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第136話 その日を迎えて
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気が付けば秋分の日まであと二日となっていた。
千春と美空は一緒に、杏と楓の誕生日プレゼントを探しに放課後の街を歩いていた。
「聖獣としての姿はキツネだっていうけどさ、今の二人ならそういうのより普通のものの方がいいよな」
「そうね。ただちょっと、私たちとは感性がずれてるから、どういうのがいいか悩むわよね」
ため息を吐くような仕草を見せる千春。実はすごく面倒くさがっているようである。パステル戦士としてのつながりがあるとはいえ、誕生日プレゼントを贈るというような感覚は千春にはあまりないようである。
一方の美空は真剣に悩んでいた。同じ女子っていうのもあるのだろう。とはいえ、二人の性格はかなり美空とはかけ離れているので、美空自身も結構贈り物の選定に悩んでいるようだ。
そういう時に役に立ちそうなのは、一緒について来ているチェリーとグローリだ。二体はパステル王国の聖獣として交流があったのだから、それなりに二人の好みを知っているはずである。
「ごめん、ボクにはよく分からないよ」
「私も、聖獣としての付き合いはあったけど、それ以外だとあまり交流がなかったからよく分からないの」
……まったく使えない聖獣たちだった。
仕方ないので、美空が自分の感性で誕生日プレゼントを選ぶ事にしたのだった。
「やっぱり双子の姉妹だから、お揃いの方がいいかしらね」
「ああ、その方がいいんじゃないのか? 性格こそだいぶ違っているけれど、お互いに気遣ってるみたいだからな」
なんだかんだで二人のやり取りは見ている千春たちである。
実際、杏と楓はかなり性格が違う。
たまたま人化した後の行動なんかはそれがよく分かる。
杏はパステルオレンジとして、一人で行動していた。楓の方は敵の中に潜り込んで、マジェとして動いていた。こういうところに二人の違いというのがよく出ているのである。
「まっ、あいつらはなんだかんだでお互いを一番信頼してるからなぁ。リボンとかそういうのでいいんじゃねえのか?」
「もう、私以外の人相手だと判断が早いのね」
「何で怒ってんだよ。いいだろうが、あの二人だって仲間なんだからよ」
ぷりぷりと怒る美空の態度に、千春が不快感を示す。だが、不快感が強いのはむしろ美空の方だった。まったく、これだから鈍い人間は困るのだ。
「うん、でも、まあ……、あの二人が仲間のは確かよね」
美空がどこか寂しそうな表情をする。
「お前なぁ、やきもちみたいな事言ってんだよ。それよりもとっとと決めちまおうぜ。あまり遅くなると母さんに怒られんだよ。妹のさくらだって居るしな」
「はあ……、仕方ないわねぇ」
千春の言い分に、美空は心底呆れていた。
「まあ、さくらちゃんはまだ幼いものね……」
美空は小さく呟いた。そして、千春の態度に諦観しながらも、杏と楓への誕生日プレゼントを選び始めた。
「まいどありがとうございました」
店員に見送られながら、千春と美空は中心街にある服飾店を出ていく。お店の手提げ袋の中には、それほど大きなものではないが、特別な包装の小袋が2つ入っている。
「喜んでくれるかしらね」
「そこだよなぁ。別世界の聖獣だからか、まだ俺たちと比べても表情とか乏しいからなぁ。でもまぁ、受け取ってくれるとは思うぜ」
ちょっとした不安を抱えつつも、とりあえずは満足のいく買い物ができたので、二人は商店街を通って帰宅の途に就いた。
「美空、とりあえずそれは預かっておいてくれ。俺が持っておくにはおかしいだろうからな」
「あ、えっ、うん。分かったわ。でも、渡す時には一緒に頼むわよ?」
