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第20話 生息地へ向けて
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ランクアップ試験であるグレイウルフの討伐。リューンはトラウマとなっているようだが、しっかりとした足取りで出現する地域へと向かっていく。
その後ろをついて行くステラは、心配した様子でリューンを見つめている。
(初めて会った時の事ですが、あの時はずいぶんと怯えていましたものね。はたして大丈夫なのでしょうか)
グレイウルフは隣国との国境付近に現れる魔物で、たまにはぐれた個体がバナルの近くまでやって来る事がある。
ただ、あの時は集団でやって来ていた。それがゆえに初めての依頼だったリューンにとって、出会いたくない魔物となっているはずである。
だけども、その気持ちを押し殺してまでこの試験を受けた。
おそらくは父親から言われた言葉が、リューンの心の支えになっているのだろう。ステラはその気持ちを汲んで、黙ってリューンの後ろをついて行った。
グレイウルフの出没する地域は、ステラが住んでいる森からさらに国境へ進んだ場所だ。国境付近に森が広がっており、グレイウルフはそこに生息している。
(以前の事を思えば、そこに到着するまでに遭遇する可能性はありますね)
国境までの途中で野宿するステラとリューン。ステラは火の番をしながらいろいろと考え事をしていた。
かなり夜は深まっており、リューンはすっかり眠ってしまっている。
(まったく、こうやって熟睡しているあたり、まだまだ子どもですね)
その寝顔を見ながら、ステラはくすっと笑っていた。
そういうステラも見た目は子どもなのに、眠る事なくずっと起き続けている。寝なくても大丈夫なのだろうか。
(さて、リューンが無事に試験を遂行できるように、しっかりと見張っておきましょうか)
ステラは拾い集めてきていた木の枝を火にくべる。そして、揺らめく炎を見つめまま夜が明けるのを静かに待っていたのだった。
翌日目を覚ますと、再び国境の森を目指して歩き始める二人。
さすがに中心地から外れてくると、平原の国とはいえども背の高い植物が目立つようになってきていた。
隣国の森林の国が近くなってきた証拠である。
「さあ、リューン。間もなく国境が近付いてきます。心の準備はよろしいですか?」
ここまで魔物らしい魔物と遭遇してこなかったので、ステラはあえてリューンに心構えができているか確認している。
「はい。……正直言って怖いですけれど、守られるだけじゃなくて守れる人間になりたいですから」
「そうですか。では、こんなところで足踏みしている状況ではないですね」
リューンの答えに満足そうにするステラだったが、いきなり足を止めている。
「どうされたんですか、ステラさん」
「まったく、これでは先が思いやられますね。……囲まれています」
「えっ」
ステラの声に思わず驚くリューン。
その次の瞬間、がさがさという音が響き渡る。そして、草むらの陰から魔物が姿を現したのだ。
「いつの間に!」
「この程度の気配が感じ取れないようでは、銅級冒険者には上げられませんね」
「うっ……」
ステラの厳しい評価に、リューンは思わず言葉が詰まってしまう。
確かにその通りなのだ。冒険者という職業は危険なものであり、死とは常に隣りあわせといっても過言ではない。
その原因の一つである魔物の気配を感じられないというのは、冒険者としては致命的といってもいいミスなのである。
「さて、出てきたのは試験対象外の魔物ですが、どうしますか?」
「僕が戦います」
「いいでしょう。ただし、無理だと思ったらすぐに加勢しますので、無理はしないで下さいね」
「はい、分かりました」
出てきた魔物はグレイウルフではなかった。ただのウルフである。グレイウルフに比べれば敏捷性も鋭さも格段に劣る魔物だ。
しかし、ウルフの習性として群れる傾向がある。実際、今回出てきたのも8匹ほどの群れだった。
これはリューンの実力を見る上では好都合だった。
「では、私は少し下がって見ていますので、しっかりとやりなさい」
「はい」
元気よく返事をしたリューンは、ウルフに向かって突進していく。
そして、魔法鞄から剣を取り出したのだが、その剣を見て思わずステラは驚いてしまった。
(あの剣は……。そうですか、正式に託されたのですね)
その一瞬の気の緩みをウルフは逃さない。
「うるさいですね」
だが、ステラはその場から動く事なく、その拳だけでウルフを撃退してしまった。ウルフの吹っ飛び方を見るに、とても少女の力とは思えないものだった。
(エルミタージュ騎士団。その血脈を受け継ぎし者の成長、しかと見届けさせてもらいますよ)
ステラは、じっとリューンの姿を見守っている。
ちなみにステラが殴り飛ばしたウルフは2匹。つまり、現在リューンを取り囲むウルフは全部で6匹となっていた。
ここまでステラによって鍛えられてきたリューンだが、はたしてこの状況を無事に切り抜ける事ができるのだろうか。
