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第129話 三傑決戦・その12-荒れ狂う白
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パステルピンクたちを睨み付けるシイロ。その迫力は、全員が顔面蒼白になるほどに鬼気迫るものだった。
「どこを向いているというのですか。あなたの相手は私ですよ」
住職がパステルピンクたちを守ろうとして、シイロに攻撃を仕掛ける。
「うるさいっ!!」
その攻撃を一瞬の動きで止め、さらには跳ね返してみせるシイロ。だが、住職にはどういうわけか傷を付けるような事はなかった。無意識に傷付ける事を避けているようにも見える。
「私は……、ダクネース様が束ねし剣の一振り、モノトーン三傑のシイロだ。パステル王国など知らぬ。恨みはあれど恩はない!」
シイロは吐き捨てるように叫ぶ。それと同時に、シイロという名に反して、どす黒いオーラが辺り一帯に吹き荒れた。あまりの凄まじさに、パステルピンクとパステルシアンは耐える事が精一杯である。
「なんていう負のオーラなんだ……」
「おい、チェリー。今頃来たのかよ」
やって来たチェリーとグローリを見て、パステルピンクがツッコミを入れる。
「あの戦いの最中に突っ込めると思うのかい? ボクたちは戦いには不向きなんだ」
冷静に返すチェリーだが、それは自慢できるような事なのか。
「俺っちたちが物理的な戦いに不向きなのは事実だ。だがよ、俺っちたち聖獣にしかできない戦いもあるってもんだ」
そうやって後ろから現れるワイス。そこにはパステルオレンジ、パステルブラウン、それにパステルパープルも揃っていた。
「他のモノトーン三傑は片付きましたわ。残るはあのシイロさんだけですわよ」
パステルパープルが言うと、パステルピンクは一瞬ホッとした表情を浮かべて、すぐさまシイロを見る。住職は吹き飛ばされてしまったが、シイロには動くような気配はない。一体どうしたというのだろうか。
「住職!」
「和尚!」
吹き飛んで倒れている住職を見つけたパステルオレンジとパステルブラウンが、そろって駆け寄る。住職は吹き飛んだ際の受け身で多少擦り傷を負っているものの、それ以外に怪我はないようだった。これには二人はほっと安心していた。
「二人とも無事でしたか。すみませんね、シイロを落ち着かせるつもりが、かえって逆撫でしてしまったようです。レインとあの子は双子の姉妹なのです。なんとしても無事に取り戻したいのですが、今の私では力不足でした」
住職はとても悔しがっている。転生体ではあるものの、シイロの実の父親なのだ。娘を心配するのは当たり前であった。
「パステル王国……、すべて、滅ぼす……」
ゆらりとシイロがパステルピンクたちの方を見る。
「来ますわよ!」
パステルパープルが叫ぶと同時に、ホワイトのサーベルを持ったシイロが一気にパステルピンクたちに襲い掛かってきた。
「きゃああっ!!」
バリアを張り直してみんなを守ろうとしたパステルシアンだったが、その勢いに大きく吹き飛ばされてしまう。よく見ると腹部に刺し傷を負っている。シイロは勢いを跳ね返されたが、それでもパステルシアンに怪我を負わせるほどの攻撃を仕掛けてきたのだ。パステルシアンだからこそ大怪我を負ってはいるものの、この程度で済んだのである。他の面々が食らっていれば、最悪死すらあり得た攻撃である。
ところが、飛び込んできたシイロの方も受け身を取れずに地面に叩きつけられていた。どうやら狂化しているようで、防御がおろそかになっているようである。それでもさすがにとっさに剣をしまっているあたり、自分が致命傷を負うような真似は本能的に避けたようである。
「パステルシアン……?」
腹部から血を流して倒れるパステルシアンを見て、パステルピンクが青ざめている。
「パステルシアン! 大丈夫?」
その横からグローリが駆け寄っていく。そして、すぐさま力を使ってパステルシアンの治療を始めた。
「ちっ、これは話しどころじゃなくなったな。あいつを止めねえと、このままじゃ俺っちたちどころか、この街も危ういぜ」
「……、パステルシアンが大怪我? 怪我をしただと?!」
ゆらりと茫然自失しているパステルピンク。目の前の現実を受け止められないでいるのだ。
「おい、パステルピンク。どうした?」
あまりの状態に、ワイスが心配になって声を掛ける。すると、パステルピンクはその声には答えずに、ふらりふらりとしながら、起き上がってくるシイロの方を見た。
「あいつが……、あいつがパステルシアンを傷付けたのか。……許せねえな」
首を傾けながら、目を見開いてシイロを睨み付けるパステルピンク。
「おいっ、憎しみに飲まれるんじゃねえ。それじゃあいつと同じようになっちまうぞ!」
ワイスが叫ぶが、その声はパステルピンクに届かない。
「……やられたら、やり返す。許さねえ……」
パステルピンクはそうとだけ呟くと、ワイスの制止の声を聞き入れず、シイロへと襲い掛かった。
「は、速いですわっ!」
パステルピンクはブラシから変化させた剣を手に、起き上がったシイロへと襲い掛かる。
ガキーンと剣と剣がぶつかり合う。
「あいつを傷つけやがって、てめえは許さねえっ!」
眉間にしわを寄せ、歯を食いしばり、怒りの滲み出や表情でシイロを睨み付けるパステルピンク。その表情を見たシイロは、にやりと笑っているのだった。