「分かってるって」
千春は買い物をした袋を美空に押し付ける。
「さて、明後日の会場は雪路に任せておけば大丈夫だよな」
「それで平気だと思うわ。まあ、多分色鮮寺でしょうけれどね」
「だよなぁ……。二人が揃っている場所だし、パステル王国とも無関係じゃないだけになぁ」
誕生日会をする場所について、二人の中ではもう完全に固まってしまっているようだった。でもまぁ、こういう事はもう雪路が裏で手を回しているだろうと二人は踏んでいる。お嬢様とはいえども、雪路は意外と抜け目がないのである。
こうして、準備万端と思われた誕生日会だったのだが、その当日にとんでもないプレゼ……、いや、トラブルに見舞われる事となった。
雪路の出迎えで色鮮寺に向かった千春と美空。色鮮寺の前で車から降り、いざその式に踏み出そうとした時だった。
「現れたか、待ちくたびれたぞ!」
どこからともなく、聞いた事のある声が響き分かった。
「この声は、シイロ?!」
「その通り!」
千春が叫ぶと、道路に真っ白な衣装に身を包んだシイロが現れた。
「さあ、私との最終決戦のために、お前たちを招待しに出向いてやったぞ!」
なんかとんでもない事を叫んでいる。正直、今日はそれどころではないのだが、このシイロは話を聞く事などなく、勝手に話を進めていっていた。
「ちょっと、一体何事よ!」
シイロの気配を感じ取った杏と楓が中から出てきた。
「ふっ、全員揃ったか。ちょうどよい、お前たちの死に場所へと今から案内してくれるっ!」
シイロが手を掲げると、辺りの空気が急激に歪む。
「な、なに?! 何が起きているの?」
美空が混乱して叫んでいる。
「ふはははっ! この世界でお前たちは果たして正気を保っていられるかな?」
次の瞬間、千春たちは見た事のない場所に立っていた。
「ここは、モノトーン空間だわ!」
楓が叫ぶ。そういえば、彼女だけモノトーンの幹部として一時的に出入りしていたのだった。
「その通り! そして、ここがお前たちの墓場となるのだ!」
シイロはそう叫ぶなり、武器を構えていきなり襲い掛かってきた。
千春と美空は一緒に、杏と楓の誕生日プレゼントを探しに放課後の街を歩いていた。
「聖獣としての姿はキツネだっていうけどさ、今の二人ならそういうのより普通のものの方がいいよな」
「そうね。ただちょっと、私たちとは感性がずれてるから、どういうのがいいか悩むわよね」
ため息を吐くような仕草を見せる千春。実はすごく面倒くさがっているようである。パステル戦士としてのつながりがあるとはいえ、誕生日プレゼントを贈るというような感覚は千春にはあまりないようである。
一方の美空は真剣に悩んでいた。同じ女子っていうのもあるのだろう。とはいえ、二人の性格はかなり美空とはかけ離れているので、美空自身も結構贈り物の選定に悩んでいるようだ。
そういう時に役に立ちそうなのは、一緒について来ているチェリーとグローリだ。二体はパステル王国の聖獣として交流があったのだから、それなりに二人の好みを知っているはずである。
「ごめん、ボクにはよく分からないよ」
「私も、聖獣としての付き合いはあったけど、それ以外だとあまり交流がなかったからよく分からないの」
……まったく使えない聖獣たちだった。
仕方ないので、美空が自分の感性で誕生日プレゼントを選ぶ事にしたのだった。
「やっぱり双子の姉妹だから、お揃いの方がいいかしらね」
「ああ、その方がいいんじゃないのか? 性格こそだいぶ違っているけれど、お互いに気遣ってるみたいだからな」
なんだかんだで二人のやり取りは見ている千春たちである。
実際、杏と楓はかなり性格が違う。
たまたま人化した後の行動なんかはそれがよく分かる。
杏はパステルオレンジとして、一人で行動していた。楓の方は敵の中に潜り込んで、マジェとして動いていた。こういうところに二人の違いというのがよく出ているのである。
