マジカル☆パステル

未羊

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第137話 突撃のシイロ

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「パステル・カラーチェンジ!」
 シイロのいきなりの襲撃にも、千春たちは慌てず変身する。
「オータム・リーフ・フラッド!」
 間髪入れずにパステルオレンジが葉っぱの洪水を起こして視界を奪う。
「甘い!」
 横薙ぎ一閃!
 シイロの剣筋が葉っぱの洪水を斬り裂く。
「ふふふっ、ダクネース様に直して頂いたこの剣……、斬れ味が増しているようだ」
 あまりの剣筋の鋭さに、シイロが怪しく笑っている。
 だが、この程度でやられるようなパステルピンクたちではなかった。葉っぱの洪水の後ろでは、パステルピンクの蔓とパステルパープルの氷で頑丈な壁を作っていたのだ。それでも、それが粉々になるくらいの強力な攻撃だった。これではパステルシアンの反射でも防ぎきれないと、全員が青ざめた表情をしていた。
「はーっはっはっはっ! そうこなくっちゃなぁ。あの程度でくたばってもらっちゃ、私の気持ちは収まらないってものだ!」
 そう叫んだシイロは勢いよく飛び込んでくる。
「パステル・ペンシル・ロケット!」
「オータム・リーフ・フラッド!」
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
 パステルブラウンの鉛筆ミサイルに、パステルオレンジとパステルパープルが攻撃を合わせる。鉛筆に葉っぱと冷気がまとわりつき、鉛筆が凍り付く。
「はっ、その程度でこの私を止められると思ったか!」
 シイロは目を見開いて、勢いを落とさずに突っ込んでくる。その時だった。
「なにっ?!」
 凍り付いた鉛筆がシイロを取り囲むように動き、その動きのままいきなり砕け散ったのである。そして、その破片はその勢いのままにシイロへと襲い掛かる。四方八方からの氷の礫である。
 さすがのシイロも驚いたが、これならば突き進めば一番ダメージが少ないと判断。勢いそのままに被ダメを考えずに飛び込んできた。だが、シイロは怒りのあまりに忘れていた。相手がパステル戦士だという事を。
「スリーピング・ウォーム!」
 パステルピンクが氷の礫の隙間から睡眠攻撃を放つ。当然ながらシイロはまともにそれを受けてしまう。
「ぐっ……」
 少し勢いが弱まるが、それでも構わずシイロは突き進むのをやめない。だが、勢いが落ちたという事は、当然あれが待っていた。
「パステル・バブル・スフィア!」
 反射技を持つパステルシアンだった。二度目の攻撃までに間があったので、パステルピンクの即席防具を身に着けての仁王立ちである。
「その程度で、私の攻撃を防げると思うなぁっ!!」
 眠気に襲われつつも飛び込むシイロ。だが、思ったよりも威力が落ちていたのか、即席防具の効果もあってパステルシアンは無傷。一方でシイロは自分の攻撃の威力を跳ね返されて吹き飛び、氷の礫の集中弾を食らう羽目になってしまった。
 さすがにこれならばシイロもひとたまりもあるまい。全員がそう思ったのだが、その期待はすぐに裏切られてしまった。
「はあっ!!」
 シイロが剣を振り払い、氷の礫の大半を斬り刻んでしまったのだ。さすがは元々女王の護衛騎士。凄まじいばかりの剣捌きである。
「惜しいなぁ……。実に惜しい。五人がかりでこれとは、惜しすぎるというものだよ」
「噓でしょ……」
 顔を傾けながら不気味に笑うシイロに、パステルシアンはドン引きしながら呟く。
 シイロのその様子はまさに狂戦士。戦う事に喜びを見出す、戦闘マシーンと化していたのだ。
「はーっはっはっはっ! いいねえ、その表情だ……。パステル王国の犬どもめ、絶望のうちに死ねっ!」
 シイロが狂った笑みを浮かべながら、再び襲い掛かってくる。
「なっ、速えっ!」
 パステルピンクが驚くくらいに、その飛び込みの速度が上がっている。
「くそっ、甘く見るんじゃねえぞ!」
 パステルピンクはブラシを取り出してクレイモアに変形させる。
 ガキーンッ!
 シイロの剣を受け止めるパステルピンク。これでもそもそもは男だ。鍛えているので筋肉量ならばそこらの一般的な人物よりは多い。
「ぐっ!」
 それでも押されるパステルピンク。それもそうだろう。相手は騎士なのだ。激しい訓練で鍛えられた騎士の攻撃は、サッカー少年には重すぎたのだ。
「はははっ、受け止められただけでも褒めてやる! だが、剣術の素人であるお前に、一体いつまで止めていられると思うかな?」
 シイロの笑みが邪悪に歪んでいる。元々はパステル王国の騎士とはいえ、今は完全に邪念に支配されてしまっているのだ。その歪な精神は、その表情によく現れていた。
「ぐぐぐぐ……。負けて、なるものか……っ!」
「いいねえ、その表情。そんな顔をされるとさぁ……」
「ぐっ……!」
 シイロの剣が容赦なくパステルピンクを斬り裂いていく。
「甚振ってしまいたくなるんだよねぇ……。せいぜい耐えておくれよ?」
 パステルピンクの全身に浅い斬り傷を刻み込むシイロ。その姿は白を基調とする名前とは思えないくらい邪悪なものだった。
「ここにはあの男も居ない。戦いの経験の浅いお前たちに、いつまで私の攻撃に耐えられるのか、実に楽しみだなあ……」
 剣を水平に構えながら、邪悪な笑みを浮かべ続けるシイロ。
 パステルピンクたちには彼女に太刀打ちできるだけの技術は確かにない。
 このままパステルピンクたちは彼女の剣技の前に蹂躙されてしまうのか。戦いは始まったばかりなのである。
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