こうして、パステルピンクとシイロという剣使いによる戦いが始まったのだった。
「どこを向いているというのですか。あなたの相手は私ですよ」
住職がパステルピンクたちを守ろうとして、シイロに攻撃を仕掛ける。
「うるさいっ!!」
その攻撃を一瞬の動きで止め、さらには跳ね返してみせるシイロ。だが、住職にはどういうわけか傷を付けるような事はなかった。無意識に傷付ける事を避けているようにも見える。
「私は……、ダクネース様が束ねし剣の一振り、モノトーン三傑のシイロだ。パステル王国など知らぬ。恨みはあれど恩はない!」
シイロは吐き捨てるように叫ぶ。それと同時に、シイロという名に反して、どす黒いオーラが辺り一帯に吹き荒れた。あまりの凄まじさに、パステルピンクとパステルシアンは耐える事が精一杯である。
「なんていう負のオーラなんだ……」
「おい、チェリー。今頃来たのかよ」
やって来たチェリーとグローリを見て、パステルピンクがツッコミを入れる。
「あの戦いの最中に突っ込めると思うのかい? ボクたちは戦いには不向きなんだ」
冷静に返すチェリーだが、それは自慢できるような事なのか。
「俺っちたちが物理的な戦いに不向きなのは事実だ。だがよ、俺っちたち聖獣にしかできない戦いもあるってもんだ」
そうやって後ろから現れるワイス。そこにはパステルオレンジ、パステルブラウン、それにパステルパープルも揃っていた。
「他のモノトーン三傑は片付きましたわ。残るはあのシイロさんだけですわよ」
パステルパープルが言うと、パステルピンクは一瞬ホッとした表情を浮かべて、すぐさまシイロを見る。住職は吹き飛ばされてしまったが、シイロには動くような気配はない。一体どうしたというのだろうか。
「住職!」
「和尚!」
吹き飛んで倒れている住職を見つけたパステルオレンジとパステルブラウンが、そろって駆け寄る。住職は吹き飛んだ際の受け身で多少擦り傷を負っているものの、それ以外に怪我はないようだった。これには二人はほっと安心していた。
「二人とも無事でしたか。すみませんね、シイロを落ち着かせるつもりが、かえって逆撫でしてしまったようです。レインとあの子は双子の姉妹なのです。なんとしても無事に取り戻したいのですが、今の私では力不足でした」
住職はとても悔しがっている。転生体ではあるものの、シイロの実の父親なのだ。娘を心配するのは当たり前であった。
「パステル王国……、すべて、滅ぼす……」
ゆらりとシイロがパステルピンクたちの方を見る。
「来ますわよ!」
パステルパープルが叫ぶと同時に、ホワイトのサーベルを持ったシイロが一気にパステルピンクたちに襲い掛かってきた。
「きゃああっ!!」
バリアを張り直してみんなを守ろうとしたパステルシアンだったが、その勢いに大きく吹き飛ばされてしまう。よく見ると腹部に刺し傷を負っている。シイロは勢いを跳ね返されたが、それでもパステルシアンに怪我を負わせるほどの攻撃を仕掛けてきたのだ。パステルシアンだからこそ大怪我を負ってはいるものの、この程度で済んだのである。他の面々が食らっていれば、最悪死すらあり得た攻撃である。
ところが、飛び込んできたシイロの方も受け身を取れずに地面に叩きつけられていた。どうやら狂化しているようで、防御がおろそかになっているようである。それでもさすがにとっさに剣をしまっているあたり、自分が致命傷を負うような真似は本能的に避けたようである。
「パステルシアン……?」
腹部から血を流して倒れるパステルシアンを見て、パステルピンクが青ざめている。
「パステルシアン! 大丈夫?」
その横からグローリが駆け寄っていく。そして、すぐさま力を使ってパステルシアンの治療を始めた。
「ちっ、これは話しどころじゃなくなったな。あいつを止めねえと、このままじゃ俺っちたちどころか、この街も危ういぜ」
「……、パステルシアンが大怪我? 怪我をしただと?!」
ゆらりと茫然自失しているパステルピンク。目の前の現実を受け止められないでいるのだ。
「おい、パステルピンク。どうした?」
あまりの状態に、ワイスが心配になって声を掛ける。すると、パステルピンクはその声には答えずに、ふらりふらりとしながら、起き上がってくるシイロの方を見た。
「あいつが……、あいつがパステルシアンを傷付けたのか。……許せねえな」
首を傾けながら、目を見開いてシイロを睨み付けるパステルピンク。
「おいっ、憎しみに飲まれるんじゃねえ。それじゃあいつと同じようになっちまうぞ!」
ワイスが叫ぶが、その声はパステルピンクに届かない。
「……やられたら、やり返す。許さねえ……」
パステルピンクはそうとだけ呟くと、ワイスの制止の声を聞き入れず、シイロへと襲い掛かった。
「は、速いですわっ!」
パステルピンクはブラシから変化させた剣を手に、起き上がったシイロへと襲い掛かる。
ガキーンと剣と剣がぶつかり合う。
「あいつを傷つけやがって、てめえは許さねえっ!」
眉間にしわを寄せ、歯を食いしばり、怒りの滲み出や表情でシイロを睨み付けるパステルピンク。その表情を見たシイロは、にやりと笑っているのだった。
こうして、パステルピンクとシイロという剣使いによる戦いが始まったのだった。
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