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第145話 ダークネス・ロード
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化け物が退いて開けた道を走っていくパステルピンクたち。チェリーたち聖獣もその肩に乗って移動している。パステルピンクの頭上には例の獣が乗っかっている。
進めども進めども真っ黒な空間。床も壁も天井も立ち尽くす化け物たちも全部真っ黒である。……正直言って気が滅入りそうな空間だったが、それでもモノトーンを打ち倒すべく、パステルピンクたちは必死に駆け抜けていく。
(化け物たちが一切襲ってこねぇ……。こいつが鳴いてからというもの、すっかりおとなしくなっちまったんだが、一体こいつは一体何者なんだ?)
走りながらパステルピンクは頭上の獣について考えた。
だが、その正体はさっぱり分からなかった。唯一分かっているのは、シイロの体を巣食っていた負の感情を浄化した塊から誕生した獣だという事だけである。元が負の感情の塊だからこそ、モノトーンの化け物たちがいう事を聞いているのかも知れない。しかし、それ以上の事はさっぱり分からなかった。
この獣については他の面々も同じような事を思っているが、誰もその事を口にしない。
……今は、敵であるモノトーンのボス、ダクネースとの決戦の事だけを考えよう。パステルピンクは軽く首を横に振って、他のみんなと一緒に化け物の間を走り抜けていった。
しばらく走っていると、パステルブラウンが足を止める。
「止まりなさい。これ以上走ると顔をぶつけるわよ」
パステルブラウンの声に、パステルオレンジたちもどんどんと足を止める。ゆっくりとパステルブラウンが前に進み、思い切り前方に向けて右ストレートを繰り出す。
ドゴォッ!
大きな音を立てて、扉が開く。
「うげっ、そこに扉があったのかよ」
「真っ黒で同化してるから、まったく気が付かなかったわ」
パステルピンクとパステルシアンが驚いている。
「それは無理もないでしょうね。四天王もレドがそのまま激突して扉を開けてたくらいだもの。まあ、あたいたちじゃ扉に跳ね返されるでしょうね」
パステルブラウンはそんな事を言っている。頭脳派筋肉のイエーロと違って、完全な猪突猛進熱血脳筋だったレドは、扉に気付かずそのままぶつかって扉を開けていたらしい。
「あの真っ赤な奴か……。見るからに頭悪そうだったけど、実際にそうだったんだな……」
パステルピンクが思い出しながらため息を吐いていた。呆れるしかないのである。
だがしかし、パステルブラウンは落ち着いていた。
「扉は開けたけれど、油断はできないわよ。正直扉を開けた瞬間の不意打ちはあるかと思ったんだけど、とりあえず大丈夫だったみたいね」
パステルブラウンは前を警戒しつつ、みんなに話し掛けている。
「ここから先は、ダクネースの完全な領域よ。ここまでは意思が通るだけの領域だったけれど、この中はあいつの手の届く範囲。……油断はできないわ」
パステルブラウンは歯を食いしばる。
「さあ、行くわよ」
「ならば、私が先頭に立とう」
パステルブラウンが進もうとしたその時、シイロが先陣を切ると言い出した。
「意識を乗っ取られていたとはいえ、君たちに手荒な真似をし続けたんだ。少しくらいは償いをさせてもらいたい。これでも女王の護衛騎士だったのだ。必ず役に立とう」
シイロの表情は思い詰めたものだった。女王の護衛騎士となりながらも、自らの手まではいかなくても、パステル王国を滅ぼす原因となった事に負い目を感じているのである。パステルブラウンは、パステルオレンジたち聖獣たちに確認を取ると、全員が黙って頷いていた。
「……分かったわ。ただし無茶はしないで。生きて帰らないと、和尚が泣くでしょうからね」
全員一致の意見に、パステルブラウンはシイロの申し出を了承する。そして、生きて帰る事を約束させる。シイロは強く頷いた。
「もちろんだ。さっきは取り乱してしまったが、もう大丈夫だ。私は誇り高きパステル王国の女王の護衛騎士シイロだ。この剣に誓おう!」
シイロはびしっと胸の前に腕を構え、高らかに宣言していた。
「ふっ、やっとシイロらしくなったじゃねえか。護衛騎士に就任した頃の事を思い出すぜ」
「なっ、ワイス殿。それは言わないで下さい」
慌てるシイロをワイスは笑っていた。
「悪ぃな。だが、これで緊張も解れたってもんだろ」
「むっ、確かにそうではありますが、いささか感心致しかねますな」
得意げなワイスとは対照的に、不機嫌丸出しのシイロである。
「ま、まあ、漫才はそれくらいにしてきましょう」
「そうですわね。扉の向こうからは禍々しいまでの空気が流れ出てきていますわ」
開け放たれた扉から、パステルパープルの言う通り、ものすごく冷たくて恐ろしいまでの空気が流れ出てきている。少しでも気を抜けば、その恐ろしさに飲み込まれてしまいそうだった。
「だけどよ、ここで立ち止まっていても仕方ない。俺たちはダクネースを倒さなきゃいけないんだ。世界を守るために、救うために!」
「パステルピンクの言う通りだな。俺っちたちがここまでやって来たのはそのためだ。今さら怖気づけるかってんだ」
パステルピンクたちはお互いを見て頷き合うと、意を決して扉の中へと飛び込む。
扉の中はこれまで以上に真っ暗である。果たしてダクネースはそこに居るのか、はたまた別の何かが待ち受けているのか、それは誰にも分からなかった。
進めども進めども真っ黒な空間。床も壁も天井も立ち尽くす化け物たちも全部真っ黒である。……正直言って気が滅入りそうな空間だったが、それでもモノトーンを打ち倒すべく、パステルピンクたちは必死に駆け抜けていく。
(化け物たちが一切襲ってこねぇ……。こいつが鳴いてからというもの、すっかりおとなしくなっちまったんだが、一体こいつは一体何者なんだ?)
