マジカル☆パステル

未羊

文字の大きさ
138 / 197

第138話 双子だから

しおりを挟む
 対峙するパステル戦士たちとシイロ。険しい表情を浮かべて鋭い視線を送るパステル戦士たちと違い。シイロは余裕をもって邪悪な笑みを浮かべている。
「くっくっく……。ここはダクネース様の居られる、モノトーンの本拠地。お前たちの力はここでは弱まってしまうのだ」
 じりじりと歩み寄ってくるシイロ。
「それに対して私は、自分の力を思う存分に発揮できる。モノトーンを召喚する間でもない。あいつらの弔いのために、この私が直にお前たちを葬り去ってくれる」
 シイロの表情が、ますます醜く歪んでゆく。
 次の瞬間、空気が変わる。
「来るぞっ!」
 パステルピンクが叫ぶ。
 それと同時に蔓を地面に這わせる。平坦でないならば速度をある程度落とせるはずだと考えたからだ。
「ふっ、甘いなっ!」
 だが、シイロの勢いは衰えない。あっという間に詰めてくる。
「パステル・シールド・バッシュ!」
 パステルパープルが消しゴムを盾に変えて、シイロの攻撃を受け止めて跳ね返そうとする。だが、シイロの攻撃の威力が強すぎて、かろうじて相殺できたくらいだった。
「ほぉ、受け止められたか。だが、それだけで何もできないようだな?」
 シイロが怪しく笑っている。
「くっ……」
 パステルパープルの表情が苦痛に歪む。よく見れば、少しずつ押されているのである。大きな盾の状態でシールドバッシュを使ったというのに、相手はびくともしないどころかそれに構わず押し込んでくるのだ。これで怯まない方が不思議なのである。
 だが、パステルパープルのおかげでシイロの動きが一時的とはいえ止まっている。これは反撃のチャンスだった。これに、パステルオレンジとパステルブラウンが示し合わせたかのように動く。だが、その動きに気付かないシイロではなかった。
「ふん、死に損ないの聖獣に、一体何ができるというのだ!」
 パステルパープルを押す剣に力が入る。
「レイン様の護衛騎士だったか知らないけれど」
「あたいたちの力を甘く見ないでちょうだい!」
 双子らしく、言葉の息がぴったり合っている。そして、わずかの間とはいえど特訓した成果をここで披露する。
 何かを感じたシイロは、パステルパープルをその場に叩き伏せて前へと飛び出す。
「あたしたちの力」
「ここで見せてあげるわよ!」
 シイロの左右に分かれたパステルオレンジとパステルブラウンが、両手を高く上げた。
「パステル・トワイライト・シンフォニー!」
 技を叫ぶと、二人から様々なものがあふれ出る。紅葉と豊穣の季節である秋を司る二人らしい技だった。
 パステルオレンジの彩りである葉っぱの波。
 パステルブラウンの実りである果実の嵐。
 それらがまとめてシイロに襲い掛かる。
「ふん、小癪なっ!」
 だが、初見の技とはいえど、さすがはシイロ。技に対して対処していく。それどころか、的確に能力の劣るパステルオレンジの方へと詰め寄っていた。
 しかし、それは誘い込まれた罠だった。
「セカンド!」
 この声と共に、攻撃が激しくなる。
「なんだと?!」
 シイロはさすがに動きが鈍る。さっきよりも激しさを増した二人の技に、さすがに対処しきれなくなってきたのだ。ぶつかったとしてもさして痛くないのだが、シイロの突撃スピードだと、それが逆にダメージを強めてしまう。かといって歩みを止めると、その猛烈な勢いに今度は進めなくなってしまう。二人の合わせ技のドツボに、シイロは見事にはまってしまったのだった。
 ここだと思った二人は、
モデュレーション転調!」
 再び合図を送る。
 すると、その言葉通りに、二人が巻き起こす嵐が変化を起こす。
「ぐぬぬぬ……」
 さっきまでの緩さが無くなり、シイロの体を容赦なく痛めつけていく。だが、その状態でもしっかり抵抗を見せているシイロ。どうにか突破口を見出そうとしているのだ。
 だが、二人だって負けてはいない。パステルブラウンはその動きに勘付いていた。この状況下でも諦めようとはしないあたり、さすがは護衛騎士といったところである。
「決めるわよ!」
「うん!」
 パステルブラウンの声に、パステルオレンジが答える。
「フィニッシュ!」
 さらに激しさを増した嵐。
「すげえ……」
 パステルピンクとパステルシアンは、呆然とそれを眺める事しかできなかった。しかし、さっきまでシイロの攻撃を盾で受け止めていたパステルパープルは警戒を解いていない。むしろ強めていた。なにせあのシイロなのだ。この程度で終わるわけがないのである。
 葉っぱと果実の嵐の中に、パステルブラウンの色鉛筆が突如として現れる。これがこの技のフィニッシュのようである。
「甘いわぁっ!」
 色鉛筆に気が付いて、剣筋一閃、色鉛筆を破壊するシイロ。防ぎ切ったとほくそ笑むシイロだったが、この攻撃がパステルオレンジとパステルブラウンの共同技だという事を失念していた。
 斬られた色鉛筆がざっと崩れて、シイロの体にまとわりついていく。
「くそっ、なんだこれはっ!」
 振りほどこうにも体が動かない。実は果実の汁が接着剤のように葉っぱを固めてしまっているのである。
「あなたは強かったですわ。ただ、ちょっと慢心が過ぎましたわね」
 パステルパープルが後ろから迫る。
「これで終わりです! 冬の静寂に安らかに眠れ、ウィンター・アメジスト・コフィン!」
 動けないシイロに向けて、パステルパープルの浄化技が放たれたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

処理中です...