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第187話 帰れる? 帰れない?
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実に宴は盛大なものだった。国を救った英雄であるパステル戦士たちに対して、来る人来る人がみんな頭を下げてくる。中には土下座をしてきた者まで居た。そのくらいには国を救った英雄という存在は大きいのである。
パステル王国の料理はどうかと思ったものの、意外とパステルピンクたち地球人の口にも合ったようである。
その宴の中ではダンスまでする事になったのだが、パステルピンクは食事に夢中でパス。そもそも踊れやしないし、今履いている靴では確実といっていいくらいに、人の足に穴を開けかねないからだ。よく分かってる。
そんなわけで、パステルシアンとパステルパープル、パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロという組み合わせでダンスが披露されたのだった。パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロは双子という組み合わせもあってか、ものすごく息が合っていた。パステルシアンとパステルパープルは、パステルパープルのリードがうまかったので何事もなかったようである。
こうして宴は大盛況のうちに終わったのだった。
あとは騒ぎ足りないパステル王国の住民たちに宴の席は任せて、レインはパステル戦士たちを連れて再び自室へと戻ってきた。
「それでは、みなさんの世界に戻る方法というのをお教えしましょう」
椅子に座ったレインが、神妙な面持ちで語り出した。その雰囲気に、パステルピンクたちはごくりと息を飲んだ。
「正直言いまして、確証は持てません。片道なのか行き来ができるのか、はたまたちゃんと目的の場所に飛べるのかも分かりません。なにせ伝承ですからね」
レインは右頬に手を当てながら、首を傾げて話している。
「姉さん、それだったら多分大丈夫だ。私が行き来できる」
「そうだったわね。地球にも出てきてたし、モノトーン空間へあたいたちを引き込む事もできたものね」
シイロの言葉に、パステルブラウンが補足する。しかし、レインは首を横に振っている。
「それはモノトーン空間の話よ。パステル王国とは違うわ。同じ場所にあったらしいけれども、それはダクネースの力によって歪められていたからなのよ。だから、モノトーンでの話がそのままパステル王国に通用するとは限らないわ」
「くっ、言われてみれば、そうでございますね」
レインの言い分に、シイロは言いくるめられてしまった。
だが、レインの指摘だって間違ってはいない。今まではダクネースと同じ漆黒のオーラをまとっていたからこそ行使できていた可能性は否定できないのだ。それをパステル王国にそのまま適用しようとすると、そもそも飛べないか、とんでも戻って来れないといった事態が発生しないとも限らない。それに、それが使えるのがシイロというのなら、レインは姉として全力で止めなければならなかったのである。
しかし、シイロのさっきの言葉に、一人考え込んでいる人物が居た。
「それでしたら」
そう、パステルパープルだった。
「ダクネースと同じ力が使える条件があればよいというわけですわね」
「ええ、そうですね」
パステルパープルの質問に、レインは肯定する。
「でしたら、この城に同じ状態になっている場所が、一か所ございませんこと?」
続けて発言したパステルパープルの言葉に、レインたちは目をぱちぱちとさせていた。
「そうか、封印の間か」
ワイスが叫んだ。
「確かに、ダクネースはあそこで誕生したんだからな。負の感情が集まって形成された漆黒のオーラが漂っちゃあいるな……」
「ええ、ですが、危険といえば危険ですね」
ワイスも両手を組むくらいに悩んでいる。レインの苦言も仕方のない事だ。
「それを言うなら、女王陛下も他の世界にボクたちを飛ばせましたよね?」
「そうです。モノトーンの襲撃に、私たちを必死に逃がして下さいました。だったら……」
チェリーとグローリが口々に話すのだが、レインの表情は暗く、ただ左右に首を振るだけだった。
「いえ、私の力では狙った場所に飛ばす事はできません。あの時だって、最後の希望に賭けて必死でしたから、今の私ではきっと無理です」
レインにきっぱり否定されてしまった。
「だったら、最初に言ってた伝承ってやつをだな……」
パステルピンクが声を荒げてレインに迫ろうとしたのだが、その時に見せたレインの表情に、つい飲まれてしまう。
「まあ、その伝承なら、私も聞いた事がある」
ここで住職が出てくる。
「住職?」
「和尚……」
パステルオレンジとパステルブラウンが揃って住職に顔を向ける。
「多分、私が地球に転生したのは、もしかしたらその伝承のせいかも知れない。だったら……」
住職が語気を強めると、場の空気が一気に変わる。
「私が住職を務める、あの色鮮寺。もしかしたらあそこは、パステル王国と地球を結ぶ特異点なのかも知れないな」
住職は顎に手を当てて、真剣な表情で悩んでいる。
「……確かにそうかも知れない。あそこはダクネースの力を使おうとしても発動できなかった。もしかしたら、あそこはパステル王国とつながっているのかも知れない」