走りながらパステルピンクは頭上の獣について考えた。
だが、その正体はさっぱり分からなかった。唯一分かっているのは、シイロの体を巣食っていた負の感情を浄化した塊から誕生した獣だという事だけである。元が負の感情の塊だからこそ、モノトーンの化け物たちがいう事を聞いているのかも知れない。しかし、それ以上の事はさっぱり分からなかった。
この獣については他の面々も同じような事を思っているが、誰もその事を口にしない。
……今は、敵であるモノトーンのボス、ダクネースとの決戦の事だけを考えよう。パステルピンクは軽く首を横に振って、他のみんなと一緒に化け物の間を走り抜けていった。
しばらく走っていると、パステルブラウンが足を止める。
「止まりなさい。これ以上走ると顔をぶつけるわよ」
パステルブラウンの声に、パステルオレンジたちもどんどんと足を止める。ゆっくりとパステルブラウンが前に進み、思い切り前方に向けて右ストレートを繰り出す。
ドゴォッ!
大きな音を立てて、扉が開く。
「うげっ、そこに扉があったのかよ」
「真っ黒で同化してるから、まったく気が付かなかったわ」
パステルピンクとパステルシアンが驚いている。
「それは無理もないでしょうね。四天王もレドがそのまま激突して扉を開けてたくらいだもの。まあ、あたいたちじゃ扉に跳ね返されるでしょうね」
パステルブラウンはそんな事を言っている。頭脳派筋肉のイエーロと違って、完全な猪突猛進熱血脳筋だったレドは、扉に気付かずそのままぶつかって扉を開けていたらしい。
「あの真っ赤な奴か……。見るからに頭悪そうだったけど、実際にそうだったんだな……」
パステルピンクが思い出しながらため息を吐いていた。呆れるしかないのである。
だがしかし、パステルブラウンは落ち着いていた。
「扉は開けたけれど、油断はできないわよ。正直扉を開けた瞬間の不意打ちはあるかと思ったんだけど、とりあえず大丈夫だったみたいね」
パステルブラウンは前を警戒しつつ、みんなに話し掛けている。
「ここから先は、ダクネースの完全な領域よ。ここまでは意思が通るだけの領域だったけれど、この中はあいつの手の届く範囲。……油断はできないわ」
パステルブラウンは歯を食いしばる。
「さあ、行くわよ」
「ならば、私が先頭に立とう」
パステルブラウンが進もうとしたその時、シイロが先陣を切ると言い出した。
「意識を乗っ取られていたとはいえ、君たちに手荒な真似をし続けたんだ。少しくらいは償いをさせてもらいたい。これでも女王の護衛騎士だったのだ。必ず役に立とう」
シイロの表情は思い詰めたものだった。女王の護衛騎士となりながらも、自らの手まではいかなくても、パステル王国を滅ぼす原因となった事に負い目を感じているのである。パステルブラウンは、パステルオレンジたち聖獣たちに確認を取ると、全員が黙って頷いていた。
「……分かったわ。ただし無茶はしないで。生きて帰らないと、和尚が泣くでしょうからね」
全員一致の意見に、パステルブラウンはシイロの申し出を了承する。そして、生きて帰る事を約束させる。シイロは強く頷いた。
「もちろんだ。さっきは取り乱してしまったが、もう大丈夫だ。私は誇り高きパステル王国の女王の護衛騎士シイロだ。この剣に誓おう!」
シイロはびしっと胸の前に腕を構え、高らかに宣言していた。
「ふっ、やっとシイロらしくなったじゃねえか。護衛騎士に就任した頃の事を思い出すぜ」
「なっ、ワイス殿。それは言わないで下さい」
慌てるシイロをワイスは笑っていた。
「悪ぃな。だが、これで緊張も解れたってもんだろ」
「むっ、確かにそうではありますが、いささか感心致しかねますな」
得意げなワイスとは対照的に、不機嫌丸出しのシイロである。
「ま、まあ、漫才はそれくらいにしてきましょう」
「そうですわね。扉の向こうからは禍々しいまでの空気が流れ出てきていますわ」
開け放たれた扉から、パステルパープルの言う通り、ものすごく冷たくて恐ろしいまでの空気が流れ出てきている。少しでも気を抜けば、その恐ろしさに飲み込まれてしまいそうだった。
「だけどよ、ここで立ち止まっていても仕方ない。俺たちはダクネースを倒さなきゃいけないんだ。世界を守るために、救うために!」
「パステルピンクの言う通りだな。俺っちたちがここまでやって来たのはそのためだ。今さら怖気づけるかってんだ」
パステルピンクたちはお互いを見て頷き合うと、意を決して扉の中へと飛び込む。
扉の中はこれまで以上に真っ暗である。果たしてダクネースはそこに居るのか、はたまた別の何かが待ち受けているのか、それは誰にも分からなかった。
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