そして、グレイウルフの討伐を無事に達成して、冒険者ランクを上げる事ができるのだろうか。
リューンの戦いを、ステラは少し引いた位置から見守るのだった。
その後ろをついて行くステラは、心配した様子でリューンを見つめている。
(初めて会った時の事ですが、あの時はずいぶんと怯えていましたものね。はたして大丈夫なのでしょうか)
グレイウルフは隣国との国境付近に現れる魔物で、たまにはぐれた個体がバナルの近くまでやって来る事がある。
ただ、あの時は集団でやって来ていた。それがゆえに初めての依頼だったリューンにとって、出会いたくない魔物となっているはずである。
だけども、その気持ちを押し殺してまでこの試験を受けた。
おそらくは父親から言われた言葉が、リューンの心の支えになっているのだろう。ステラはその気持ちを汲んで、黙ってリューンの後ろをついて行った。
グレイウルフの出没する地域は、ステラが住んでいる森からさらに国境へ進んだ場所だ。国境付近に森が広がっており、グレイウルフはそこに生息している。
(以前の事を思えば、そこに到着するまでに遭遇する可能性はありますね)
国境までの途中で野宿するステラとリューン。ステラは火の番をしながらいろいろと考え事をしていた。
かなり夜は深まっており、リューンはすっかり眠ってしまっている。
(まったく、こうやって熟睡しているあたり、まだまだ子どもですね)
その寝顔を見ながら、ステラはくすっと笑っていた。
そういうステラも見た目は子どもなのに、眠る事なくずっと起き続けている。寝なくても大丈夫なのだろうか。
(さて、リューンが無事に試験を遂行できるように、しっかりと見張っておきましょうか)
ステラは拾い集めてきていた木の枝を火にくべる。そして、揺らめく炎を見つめまま夜が明けるのを静かに待っていたのだった。
翌日目を覚ますと、再び国境の森を目指して歩き始める二人。
さすがに中心地から外れてくると、平原の国とはいえども背の高い植物が目立つようになってきていた。
隣国の森林の国が近くなってきた証拠である。
「さあ、リューン。間もなく国境が近付いてきます。心の準備はよろしいですか?」
ここまで魔物らしい魔物と遭遇してこなかったので、ステラはあえてリューンに心構えができているか確認している。
「はい。……正直言って怖いですけれど、守られるだけじゃなくて守れる人間になりたいですから」
「そうですか。では、こんなところで足踏みしている状況ではないですね」
リューンの答えに満足そうにするステラだったが、いきなり足を止めている。
「どうされたんですか、ステラさん」
「まったく、これでは先が思いやられますね。……囲まれています」
「えっ」
ステラの声に思わず驚くリューン。
その次の瞬間、がさがさという音が響き渡る。そして、草むらの陰から魔物が姿を現したのだ。
「いつの間に!」
「この程度の気配が感じ取れないようでは、銅級冒険者には上げられませんね」
「うっ……」
ステラの厳しい評価に、リューンは思わず言葉が詰まってしまう。
確かにその通りなのだ。冒険者という職業は危険なものであり、死とは常に隣りあわせといっても過言ではない。
その原因の一つである魔物の気配を感じられないというのは、冒険者としては致命的といってもいいミスなのである。
「さて、出てきたのは試験対象外の魔物ですが、どうしますか?」
「僕が戦います」
「いいでしょう。ただし、無理だと思ったらすぐに加勢しますので、無理はしないで下さいね」
「はい、分かりました」
出てきた魔物はグレイウルフではなかった。ただのウルフである。グレイウルフに比べれば敏捷性も鋭さも格段に劣る魔物だ。
しかし、ウルフの習性として群れる傾向がある。実際、今回出てきたのも8匹ほどの群れだった。
これはリューンの実力を見る上では好都合だった。
「では、私は少し下がって見ていますので、しっかりとやりなさい」
「はい」
元気よく返事をしたリューンは、ウルフに向かって突進していく。
そして、魔法鞄から剣を取り出したのだが、その剣を見て思わずステラは驚いてしまった。
(あの剣は……。そうですか、正式に託されたのですね)
その一瞬の気の緩みをウルフは逃さない。
「うるさいですね」
だが、ステラはその場から動く事なく、その拳だけでウルフを撃退してしまった。ウルフの吹っ飛び方を見るに、とても少女の力とは思えないものだった。
(エルミタージュ騎士団。その血脈を受け継ぎし者の成長、しかと見届けさせてもらいますよ)
ステラは、じっとリューンの姿を見守っている。
ちなみにステラが殴り飛ばしたウルフは2匹。つまり、現在リューンを取り囲むウルフは全部で6匹となっていた。
ここまでステラによって鍛えられてきたリューンだが、はたしてこの状況を無事に切り抜ける事ができるのだろうか。
そして、グレイウルフの討伐を無事に達成して、冒険者ランクを上げる事ができるのだろうか。
リューンの戦いを、ステラは少し引いた位置から見守るのだった。
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