思わぬところから、地球に帰れる希望が出てきたのであった。その状況に驚いたレインは、
「……分かりました。では、今からその場所へとご案内致しましょう」
覚悟を決めたように椅子から立ち上がったのだった。
パステル王国の料理はどうかと思ったものの、意外とパステルピンクたち地球人の口にも合ったようである。
その宴の中ではダンスまでする事になったのだが、パステルピンクは食事に夢中でパス。そもそも踊れやしないし、今履いている靴では確実といっていいくらいに、人の足に穴を開けかねないからだ。よく分かってる。
そんなわけで、パステルシアンとパステルパープル、パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロという組み合わせでダンスが披露されたのだった。パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロは双子という組み合わせもあってか、ものすごく息が合っていた。パステルシアンとパステルパープルは、パステルパープルのリードがうまかったので何事もなかったようである。
こうして宴は大盛況のうちに終わったのだった。
あとは騒ぎ足りないパステル王国の住民たちに宴の席は任せて、レインはパステル戦士たちを連れて再び自室へと戻ってきた。
「それでは、みなさんの世界に戻る方法というのをお教えしましょう」
椅子に座ったレインが、神妙な面持ちで語り出した。その雰囲気に、パステルピンクたちはごくりと息を飲んだ。
「正直言いまして、確証は持てません。片道なのか行き来ができるのか、はたまたちゃんと目的の場所に飛べるのかも分かりません。なにせ伝承ですからね」
レインは右頬に手を当てながら、首を傾げて話している。
「姉さん、それだったら多分大丈夫だ。私が行き来できる」
「そうだったわね。地球にも出てきてたし、モノトーン空間へあたいたちを引き込む事もできたものね」
シイロの言葉に、パステルブラウンが補足する。しかし、レインは首を横に振っている。
「それはモノトーン空間の話よ。パステル王国とは違うわ。同じ場所にあったらしいけれども、それはダクネースの力によって歪められていたからなのよ。だから、モノトーンでの話がそのままパステル王国に通用するとは限らないわ」
「くっ、言われてみれば、そうでございますね」
レインの言い分に、シイロは言いくるめられてしまった。
だが、レインの指摘だって間違ってはいない。今まではダクネースと同じ漆黒のオーラをまとっていたからこそ行使できていた可能性は否定できないのだ。それをパステル王国にそのまま適用しようとすると、そもそも飛べないか、とんでも戻って来れないといった事態が発生しないとも限らない。それに、それが使えるのがシイロというのなら、レインは姉として全力で止めなければならなかったのである。
しかし、シイロのさっきの言葉に、一人考え込んでいる人物が居た。
「それでしたら」
そう、パステルパープルだった。
「ダクネースと同じ力が使える条件があればよいというわけですわね」
「ええ、そうですね」
パステルパープルの質問に、レインは肯定する。
「でしたら、この城に同じ状態になっている場所が、一か所ございませんこと?」
続けて発言したパステルパープルの言葉に、レインたちは目をぱちぱちとさせていた。
「そうか、封印の間か」
ワイスが叫んだ。
「確かに、ダクネースはあそこで誕生したんだからな。負の感情が集まって形成された漆黒のオーラが漂っちゃあいるな……」
「ええ、ですが、危険といえば危険ですね」
ワイスも両手を組むくらいに悩んでいる。レインの苦言も仕方のない事だ。
「それを言うなら、女王陛下も他の世界にボクたちを飛ばせましたよね?」
「そうです。モノトーンの襲撃に、私たちを必死に逃がして下さいました。だったら……」
チェリーとグローリが口々に話すのだが、レインの表情は暗く、ただ左右に首を振るだけだった。
「いえ、私の力では狙った場所に飛ばす事はできません。あの時だって、最後の希望に賭けて必死でしたから、今の私ではきっと無理です」
レインにきっぱり否定されてしまった。
「だったら、最初に言ってた伝承ってやつをだな……」
パステルピンクが声を荒げてレインに迫ろうとしたのだが、その時に見せたレインの表情に、つい飲まれてしまう。
「まあ、その伝承なら、私も聞いた事がある」
ここで住職が出てくる。
「住職?」
「和尚……」
パステルオレンジとパステルブラウンが揃って住職に顔を向ける。
「多分、私が地球に転生したのは、もしかしたらその伝承のせいかも知れない。だったら……」
住職が語気を強めると、場の空気が一気に変わる。
「私が住職を務める、あの色鮮寺。もしかしたらあそこは、パステル王国と地球を結ぶ特異点なのかも知れないな」
住職は顎に手を当てて、真剣な表情で悩んでいる。
「……確かにそうかも知れない。あそこはダクネースの力を使おうとしても発動できなかった。もしかしたら、あそこはパステル王国とつながっているのかも知れない」
思わぬところから、地球に帰れる希望が出てきたのであった。その状況に驚いたレインは、
「……分かりました。では、今からその場所へとご案内致しましょう」
覚悟を決めたように椅子から立ち上がったのだった。
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