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第166話 真の最終決戦
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なんと、聖獣フォシンズは実は敵だった。だが、確かに誕生した経緯を思い返すと納得のいくものだった。
今回のフォシンズは、シイロにとりついた暗黒の力が浄化されて誕生した存在だ。シイロはダクネースの暗黒の力の支配を受けていたのだから、つまりは、ダクネースの力の一部から誕生したという事である。つまりはダクネースの一部なのだ。
そういう体だったがために、ダクネースの最期の悪あがきを直接受けていないにもかかわらず、その影響を受けてしまったようなのだ。つまり、フォシンズはダクネースの残滓の操り人形となってしまったのだ。
「はーっはっはっはっ! 僕はこのまま次の負の感情を受け入れるための器にされるくらいなら、その元凶たるこの国を滅ぼしてしまいたいというわけだ!」
フォシンズの意識がどんどんとダクネースに寄っていく。
「負の感情のすべてを僕に押し付けてのうのうと生きているお前たちに、恨み以外の感情があると思うのかい?」
フォシンズが雄たけび上げると、周りから無数の黒いもやの塊が現れる。モノトーン空間で見せたダクネースの軍勢だった。急に現れた黒いもやたちにパステルピンクたちは驚きを隠せなかった。
「今度はさっきのようにはいかないよ。なにせそいつらを止められる存在は居ないんだからね」
そして、フォシンズはちらりとレインの方を見る。
「その女王は僕たちの力で傷付けられないけれど、ここを壊して落下させたら、一体どうなるかな?」
醜くなったフォシンズがさらに醜く笑みを浮かべる。その姿に、住職とシイロがぎりっと歯を食いしばって睨み付ける。
「あーっはっはっはっ、いいねえ、その表情。さあ、僕が過去味わった苦しみと、これから味わわされる苦しみ。その全部を、その身に刻み付けてあげるよ」
フォシンズのその声で、黒いもやたちは一斉にパステルピンクたちに襲い掛かる。連戦に加えてこの数相手だ。パステルピンクたちにとって、この状況は厳しすぎる。だが、パステル王国を救うため、そして、他の世界を救うため、ここで諦めるわけにはいかなかった。
「いや、実におかしいねえ。パシモとメルプだっけか、そっちの二人はいいとしても他の三人はこの国とは関係ないだろう? どうしてそんなに必死になって戦うのかな?」
フォシンズは笑っている。
「うるせぇ! 四天王やら三傑やらけしかけて俺たちの世界にも手を出してたじゃねえかっ!」
「まったくだわ。それでいて無関係だなんて言われたくはないわよ」
「本当ですわね。知ってしまった以上、それを無視できるほど冷淡だと思いまして?」
フォシンズの言葉にパステルピンクたちは怒りを滲ませる。
「パステル・シュトローム・アロー!」
「ダクーッ!」
パステルシアンの浄化技に、ダクネースの軍勢の一部が消し飛ぶ。数は多いが雑魚といえば雑魚だ。浄化技一発で簡単に消えてしまうようだった。
「ウィンター・アメジスト・コフィン!」
それに続くようにパステルパープルも浄化技を放つ。パキンと凍り付いたダクネースの軍勢が粉々に砕け散った。
「だっりゃあっ!」
パステルピンクはダクネースの軍勢の頭を踏み潰しながら、フォシンズへと駆け寄っていく。
「後方で安全面してんじゃねえっ! 俺の頭に乗っかってくつろいでたくせによっ!」
「ふん、ずいぶんと野蛮なものだねえ。護りな!」
パステルピンクが殴り掛かるような勢いで飛び込んでいくが、フォシンズは冷静に迎撃を試みる。
フォシンズの前にダクネースの軍勢が立ちはだかり、パステルピンクへの迎撃を開始する。
「邪魔すんじゃ、ねえっ!」
パステルピンクはそう叫ぶと、その手にはブラシクレイモアを持っていた。
「だりゃあっ!」
次の瞬間、フォシンズを守っていた軍勢はあっという間に斬り裂かれていた。
「へえ、やるねえ」
フォシンズはその光景を冷静に観察していた。
「次はてめえの番だ!」
パステルピンクがフォシンズに斬り掛かる。だが、
「なに?!」
パステルピンクの体に黒いもやが絡みついていた。
「甘いなぁ。負の感情がある限り、僕の力は無限に湧いてくるのさ。そして、今の君は負の感情にあふれている。そんな君が僕に勝てると思うのかい?」
おかしそうにくすくすと笑うフォシンズ。
「まあ、単身僕に飛び込んできた勇気は、評価に値するよ。でもね、君のそれは勇気ではなく蛮勇っていうんだよ!」
パステルピンク目がけて、フォシンズの攻撃が襲い掛かる。だが、パステルピンクは黒いもやに絡めとられて、回避行動が取れない。
万事休す。
そう思った時だった。
「パステルピンクー!」
駆け寄ってくる影が見えた。そして、パステルピンク目がけて飛んでくる攻撃へと、その身を勢いよくぶつけたのである。
「何?!」
フォシンズは驚いている。
「パステルピンクは……殺させないよ!」
「チェリー!」
そう、このピンチに飛び込んできたのは、パステルピンクの相棒である聖獣の一体チェリーだった。
「ボクだって、パステル王国を守護する聖獣の一体なんだ。ただ手をこまねいて見ているだけのお飾りじゃないんだ!」
パステルピンクの前に両手を広げて立つチェリー。その姿は、小さい可愛らしい姿にもかかわらず、かなり大きく見えた。
