろう。
それでも、約半ページ分のスペースを割いて書かれていたので、元から載せる気は満々だったようだ。
「半分くらいは副社長へのインタビューで埋まっていましたね。おそらくこれは事前に用意できたものだと思われますわ。ほぼ同じ内容を開会式で話していらっしゃいましたもの」
『さすが参加者やな』
『あの時の話の内容を覚えてるんか・・・』
話を進めていく満の語る内容に、リスナーたちは驚きを隠せなかったようだ。
「結果に関しては上位三名の名前と、狸小路稲荷様の今後の動向が気になるとだけ書かれて〆られていましたわね」
『ギリギリの差し替えやな』
『印刷所もよく待ってくれたな、これ・・・』
『原稿チェックを最小限にしたな、これ』
リスナーたちも反応は感心する内容が多かった。
「僕としましては売名というよりはモデラー様の『どこまで通用するか』ということのために参加したようなものです。二位という結果を残せましたことは、ひとえにリスナーたちの応援あってのことだと思いますわ」
『いやいや、ルナちの実力やて』
『ルナちの配信見てる連中は、意外とシビアな目で見とったからな』
『稲荷に入れたルナちのリスナーがおったのは知ってる』
『ギルティ』
実が頭を下げてお礼を言えば、リスナーたちからもいろいろと反応がある。
「コンテストは推しを決めるものではありませんわ。あくまでも実力の世界ですので、他の方へ投票されたリスナーを責めることはできませんわよ」
『ルナちのいう通りやね』
『うっ、おとなげなかった』
少し危うい雰囲気になっても、満が仲裁すれば一気に雰囲気は丸くなる。
これが光月ルナの配信なのである。
「さて、お時間もいいようですので、そろそろ終わりに致しましょうか」
『うおっ、30分経ってる?!』
『よくあの内容で30分持たせられるな』
『ルナちネ申』
リスナーたちは時計を見てみんな驚いているようだった。
月刊『アバター配信者』の内容だけで、本当に30分経ってしまっているのである。
「はい、神ではありません、吸血鬼ですわよ」
『www』
『wwwww』
「では、また次回の配信でお会い致しましょう。みなさま、ごきげんよう」
『おつるなー』
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今日も無事に、光月ルナの配信は終わりを迎えたのだった。
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