242 / 387
第242話 衝撃は駆け巡る
しおりを挟む
翌日、満のクラスに風斗が突撃してきた。
「満! これを見たか!?」
「ど、どうしたんだよ、風斗」
今日は男の子な満は、香織のクラスに登校している。なので、風斗が隣のクラスから突撃してきたのだ。
風斗の慌てっぷりに、満はきょとんとした顔をしている。
これでも朝の登校時には何もなかったというのに、昼休みになっていきなり飛び込んできた。
一緒にいた香織もびっくりするくらいの大声である。
「これを見ろ。芸能ニュースだ」
「えっ、どれどれ?」
「『配管工レーシング世界一、個人アバ信に宣戦布告』?!」
タイトルを読み上げて、香織が目を白黒させていた。
「ちょっと待って、なんで世界チャンピオンが個人勢にこんなことをしているの?」
「記事の内容を読め」
「……しょうがないなぁ」
風斗が香織の質問を受けて、満たちに記事をしっかり読むように促してくる。満たちは仕方なく、風斗が見せているスマートフォンの画面を覗き込んだ。
「えっとなになに?」
記事にしっかりと目を通していくと、満たちの表情がみるみる変わっていく。
「いやいや待って。これ本当なの?」
「本当だから慌ててるんだよ。昨夜、緊急配信をして生放送で宣言したらしいぞ」
風斗たちが騒いでいると、クラスの一部の生徒が寄ってくる。
「あー、見た見た。配管工レーシングの世界チャンピオン『マッハ』の配信だろ?」
「私も見てた。初めて聞く名前だったけど、アバター配信者を名指しして敵意むき出しにしていたわ」
クラスメイトたちが次々と証言を出してくる。
これでは記事を読まずして、クラスメイトたちの情報だけでどうにかなってしまいそうだ。
「光月ルナだっけか。名指しされてたの」
「そうそう。どうやらマッハは光月ルナの配信を見ていたらしくて、その内容に衝撃を受けたらしいからな」
「えっ、どういう内容なの?」
何も知らないクラスメイトまで口を挟んできた。
知っている者知らない者がごちゃごちゃと混ざってきたので、配管工レーシングに詳しいクラスメイトがいろいろと説明を始めている。
それによれば、配管工レーシングのキャラクターは次の四タイプに分かれるらしい。
平均的な能力を持つ『ミドル』と『トール』の兄弟。
操作性の高い『プリン』と『マーシュ』。
加速抜群だが最高速が遅いの『ハッカン』と『ノロノロ』。
加速は最悪だが最高速が速い『ユッケン』と『ゴーリー』。
初期段階では全部でこの八キャラが選べるらしい。
タイムアタックでは最高速が速いユッケンやゴーリーが選ばれることが多く、世界チャンピオンのマッハはユッケン使いだという。
「それで、光月ルナは加速はいいけど最高速が最も遅いハッカンを使ってたらしいんだけど、ステラっていう無敵かつ最高速の上がるアイテムを使わずに、ありえないタイムで走破してみせたらしい」
この話が出た時、満は思わず「えっ」という顔をしてしまう。
思わず何かやっちゃいましたかと思ってしまったようだ。
「それに刺激されたらしくて、マッハは光月ルナに宣戦布告をしたというのが、その記事ってわけだ」
「世界チャンピオンの逆鱗に触れたのか……。個人勢恐るべし」
思わず黙り込んで、信じられないといった表情で満に視線を向けてしまう風斗と香織である。
「でも、光月ルナって今月末にデビュー一周年記念の配信をするんだろ? いいじゃん、目玉ができて」
「だなぁ。世界チャンピオンから目をつけられたってだけで、話題性抜群だぞ」
クラスメイトたちは面白がって笑っているが、当事者である満はそんな気分に到底なれるわけがなかった。
まったくもってどうすんの状態である。
「おっと、昼休みが終わっちまうな」
盛り上がっていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。
これを合図にして、クラスメイトたちがざわざわとしながらも席へと戻っていっている。
風斗もさすがにこれ以上は滞在できないので、おとなしく自分のクラスへと帰っていった。
残った満と香織は席が近いとあって、もう少し話をしているようだ。
「どうするのよ、満くん」
「どうしたもこうしたも、受けるしかないでしょうに」
満は困った顔をしているが、せっかく名乗り出てくれた挑戦者だ。怖いけれど大事にしたいところである。
「はあ……。新品を買って配信した内容でまさかこんなことになるなんて……」
盛大にため息をついてしまう満である。
満からしてみれば、新しいゲームに手を出して配信してみただけなのだ。まさかここまで大きな反響をもたらすとは思ってもみなかったのである。
世の中、本当に何が起こるか分からないものなのだ。
「可愛いからあのキャラ使っただけなのになぁ……」
本気で満は凹んでしまっていた。
とりあえず午後の授業が始まってしまったので、満は普通に授業を受けていたが、その表情はずっと難しいままだった。
アバター配信者コンテスト二位のニュースも対して話題にならなかったというのに、思わず形で全国区になってしまった光月ルナ。
かつてない注目を集めることになってしまったデビュー一周年記念の配信までは、残り三週間を切っている。
満の気の休まらない日々が始まったのであった。