「まっ、あいつらはなんだかんだでお互いを一番信頼してるからなぁ。リボンとかそういうのでいいんじゃねえのか?」
「もう、私以外の人相手だと判断が早いのね」
「何で怒ってんだよ。いいだろうが、あの二人だって仲間なんだからよ」
ぷりぷりと怒る美空の態度に、千春が不快感を示す。だが、不快感が強いのはむしろ美空の方だった。まったく、これだから鈍い人間は困るのだ。
「うん、でも、まあ……、あの二人が仲間のは確かよね」
美空がどこか寂しそうな表情をする。
「お前なぁ、やきもちみたいな事言ってんだよ。それよりもとっとと決めちまおうぜ。あまり遅くなると母さんに怒られんだよ。妹のさくらだって居るしな」
「はあ……、仕方ないわねぇ」
千春の言い分に、美空は心底呆れていた。
「まあ、さくらちゃんはまだ幼いものね……」
美空は小さく呟いた。そして、千春の態度に諦観しながらも、杏と楓への誕生日プレゼントを選び始めた。
「まいどありがとうございました」
店員に見送られながら、千春と美空は中心街にある服飾店を出ていく。お店の手提げ袋の中には、それほど大きなものではないが、特別な包装の小袋が2つ入っている。
「喜んでくれるかしらね」
「そこだよなぁ。別世界の聖獣だからか、まだ俺たちと比べても表情とか乏しいからなぁ。でもまぁ、受け取ってくれるとは思うぜ」
ちょっとした不安を抱えつつも、とりあえずは満足のいく買い物ができたので、二人は商店街を通って帰宅の途に就いた。
「美空、とりあえずそれは預かっておいてくれ。俺が持っておくにはおかしいだろうからな」
「あ、えっ、うん。分かったわ。でも、渡す時には一緒に頼むわよ?」
「分かってるって」
千春は買い物をした袋を美空に押し付ける。
「さて、明後日の会場は雪路に任せておけば大丈夫だよな」
「それで平気だと思うわ。まあ、多分色鮮寺でしょうけれどね」
「だよなぁ……。二人が揃っている場所だし、パステル王国とも無関係じゃないだけになぁ」
誕生日会をする場所について、二人の中ではもう完全に固まってしまっているようだった。でもまぁ、こういう事はもう雪路が裏で手を回しているだろうと二人は踏んでいる。お嬢様とはいえども、雪路は意外と抜け目がないのである。
こうして、準備万端と思われた誕生日会だったのだが、その当日にとんでもないプレゼ……、いや、トラブルに見舞われる事となった。
雪路の出迎えで色鮮寺に向かった千春と美空。色鮮寺の前で車から降り、いざその式に踏み出そうとした時だった。
「現れたか、待ちくたびれたぞ!」
どこからともなく、聞いた事のある声が響き分かった。
「この声は、シイロ?!」
「その通り!」
千春が叫ぶと、道路に真っ白な衣装に身を包んだシイロが現れた。
「さあ、私との最終決戦のために、お前たちを招待しに出向いてやったぞ!」
なんかとんでもない事を叫んでいる。正直、今日はそれどころではないのだが、このシイロは話を聞く事などなく、勝手に話を進めていっていた。
「ちょっと、一体何事よ!」
シイロの気配を感じ取った杏と楓が中から出てきた。
「ふっ、全員揃ったか。ちょうどよい、お前たちの死に場所へと今から案内してくれるっ!」
シイロが手を掲げると、辺りの空気が急激に歪む。
「な、なに?! 何が起きているの?」
美空が混乱して叫んでいる。
「ふはははっ! この世界でお前たちは果たして正気を保っていられるかな?」
次の瞬間、千春たちは見た事のない場所に立っていた。
「ここは、モノトーン空間だわ!」
楓が叫ぶ。そういえば、彼女だけモノトーンの幹部として一時的に出入りしていたのだった。
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