マジカル☆パステル

未羊

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第91話 懲りない自惚れと団結の力

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 辺りがシイロによって白い結界に包まれていく。すると、これに耐性のない人間は次々と白く染まって倒れていく。
「パステル・カラーチェンジ!」
 正体が知られるわけにはいかないので、倒れたのを確認してから変身する雪路たち。よくよく思えば全員揃っての戦闘は初めてである。正確に言えば、イエーロとグーリと戦った時にも勢ぞろいはしていたが、あの時はまだパステルブラウンではなくマジェだったのだ。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク!」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン!」
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ!」
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル!」
「命実る時、秋の妖精パステルブラウン!」
 五人が変身後の名乗りを決める。さすがに五人全員が揃うと圧巻である。
 パステルピンクとパステルシアンは、パステルブラウンを初めて見るが今はとりあえずそれどころじゃないのでスルー。一斉にシイロを視線を向ける。
「はっ、伝説の戦士が全員勢ぞろいか。面白い。相手にとって不足なしだ」
 シイロが思い切り目を見開く。真っ白な姿のせいで分かりにくいが、それはなんともすさまじい威力である。その異様な姿を見たにもかかわらず、住職はまったく動じていなかったので、本当に何者なのだろうか。
「さて、さすがに1対5はどうかと思うからな。私の方も助っ人を出すとしよう。来なさい、モノトーン!」
 人が乗っているリムジンを化け物にできなかったが、幸い近所は森である。森の中から木の化け物が二体現れた。
「モノ、トーンッ!」
「さあ、あんたたちの実力を、私に見せておくれ!」
 5対3となった伝説の戦士とシイロの対決。パステルピンクたちは相手の実力を測り損ねており、下手に動けないでいた。
「ふっ、かかって来れぬか」
 シイロは吐き捨てると、構えを取る。
「ならば、こちらから行く!」
 何やら筆のような形状の武器を構え、パステルピンクたちに襲い掛かる。
「くっ、速え!」
 驚くパステルピンクだったが、パステルシアンが捨て身覚悟で飛び込む。
「くっ!」
「きゃあっ!」
 反射でシイロを弾き返す事はできたが、反射しきれなかったのかパステルシアンも吹き飛んでいた。
「大丈夫か、パステルシアン!」
「うん、平気。ちょっと相殺しきれなかったみたい」
 パステルシアンはすぐに起き上がっていた。それを見たシイロはすぐに勘付いた。
「なるほど、今のがグーレイが苦戦したという技か。今食らった感じで大体分かった。次は通じぬぞ」
 強者感たっぷりにシイロが言うと、パステルシアンは少しその雰囲気に飲まれかけた。だが、パステルピンクが手を握った事で、その恐怖はすぐに晴れた。
「ふっ、面白い技だったが、この状況でも同じようにできるかな? 行きなさい、モノトーンッ!」
「モノ、トーンッ!」
 シイロの掛け声に反応して、化け物たちがパステルピンクたちに襲い掛かる。
「ふん、まったく三傑のモノトーンだと聞いていたけれど、なかなか木偶の坊ね」
 シイロが生み出した化け物を見たパステルブラウンが、パステルペンシルを取り出す。
「パステル・ペンシル・ロケット!」
 散々相手を苦しめてきた12本の色鉛筆による攻撃だ。半分の6本ずつを化け物に炸裂させると、あっという間に化け物たちは粉砕されてしまった。
「なにっ?!」
 驚くシイロ。自慢げにするパステルブラウン。だが、よく見るとシイロの口元が笑っている。
「モノ、モノ、トーンッ!」
 やられたかに見えた化け物たちが、なんと立ち上がって復活したではないか。これにはパステルブラウンは虚を突かれる。しかし、
「オータム・リーフ・フラッド!」
 すぐにパステルオレンジがフォローに入る。これが双子の姉妹だからなせる業である。
「助かった、パステルオレンジ」
「油断大敵なんでしょ、パステルブラウン」
 そして、葉っぱの波に怯んだ化け物に対して畳みかけるように、
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
 パステルパープルの吹雪が炸裂する。カチンと凍り付いてしまった化け物は、身動きどころか言葉すら発せられる状態ではなかった。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
「降り注げ、浄化の雨! パステル・サマー・スコール!」
 そうなると、間髪入れずにパステルピンクとパステルシアンの浄化技が飛んできて、化け物二体をあっという間に浄化してしまった。さすがにこれには、シイロも舐めてかかっていたせいか動揺の色が浮かんでいた。
「くっ、パステル王国の伝説の戦士の力がこれほどとはな。せっかく滅ぼしたというのに、別の世界でもこれほどの力を持とうとは……」
 思わぬ事態にシイロは冷静さを欠こうとしていた。
「だが、私はモノトーン三傑の一人だ。あんたらごときに負けるわけにはいかぬ!」
 シイロが力を込めてパステルピンクたちに再び攻撃を仕掛けようとした時だった。
「何ですか。うちの前で騒がしいですね」
 突如として謎の男性の声がこの空間に響き渡った。よく目を凝らしてみれば、これは杏と楓の保護者となっている色鮮寺の住職だった。
 まあ、あれだけ近くでバカでかい音を立てていれば、それは気付くはずだ。しかし、この場に居た誰もがその異常性に言葉を失っていた。
「なっ、あんたはさっきの男……。なぜ、私の結界に入って来れる」
 そう、耐性がなければモノトーンの色に染まって気を失うはずなのに、住職は平然と結界内に入っている上に喋っている。これは一体どういう事なのか、この場の誰にもそれは分からなかった。
「近所迷惑な人には、お仕置きしなければなりませんね。覚悟はよろしいですか?」
 この圧力に全員が動けなくなってしまった。一体何が始まるというのだろうか……。
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