「満! これを見たか!?」
「ど、どうしたんだよ、風斗」
今日は男の子な満は、香織のクラスに登校している。なので、風斗が隣のクラスから突撃してきたのだ。
風斗の慌てっぷりに、満はきょとんとした顔をしている。
これでも朝の登校時には何もなかったというのに、昼休みになっていきなり飛び込んできた。
一緒にいた香織もびっくりするくらいの大声である。
「これを見ろ。芸能ニュースだ」
「えっ、どれどれ?」
「『配管工レーシング世界一、個人アバ信に宣戦布告』?!」
タイトルを読み上げて、香織が目を白黒させていた。
「ちょっと待って、なんで世界チャンピオンが個人勢にこんなことをしているの?」
「記事の内容を読め」
「……しょうがないなぁ」
風斗が香織の質問を受けて、満たちに記事をしっかり読むように促してくる。満たちは仕方なく、風斗が見せているスマートフォンの画面を覗き込んだ。
「えっとなになに?」
記事にしっかりと目を通していくと、満たちの表情がみるみる変わっていく。
「いやいや待って。これ本当なの?」
「本当だから慌ててるんだよ。昨夜、緊急配信をして生放送で宣言したらしいぞ」
風斗たちが騒いでいると、クラスの一部の生徒が寄ってくる。
「あー、見た見た。配管工レーシングの世界チャンピオン『マッハ』の配信だろ?」
「私も見てた。初めて聞く名前だったけど、アバター配信者を名指しして敵意むき出しにしていたわ」
クラスメイトたちが次々と証言を出してくる。
これでは記事を読まずして、クラスメイトたちの情報だけでどうにかなってしまいそうだ。
「光月ルナだっけか。名指しされてたの」
「そうそう。どうやらマッハは光月ルナの配信を見ていたらしくて、その内容に衝撃を受けたらしいからな」
「えっ、どういう内容なの?」
何も知らないクラスメイトまで口を挟んできた。
知っている者知らない者がごちゃごちゃと混ざってきたので、配管工レーシングに詳しいクラスメイトがいろいろと説明を始めている。
それによれば、配管工レーシングのキャラクターは次の四タイプに分かれるらしい。
平均的な能力を持つ『ミドル』と『トール』の兄弟。
操作性の高い『プリン』と『マーシュ』。
加速抜群だが最高速が遅いの『ハッカン』と『ノロノロ』。
加速は最悪だが最高速が速い『ユッケン』と『ゴーリー』。
初期段階では全部でこの八キャラが選べるらしい。
タイムアタックでは最高速が速いユッケンやゴーリーが選ばれることが多く、世界チャンピオンのマッハはユッケン使いだという。
「それで、光月ルナは加速はいいけど最高速が最も遅いハッカンを使ってたらしいんだけど、ステラっていう無敵かつ最高速の上がるアイテムを使わずに、ありえないタイムで走破してみせたらしい」
この話が出た時、満は思わず「えっ」という顔をしてしまう。
思わず何かやっちゃいましたかと思ってしまったようだ。
「それに刺激されたらしくて、マッハは光月ルナに宣戦布告をしたというのが、その記事ってわけだ」
「世界チャンピオンの逆鱗に触れたのか……。個人勢恐るべし」
思わず黙り込んで、信じられないといった表情で満に視線を向けてしまう風斗と香織である。
「でも、光月ルナって今月末にデビュー一周年記念の配信をするんだろ? いいじゃん、目玉ができて」
「だなぁ。世界チャンピオンから目をつけられたってだけで、話題性抜群だぞ」
クラスメイトたちは面白がって笑っているが、当事者である満はそんな気分に到底なれるわけがなかった。
まったくもってどうすんの状態である。
「おっと、昼休みが終わっちまうな」
盛り上がっていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。
これを合図にして、クラスメイトたちがざわざわとしながらも席へと戻っていっている。
風斗もさすがにこれ以上は滞在できないので、おとなしく自分のクラスへと帰っていった。
残った満と香織は席が近いとあって、もう少し話をしているようだ。
「どうするのよ、満くん」
「どうしたもこうしたも、受けるしかないでしょうに」
満は困った顔をしているが、せっかく名乗り出てくれた挑戦者だ。怖いけれど大事にしたいところである。
「はあ……。新品を買って配信した内容でまさかこんなことになるなんて……」
盛大にため息をついてしまう満である。
満からしてみれば、新しいゲームに手を出して配信してみただけなのだ。まさかここまで大きな反響をもたらすとは思ってもみなかったのである。
世の中、本当に何が起こるか分からないものなのだ。
「可愛いからあのキャラ使っただけなのになぁ……」
本気で満は凹んでしまっていた。
とりあえず午後の授業が始まってしまったので、満は普通に授業を受けていたが、その表情はずっと難しいままだった。
アバター配信者コンテスト二位のニュースも対して話題にならなかったというのに、思わず形で全国区になってしまった光月ルナ。
かつてない注目を集めることになってしまったデビュー一周年記念の配信までは、残り三週間を切っている。
満の気の休まらない日々が始まったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる