ひみつ探偵しおりちゃん

未羊

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第148話 捕り物劇

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 ゆらりと立つレオン。それを取り囲む警察官たち。一触即発の雰囲気の中、睨み合いが続く。
「せやなぁ……。まずはお前から死にさらせっ!」
 レオンは素早く懐から何かを取り出したかと思うと、それをトラへと向ける。向けたのは……拳銃だった。
「銃刀法違反か……。捕らえろ!」
 水崎警部が指示を出す。それと同時に、後ろに隠れていた盾を持った警察官が現れる。所詮は市警なので、装備はそう多くないので人数が少ないのだが、現場の広さを思えば十分である。
「はっ、甘いなぁ。マッポなんぞ、その程度のものなんやなぁ」
 レオンはトラへと向けて発砲すると、警察官たちを睨む。そのレオンの背後には、至近距離で撃たれたトラがうずくまる。集中していたので直撃は免れたものの、さすがに近距離だったのでかすり傷でもそのダメージは大きかった。
「はっ、ざまあないな、トラ。その傷やったら、どうせしばらく動けんやろ。雑魚を片付けたら、あの世に送ってやるわ」
 不気味な雰囲気を放ちながら、レオンが立ち尽くしている。まるで無防備だというのに、警官たちは誰も近付く事ができない。レオンの放つ雰囲気に飲まれてしまっているのである。
「おらおら、どうしたあ? 所詮マッポなんぞその程度のわっぱどもやなぁ!」
 じりじりと警察官たちに近付いていくレオン。
 その時だった。
「あだっ!」
 テニスボールが再びレオンを襲う。
「くそっ、さっきから鬱陶しいな。誰やねん、こないな事をしくさる奴は!」
 さすがのレオンも見えないところから飛んでくる攻撃に苛立ちを隠せなかった。とはいえども、びびっている警官が相手とはいえ、下手に目が離せない以上、その攻撃に構っていられなかった。
 そこでレオンは、少しずつ後退って窓際に移動する事を思いつく。こうすれば、警察官たちを牽制しながら窓の外から攻撃してくる相手を視界に収められるというわけだ。
 拳銃を構えながらじりじりと後退していくレオン。それに対して、少しずつ前に出ていく警察官たち。
 やがてレオンが窓際に到達する。念のために壁に隠れるようにしながら外を見るレオン。
(はんっ、そこに居ったんか!)
 心の中でそう言いながら、拳銃を窓の外に向けようとするレオンだが、ここでまたもや予想外の事がレオンを襲う。
「まっ、そうなるわよね。性格的に強行突破を試みるかと思ったけどね!」
「誰や!」
 窓の外から聞こえた声に、思わず叫ぶレオン。そのレオンに対して、蹴りが飛ぶ。
 勢いをつけて蹴り飛ばしたのは、なんと栞だった。廃工場の屋根の上でじっと待ち構えていたのである。
「くそっ! このガキが!」
 吹き飛んだレオンはすかさず栞に向けて銃を向けようとするが、それよりも早く栞がレオンの腕に飛び乗った。
「ぐあっ、ぐっ……」
 栞の体重はそんなに重くはないのだが、さすがに足を折り曲げて勢いよく踏みつけられれば痛いものだ。レオンが苦痛に顔を歪めている。そして、その手からは銃が落ち、素早く蹴り飛ばしてレオンから離した。
「お、お前は、あの時の小娘か……!」
「あら、覚えていたのね。不名誉だわ」
 栞の顔を見たレオンの反応に、栞はそう吐き捨てる。
「捕らえろ!」
 レオンが栞に気を取られて無防備になった今こそ、取り押さえるチャンス。水崎警部が号令を掛ける。
 それを合図に、レオンに向かって警察官たちが一気になだれ込む。
「はっ、バーディアの狂犬と呼ばれた俺を相手に……、甘く見てくれるなぁ?」
 うずくまっていたはずのレオンだが、警察官たちが近付いてくると急に立ち上がる。そして、近付いてくる警察官たちを蹴りで吹き飛ばしていた。まるで漫画のように人が吹っ飛ぶので驚かされるばかりだった。
「甘かったなぁ。この程度で俺がいつまでも寝てる思うたら、大間違いやで」
 気が付いたら中で立っているのは、レオン以外には栞と水崎警部だけになっていた。10人は居ただろう警察官は、みんな床に倒れ込んでいた。防弾の盾も、レオンの攻撃力の前では無力化されてしまったのだった。
「さて、この小娘、どう落とし前をつけてもらおうかなぁ……」
「くっ……」
 レオンが栞に迫っていく。だが、そこに再びテニスボールが急襲する。窓枠を使って跳弾させてレオンを強襲するテニスボール。
「くそっ、またか。誰や、こないな事しくさるボケは!」
 余裕のできたレオンは窓からばっと身を乗り出して外を見る。
 だが、そんな事をすればどうなるのか、ちょっと考えればすぐに分かる事だった。
「ぶべっ!」
 テニスボールが顔面に直撃する。
(うわあ……、これはさすがに痛そう)
 鼻から血をぼたぼたと垂らすレオン。
「おのれっ! 許さへん、いてもうたるわ!」
 逆上したレオンは窓から飛び降りる。そして、ボールを打っていたわっけーへと襲い掛かった。
「はははっ、りぃぱぱが怒っているのだ」
 しかし、笑いながら余裕で立っているわっけー。そして、殴り掛かってきたレオンの攻撃を躱すと、その腕を掴んで投げ飛ばしてしまったのだ。
「立つのだ。おじさんの苦痛はこんなものじゃない。あたしはお前を許さないのだ」
 投げ飛ばされて倒れ込んだレオンに、わっけーは怒りのこもった声を掛けたのだった。
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