「フォシンズ。いや、ダクネース。君の思い通りにはさせないよ!」
そう叫んだチェリーの体が、じわじわと光を放ち始めた。
今回のフォシンズは、シイロにとりついた暗黒の力が浄化されて誕生した存在だ。シイロはダクネースの暗黒の力の支配を受けていたのだから、つまりは、ダクネースの力の一部から誕生したという事である。つまりはダクネースの一部なのだ。
そういう体だったがために、ダクネースの最期の悪あがきを直接受けていないにもかかわらず、その影響を受けてしまったようなのだ。つまり、フォシンズはダクネースの残滓の操り人形となってしまったのだ。
「はーっはっはっはっ! 僕はこのまま次の負の感情を受け入れるための器にされるくらいなら、その元凶たるこの国を滅ぼしてしまいたいというわけだ!」
フォシンズの意識がどんどんとダクネースに寄っていく。
「負の感情のすべてを僕に押し付けてのうのうと生きているお前たちに、恨み以外の感情があると思うのかい?」
フォシンズが雄たけび上げると、周りから無数の黒いもやの塊が現れる。モノトーン空間で見せたダクネースの軍勢だった。急に現れた黒いもやたちにパステルピンクたちは驚きを隠せなかった。
「今度はさっきのようにはいかないよ。なにせそいつらを止められる存在は居ないんだからね」
そして、フォシンズはちらりとレインの方を見る。
「その女王は僕たちの力で傷付けられないけれど、ここを壊して落下させたら、一体どうなるかな?」
醜くなったフォシンズがさらに醜く笑みを浮かべる。その姿に、住職とシイロがぎりっと歯を食いしばって睨み付ける。
「あーっはっはっはっ、いいねえ、その表情。さあ、僕が過去味わった苦しみと、これから味わわされる苦しみ。その全部を、その身に刻み付けてあげるよ」
フォシンズのその声で、黒いもやたちは一斉にパステルピンクたちに襲い掛かる。連戦に加えてこの数相手だ。パステルピンクたちにとって、この状況は厳しすぎる。だが、パステル王国を救うため、そして、他の世界を救うため、ここで諦めるわけにはいかなかった。
「いや、実におかしいねえ。パシモとメルプだっけか、そっちの二人はいいとしても他の三人はこの国とは関係ないだろう? どうしてそんなに必死になって戦うのかな?」
フォシンズは笑っている。
「うるせぇ! 四天王やら三傑やらけしかけて俺たちの世界にも手を出してたじゃねえかっ!」
「まったくだわ。それでいて無関係だなんて言われたくはないわよ」
「本当ですわね。知ってしまった以上、それを無視できるほど冷淡だと思いまして?」
フォシンズの言葉にパステルピンクたちは怒りを滲ませる。
「パステル・シュトローム・アロー!」
「ダクーッ!」
パステルシアンの浄化技に、ダクネースの軍勢の一部が消し飛ぶ。数は多いが雑魚といえば雑魚だ。浄化技一発で簡単に消えてしまうようだった。
「ウィンター・アメジスト・コフィン!」
それに続くようにパステルパープルも浄化技を放つ。パキンと凍り付いたダクネースの軍勢が粉々に砕け散った。
「だっりゃあっ!」
パステルピンクはダクネースの軍勢の頭を踏み潰しながら、フォシンズへと駆け寄っていく。
「後方で安全面してんじゃねえっ! 俺の頭に乗っかってくつろいでたくせによっ!」
「ふん、ずいぶんと野蛮なものだねえ。護りな!」
パステルピンクが殴り掛かるような勢いで飛び込んでいくが、フォシンズは冷静に迎撃を試みる。
フォシンズの前にダクネースの軍勢が立ちはだかり、パステルピンクへの迎撃を開始する。
「邪魔すんじゃ、ねえっ!」
パステルピンクはそう叫ぶと、その手にはブラシクレイモアを持っていた。
「だりゃあっ!」
次の瞬間、フォシンズを守っていた軍勢はあっという間に斬り裂かれていた。
「へえ、やるねえ」
フォシンズはその光景を冷静に観察していた。
「次はてめえの番だ!」
パステルピンクがフォシンズに斬り掛かる。だが、
「なに?!」
パステルピンクの体に黒いもやが絡みついていた。
「甘いなぁ。負の感情がある限り、僕の力は無限に湧いてくるのさ。そして、今の君は負の感情にあふれている。そんな君が僕に勝てると思うのかい?」
おかしそうにくすくすと笑うフォシンズ。
「まあ、単身僕に飛び込んできた勇気は、評価に値するよ。でもね、君のそれは勇気ではなく蛮勇っていうんだよ!」
パステルピンク目がけて、フォシンズの攻撃が襲い掛かる。だが、パステルピンクは黒いもやに絡めとられて、回避行動が取れない。
万事休す。
そう思った時だった。
「パステルピンクー!」
駆け寄ってくる影が見えた。そして、パステルピンク目がけて飛んでくる攻撃へと、その身を勢いよくぶつけたのである。
「何?!」
フォシンズは驚いている。
「パステルピンクは……殺させないよ!」
「チェリー!」
そう、このピンチに飛び込んできたのは、パステルピンクの相棒である聖獣の一体チェリーだった。
「ボクだって、パステル王国を守護する聖獣の一体なんだ。ただ手をこまねいて見ているだけのお飾りじゃないんだ!」
パステルピンクの前に両手を広げて立つチェリー。その姿は、小さい可愛らしい姿にもかかわらず、かなり大きく見えた。
「フォシンズ。いや、ダクネース。君の思い通りにはさせないよ!」
そう叫んだチェリーの体が、じわじわと光を放ち始めた。
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